大河ドラマどうする家康・(34)豊臣の花嫁 ~秀吉の妹を妻に! 家臣号泣! 数正の真相~
石川数正の妻・鍋は心穏やかに花を活けていますが、ふと自分の置かれた状況を思い出し、目に涙を浮かべています。
天正13(1585)年、羽柴秀吉は公家の最高職・関白に就任。そして石川数正、秀吉の元へ出奔。秀吉は徳川家康に対し、ただちに来てひざまずくよう数正に伝えさせます。従わなければ三河も遠江も焼け野原、という秀吉の脅しに、家康は深く考え込んでしまいます。その出来事は、徳川家中に大きな衝撃を与えました。
三河・岡崎城──。出奔に際し、数正は「関白殿下 是天下人也」という書置きを残していました。数正には何か深い考えがあってのことと酒井忠次はかばい立てしますが、井伊直政は本多正信から書置きを奪い取り、家康を侮辱するものだと反発します。
去った者のことは忘れろと家康は直政をなだめますが、数正が秀吉のところへ行ったということは、徳川の機密情報がすべて秀吉側に流れたと見てまちがいなさそうです。それでも秀吉と戦わなければならない時のために守りを固めるように命じます。正信は軍立てを武田式に改めるように勧め、家康はその役目を直政に命じます。
於愛の方が数正屋敷に残されていた手彫りの仏像を大事そうに抱えています。恐らくは数正が数日かけて彫ったものと思われ、荒削りの仏像に数正の不器用さが表れていていかにも愛らしいものです。しかし家康は顔をゆがめ、持ち込むな、燃やしてしまえと叱りつけます。上洛か戦か、神の君は決断を迫られておりました。
家臣たちの名が記された駒を並べている家康は、そこからはじき出された“石川数正”の駒を見て複雑な表情を浮かべます。ふと顔を上げるとそこに数正が片膝ついて控えています。どうして裏切ったのかと言い寄りますが、数正は家康の背後に回ってきて、首元に刀を突きつけます。取り囲んだ兵たちを分け入ってきたのは秀吉でした。「数正、お前さんがやりゃあ」との言葉の直後、数正は家康の首を……。
というところで家康は目を覚まします。風に当たって来ると言って立ち上がった家康はよろめき、於愛に支えられますが、ガチャガチャと燭台が揺れ始め、突然地面が大きく揺れ始めます。家康も於愛も立っていられず、調度品は揺れ、瓦や柱などが激しく落ちてきます。天正13年11月29日夜半、日ノ本を巨大地震が襲いました。いわゆる“天正地震”でございます。
がれきを片付ける侍女たちですが、手彫り仏像も床に転がっていました。家康に見つからなくてよかったと於愛はホッとしていますが、そこに家康が現れます。於愛が何かを隠しているのを目ざとく見つけ、それが仏像であると知ると、かなりムッとした顔で城下の見回りに出かけて行ってしまいます。於愛は、仏像とともにあった木の箱を見つけ、顔を近づけて見ています。
されど、より甚大なる被害が出たのは、秀吉の治める畿内周辺でございました。近隣諸国もひどいありさまで、羽柴秀長は憔悴しています。徳川との戦に備えていた大垣城も焼け落ちてしまいました。寧々は民を救うのが先だと秀吉に訴え、戦どころではないと説得します。「わかっとるわ。つくづく運のええ男……家康っちゅうんは!」
その家康のところへ織田信雄が来ていました。秀吉はまさに出兵する寸前だったと伝え、上洛を強く勧めます。家康は、もとはと言えば信雄が勝手に秀吉と和睦したからこうなったと信雄を睨みつけ、信雄はぐうの音も出ません。しばらくお互い無言の時間が過ぎ、信雄はひらめいたように、秀吉が人質を出せば上洛するかと提案します。それでも家康は無表情です。
秀吉と寧々のところに、秀長は妹の旭を連れてきました。正室のいない家康に対して関白の妹を人質として嫁がせれば文句はないだろうという秀吉の発案です。旭には夫がいますが、それも別れさせての遂行です。「旭、お前がうまくやらんと、次は母さまを送り付けることになりかねん。これくれぇ役に立ちやあせ」
その案は、瀬名亡き後 正室を取らないと決めている家康の怒りに火を注ぎます。正信は妻でもなんでももらえるものはもらっておけばいいと他人事です。ただ、人質として妻を迎えたとしても形ばかりのことであるし、婚儀と上洛は別の問題と指摘します。家康は問題山積で頭が痛いです。
天正14(1586)年5月、豊臣秀吉の妹・旭姫が神の君のご正室として浜松にお輿入れになったのでございます。無理に笑顔を作る旭は、酒をあおりがむしゃらに食い、さすがは秀吉の妹と大久保忠世はあきれ果ててしまいます。そして迎えた初夜も、旭は前のお方さまの代わりが自分で申し訳ないと言いつつ、本当に詫びているわけではなさそうです。家康が振り返ると旭はすでに寝ています。
翌朝、浜松城に上がった於大は、旭に“20歳は若くなる”と評判のおしろいを土産として渡され、於愛とともにはしゃぎます。その様子をこっそりと忠世が見ていて、楽しそうなお方さまだと笑います。ただ、この旭で上洛の際の家康の命が保証されるかどうかは疑問符がつきますが。
そんな中、“裏切り者”数正が、大坂でどんな悪だくみを図っているか正信は探らせています。放っておけばいいという忠世を遮って、忠次はその調査結果を促します。「何も」 これといった働きは聞こえて来ず、あてがわれた屋敷からもほとんど出ない毎日で、数正はいわゆる飼い殺しであると、家臣たちは拍子抜けしています。
榊原康政は、秀吉の狙いは家康から数正を奪うことであって、重用する気はなかったと推測します。直政は悔しさをにじませながら「私はあの方が好きではなかった」とつぶやきます。直政は数正を敬っていたわけです。それは康政も本多忠勝も同じかもしれません。そして家康は、数正が見据えて言い放った「決してお忘れあるな。私はどこまでも殿と一緒でござる」という言葉を、繰り返し噛みしめます。
旭を送り込んでも家康は上洛しません。役立たずな妹だわと吐き捨てた秀吉は、もう一人家康に送り付けると言い出します。それが自分の母親だと知って、秀長と寧々は顔を引きつらせてできないと断言しますが、秀吉は秀長を見据えます。「家康に告げよ。かか様が着いたその日に上洛せえ。さもなくば天下こぞっての大軍を差し向けると」
於大に冗談を言って笑わせている旭ですが、母親が来ることを於愛が伝えると、先ほどまでの笑顔はスッと消えます。恐らくは秀吉が言っていた役に立てなかったと愕然としたわけです。しかしそれを悟られたくなくて、「やっかましいのが増えてみなは大変じゃろうがなぁ!」と旭は無理に笑顔を作ります。於大も於愛も顔を見合わせて心配そうに旭を見ています。
於愛は於大と家康の元を訪れ、上洛するのか戦をするのかと迫ります。旭の離縁させられた旦那は行方知れずと旭の侍女から聞き、けなげな旭や新たに人質として送られる母親が不憫だという思いを強くしたのです。於大は、せめてないがしろにされる者を思いやれるような心だけは失ってはならないと諭します。家康は黙って評定に向かいますが、その途中で旭が自室で泣き崩れるのを見かけます。
秀吉からの使者が岡崎に向かっていますが、話し合いが不調に終われば今度こそ戦になると思われます。忠次は、秀吉に負けたと分かっていながらそれを認めないのは、瀬名と松平信康との誓いがあるからだと指摘します。忠勝は、家康を秀吉にひざまずかせたら瀬名に顔向けできないと感極まります。康政も家康を天下人にし戦のない世を作るのが夢だと表明します。
表情のさなか、於愛が入ってきました。於愛は、瀬名が目指した世は家康が果たさなければならないのかと訴えます。他の人が戦のない世を作るならそれでもいいのではないかというのです。忠次は、数正にはそれが見えていたのかもしれないと言い出します。自分が出奔すれば戦が出来なくなり、それがひいては家康を、徳川を守ることにつながると。だから家康の迷惑にならないように自ら間者になった、と。
仏像とともに保管されていた箱には押し花が入っていました。築山御殿で摘まれた花ばかりです。今はもうない築山御殿を、数正はこの箱の中に閉じ込めたと於愛は推測します。数正はこの築山に、朝な夕な手を合わせていたのかもしれません。「わしは天下を取ることを……諦めてもよいか?」 涙ながらに語る家康に、家臣たちも落涙します。
そのころ数正は、鍋と夕餉を囲んでのんびりしています。このような処遇に遭うと分かっていながらこの道を選んだ数正を、鍋は「まことに殿がお好きでございますな」と笑います。その瞬間、数正が鍋の口元に人差し指を突き立て「しーっ……あほたわけ」とたしなめますが、次の瞬間には夫婦で微笑み合います。
涙の後がまだ残る旭ですが、家康は「もうおどけなくてよい」と告げます。つらい気持ちを隠して両家の間を取り持とうと懸命に明るくふるまってくれたのに、結果的に老いた母まで来させたことを家康は頭を下げて詫びます。家康は上洛すると宣言し、旭のおかげで家中が少しだけ明るくなったと微笑みます。「礼を言うぞ。そなたはわしの大事な妻じゃ」
天正14(1586)年10月、数正の木彫りの仏像を丁寧に箱に入れ、家康は上洛の途につきます。秀吉が天下を預けるにふさわしい人物かどうか、家康は見極めるつもりです。そして秀吉を操りこの世を浄土とすることが、これからの家康の夢です。
家康が上洛を決めた書状が送られてくると、秀吉は力が抜けて大の字で寝ころびます。やっとか……という思いだったかもしれません。
天正14(1586)年5月14日、臣従要求を拒み続ける徳川家康に豊臣秀吉は実妹・朝日姫を差し出し、家康はこれを室として迎えて秀吉と家康は義兄弟となる。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと16年8ヶ月──。
作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (徳川家康)
有村 架純 (瀬名(回想))
大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
板垣 李光人 (井伊直政)
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
小出 伸也 (大久保忠世)
岡部 大 (平岩親吉(七之助))
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広瀬 アリス (於愛の方)
浜野 謙太 (織田信雄)
山田 真歩 (旭)
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松嶋 菜々子 (於大の方)
ムロ ツヨシ (豊臣秀吉)
山田 孝之 (服部半蔵(回想))
佐藤 隆太 (豊臣秀長)
木村 多江 (鍋)
松山 ケンイチ (本多正信)
和久井 映見 (寧々)
松重 豊 (石川数正)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:堀内 裕介・大橋 守
演出:小野 見知
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『どうする家康』
第35回「欲望の怪物」
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