大河ドラマどうする家康・(21)長篠を救え! ~走れ強右衛門! 武田包囲の城に織田・徳川分裂~
岡崎城の築山御殿に現れた歩き巫女の千代は、徳川は風前の灯火で織田も助けてくれないと、瀬名の苦しい胸中を察します。瀬名はそれには答えず、夫を戦で亡くし子もいない千代を見つめます。「あなたから幸せを奪ったのは、本当はどなたなのかしら」 徳川や武田など関係なく、自分と千代が手を結べば何か大きなことができると諭しますが、いらぬことを話してしまいそうで、千代はそのまま帰っていきます。
千代と入れ替わりに亀姫が駆け込んできます。表に熊のような猿のような男が倒れていて、死んでいるかもしれないと思った亀姫は小石を体にぶつけて様子を見てみますが、特に反応はなく。岩を振り上げた時、その姿を見上げた男は声を上げてのけぞります。なんでもその男は飯を食わせてくれと頼んでいるそうで、瀬名は山盛りの飯を食わせてやり、着物を与えます。
その前日。ここは対武田の最前線、奥三河・長篠城。この時、武田軍に包囲され落城寸前。城主の奥平信昌は徳川の援軍を待ち続けておりました。食料も底を尽き、何とか食べられるものは奪い合うありさまの城内で、信昌は徳川の援軍が来るからと兵たちを励ましますが、家臣の鳥居強右衛門(すねえもん)は投げやりになっています。「来るもんかて。長篠は見捨てられたんだて」
武田を裏切って徳川方についた信昌はもはや武田には戻れず、徳川を頼るしかありません。呼んでまいりましょうか、と強右衛門は挑むようなまなざしで信昌を見据えます。岡崎城に走り、食料がない窮状を訴えるのです。しかし他の兵たちに、逃げて武田に戻るつもりだと非難されてしまいます。
強右衛門の動きと目的は即座に武田方に察知されますが、武田勝頼は徳川家康を引きずり出すために、あえて捕らえずそのまま岡崎へ向かわせることにします。そうとも知らずに強右衛門は、少しでも敵の目から姿を隠すため、川に潜って泳いで岡崎へ向かいます。こうして岡崎へたどり着いた強右衛門に、家康や家臣たちは大騒ぎです。運命の長篠の戦いが迫っておりました。
家康小姓の(虎松改め)井伊万千代は、武田から徳川へ寝返った奥平を見殺しにすれば徳川の信用は失墜すると主張しますが、小姓が口を出すなと家康にたしなめられます。鳥居元忠は長篠を助けなければとうろたえますが、迂闊に手を出せば三方ヶ原の戦いの二の舞になると石川数正は危惧します。平岩親吉は信長を頼る案を出しますが、水野信元や佐久間信盛あたりをよこしてあしらわれるのが関の山です。
翌朝、やはり派遣されたのは信元と信盛でした。信長も天下のことで手いっぱいと信元が弁明すれば、徳川だけの力でなんとかできると信盛は根拠なく言うばかりで埒があきません。手を切る、と家康は目を見開きます。「武田勝頼と組んで信長を攻める! そう伝えよ!」 信盛は、本当に伝えていいのか何度も確認を取りますが、家康は食い気味に信盛に伝えに向かわせます。信元は慌てて信盛をなだめます。
岡崎城に地鳴りが響き、何ごとかと見て見ると、街道は2~3万の織田軍に埋め尽くされていました。自分だって脅せばこんなもんだと家康は笑顔を見せます。亀姫に握ってもらった大きな握り飯をほおばる強右衛門は、信昌のすばらしさを亀姫に伝え、殿をよろしくと頭を下げます。話を聞いて頷いていた亀姫は、なんだかよく分からない展開に「はあ……は!?」とびっくりします。
さっそく岡崎城に入った信長は片膝をついて遅参を詫び、信康と瀬名に丁寧にあいさつを交わします。父を前に固まる五徳ですが、五徳がわがままを言えば遠慮なく折檻をと瀬名に伝え、みないつもとは違う雰囲気に場が凍り付き始めます。信長は亀姫にも声をかけます。長篠城が持ちこたえているのは亀姫のおかげと笑みを向けた信長は、いずれ戦が終わったら一日も早く奥平の元に行くよう勧めます。
時が惜しいからと数正に促され、信長は軍議の席につきますが、上座は総大将である家康に譲り、次席に腰かけます。羽柴秀吉は上座に家康を誘いながらささやきます。「気ぃつけやーせ……お怒りでごぜぇますぞ」
厨では、信長の言った“亀姫のおかげ” “奥平どののもとへ行く”という真意を瀬名に尋ねます。強右衛門も妙なことを言っていました。近づいてきた五徳は、亀姫が奥平に輿入れするという意味だと説明します。瀬名もうすうすそういうことなのかもしれないと感じ取っていましたが、いきなり降って湧いたような話に困惑を隠せません。
本多忠勝が策を献上し、秀吉は皮肉なほどにその策を持てはやします。軍議も終わり、膳の支度をさせているのでと案内する酒井忠次ですが、信長は何も言わず立ち上がって去っていきます。元忠は「信長のくせにつつましくしおって」と愚痴を言いますが、そもそも怒りの根源が筋違いだと榊原康政は言ってのけます。
瀬名に問いただされた家康によると、武田を見限った信昌に見返りとして信長が決定したようです。なぜ話してくれなかったのかと瀬名は家康を問い詰めます。五徳によれば長篠とは山の中で、強右衛門のように毛むくじゃらの者がたくさんいるそうで、亀姫は完全に怖がってしまいます信長が勝手に決めた縁談であり、信康も亀姫の輿入れには大反対で、家康に今日この場での断りを迫ります。
酒宴の席で酌をする亀姫に秀吉は「奥平どのがうらやましいが!」と笑いますが、それをきっかけに信康は、信長に亀姫の輿入れの件を考え直してほしいと談判します。家康も、亀姫の件は徳川の事がらなのでこちらに任せてもらいたいと口添えすると、信長はあっさりと非を認めます。「オレの指図できる事がらではなかった。勝手に話を進めてすまなんだ」
信長の命を受けて、秀吉は今回限りで織田家は、清州以来の徳川との盟約を切ると発表します。驚きを隠せない家康と家臣たちですが、そもそも手を切ると言う話は家康が望んだことです。今後は臣下になれと脅す信長に反発する家康ですが、これも先に脅してきたのは家康です。ぐうの音も出ない展開ですが、それでも家康は信長の手を借りず多くの犠牲を払ってこの手で守って来たと訴えます。
信長は完全に徳川から手を引くつもりで、五徳とともに帰ることにします。遠くで推移を見守っていた強右衛門は長篠を救ってほしいと懇願しますが、信長は聞き入れません。亀姫は信長の元に駆け寄り、手をつきます。「わがままは申しませぬゆえ、どうか仲直りを……亀は奥平どののもとへ喜んでまいります!」
瀬名も亀姫の横で手をつき、臣下を拒むものではなく話し合いの猶予をもらいたいと家康に代わって説明します。これはこれとして、まず先に長篠を救うことを勧めます。信長は亀姫の肩に手を添え、ほんの余興だと笑います。「無論、長篠は助ける」との信長の言葉に、強右衛門は感激のあまり泣き出しますが、一刻も早く長篠城に伝えてやりたくて強右衛門は急いで戻っていきます。
強右衛門は武田の兵に遭遇しても押し倒し、矢板を倒しながら必死に走っていきます。「徳川さますぐに参らっせるぞ! 織田さまの大軍勢と一緒だわ!」長篠城にたどり着いた強右衛門の報告で、城内は大いに沸き立ちます。強右衛門が名前を呼ばれて振り返ると、そこに亀姫がいました。亀姫は強右衛門の胸に飛び込みます。
……と思ったら、強右衛門が飛び込んだのは武田の兵でした。気が付くと武田の兵に取り囲まれていた強右衛門は捕らえられてひどい折檻を受けます。目の前に現れた勝頼は、“助けは来ぬ、徳川は長篠を見捨てた”と長篠城に向かって叫べば命は助け、忠義者である強右衛門は武田で召し抱えると誘惑します。
長篠城の目の前に単身現れた強右衛門、霧に囲まれて遠くからは見えませんが、その周囲を武田の兵が取り囲んで見守っています。強右衛門は勝頼の指示通り徳川に見捨てられたと叫び、勝頼の前にトボトボと戻ります。勝頼は軽蔑したような眼を向け、黙って去っていきます。強右衛門は家来から約束の金を与えられます。
強右衛門は長篠城の方を振り返りますが、家来に掴まれた拍子に金を落としてしまいます。強右衛門は泣きながら金を拾うのですが、自身の手を見て亀姫を思い出した強右衛門は、家来たちの目を盗んで長篠城の前までかけ戻ります。「徳川さまはすぐに参らっせるぞ! 持ちこたえろ! 持ちこたえるんじゃ!」 強右衛門は武田の兵に見つかり、連れ去られて信昌たちの前ではりつけにされます。
ろくでなしだと 人は言う
知恵なし才なし 武功なし
なんもなくとも 強右衛門
走れ 走れ 強右衛門
走れ 走れ 迷いなし
その歌を歌ったとき、亀姫はおもしろがって笑ってくれました。それを思い出した強右衛門は信昌に叫びます。「徳川の姫君はな、麗しい姫君さまじゃ! ようごぜぇましたなぁ! 大事にしなされや!」 強右衛門を取り囲むたくさんの槍部隊が矛先を彼に差し向けます。信昌に注がれていた強右衛門の笑顔からみるみる笑みがなくなり、手もだらんと落ちます。ダーンと串刺しにされて落命したのです。
岡崎城の強右衛門が囚われていた跡を、亀姫が見つめていました。誰もいないはずなのに、カランカランと鳴子が鳴ります。長篠城では強右衛門の武功に応えて、強右衛門の磔にされた姿を旗に描いて城内に掲げます。戦の主導権を握った信長は、広げられた地図を払いのけます。「これより我が策を示す!」
天正3年(1575)年5月16日の早朝、長篠城救援に出撃体制だった織田軍の報告をするため、鳥居強右衛門が長篠城の目前まで戻ったところで、武田軍に見つかり捕らえられる。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと27年9ヶ月──。
作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (徳川家康)
有村 架純 (瀬名)
岡田 准一 (織田信長)
大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
板垣 李光人 (井伊万千代)
小出 伸也 (大久保忠世)
岡部 大 (平岩親吉(七之助))
細田 佳央太 (松平信康)
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眞栄田 郷敦 (武田四郎勝頼)
寺島 進 (水野信元)
橋本 さとし (山県昌景)
立川 談春 (佐久間信盛)
古川 琴音 (千代)
白洲 迅 (奥平信昌)
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ムロ ツヨシ (羽柴秀吉)
田辺 誠一 (穴山信君)
松重 豊 (石川数正)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:堀内 裕介・国友 茜
演出:川上 剛
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『どうする家康』
第22回「設楽原の戦い」
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