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2023年4月14日 (金)

プレイバックおんな太閤記・(12)城主の妻

天正3(1575)年、春。秀吉が琵琶湖東岸の今浜に築城中だった新しい城が完成し、ねねも岐阜から移り住む日が来た。名実ともに江北三郡を領する今浜城主・羽柴筑前守秀吉のご内室として、迎え入れられることになったのである。ひたすら秀吉の元に急ぐねねの胸に、新しく始まる“城主夫人”への不安と一緒に、過ぎ去った日々の数々の思い出がよぎっては消えていた。

孫七郎と輿に乗っているともは、海が見える! と感嘆の声を上げます。琵琶湖でございます とみつが教え、美しく大きい湖に信じられないという表情です。歩き通したねねも琵琶湖の美しさに疲れを忘れるほどです。みつは秀吉の妻として輿に乗るように勧めますが、ねねは固辞して再び歩き出します。「あのようなものに押し込められているより、こうして歩いて行ったほうが楽しい。気も楽じゃ」

今浜の城にたどり着き、その立派な姿にねねはとても驚きます。到着が遅いとおろおろする秀吉を秀長がなだめている中、到着の知らせが入り、秀吉は出迎えに向かいます。侍女がねねに目もくれず、輿の中に労わる言葉をかけていてみつは慌てますが、秀吉はかまわずねねを出迎えています。ねねは秀吉がひげを生やしているのがおかしいらしく、輿から出てきたともも「ほんにまぁ偉そうに」と笑っています。

秀吉はねねが岐阜から歩いてきたことに大激怒ですが、ねねには何が不都合なのか理解していません。先に城に入っていたきいや、弥助があいさつに来てくれ、兄弟が揃ったのだから一緒に夕餉をと、厨(くりや=台所)の場所を尋ねるねねですが、イライラが募っている秀吉は下働きの者たちがするからと声を荒げます。ちなみに嘉助も弥助も、秀吉の引き立てで侍大将に昇進し、屋敷を別に与えてもらっています。

身の回りをお世話するこほとすえを紹介され、促されるままに着替えに向かうねねです。人前で着物を着替えるのは初めての経験で、ねねはとても困惑します。こほも負けてはいませんで、これが私たちの務めと、ねねから着物を預かろうと必死です。素早く動ける小袖で暮らしてきたねねには、床をずるずると引きずる打掛は歩きにくいです。「このようなものは性に合いませぬ」と涙目です。

大広間に案内されると、家臣たちがこぞって頭を下げており、ねねは度肝を抜かれます。12万石の城主の妻という重みに、ねねはこの時初めて分かったわけです。そして驚きだったのは、ねねの母の兄にあたる木下家次と、ねねの兄の木下家定も城に来ていることでした。2人とも秀吉の一門衆として支えることになります。杉原家から浅野家へ養女として出たねねには、いい相談相手になりそうです。

廊下を進んでいると、庭に平伏する小姓が2人います。「お方さまァ!」という声に振り返ると、武士になりたいと中村から預かったイチとトラです。まあ! と懐かしい顔にねねの表情も緩みます。今は弓や槍、剣術や学問などで毎日を過ごしている2人に、早く大きくなって秀吉のために活躍なさいと言葉をかけます。

部屋に戻って小袖を脱ごうとするねねですが、座る間もなく侍女たちが挨拶すると控えているらしく、求めに応じて出ていかざるを得ません。そこには侍女たちが6人居並んでいまして、圧倒されたねねは「私にはあささんさえいてくれたら」と、岐阜に移り住んだころから支えてくれたあさを見ますが、奥向きのことは不慣れゆえと、あさはこほが預かることにします。

 

明け方、ようやく秀吉が帰ってきました。ねねはあまりに心細くて、寝ずに秀吉の帰りをずっと待っていたわけです。秀吉の身体を案じるねねですが、今はようやく2人きりになってギュッと抱きしめます。秀吉は今浜を、長く栄えるように「長浜」と改めることにし、信長にあやかった名前に ねねも賛成です。長浜が栄えるように商人や職人たちを集め、岐阜に劣らぬ栄えた街にしたいのです。

城から眺める夜明けです。雲の切れ間から差し込む朝日が実に素晴らしいです。「私はこのお城で何をして暮らしてゆけばいいのか分かりませぬ」と表情を曇らせますが、秀吉は、城主の妻としての役割があり、やることは山ほどあるとねねを諭します。たしなみは家次に指南を受け、宮仕えをしていたこほに礼儀作法を習わせることで、秀吉はねねに誰にも劣らない城主の妻になってもらいたいわけです。

朝、たすき掛けをしたねねは、秀吉と秀長が摂る食事は自分が吟味すると厨に向かいます。京風に仕立てた薄味だと分かると、尾張出身だからと濃いめの味付けを勧め、魚や鶏なども好みを助言して回ります。米を炊く火が弱いと小枝を足でポキンと折り、侍女たちが呆気にとられる中、ねねはあちらこちらとせわしなく動き回っています。

こほは、下々の者が迷惑するとねねをたしなめますが、城主の妻であっても変わらないとねねは譲りません。とはいえ侍女たちに気を遣うのはとても疲れるわけで、“人を使うは使われる”という心境です。前田利家とまつ夫妻がお祝いに駆け付けた時も、お召し替えを勧めるこほを押しのけて、対面所へ急ぐねねの後姿を見て、こほは大きくため息をつきます。

利家は城下の賑わいに舌を巻き、町おこしの才覚があると秀吉をべた褒めです。まつは、ようやく落ち着いたのだからそろそろお子をとねねに勧めます。そういうまつは年末に5人目の子どもを出産予定で、1人ぐらいいただきたいものだとねねは冗談を言いますが、次に生まれてくる子が女の子ならと、利家の提案で秀吉の養女にすることに決めます。

 

「秀勝! ここがそなたの父さまのお城じゃ!」 平和な春をたちまち嵐にするような出来事が舞い込んできます。千種とその子秀勝が輿に乗せられて長浜に到着したのです。あたりを気にしながら秀吉が対面所に向かい、久々の再会を喜びます。これまで2人に金銭援助していた秀吉が、長浜城主になるにあたり2人を呼び寄せたようです。秀吉は秀勝を抱きかかえ、大きくなったと目を細めます。

秀長は妻子を迎え入れたことに反対です。いちいち許可をとらねばならない話でもないし、秀勝は自分の後継者だと秀吉は主張します。ねねの心中を察するに余りあると、秀長はねねに知れる前に城下のどこぞへ退出させるよう秀吉に求めます。「おかかはおかかじゃ。じゃがの、おかかには子ができぬ」 目を見開いて反発する秀長に、今は女のことどころではない! と言葉を浴びせます。

ねねはこほの横で手習いの最中です。庭にイチとトラが現れ、こほがみだりに立ち入るなとたしなめますが、ねねに伝えたいことがあるようです。そこに剣術指導の佐竹進之介が2人を連れ戻しに現れます。首根っこを掴まれて連れ戻されていく中、秀吉の側室が来たとイチとトラは訴えています。思わずこほの顔を見るねねですが、こほは目を伏せてしまいます。

たかが子どものウワサであり、信じるに足らないと分かった上で、秀長を呼び立てたねねは事情を聞きます。それまで口を真一文字につぐんでいた秀長は、ねねに促されてようやく重い口を開きます。秀吉が京都奉行をしていたころに千種という公家の娘と出会い、小谷攻めで横山城に詰めていたころに秀勝を儲けたと打ち明けます。ねねは耳を塞いで声を震わせます。

ねねは秀吉が望むようにお仕えできなかったと自分を責め、子も産めない女が大きな顔をしているのが間違いだったと涙を流します。「今はただ、いさぎようお暇いただきましょう」 秀長は必死に止めますが、女として誇りがあるというねねは、秀吉に会わずに去りたいと出ていこうとします。居室を一歩出ると、その眼下には琵琶湖が広がっていて、結婚して14年の幸せな日日が走馬灯のように駆け巡ります。

長浜城の城門前になかが現れます。はるばる中村からやってきて、断りなく城内に入ろうとして門番に止められますが、ちょっと見たぐらいで減るもんじゃなし、と聞きません。「藤吉郎に会いに来たんじゃにゃーで」との言葉に門番は大笑いしますが、それでもなかが強引に入ろうとするので、門番2人がなかをかかえて外に追い出します。

そこに通りかかったのが、長浜から出ようとするねねとみつでした。もしや? と思って声をかけると、やはりなかでした。ねねが「お方さま」であるとみつに教えられ、門番は慌てて平伏します。ねねはなかがどうしてここにいるのか驚きですが、なかも旅支度のねねに驚きです。なかの笑顔に、これまでの思いがあふれて、なかの前で号泣してしまいます。「わしゃ…とんでもにゃあとこに来あわしたらしいの」

できた女のようでも、やはりねねも普通の女であった。秀吉を信じてついてきただけに、その裏切りは許せなかった。誰にぶつけることもできぬ怒りと哀しみを、ねねはなかの胸で思いきり涙にして流した。秀吉は千種の居室で、背中に秀勝を乗せてお馬さんごっこをして遊んでいます。ねねの哀しみは秀吉には届いていません。


天正3(1575)年、完成した今浜城に羽柴秀吉が入城し、今浜を長浜に改名する。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと28年──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (羽柴秀長)
音無 美紀子 (まつ)
津島 恵子 (こほ)
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滝田 栄 (前田利家)
長山 藍子 (とも)
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前田 吟 (蜂須賀小六)
尾藤 イサオ (浅野長政)
赤木 春恵 (なか)
西田 敏行 (羽柴秀吉)
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制作:伊神 幹
演出:富沢 正幸

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第13回「世継秀勝」

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