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2023年7月18日 (火)

プレイバックおんな太閤記・(29)お茶々悲恋

天正13(1585)年7月11日、秀吉は関白に就任しついに念願を果たした。しかしその年の暮れ、思いがけない知らせが大坂城に届いた。秀吉の世継ぎ秀勝が丹波亀山城で危篤だというのである。亀山城に駆けつけた秀吉とねね、茶々ですが、秀吉が秀勝の容態を尋ねても、家臣たちは沈んだ様子で返答がありません。異変を感じ取った秀吉は、その寝所に急ぎます。

横たわる秀勝の顔には面布がかけられ、最期には間に合いませんでした。神妙な秀吉が秀勝の枕元で膝から崩れ落ちているのを押しのけ、茶々が枕元に駆け寄りますが、何度名前を呼んでも秀勝は返事をしません。「この世で添えずともあの世でなら誰にも遠慮はいりませぬ」と泣き声を上げる茶々の姿にもらい泣きをするねねですが、秀吉は茶々と秀勝の間に何があったのかの方が気になっています。

気分がすぐれず横になっている茶々のところへ出向いたねねは、額の汗を拭いてあげ白湯を呑ませます。同じ女子として茶々の気持ちも痛いほどわかるねねは、18年の生涯でも茶々と過ごした楽しい思い出を抱いて旅立てたと慰めます。高熱の秀勝は茶々に宛てて書状を近習に書かせていたようで、秀勝の遺言になるとねねは茶々に書状を手渡し、気を遣って部屋を出ていきます。

『お茶々どの 私はもう大坂へは帰れぬ。私にもしものことがあっても嘆いてはくださるな。私は秀吉どのとねねどのに慈しまれ、お茶々どのにも巡り合えた。何も思い残すことはありませぬ。私はこれまでの運命を、今は心やすらかに父上のところへ参ります。私のことは忘れて、幸せになってくだされ』

秀勝の思いの詰まった書状を抱きしめ、茶々は涙を流します。廊下で控えているねねは悲痛そうな表情です。そこに秀吉が茶々の見舞いに訪れふすまを開け放ちますが、茶々を思ってねねは秀吉の腕を掴んで止めます。しかし秀吉はそれに構わず茶々の横にどっかと座ると、秀勝を失った悲しさで涙を流します。

 

秀勝の葬儀も終わりました。あさひは「秀勝」という名前は縁起が悪いと言い出します。最初の秀勝は千種との子で7つで、今回の秀勝は信長の子で18歳で亡くなりました。秀吉の跡継ぎは誰が? とともやあさひは心配しますが、なかは羽柴の家は秀吉とねねがここまで大きくしたのであって、誰が跡継ぎになろうとともやあさひが心配することではないとたしなめます。

秀長は、秀勝を失ったことでこれまで秀吉についてきた信長恩顧の大名たちが離反することを心配しますが、秀吉は自力で関白にまで上り詰めたわけで、もはや信長の威光は必要ありません。秀吉の跡継ぎのこともすぐに決定しなければならないわけではないと、天下の情勢を見極めてゆっくり考えたいと秀長に伝えます。「ただのう、秀勝という名は誰かに継がせたい。秀勝がおらぬと寂しいのよ」

秀勝が亡くなって秀吉に頭を下げる必要はなくなったと家康はつぶやきます。秀吉には西を抑えてもらい、徳川は東を支配する。あくまで天下を二分する存在でいる方が、無益な戦を避けられて得策です。天下を統一したい秀吉にとっては、家康が臣下の礼を取らねば天下統一は達成できないわけで、ただでは済みそうにありませんが、どんな要求であっても知らんぷりをすればいいと家康は涼しい顔です。

秀吉の跡継ぎについても目ぼしい者はいそうになく、養子として秀吉に差し出した家康の次男・義伊が跡継ぎになる可能性もゼロではありません。「関白にもしものことがあれば、徳川に天下が転がり込むかもしれぬのう」 その時まで気長に待つか、と家康は本多正信にニヤリとします。

 

秀吉の世継ぎ・秀勝の死で、慌ただしくその年も暮れ、天正14(1586)年も新春を迎えた大坂城へ、越前から前田利家・おまつ夫婦が訪れた。利家は秀吉の関白就任を祝い、秀吉は越前で佐々成政の謀反を抑えてくれた利家へ感謝の言葉を伝えます。そこに豪が呼ばれ、実父母の利家とまつと対面します。ふたりは綺麗に成人した豪に目を細めます。

利家とまつの子のまあ(豪の姉)におもしろいものを見せたいと、秀吉がまあの手を引き利家とまつを伴って行った先には、部屋の内装から茶器に至るまで黄金で塗り固められた茶室でした。「いかにも関白どのらしい」と利家は仰天しますが、その顔にはどこか白々しさがただよっています。

秀吉はこの黄金の茶室を宮中に運び出し、正親町天皇に茶の湯を献上する予定だと胸を張ります。前年に引き続き茶堂を務めるのは、居士号「利休」を勅賜された千 宗易です。まあに京見物を勧める秀吉ですが、それを黙って聞いている利家の表情は、悔しさで塗り固められたような、まるで般若のように顔を真っ赤に一点を睨みつけたまま動きません。

ねねとまつの対面時、まつはまあを人質として預けに来たと打ち明けます。利家には柴田勝家に従って秀吉に対抗した過去があり、信用を得るためにも人質を出すのは仕方ないとしても、秀吉がまあを側室として迎えようとしているのだけは承服できず、まつはねねにすがってきたのです。側室と聞きねねは声を上げて驚きます。

「秀吉どのがどうあってもおまあどのを側室にと言われるなら……私がお守りいたしましょう」 ねねは、秀吉にはまあに指一本触れさせはしないとまつと約束します。まあはまつの元で暮らすのが一番と考えているのです。私におまかせくださいませ、と言われて、まつは頭を下げます。

秀吉は、秀勝の死で沈む茶々の気持ちを慰めるため、金(きん)で作らせた秀勝の像を茶々に披露します。像を手にした茶々は秀吉の視線をいちいち気にするのですが、秀吉は秀勝のことは早く忘れて明るい茶々に戻ってもらわねばと諭します。そして初とふたりで有馬温泉へ湯治に行くことを勧めます。

秀吉の寝所では、ねねが西洋酒を呑んでいました。思ったよりも早く寝所に戻って来た秀吉に気づき立ち上がりますが、足元がふらつきます。まあのことは大坂城のまつに任せたと告げるねねに激怒する秀吉ですが、ねねはまあの人質同然の扱いに反発します。秀吉は、若いころからの恩ある利家でもけじめは必要だと言いますが、ねねは複雑な表情を浮かべたまま無言でその場を去ります。

久々に戦のない正月を迎えられました。すべては秀吉のおかげですが、副田甚兵衛が秀吉に従ってよく務めたからだとあさひは感謝しています。秀吉はすっかり人が変わったとあさひはため息をつきますが、今が一番幸せの時間を過ごしているあさひは「ゆめゆめ偉うなってくださるな」と甚兵衛に言うと、甚兵衛もあさひがいてくれたらと笑います。

 

天正14(1586)年1月16日、秀吉は自慢の黄金の茶室を大坂城から宮中へ運び、盛大な茶会を催した。信長の子・秀勝の死によって生じた諸大名の動揺を抑えるために、関白の力を誇示しようとしたのである。

黄金の茶室など「いかにも成り上がり者がやりそうなことよ」と家康は秀吉をバカにします。秀吉は家康に対して上洛を再度催促してきていますが、これまで信長の力を借りて天下を治め、秀勝が亡くなれば今度は朝廷の威を借りる秀吉に、家康は一度頭を下げてしまえば今後は秀吉の家臣になってしまうと、子々孫々のためにも頭を下げるわけにはいかないと突っぱねます。

無理に引っ張ってくる必要はないと秀長は主張しますが、150万石の大大名である徳川に頭を下げさせなければ諸大名が従うわけもないのです。秀長は武力で屈服させることを提案しますが、秀吉は家康を敵に回したくありません。お市を浅井長政に嫁がせた信長を参考に、秀吉はあさひを家康の嫁にやると言い出します。「兄者……血迷われたか! ようもそんな無体なことを!」

秀吉もいよいよ追い詰められたと正信は大笑いし、笑い事ではないと家康は正信をたしなめます。正信は戦の覚悟を家康に求めますが、家康は無益な戦だとあさひを人質として迎え入れることを考えます。そうすれば家康は秀吉の義弟にあたるわけで、戦を仕掛けられることもありません。

書状を受け取り、迎え入れるとの家康の返事に、秀長は本気であさひを甚兵衛と離別させて家康に嫁がせるつもりかと反発し、思いとどまるように説得します。しかし秀吉はこのチャンスを無駄にするわけにはいきません。甚兵衛には禄を加増して黙らせればいいし、あさひも150万石の大大名の正室になれて出世できると、いいことづくめだと秀吉は悪いことをしているつもりがないのです。

沈痛な面持ちのまま秀長はねねの居室を訪ねます。ねねは優しく秀長に話しかけると、秀吉が乱心してしまい、秀長ではどうすることもできないと伏し目がちに言います。ねねはその内容を詳しく聞こうと身を乗り出します。


天正13(1585)年、羽柴秀吉は宮中の小御所に黄金の茶室を運び込み、正親町天皇に茶を献じる。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと17年──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (羽柴秀長)
長山 藍子 (とも)
泉 ピン子 (あさひ)
せんだ みつお (副田甚兵衛)
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フランキー 堺 (徳川家康)
滝田 栄 (前田利家)
神山 繁 (本多正信)
岩崎 良美 (豪姫)
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赤木 春恵 (なか)
音無 美紀子 (まつ)
池上 季実子 (茶々)
西田 敏行 (羽柴秀吉)
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制作:伊神 幹
演出:富沢 正幸

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第30回「あさひの別離」

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