大河ドラマどうする家康・(24)築山へ集え! ~瀬名と武田が接近!! 家康は苦渋の選択~
「そなたが命を懸けるべき時は、いずれ必ず来ます」という母・巴の遺言や、「男どもに戦のない世など作れるはずがない。政も女子がやればよいのです」というお万の言葉が、瀬名の脳裏をかすめます。顧みれば、主を裏切り武田と内通した大岡弥四郎や、人が変わったように凶暴になる嫡男松平信康の姿を思い浮かべると、確かにそうだなという場面は数多くあります。
岡崎と信康を救えるのはあなただけ──。千代に背中を押された瀬名は、これまで胸に秘めてきた考えがあると信康に打ち明けます。「すべてを懸けて、それをなす覚悟ができている」 そうして築山御殿に招いたのは、千代と唐の医師・滅敬です。その姿を見て、瀬名はニヤリとしています。
千代と滅敬(=穴山信君)が甲斐に戻り、武田勝頼に「信康と築山殿(瀬名)を調略して岡崎は武田の手に落ちた」と報告します。これで織田と徳川は分断できると勝頼は喜びますが、千代も信君も困惑気味です。信康も瀬名も武田と手を結ぶことを望んではいますが、瀬名はなかなか不思議なことを話すというのです。瀬名のその笑顔の奥には、どんな考えがめぐらされているのか、さすがの千代でも読み取れません。
三河・岡崎城では、生まれたばかりの登久(とく)姫を侍女にあやさせながら、五徳は信康の所在を平岩親吉に尋ねます。瀬名が煎じた薬がよく効き、信康も落ち着いて政務に当たれるとかで、信康は築山へ入り浸っているわけです。五徳は様子を見に行きたいと言いますが、傅役(もりやく)である親吉ですら築山御殿へ入れてもらえないと寂しそうな表情を浮かべます。五徳は信康と瀬名にますます疑念を抱きます。
──ご息災でございましょうか。憂い事あらば、どうぞこの瀬名を話し相手にしてくださいませ。さまざまなことを語り合いとうございます。世のこと、国のこと、そしてこの先の夢のことを。築山に集いたまえ──
そうしたためた密書を男に託し、方々へ送る瀬名は、任務を受けた男の背中をじっと見つめて見送ります。
信康が築山御殿に入り浸っていることは、親吉から浜松城の酒井忠次に伝わり家康に報告されますが、家康にさほど気にする様子はありません。子飼いの家来たちで守りを固めており中の様子が分からず、築山からあちこちに密書が送られていることも判明しますが、武田の間者とおぼしき身元の分からない者たちが築山へ忍んで訪問していると言っても、家康は裏切りなど信じたくないわけです。
民の声を聴くために作られた築山御殿が「怪しげな連中がうごめく『調略の砦』」と、榊原康政はズバリ指摘します。岡崎が浜松から離反することだけは避けなければならないと、石川数正は難しい顔です。妻と息子を信じると声を絞り出す家康はですが、信じれば落着するような簡単な話ではありません。忠次は、信長の耳に入る前にどうにか手を打たねばと勧めます。
信長から“鷹狩り”の呼び出しです。心配通り、すでに五徳から信長へ話が伝わってしまったようです。慌てて駆けつける家康ですが、信長は水野信元のようなこと(誅殺)は最後にしたいと、静かに圧力をかけて家康をギロリと睨みます。家康に従って“鷹狩り”にやって来た忠次は、「手を打ちましょう」と焦りをにじませます。
家康の義弟・松平源三郎勝俊を救出する際に腕に大けがを負い、懸命にリハビリに励む大鼠ですが、完治にはほど遠い状態です。大鼠は服部半蔵に「仕事を寄越せ」と言いますが、自分が命じた忍び仕事でけがを負ったこともあり、半蔵は女としての幸せを進むように諭します。求婚のつもりか、半蔵が差し出した一輪の花を「殺すぞ」と言ってムシャムシャ食べだした大鼠の意外な反応に、半蔵は言葉を失います。
築山御殿に信康と山田八蔵が入ってきました。人払いを命じられた八蔵は、庭師や侍女たちに下がるように伝えます。庭師は膝をついて頭を下げますが、包まれた握り飯を床下に投げ入れます。そっと手を伸ばしてそれを食べていたのは大鼠です。その探索の甲斐もあり、家康は築山に、滅敬と名乗る武田の武将が瀬名に面会に来ている現状が浮かび上がります。
そればかりではなく、於大と久松長家も築山に通っているというのです。於大の兄である信元を斬ってからというもの、家康ら浜松とつながりを断っている於大らが通っているということは、徳川から離反して武田と結ぼうとしているのかもしれないと数正は家康を見据えます。さらには滅亡して北条の庇護を受ける今川氏真・糸夫婦までも現れ、家康の想像以上に離反の根は深く、広くはびこっています。
瀬名と信康が滅敬と千代と面会しているとき、何かを感じ取ったのか千代は刀を床に突き刺します。そこで初めて大鼠が床下に潜っていたことが明らかになるわけですが、大鼠と千代はにらみ合います。源三郎救出の時を彷彿(ほうふつ)とさせる対決になりかけますが、大鼠はそのままじりじり引いて逃亡し、今回の報告につながったわけです。家康は数正らに兵を集めるように命じます。
家康は井伊万千代に、瀬名と信康に気づかれないように大樹寺に兵を集め、築山を襲撃するように命じますが、築山と聞いて側室のお愛の方が反応します。書物が好きな瀬名に伊勢物語を貸してあげよう! と本を探しにいくお愛の呑気さに、家康も万千代も無反応ですが、その内心は相当ハラハラものだったでしょう。お愛が去った後、顔を見合わせる家康と万千代です。
大樹寺に重臣たちが集まります。俄然やる気の本多忠勝ですが、勝手に動かないように忠次がたしなめます。滅敬が築山御殿に入ったと聞き、家康と数正、忠次の3人が踏み込もうとしますが、そこに五徳が現れ連れて行ってくれと懇願します。信長に知らせねばならないが、本心は信康を慕っていて報告などしたくはないのです。家康は五徳を連れて御殿に向かいます。
御殿に踏み込む家康に、瀬名は待っていたかのように出迎えます。そして背後に立っているのが信君と数正が気づくと、家康は「武田にたぶらかされるとは何事じゃ!」と刀に手をかけます。もはや信康の鎮める声も家康の耳には届かないほどに立腹していますが、瀬名はいたって冷静に「殿、お話を」と家康をなだめます。
いろいろな書物を読み漁り、いろいろな人から話を聞いて、瀬名はひとつの夢を思い描いていました。貧しいゆえに隣国と戦をして領土を広げる、これでは犠牲は大きくなるばかりです。米が足りなければ隣国から米を融通してもらう、その代わりにこちらから何かを“あげる”。助け合いの精神です。
それは理屈だし、少なくとも徳川と武田の間ではあり得ない話と忠次や数正は考えます。五徳も、父が許さないだろうとつぶやきます。信康は戦をしないと断言しますが、こちらが戦をする・しないに関わらず相手が攻めてくるわけです。瀬名は、そうならないために長家や氏真の誓書まで得ていたのです。
於大は瀬名の考えに賛同してくれ、たくさんの味方を作って大きなつながりを作ろうと長家は張り切っていました。長家は、つくつぐ戦はこりごりだと考えていたのです。「この謀(はかりごと)なら、この久松、残りの命を捧げられます」
氏真も、そういったことなら今川も役に立つだろうと賛成です。妻の糸は北条出身であり、徳川と武田がそのように結べば必ず乗って来ると太鼓判を押します。
そのような結びつきはもろい、と数正に指摘されますが、銭の力を借りて自由自在に商売して人とモノの往来を盛んにすれば、東国に新しい巨大な国が出来上がるのも同じことだと瀬名は力説します。果たしてそのような巨大な国に信長は戦を仕掛けるのか? 信康も、笑みを浮かべて家康を説得します。「この大きな国は武力で制したのではなく、慈愛の心で結びついた国なのですから」
すべての責めはこの私が負う覚悟──。途方もない謀に家康は言葉も出ませんが、忠次や数正はどこかシラケムードを漂わせています。家康は瀬名を見据えますが、瀬名の決意にあふれる表情を見て、家康も家臣たちに諮ってみることにします。
築山御殿でそのような話し合いがもたれていたと知り、親吉は涙を流して感動しますが、信長に知られてしまえば一巻の終わりだと康政は危惧し、万千代は武田に恨みを持つ者も少なくないと主張します。親吉は、岡崎もボロボロで信康もボロボロだと訴えますが、ともかくみんな、家康が決めたことに従うことにします。
改めて御殿を訪問した家康は、瀬名が途方もないことを考えると半ば呆れています。しかし瀬名は、自分が考え出したというより駿府で初めて会ったときから家康自身も考えていたのではないかと思っています。家康の脳裏に、桶狭間から続けてきた戦の数々がよぎります。初陣の家康に、亡き今川義元も「戦乱の世は終わらせなければならぬ」と言っていました。
甲斐に戻った信君は、このまま戦い続ければ先に力尽きるのは武田の方だと勝頼に報告します。信君は、武田家の生き残る道を模索していたのです。必死の説得にうつむき話を聞いている勝頼、そして彼を見据える千代です。
これからは徳川と武田は戦をする“ふり”をし続けるということで、家康と勝頼の合意が成ります。この合意が外に漏れれば間違いなく織田と戦になる可能性を含んでいます。そして合意のとおり、徳川と武田は軍勢を率いて対峙し、鉄砲を撃ちまくっていますが、狙いを定めたものではなくカラ撃ち(空砲)で、あくまでも見せかけの戦です。
天正7(1579)年、安土城では未だに高天神城を落とせないことに信長は苛立っていました。長篠の戦いで武田を叩き潰したというのに、その武田に勝てないと嘆く佐久間信盛ですが、他人事か! と信長に叱責されます。信盛は徳川の目付なのです。「家康に何かあれば、責めを負うのはお前だぞ」と信長は信盛の首根っこを掴み、信盛は恐れおののきます。
その間にも、家康と信康は戦をどうカモフラージュするか、まるで実戦のようにあれこれとアイデアを出して話し合います。信康は人が変わったように生き生きし、家康は信康の頼もしさを感じています。そして信康と五徳の祝言を思い出した家康と瀬名は、あの時は大変だったと笑いを押し殺します。家康にも、瀬名にもようやく訪れた、一家だんらんの日日です。
どうにか信長の目もくらませ続けられ、つつがなく進んでいる謀ですが、勝頼はふと「(すべてを明るみに出す)よいころ合いかもな」とつぶやきます。信君に命じて、徳川は織田を騙し武田と裏で結んでいるとうわさを流させることにします。実は勝頼には思惑があり、仲良く手を取り合って生き続けるのなら戦い続けて死にたいと言うのです。「信長と家康の中が壊れれば、我らはまた戦える」
信君は必死に止めますが、勝頼の決意は固いままです。信長と家康に戦をさせ、勝頼自身は織田も徳川も滅ぼしてしまいたい、というわけです。この世は戦いであり、戦いこそが我らの生きる道である──。勝頼の夢は、父信玄がなし得なかったことをなすことで、天下を手に入れて信玄を超えることだけなのです。「築山の謀略、世にぶちまけよ!」
瀬名の謀が漏れてしまいました。家康のところに集まる家臣たちですが、みなあまりの衝撃に固まります。そして築山御殿にも信康がかけつけます。瀬名の血の気が引くような表情です。どうする? 家康?
天正7年(1579)年9月、徳川家康と北条氏は同盟を結ぶ。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと23年5ヶ月──。
作:古沢 良太
音楽:稲本 響
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (徳川家康)
有村 架純 (瀬名)
松嶋 菜々子 (於大の方)
岡田 准一 (織田信長)
大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
板垣 李光人 (井伊万千代)
小出 伸也 (大久保忠世)
岡部 大 (平岩親吉(七之助))
細田 佳央太 (松平信康)
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広瀬 アリス (於愛の方)
溝端 淳平 (今川氏真)
眞栄田 郷敦 (武田四郎勝頼)
松本 まりか (大鼠)
志田 未来 (糸)
古川 琴音 (千代)
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山田 孝之 (服部半蔵)
田辺 誠一 (穴山信君)
リリー・フランキー (久松長家)
立川 談春 (佐久間信盛)
松重 豊 (石川数正)
野村 萬斎 (今川義元(回想))
阿部 寛 (武田信玄(回想))
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:大橋 守・釜谷 正一郎
演出:加藤 拓
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『どうする家康』
第25回「はるかに遠い夢」
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