« プレイバックおんな太閤記・(14)信長の手紙 | トップページ | プレイバックおんな太閤記・(15)秀長の恋 »

2023年4月30日 (日)

大河ドラマどうする家康・(16)信玄を怒らせるな ~生か死か! 決戦迫る~

城門を突破した男が竹矢来(たけやらい)によじ登って脱出を図りますが、門番の男たちに身柄を拘束され、連れ去られてしまいます。その竹矢来はゆっくりと武田家家紋の「武田菱」に姿を変えていき、ようやく冒頭の挿絵につながります。赤地に百足(むかで)……百足衆は武田の伝令部隊を表し、なんとも不気味なスタートです。山頂で静かに巨石に座す武田信玄ですが、苦しそうに胸のあたりを押さえています。

我らが神の君の大活躍により、姉川合戦で織田・徳川軍は浅井・朝倉軍を見事撃破。かくて我らが神の君は新天地・遠江浜松へとお移りに。キレイに舞う女たちですが、そのうちの一人が徳川家康目がけて突進してきます。異変を察知した榊原康政や本多忠勝が防御しますが、ひらりと身を翻し、家康に衝突してもみ合いになります。よく見ると女ではなく幼い男の子でした。

康政は、その男児が逃げ込んだであろう小屋にそっと足を踏み入れますが、床に落ちていた花に気を取られているスキに鎌で襲撃されます。忠勝が駆けつけて男児を捕縛し、鳥居元忠らに折檻を受けますが、まだ子どもだと家康は止めに入ります。お前のせいでオレの家はめちゃくちゃになった! と男児は暴れます。「遠江の民はみ~んなお前を恨んでおるわ! 徳川家康は疫病神の裏切り者だと!」

今川が力を失った今、誰かが治めなければならないと夏目広次が諭しますが、男児は「お前なんぞ武田信玄に滅ぼされるに決まっとる!」と暴言を吐く男児を、家康は放免せよと命じます。「こやつが次、我らの前に現れる時、さらなる敵となっているか、あるいは味方となっているか、それは我らの行い次第」 元忠はしぶしぶ男児を放免しますが、男児は振り返り「井伊虎松」(後の直政)と名を明かします。

己の一存でやったということは、武田の考えそのものを仕込まれている可能性があります。今川の旧領について信玄と話し合ったはずなのですが、それは武田は駿河から、徳川は遠江から切り取り次第という意味なのかもしれません。腹を立てる家康ですが、広次は落ち着くようにたしなめます。「信長どのからもきつく言われておることをお忘れなく。信玄だけは怒らせるな、と」

石牢に監禁されている男の元に、番人が食事を持ってきます。食事といっても小さな肉が数切れで、とても満足な食事とは言えませんが、男が父と母に送った文には、「甲斐の国は食べ物も豊かで美味なるものばかり。武田さまは慈悲深いお方、源三郎は息災に暮らしております」とあります。その書状を受け取った父母とは、三河国の上ノ郷城の久松長家と於大の方でした。

源三郎とは、長家と於大の次男で家康の義弟にあたる、松平勝俊です。武田と盟約を結んだときに人質として源三郎が向かったのですが、於大は、その文が源三郎の字ではないと見抜き、呼び出した服部半蔵に救い出して来いと命じるわけです。忍びの者は金でさささと動く……。忍びではなく武士だと自認する半蔵は、於大の一言にイライラを募らせますが、致し方なく冬の甲斐に(女)大鼠と忍び入ることにします。

源三郎が囚われている石牢を探り当て様子を確認した半蔵は、「だいぶ弱っておられるようで、毎日ひどい仕打ちを受けており、幾度も逃げ出そうとしたらしく」と家康に報告します。いかがいたしましょう? と問われた家康はしばらく考えた上で、於大には息災であったと伝えるように命じます。

「義兄上さまは父上よりも偉いのですか?」とけなげに聞いてきた源三郎の姿が思い出されます。武田との盟約の際、人質として甲斐に行ってほしいと打診すると、家康も幼いころに方々に人質に出ていたことを知っていた源三郎は、その胸中を慮り、「喜んで行って参ります!」と笑顔を見せてくれていました。

 

甲斐を中心とした地図に城名を記した駒を置いて眺めている信玄ですが、歩き巫女の千代が何ごとか耳打ちすると、三河にある長篠城・作手城・田峯城などの駒を取り、代わりに黒碁を置きます。武田方に内応したという意味で、地図を眺めて信玄は満足げな表情を浮かべます。

これらの城が武田に通じているらしいという情報は、広次により家康に伝えられます。今川氏真が家臣たちに見限られてなすすべなく駿河を失った時を彷彿とさせる動きに、家康は信玄の好敵手・上杉謙信に内密に書状を送って武田を囲い込もうと考えますが、間違いなく信玄を怒らせてしまうと広次は難色を示します。

粉雪の舞う中、信濃に入った遊行僧二人は、山中で白拍子たちとすれ違うと軽く会釈していますが、気づけば首元にいが栗が刺さっています。すると間もなくウッとうめき声をあげて倒れます。白拍子たちが戻ってきて持ち物を改め、錫杖の先端から書状を見つけ出すと、何も言わずに懐に入れて去っていきます。遊行僧二人はそのまま絶命します。

隠し持っていた書状はたちまち信玄の手に渡ります。「これでお屋形さまとのつながりは、徳川さまの方からお断ちになったと解釈してよろしいかと」 信玄に報告する千代に、信玄は書状をビリビリに割き、あきれ果てたような表情を浮かべて笑います。「まこと……かわいいのう」

上杉に送った内密の書状が武田に渡ってしまった……。家康は言葉を失います。信玄は家康をなじる書状を方々に送り、信玄を怒らせてしまったようです。なお戦だけは避けるよう進言する広次ですが、家康は武田との戦は避けられまいと覚悟を固めます。もともと信玄は遠江を欲していて、怒らせようが怒らせまいが、どちらにしても戦になる結末だったと諦める家康は、半蔵を呼び出します。

度重なる暴行でぐったり横たわっている源三郎の元に、信玄がやって来ました。怯えて飛び起きる源三郎に、信玄はニッコリほほ笑みかけ、意外な一言を聞かされます。「今宵、そなたを奪いに来るようじゃ」 半蔵が源三郎を奪い返しに侵入するという情報をどこかから仕入れた千代が、信玄に耳打ちしていたのです。

果たして数多くの警護の目をかいくぐり、半蔵と大鼠が音もたてずに石牢に近づきます。そして爆弾に火をつけ爆発させます。異変で大騒ぎになり、半鐘の音が鳴り響く中、信玄も「来たか……穏やかにやればいいものを」とフフッと鼻で笑います。

源三郎も身を起こして様子を窺っていると、やがて半蔵と大鼠が目の前に現れます。「服部半蔵正成、お迎えに参上」と手をつく半蔵に、源三郎は身を固まらせます。せめてこの襲撃を信玄が知っていることでも伝えれば、半蔵の動きは多少違ったものになっていたかもしれませんが、源三郎は口を開こうとはしません。

源三郎を背負って半蔵と大鼠が脱出しようとしているところを警備の者に見つかってしまいます。半蔵はそっと源三郎を寝かせ、大鼠とふたりで大勢に立ち向かいます。壮絶な斬り合いが続き、大鼠が再び火のついた爆弾を投げ込むと、壁が爆発で崩壊します。うろたえた隙に源三郎を再び背負い、逃亡を図ろうとしますが、そこにそっと現れた白拍子たちがニヤリとします。

白拍子の一人が矢を放つと、大鼠の腕を射抜きます。振り返り青ざめる半蔵ですが、大鼠は「行け!」と半蔵と源三郎を逃がします。白拍子のひとり・千代は大鼠に斬りかかり、それを受ける大鼠ですが、刀を切り結んでのおんな同士のにらみ合いが続きます。そして雪道をゆっくり逃亡する半蔵と源三郎ですが、源三郎が力尽きて倒れてしまいます。

浜松に戻った源三郎は、薬師の手当てを受けて命は取り留めたようですが、甲斐の冬を裸足で過ごしたせいか、凍傷で足の指がダメになってしまいました。源三郎は、見舞いに訪れた於大と長家に、役目を果たせず恥ずかしいとつぶやきますが、於大は立派に役目を果たしたと労わります。泣き声が聞こえますが、於大は長家をたしなめます。「あなたが泣いてどうします!」

見守っていた家康は、人質にひどい仕打ちとは何たる外道! と信玄に腹を立てますが、源三郎は甲斐の若武者と同じ鍛えられ方をしたまでと信玄をかばいます。むしろあれでも、源三郎は優しく扱われていたそうで、信玄の息子・四郎勝頼となれば鍛え方が尋常ではなく、複数人もアッという間に全員を倒してしまうほどです。「彼らは化け物でございます……甲斐の侍と戦って、勝てる者などおりませぬ……」

行かせて進ぜる……国に帰ったら兄に話してやるがよい──。奪い返しに来ると教えに来た信玄は、武田のありようを家康に伝えさせるためにわざと源三郎を返すことにしたのです。信玄からの言伝てがあると、源三郎は家康に伝えます。そしてそのころ、雪の降る中を大鼠を待っていた半蔵は、よろよろ歩いてくる大鼠を見つけると大急ぎで駆けつけます。

 

家臣たちを集めた家康は、信玄からの言伝てを披露します。弱き主君は害悪なり。滅ぶが民のためなり。生きのびたければ我が家臣となれ。手を差し伸べるは一度きり──。家臣たちにも家族があり家来があり、家康自身の独断では決められないと「おのおので決めてよい」と厳しい表情を浮かべますが、家臣たちは口をつぐんだままです。

どうする? と酒井忠次が口を開けば、“頼りない” “情けなや” “武田の家臣の家臣の方がマシかも”と耳を塞ぎたくなるような言葉が並び、康政に至っては、“信長と手が切れてこれからは信玄にこびへつらって生きていけばいい”と言う始末です。家康は目に涙を浮かべ、十に九は負けると悔しそうです。

「十に一つは勝てる……信長は桶狭間でやりましたぞ」と同じく悔しそうな表情の忠勝が家康に反論します。今の自分は信玄には何一つ及ばないと家康が卑下しますが、家康にはこの家臣一同がいると広次が励まします。家臣たちで力を合わせて知恵を出し合えば、きっと信玄に及ぶ! 家康は家臣たちを見渡し、嬉し涙を流します。

「不動明王坐像」を前にする信玄は、胸を押さえて苦しみだします。背後から近づいた勝頼から全軍揃ったと報告を受けると、信玄は山の国に生まれついた運命を恨んだと語り出します。田畑があれば、海があれば、港があれば、富があれば……。「それをそなたに残す」と信玄は勝頼を見据えます。

集結した軍勢を前に信玄は、天下を鎮め世に安寧をもたらすという信長は、その器にあらずと叱咤します。信長は敵を増やして戦乱を広げるばかりで、このまま見て見ぬふりは罪だと、自分自身が天下を鎮め人心を鎮めるために都へ向かうと宣言。ただし信長を討つ前に、手前に転がる小石をどかす必要があります。「これより浜松を目指し、徳川家康を討つ!」

一方、浜松城のほうでも鎧に身を包んだ家康はじめ家臣一同が揃っていました。この地を守り抜き、信玄に勝つ!


元亀元年(1570)年11月、松平勝俊が徳川家康の手配で甲斐から三河に脱出するも、大雪の中で踏破したため両足の指を凍傷で失う。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと32年3ヶ月──。

 

作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
──────────
松本 潤 (徳川家康)

松嶋 菜々子 (於大の方)

大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
甲本 雅裕 (夏目広次)
板垣 李光人 (井伊虎松)
小出 伸也 (大久保忠世)
波岡 一喜 (本多忠真)
岡部 大 (平岩親吉(七之助))
──────────
眞栄田 郷敦 (武田四郎勝頼)
田辺 誠一 (穴山信君)
橋本 さとし (山県昌景)
松本 まりか (大鼠)
古川 琴音 (千代)
長尾 謙杜 (松平源三郎勝俊)
──────────
山田 孝之 (服部半蔵)
リリー・フランキー (久松長家)
松重 豊 (石川数正)

阿部 寛 (武田信玄)
──────────
制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:大橋 守・釜谷 正一郎
演出:加藤 拓

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『どうする家康』
第17回「三方ヶ原合戦」

|

« プレイバックおんな太閤記・(14)信長の手紙 | トップページ | プレイバックおんな太閤記・(15)秀長の恋 »

NHK大河2023・どうする家康」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« プレイバックおんな太閤記・(14)信長の手紙 | トップページ | プレイバックおんな太閤記・(15)秀長の恋 »