大河ドラマどうする家康・(14)金ヶ崎でどうする! ~浅井裏切り! 信長家康絶体絶命!~
用意されたたくさんの干し柿に触発されて、5人の男の子たちが浜辺で駆けっこです。見つめていた女の子は、干し柿欲しさに勝手に駆けっこに参加して、男の子たちが駆けていく後を追いかけていきます。ハアハア息を吐きながら浜辺を駆け、追いつき、追い越そうとする中、「女のくせに!」と突き飛ばされてしまいますが、女の子は立ち上がり、あっという間に追い越します。
女の子の名は阿月。待て! と追いかける男の子に「待たんわ!」と笑顔です。戻って来たぞ! と浜辺では大人たちが待ち構えますが、一番に帰ってきたのはダントツの阿月でした。呆気にとられる大人たちの中、山盛りの干し柿に満面の笑みを浮かべる阿月ですが、彼女の親が飛んできて、周りの大人たちにペコペコしながら阿月を引っ張っていきます。
その10年後、その浜辺には徳川軍が陣を構えていました。渡辺半蔵守綱や鳥居元忠、平岩親吉は、三河では見たことのない大きなカニに仰天しています。これを食うのか? と守綱がのけぞり、元忠も険しい表情ですが、いざ食べてみれば「うま~い!」と感嘆の声を上げます。ええ所じゃの! と笑顔の元忠ですが、彼はここがどこなのか理解していません。
上洛した我らが神の君は、織田信長率いる幕府軍とともに越前・朝倉征伐のため北上。ついに朝倉義景を追い詰めたのでございます。
敦賀・金ヶ崎城では、織田信長を上座に宴が催されていて、酒井忠次が「えびすくい」の舞を披露します。苦虫をかみつぶした表情の徳川家康ですが、信長が笑って眺めているので一安心です。舞を真似た「かにすくい」の木下藤吉郎が家康を表へ連れ出すと、家康は場を和ませようと蟹を手に「カニがさき~」とやるのですが、先ほどまで笑顔だった信長の顔は、たちまち険しくなっています。
4月27日、蟹汁に舌鼓を打つ家康家臣団ですが、本多忠勝などはこんな関わりない地でいつまで過ごせばいいのかとあきれ顔です。石川数正は「幕府再興、天下静謐(せいひつ)のためじゃ」と忠勝たちを諭します。忠次も、浅井勢が加われば織田軍は4万になり、1万5,000の朝倉軍とは戦にならず、すぐに帰れると励ましています。家康は、天下一統を宣言した信長を思い出しています。
北近江・小谷城(浅井氏居城)では、お市の方が沈痛な面持ちです。夫の浅井長政が信長を裏切り討つと決意したのです。その瞬間、居室は無数の兵たちに取り囲まれてしまいました。そんな状況に驚いたお市は、自分が何か気に障ることでもしたのかと尋ねますが、長政はそれには答えません。お市は声を荒げます。「なにゆえでございますか!」
お市の侍女を務める阿月は小豆をお手玉に詰め、小さく折りたたんだ文を忍び込ませて袋を縫い上げます。振り返ったお市が小さく頷くと、阿月はつるべを使ってお手玉を男に預けます。「金ヶ崎、徳川三河守。頼んだぞ」
長政は1万の兵を率いて小谷城を出発し、明日には金ヶ崎に着陣予定です。ただ勝つだけではなく、将軍足利義昭の威光を天下に知らしめるための戦だと、信長は気合十分です。しかし義景が1万5,000の兵を率いて一乗谷を出、金ヶ崎に向かっているとの知らせが舞い込み、信長は考え込んでしまいます。義景の旧臣である明智光秀は、彼は戦下手なのだとニヤリとします。
浅井軍が近江と越前の国境辺りまで進んできました。そのころお市のところには、家康へお手玉を託した男が引き出されていました。所持していたお手玉を引きちぎると、無数の小豆の中に混じって「おひき候へ いち」という文が出て来ました。これだけの証拠を出されても表情を変えないお市ですが、男は打ち首にするため連れて行かれます。
お市は自分が浅井と織田を結び付ける役割であることは十分理解しているのですが、幼いころに家康に助けてもらった恩があり、今度は私がという気持ちだったのかもしれません。阿月はお市の気持ちを察し、十里(40km)離れた金ヶ崎に自分が知らせに行くと買って出ます。金ヶ崎は阿月の故郷で地理に詳しいというのです。お市は、その気持ちで充分だとニッコリほほ笑みます。
家康は妙な胸騒ぎがしてなりません。忠勝は地図を眺めて、もし裏で浅井と朝倉が手を組んでいたとしたら自分たちは挟み撃ちに遭うと主張します。家康にとって長政は心によどみがない実直な人というイメージですが、数正は「だからこそ裏切るということでは」とつぶやきます。あんな無能な将軍を信長はなぜ崇めるのか。「神輿は軽い方がいいからでは? おだててさえおけば言いなりになるからでは」
なにゆえでございますか! とのお市の問いに、長政はお市を諭します。信長が朝倉を滅ぼせば越前は織田のものとなり、信長に反旗を翻せばいずれ同じ末路をたどるという危惧が長政の心の中にあったのです。いま長政が金ヶ崎に向かっているのは織田軍に加勢するためではなく、信長を討つため──。家康はじめ徳川家臣団は、みな一様に言葉を失っています。
お市の乳の出が悪いということにして、乳をもらうために瓶を手に阿月が小谷城から出ていきます。警護兵が怪しんで阿月を追いかけていきますが、それに気づいた阿月は早足で逃げていきます。しかし木陰に隠れていたところを見つかり、兵に捕まって崖から川に突き落とされてしまいます。
敦賀・疋田城に浅井軍が到着し、朝倉軍は浅水(あそうず)に入っています。家康は信長に面会し、万一挟み撃ちされた場合ここは危ないと伝えに来ました。しかし織田家臣たちは大笑いし、明智光秀は将軍の軍勢ならば撤退などありえないと家康を見据えます。信長は長政を義の男だと買っていて、二度と辱めるなと家康に忠告します。しかし家康は食い下がり、義の男だからこそ裏切ることもあると主張します。
「あ?」と信長は家康に迫ります。信長は将軍と朝廷のために戦っているつもりですが、震えながらも信長のやろうとしていることに義がないと考える者もいると声を絞り出します。信長の心のうちなど分かるもんか! と勢いに任せて叫んでしまい、出ていけ! と信長に言われてしまいます。「朝倉の次はお前じゃ。俺に逆らうとはそういうことじゃ」
忠勝は今すぐ三河に帰って信長と戦う支度をすればいいと言い出しますが、そうなると幕府に反旗を翻すことになるわけで、徳川軍に勝ち目はありません。頭を抱える家康ですが、そこに柴田勝家が、家康を引き止めに来ました。信長は家康がいるときだけ機嫌がよく、だから勢いに任せて撤退などせずに引き続き供としていてほしいと言うのです。
4月28日、疋田城を出立した浅井軍ですが、兵のひとりが人影に察知したか矢を放ちます。その矢は身を潜めていた阿月の近くに刺さり、阿月は思わず声を出しそうになります。金ヶ崎の徳川軍に向けて走り出す阿月は、途中で立っていたかかしの布切れを拝借し、裾をまくり上げて急ぎます。
阿月の父親は行儀作法から仕込み直しますが、それは阿月を高額で売るためでした。阿月は 父上! と何度も呼びかけますが、ついに阿月を見ることはありませんでした。自分を300文で買った男から逃げ出し、腹を空かせて盗み食いしていた阿月は、逃げながらお市の居室前に迷い込みます。お市は阿月を不憫に思い侍女として受け入れます。お市は阿月に小袖を着せ、髪の毛も整えます。「よし! 器量よしじゃ!」
阿月はそんなことを思い出しながら、走り疲れて地面に寝転がります。そして雨が降り出しました。お市の名をつぶやく阿月ですが、お市へ恩返しするためにも、その思いは必ず家康に伝えなければなりません。袖を引きちぎり、血だらけの足に巻き付けて再び走り出します。お市の子を変顔で笑わせ、よく働いてくれている褒美にとお市がコンフェイトを口に入れてくれた、そんな思い出が阿月を奮い立たせます。
日が昇り始めるころ、ようやく金ヶ崎の浜辺にたどり着きました。涙にくれる阿月は残りの力を振り絞り、浜辺を走ります。浜辺に立っていた親吉に、ここは家康の陣だと教えてもらうと、阿月はその言葉に安心して気を失います。親吉は慌てて阿月を抱きかかえ、家康の元に連れて行くと、家康は阿月がお市の侍女であると気づきます。ようやく意識を取り戻した阿月は、残りの力で家康の腕を掴み、息も絶え絶えに伝えます。「おひき……候え……」
阿月の亡骸(なきがら)を前に、信長が現れます。お市からの伝言であること、さらに浅井も朝倉も進軍中との情報が入り、信長は浅井が裏切ったと認めざるを得ませんでした。それでも自尊心があるのか考え込む信長に、家康は早く撤退するよう進言しますが、信長は藤吉郎に殿(しんがり)を命じます。いきなりの指名に藤吉郎はいつもの陽気さは影を潜め、顔面蒼白になります。「ああ……こりゃ死んだわ!」
藤吉郎は人が変わったように狂い、ここで生きて帰ればもっと出世できると笑い出し、戦の指揮を執ったことがないと家康に助けを求めます。ここで家康が逃げれば、信長は見捨てられたことになり、将軍を裏切って浅井朝倉と手を組んだと周囲に言いふらすと脅す藤吉郎に、さすがの家康もムッとして、藤吉郎を突き飛ばします。家康は自分の意思に関係なく殿(しんがり)として参加せざるを得なくなります。
「この金ヶ崎で迎え撃ち、信長どのの逃げる時を稼ぐ! のち、退(の)き戦に移る」 横たわる阿月の姿を見て、家康は下知します。そして親吉に阿月を手厚く葬ってやれと命じます。お市のため、家康のため、十里以上も走り抜き、達成できたと同時に命を落とした、はかない女の最期でした。
浅井・朝倉軍2万5,000が金ヶ崎に着陣し、いよいよ浅井朝倉との戦が始まります。
永禄13(1570)年4月、織田信長の義弟・浅井長政が裏切る。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと32年9ヶ月──。
作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
──────────
松本 潤 (徳川家康)
北川 景子 (お市の方)
岡田 准一 (織田信長)
大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
岡部 大 (平岩親吉(七之助))
木村 昴 (渡辺半蔵守綱)
──────────
酒向 芳 (明智光秀)
吉原 光夫 (柴田勝家)
大貫 勇輔 (浅井長政)
伊東 蒼 (阿月)
──────────
ムロ ツヨシ (木下藤吉郎)
古田 新太 (足利義昭(回想))
松重 豊 (石川数正)
──────────
制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:大橋 守・釜谷 正一郎
演出:川上 剛
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『どうする家康』
第15回「姉川でどうする!」
| 固定リンク
「NHK大河2023・どうする家康」カテゴリの記事
- 大河ドラマどうする家康・(49-4)総集編第四章 覚悟のとき(2023.12.29)
- 大河ドラマどうする家康・(49-3)総集編第三章 躍動のとき(2023.12.29)
- 大河ドラマどうする家康・(49-2)総集編第二章 試練のとき(2023.12.29)
- 大河ドラマどうする家康・(49-1)総集編第一章 始まりのとき ~全48話を4部に凝縮! 激動生涯高速振り返り 乱世の強者信玄、信長、秀吉、三成そして茶々 桶狭間関ケ原大坂の陣 九死に一生の逆転人生 妻子失う苦難乗り越え 白兎から天下人へ覚醒 皆のおかげじゃ家臣団 えびすくいも見納め! 語りは大鼠松本まりか~(2023.12.29)
- 大河ドラマどうする家康・(48)神の君へ [終] ~大坂炎上! さらば家康~(2023.12.17)
コメント