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2023年11月26日 (日)

大河ドラマどうする家康・(45)二人のプリンス ~豊臣脅威! 家康、人生最後の戦いへ~

「あと10年もすれば、太閤殿下(の背の高さ)に追いつこう。それまでの間、秀頼の“代わりを”頼みまする」 あの時の8歳の豊臣秀頼は、今や19歳になっていました。慶長16(1611)年、大坂城では宴が催され、中央の舞台では秀頼が舞っています。その姿は容姿端麗で、みな見惚れるほどです。

艱難辛苦の世の中を一つにまとめたのは と茶々に問われ、亡き太閤殿下と答えた千姫。その解答に頷きながら、茶々は徳川家康は豊臣秀吉の家臣として天下を任されただけと念押しします。秀頼が成長すれば返上されるという約束ですが、「その約束をお破りになるなら、その時は戦になっても仕方のないこと。欲しいものは力で手に入れる……それが武士の世の習わしなのだから」

駿府に江戸から徳川秀忠が到着しました。阿茶局に呼ばれても、昔のことを思い出していて呼ばれたことに気づかない家康ですが、「わしも……そろそろかのう」と、昔のような元気さは影を潜めています。

その秀忠や本多正信らが集まり、家康を交えて評定が開かれます。関ヶ原で敗れ牢人となった者たちを大坂城で匿い、武具兵糧を集めて戦に備えているようで、徳川と豊臣がいよいよ戦かともちきりです。本多正純は、徳川が豊臣より上であるとはっきり示し、秀頼を上洛させて臣下の礼を取らせると意気込みますが、そう簡単に秀頼が上洛するとも思えません。「もし従わぬのなら、その時は力を持って」

ならぬ、と家康はたしなめます。秀吉のことは今も人々の心に生き続けており、その遺児たる秀頼に仕打ちをすれば、万民の怒りは徳川に向けられかねません。正信は、秀頼に上洛してもらい家康と対面させるには、上段に座らせて秀頼を崇めることが大事と指摘します。武家の棟梁が尊わねばならないのは公家であり、豊臣を公家にしてしまえば、城だの武力だの持つべきではないという考えも生まれるわけです。

家康の依頼を受けて、寧々が秀頼の説得に当たります。天皇譲位の折に家康は秀頼を二条城に招きたいという意向を伝えると、天下は返さず戦もしないと茶々や治長は反発します。家康は約束を守って天下を返すと信じていた千姫は、肩身の狭い思いで秀頼に詫びを入れ、秀頼は千姫を優しく労わります。

「豊臣家は徳川どのの庇護の下にあることを忘れてはなりませぬに」と寧々が忠告すると、治長は秀頼が出ていけば何をされるか分からないと異議を唱えます。そこに加藤清正が進み出て、片時も離れずに秀頼を守り抜く(ので、伏見城に行きましょう)と宣言。茶々は秀頼を世間にお披露目するかとニヤリとし、秀頼も伏見へ向かうことにします。

 

慶長16年3月28日、この日 豊臣秀頼は大坂城に移って以来、初めてその姿を民の前に現したのでございます。一行がしずしずと進む大通りには、次から次へと民衆が駆け集まってきます。“なんと麗しい!” “太閤さまの忘れ形見じゃ!”と民衆たちは口々に秀頼を賛美しますが、その人垣の中に、山伏姿の真田信繁が紛れ込んで一行を万感の思いで見つめていました。

二条城に入った秀頼に、家康ら徳川の者たちは手をついて深々と頭を下げています。しかし秀頼は家康に駆け寄って片膝つき、真摯に挨拶します。そして対面所に移動した秀頼は、家康から上座へ誘導されます。それをかたくなに固辞し困惑する秀頼を見て、寧々は妥協案として家康も秀頼も上段に座ることを提案します。

「意地を張るのも大人げないので、横並びにいたしましょう」と秀頼は家康の手を取ると、家康はしぶしぶ立ち上がり、秀頼に手を引かれて上段に座ります。しかしその秀頼は横並びどころか下段に座り直し、これまでの長らくの無礼を詫びます。「武家として徳川どのと手を携えて、ともに世を支えて参りましょう」

秀頼がひざまずき、これで徳川が上、豊臣が下と示すことが出来たと秀忠は大喜びです。しかし同席の江はこれでよかったのかと不安な表情になり、えらいことになったと正信は顔面蒼白です。民衆は徳川が豊臣をひざまずかせたと大騒ぎになります。天下の主は秀頼だと信じている民衆にとって、徳川は「無礼」「恥知らず」「何さまだ」と不満の声があふれかえります。

してやられた! と正純は立腹します。家康から見て久々に会った秀頼は、涼やかで様子のいい秀吉そのものです。一方で、大坂城に戻った秀頼を見つめる茶々は、この会見が秀頼や豊臣にとって有益なものになったとニンマリします。千姫とともにかわいがっているネコの鳴き声だけが、館の中にこだまします。

夜、秀忠はひとり起きて深く考え事をしています。“上に立つ者の役目は、いかに理不尽なことがあろうと責めを負うこと” “勅を奉じ征夷大将軍になすべし” “あなたさまは全てが人並み! 偉大なる凡庸!” ふと目を覚ました江に声をかけられても、気づかないのか気づかないふりをしているのか、秀忠は複雑な表情でじっと床を見つめたまま動きません。

 

慶長17(1612)年。動かなくなったクロックのねじを巻いて復活させる三浦按針(ウィリアム・アダムス)ですが、家康から大筒を用意するように命じられます。按針は大筒がどれだけ恐ろしい道具かと表情を曇らせますが、家康は異国同士が商いで互いに豊かになるためには、日本を攻めてくる者をなくすためにもどうしても必要だと按針を説得します。

家康はクロックの仕組みを知りたくて、内部を見るために箱を開けていじっています。そこに客人がやって来ます。木彫りの人形を作って遊ぶなど、家康の幼少期を知る数少ないひとり、今川宗誾(氏真)です。今川氏真──没落後は神の君の庇護のもと、妻と悠々自適に過ごす日々でございます。妻と歌を詠む日日と知り、家康はつい羨ましいとつぶやきます。

宗誾は、家康が戦のない世を作り、今川義元が目指した王道の治世を成してほしいと見据えます。無理かもしれないと家康が弱気になっているのを見て、家康は見違えるほど成長し立派になったと宗誾は微笑みます。「成長などしておらぬ。平気で人を殺せるようになっただけじゃ。戦なき世など来ると思うか?」 一つ戦を終わらせても、新たに戦を求めて人が集まるわけで、きりがないのです。

死ぬまで戦をし続けて……と涙目になる家康を抱きしめ、宗誾は励まします。弟よ、弱音を吐きたいときはこの兄が全て聞いてやる。お主に助けられた命もあることを忘れるな──。「本当のお主に戻れる日もきっとくる」 何度も頷く宗誾に、家康は涙を流し、大きくため息をつきます。クロックの時を刻むカチカチという音だけが響いていました。

 

慶長19(1614)年・京──。二条城会見以降、秀頼の活躍目覚ましく、豊臣の意向を復活させる大事業を進めておりました。京大仏の開眼供養を秀吉の十七回忌に合わせて挙行する予定で、きっと秀吉も喜ぶに違いないと笑みを浮かべます。片桐且元は、諸大名、公家、商人に至るまで身分の区別なく招くつもりです。「無論、徳川どのも」という言葉に胸をなでおろす千姫です。

一方、治長は違った見方をしていました。ますます輝きを増していく旭日の秀頼と、齢70を超える老木の家康がいて、この勝負は時間が決着をつけるだろうというものです。老木が朽ち果てれば、後に控えているのは凡庸な2代目・秀忠であり、比べるまでもないと治長は鼻で笑います。

その秀忠は、開眼供養の中止を家康に進言します。挙行を強行して豊臣の威光がよみがえることを秀忠は恐れているのです。正信に命じても、大仏を作っているだけだと乗り気ではないし、阿茶局はうかつに動いてかえって徳川の評判を落としかねないと、逆に心配されます。秀忠は、諸大名と誓書を取り交わして主従の関係を結んでいますが、それが何の役に立つのだと憔悴しているのです。

流行歌「御所柿は ひとり熟して 落ちにけり 木の下にいて 拾う秀頼」に秀忠は名前すら出てきていません。家康が死に、秀頼と戦いになったら負ける自信しかありません。凡庸だと卑屈になる秀忠に、家康は自分の若いころにそっくりだと微笑みます。「そなたはわしの才をよく受け継いでおる。弱いところじゃ。そしてその弱さをそうやって素直に認められるところじゃ」

フン、と秀忠は目線をそらしますが、家康はさらに続けます。そういう弱い部分を、家康は戦乱の中で捨てざるを得ませんでしたが、捨てずに持っていたころの方が、多くの者に慕われて幸せだった気がします。今の秀忠はそれもあってとてもまぶしく感じます。「戦を求める者たちに天下を渡すな。そなたこそが王道を成す者と信じておる。わしの志を受け継いでくれ」

秀頼と治長が手合わせをし、秀頼の鋭いうち込みで治長がひっくり返ってしまいます。手加減していないかと茶々は治長に厳しく問いただしますが、槍も囲碁も秀頼にはかなわないと笑います。茶々は、柿が落ちるのをただ待つというのが惜しく感じています。家康を倒して手に入れてこそ、本当の天下だと考えているのです。

そこに入ってきた且元は、京大仏とともにお披露目する梵鐘の銘文について、その候補となるものをいくつか用意してきて、茶々に見てもらいます。そのうちの1枚を、茶々が「面白い」と言って満面の笑みを浮かべます。

その銘文はたちまち徳川にも伝えられたわけですが、正純は腹煮えくり返る思いで家康に報告します。
『国家安康』
『君臣豊楽』
家康の諱(いみな)を刻み2つに切り分け、豊臣こそが君主であるという読み方ができるのです。家康の表情から笑みが消えます。

江戸から切れ者2人を同行させて秀忠と正信が到着しました。儒学者の林 羅山、臨済宗高僧の金地院崇伝の2人は、家康に意見を求められます。正信は、とんでもない一手を打たれたようで、上手に少しずつ力を削ぐということはもはやできないと、恐らく戦は避けられないと助言します。「とうとう……戦か」 家康は大きくため息をつきます。


作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (徳川家康)

松本 若菜 (阿茶局)
森崎 ウィン (徳川秀忠)
マイコ (江)
井上 祐貴 (本多正純)
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溝端 淳平 (今川宗誾(氏真))
中村 七之助 (石田三成(回想))
作間 龍斗 (豊臣秀頼)
原 菜乃華 (千姫)
溝上 泰史 (加藤清正)
日向 亘 (真田信繁)
川島 潤哉 (片桐且元)
田山 涼成 (金地院崇伝)
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北川 景子 (茶々)

ムロ ツヨシ (豊臣秀吉(回想))
玉山 鉄二 (大野治長(修理))
松山 ケンイチ (本多正信)
和久井 映見 (寧々)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:堀内 裕介・大橋 守
演出:田中 諭

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『どうする家康』
第46回「大坂の陣」

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