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2023年5月21日 (日)

大河ドラマどうする家康・(19)お手付きしてどうする! ~三方ヶ原の傷あと 信玄の遺言~

元亀4(1573)年4月12日・信州駒場──。桜が乱れ散る中、大木に寄りかかる武田信玄は「今日は気分がいい」とつぶやきつつ、自分の死期が迫っていることを感じ取っています。武田勝頼には、信玄は織田との決戦に備えているとうわさを流させ、3年の間は自分の死を秘密にしておくことと遺言します。信玄はとても悔しそうに「ここまでか……」と天を仰ぎます。

勝頼は信玄の遺志を継ぐと約束しますが、わしの真似をするなと信玄は止めます。勝頼は信玄自身の器量をはるかに超えると太鼓判を押します。「そなたはわしの全てを注ぎ込んだ至高の逸材、黄泉(よみ)にて……見守る」と信玄は息を引き取ります。
生者必衰 会者定離……と、信玄が没したところで琵琶法師がその死を悼みます。

3年の間は秘密にせよといわれた信玄の死はすぐに伝わり、遠江・浜松城にも届きました。「天は我らに味方した」と鳥居元忠は大喜びですが、敵とはいえ人の死を喜ぶとは何事か! と家康は注意します。本多忠勝は、これをいい機会に武田に奪われた所領を取り返しにかかろうと進言し、家康は家臣たちに各地の内情を探るように命じます。

石川数正は、家康が懐に忍ばせている木彫りの摩利支天(軍神)のおかげだとつぶやき、家康はそれをじっと見つめますが、その脳裏には三方ヶ原での激戦が思い出され、信玄が語った「弱き主君は害悪なり。滅ぶが民のためなり」との言葉もよぎります。
そのころ三河の岡崎城では、瀬名の指導のもと、亀姫が花を生けています。うん、上手! と言われ、亀姫はホッとした表情を見せます。

 

武田信玄死す。その噂はまたたく間に各地を駆け巡ったのでございます。即座に反転攻勢に出た織田信長は、敵対する勢力の駆逐を開始。京・山城国槇島城で、信長は15代将軍足利義昭の首元に刀を突きつけ「去れ」と突き放しますが、自分が天下人であると主張します。義昭は明智光秀に信長らの排除を命じますが、「奸賊、足利義昭を追放せよ!」と連れ去ってしまいます。

北近江・小谷城に突入した羽柴秀吉はお市母子と対面します。お市が浅井長政と自害していたら自分の首も飛ぶところだったと秀吉はニヤリとしますが、長政から娘たちの養育を頼むと言われて生きて城を出ることにしたのです。お市の髪に触れようとする秀吉の手を払い、気安う触れるな、サル! と平手打ちしますが、「サルじゃねえて、羽柴秀吉だて」と言って、お市の長女・茶々を連れて行ってしまいます。

無論、我らが神の君も、この間 ひとときも気を抜かず勇猛果敢に……。たくさんの書を読み、剣術を鍛錬しますが、脳裏をよぎるのは三方ヶ原の無残さでありまして、家康にとってはそれだけ辛い、ひどい戦いだったようです。

 

家康が風呂に入り、下男が湯を次々と入れています。下男が小休止に腰かけると、代わると言ってお万が湯殿に入っていきます。髪を梳いてもらいながら、家康はお万に気力が出ないと気持ちを吐露します。「殿の日ごろの行い、お優しいお心……殿は天人さまのように輝いて見えます」とほほ笑むお万の顔が間近にあり、家康は「もうよい」とお万を下がらせます。

別の日も、家康が風呂に入る時にはお万は率先して世話に向かうのですが、薪を落としたりやけどをしたりで、家康からもその迂闊さを笑われます。いつものように髪を梳いていると、家康が気づけばお万の顔がすぐ近くにあり、気まずくなった家康はまたお万を下がらせるのです。

岡崎城では、折り入って話があると信康に呼ばれた瀬名は、家康のもとで暮らしては? と五徳に勧められます。瀬名は五徳に「私は邪魔か?」と思い切って尋ねますが、五徳は瀬名が優しすぎるゆえに信康に甘さが抜けないと指摘します。「信康さまをわが父にも劣らぬ強い強い大将にいたしとうございます」 瀬名が浜松へ行かなければ家康によからぬ虫がつくかもしれないと、五徳なりに心配しているのです。

入浴のたびに髪を梳きましょうかと迫って来るお万に、家康はオロオロして返事もできません。お万は髪を梳きに自ら湯殿に入り、家康とお万の距離は急接近します。

 

服部半蔵が家康の元に戻って来ました。医師に見せたところ、お万が身ごもったのは間違いなさそうです。子が増えることは徳川家にとっては喜ばしいことだと言う半蔵ですが、瀬名が承知していないのであれば「まずいことではないということではないでしょう」と、大変な騒動になる懸念を伝えつつ、家康のやらかしに笑いをこらえきれません。

そんな時、瀬名が浜松に向かっているそうです。すぐにでも瀬名をここに! と言いつつ、お万のことを思い出して口ごもってしまう家康ですが、まだ内情を知らない石川数正や酒井忠次は怪訝な表情を浮かべます。言うなら今ですぞと家康を促し、お万のことを聞いたふたりは「信長が敵を蹴散らしている時に殿は何を!?」と大激怒です。

「父を見損なった!」と、書状で仔細を知った信康も激怒し、五徳は だから言わんこっちゃないという表情です。そこに入って来た亀姫は、父に虫がついたと五徳に言われて「毛虫ですか? 芋虫ですか?」と尋ねる辺り、まだ何も知らない無垢な少女という感じですが、言わんでよい、と瀬名は五徳をたしなめつつ、浜松に行って家康に直々に聞いてみることにします。

家康家臣団の酒の席でも、お万のことでもちきりです。お万とは、知立神社の神主・永見家の娘で、瀬名に仕えていたおっとりした侍女です。そこに家康が入ってきて「何をしておった?」と尋ねますが、大久保忠世や鳥居元忠らは、武田勢を叩かねば! とごまかします。そこに瀬名が岡崎から到着し、家康は不在ということにしたがっていましたが、逃げる間もなく瀬名が大広間に姿を現します。

家康の顔を見るなり、ウフフと笑みを浮かべる瀬名に、ごまかしたい家康は「やあ」と手を上げますが、あほたわけ! といきなり怒鳴られます。逃げ惑う家康に向かって物を投げつける瀬名ですが、家臣たちも瀬名に投げるものを次々と手渡していて、完全に家臣団は瀬名の味方になっています。

家康は瀬名と一対一で話し合うことにします。側室を持つなとは言わないが、瀬名のあずかり知らぬところで次々と子どもを作られたら、正室としての立場がない! と主張します。思わず手を上げる瀬名ですが、瀬名の気持ちを抑えるためにも 打(ぶ)てと家康が言い、瀬名は即座に家康のほほを打ちます。瀬名はお万と話してくると言って立ち上がります。「わたくし、お万も打ってしまうかもしれませんから」

侍女仲間に逃げるように手を引かれるお万は、自分を木にくくりつけてほしいと言い出します。そしてお万のもとを訪れた瀬名は、その姿を見るや深いため息をつきます。「万は……大変なことをしてしまいました」と、瀬名に折檻してほしいというのです。

瀬名は、お腹の子には罪はないとつぶやきますが、お万が子どもを生めば徳川家が乱れてしまうと悲しそうな表情を浮かべます。途端に笑い出した瀬名は、おっとりしたつつましいお万が才ある子だと感心し、見事だと褒めます。「殿から金子をふんだんにいただくがよい」と、その金で生まれてきた子を育てるように諭します。

「恥じてはおりませぬ」とお万はつぶやき、多くの家臣たちを亡くし心が疲れ切っていた家康を慰めたまでだと主張します。男たちは己の欲しいものを手に入れるために戦をし、人を殺して奪うが、女は人に尽くし、癒しと安らぎを与えて手に入れるものだというのです。男たちに戦のない世など作れるはずがないと考えていたお万は、「政も女子がやればよいのです」と瀬名の背中を押します。

ここへ来ることも、皆の前に姿を現すこともないとつぶやき、産んだ子は家康の役に立つ子に育てると表明して、深々と一礼したお万は瀬名の前を辞し、浜松城から出ていきます。

 

気が緩んでいたと瀬名に謝る家康ですが、瀬名は家康の心中を慮り、大変な時に支えることが出来なかったことを詫びます。わしの側にいてくれないかとの家康の問いかけに、少し考えた瀬名は「ここへ移るのはもう少し先に致します」と答えます。もう大人だという信康も五徳もやっぱり子どもで、瀬名はそちらの方が心配なのです。

気を緩めているゆとりなどないと忠次は諭し、遠江の民は家康をバカにして楽しんでいると伝えます。
現にだんご屋の老婆は、三方ヶ原から逃げ帰るとき、だんごをすべて食べてしまった家康を追いかけて銭をふんだくってやった! という話をし、ある男は信玄が恐ろしくて馬上でクソを漏らして焼味噌だとごまかしたと言いふらし、井伊虎松は聞いていられないと立ち上がって出ていきます。

信玄が愛した武田不動尊(不動明王)の前で座禅を組む勝頼は、三河を手に入れるとつぶやきます。「狙うは岡崎、松平信康! そしてその母、築山殿じゃ」


元亀4年(1573)年7月18日、信長軍が槇島城を包囲し、義昭は降伏する。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと29年6ヶ月──。

 

作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (徳川家康)

有村 架純 (瀬名)

北川 景子 (お市の方)

岡田 准一 (織田信長)

大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
板垣 李光人 (井伊虎松)
小出 伸也 (大久保忠世)
細田 佳央太 (松平信康)
松井 玲奈 (お万の方)
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眞栄田 郷敦 (武田四郎勝頼)
田辺 誠一 (穴山信君)
酒向 芳 (明智光秀)
橋本 さとし (山県昌景)
柴田 理恵 (老婆)
古川 琴音 (千代)
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ムロ ツヨシ (羽柴秀吉)
山田 孝之 (服部半蔵)
古田 新太 (足利義昭)
松重 豊 (石川数正)

阿部 寛 (武田信玄)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:堀内 裕介・国友 茜
演出:加藤 拓

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『どうする家康』
第20回「岡崎クーデター」

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