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2023年12月 8日 (金)

プレイバック徳川家康・(49)落城

運命の朝が来た。この日の決戦にかけて「家康は死んだ者と思え」、すでに全軍にそう申し渡してある。今日の戦は一切、将軍秀忠の命令で動くべしと決めた家康は、真田幸村の立てこもる茶臼山に向かった。だがその心中にはあくまでも、秀頼親子と千姫救出の悲願が、祈りの炎となって燃え広がっていたのである。

一方、茶磨山(ちゃうすやま (ちゃすりやま とも))の真田幸村には、兵力の差から見て勝敗の行方はすでに見通せていた。だが彼は、人の世に戦や争いは絶えないものという見方を少しも変えていない。その心情にかけて、今日こそ家康の診断を寒からしめて死んでいこうと決めていた。

無論、東軍の第一戦は、昨日 昼寝をしていたかと家康から満座の中で叱られた、孫の松平忠直である。そして片桐且元の手勢がそれと並んでいる。もし秀頼が出てきたとき、これを人に渡したくないという哀しい心からなのである。真田幸村を目がけた松平忠直勢の遮二無二の先制攻撃は、言うまでもなく抜け駆けである。そしてこれに遅れじと、同じ東軍の本多勢も前進を開始してしまった。大坂夏の陣の決戦は、こうして幕が切って落とされた。

この思いがけない開戦で、顔色を変えたのは茶磨山の真田幸村である。猪突猛進の松平忠直勢の動きに、一気に家康の本陣を突くという幸村必勝の作戦は、根底から揺さぶられる結果となった。「まだ早い!」と幸村は厳しい表場です。相手にすべきは松平勢や本多勢ではなく、その後から進んでくる家康本隊なので、巻き込まれないようにと使者を忠告に走らせます。

だが、その幸村の前面にいた毛利勢は、たちまち松平・本多の軍勢に攻められ、幸村の命令が伝わる前に戦いに巻き込まれていった。遮二無二攻めかかる松平勢の後方には、東軍の諸隊が競い合って動き出している。そうなると、真田幸村もついに軍配を上げてこれに立ち向かわざるを得なかった。幸村にしては言いようもなく無念であった。

だが、臨機応変の幸村の采配ぶりは、混乱の中から見事西軍を逆襲へと転じていった。この日、7人の真田幸村が出現。それぞれ手勢を率いて毛利勢を助け、その7人が縦横に流言を放ちながら飛び回り、東軍に大混乱を与えたのである。忠直勢はうろたえ引いていきます。忠直は兵たちを叱咤しますが、混乱は収まりそうにありません。そして真の幸村は茶磨山でじっと戦況を見守っていた。

混乱の中に東軍の旗本諸勢が巻き込まれ、まさかと思われた家康の周囲は全くの手薄になっている。真田幸村はこの機を待っていた。そして一挙に家康その人を目がけて、茶磨山を馳せ下った。今や死は家康の手の届く距離にあった。これに気づいたのは井伊直孝と藤堂高虎である。彼らは将軍本陣から家康本陣へと移動していきます。

混乱は混乱を生んで、今度は将軍秀忠の本陣が馬廻りの小姓だけになった。秀忠は馬上の人となりじっと戦況を見守っていますが、敵兵が襲撃してきたのをあっという間に倒していったのは柳生宗矩でした。感心する秀忠は、焦ってはならぬものだなとつぶやきます。「すでに潮は引きかけました」

しかし、その潮は今 家康の身辺に猛然と襲い掛かってきた。幸村自身率いる旗本勢が疾風のように家康の本陣を突いたのである。そしてまさに家康の喉笛に切っ先を当てようとするところで、秀忠の存在を忘れて駆けつけた井伊・藤堂の両勢に遮られたのである。いったん好機を逃した真田勢は、もはや家康のそば近くへ接近することはできず、後ろの茶磨山も松平勢に陣取られていた。

幸村は、一人も生き残るなと叫んで家康の駕籠目がけて突進します。決死の幸村も、さすがに体制を整え圧倒的な力でじわじわと迫る東軍の前では、次々と踏みつぶされていった。幸村はいま、家康との最後の戦いが終わったことを、はっきりと知った。左肩を刺された幸村は、現れた敵兵にゆっくりと立ち上がりますが、背後からさらに突き刺されます。

忠直の手勢が幸村を討ち取ったとの報告があり、厳しい表情の家康はコクリと頷き、ようやく胸をなでおろします。真田幸村──この時49歳。争いは絶えないものという自らの信念を貫き通して死んでいった。

 

幸村が戦死すると、毛利ほか残った大坂勢は城内へ退いた。大坂城では「余も打って戦死するぞ! 馬を!」と秀頼が立ち上がりますが、速水甲斐が必死に引き止めます。しかしそうしている間にも、勝ちに乗じた関東勢は城内に乱入し三の丸に迫り、城内から火の手が上がります。二の丸もすでに火の海で、奥原信十郎は本丸への引き上げを進言します。秀頼は静かに、負けを認めざるを得ません。

動けない秀頼を見て、信十郎は家臣たちに号令して秀頼ともども無理やり引き揚げさせます。本丸へ向かう途中で秀頼が見たものは、城内の兵や女たちが次々と自害して果てていくさまでした。あちこちで悲鳴ともうめきともとれる声を聞き、腰を抜かして座り込んでしまう秀頼を、信十郎は激励して本丸へいざないます。

本丸には淀や千姫らがすでに集まっていました。「いよいよ最期の時が参りましたぞ」と淀は秀頼を見据えますが、大野修理はまだ打つ手があると諦めていません。千姫を家康の陣に送り届け、千姫の口から秀頼と淀の命乞いをするのです。秀頼は反発しますが、敵が二の丸まで迫っていて、問答する時間はありません。千姫の手を握り本丸を出た淀は、千姫を抱きしめて泣き叫びます。

淀と秀頼は芦田曲輪(くるわ)に入ります。負傷した修理を抱えて信十郎も後から入ってきました。そこには、千姫の姿はなかった。信十郎の考えでは、淀の方が千姫の手を離すはずがなかった。自決するときは必ず千姫を道連れにする気と信じ切っていた。淀が千姫に命乞いを命じて逃がしたわけです。

それを聞いた信十郎は舌打ちし、淀に構わず千姫を追って曲輪から出ていきます。とぼとぼと石段を下りてくる信十郎ですが、ふと見上げると、そこには赤く燃え上がる大坂城があります。我が子秀頼を助けるため、千姫を逃がしたという。その淀君の母ごころに信十郎の計画は狂ってしまった。

千姫が茶磨山の陣所に向かったとの報告に、まずは安心する信十郎ですが、敵の大将が目の前に現れたときに千姫と秀頼親子を引っ立てて家康の前に連れていけば、3人の救出は叶ったのにと残念がります。こうなってしまっての新たな問題は、千姫と離れ離れになった秀頼と淀をどう救い出すか──。信十郎は頭を抱えます。

「且元よ、お拾を頼むぞ」と、炎上する天守から秀吉の声が聞こえたような気がする。信十郎と同じように大坂城天守閣を見上げる且元のところに、弟の片桐主膳が駆けつけ、秀忠は千姫の嘆願を聞き入れないようだと報告します。「妻は夫に殉ずべきもの、ひとりで城を抜け出すなどもっての他の所業」

しかも曲輪の焼け跡をしらみつぶしに探すよう命じたらしく、且元はえずきよろめきながら秀忠のもとへ駆けつけます。且元が秀忠の本陣に駆けつけた時は、ごった返した諸将の戦勝挨拶がようやく終わったところであった。且元は、秀頼親子の隠れ場所が恐らく芦田曲輪に違いないと秀忠に報告し、ぜひそこに向かわせてほしいと訴えます。

しかしその探索は土井利勝に命じた後でした。且元は不忠の臣に成り下がると涙目ですが、利勝は決断すべき時に決断しなかった且元の失態が、冬の陣・夏の陣を産み、しなくてもよい戦をすることになったと責め立てます。秀忠は、且元がひどく疲れているのだと労わり、その場から離れていきます。結局且元の訴えは聞き入れてもらえませんでした。

 

かくして落城の一夜は明けた。曲輪は井伊の軍勢に取り囲まれています。修理は無理を押して交渉に向かおうとしますが、もはや立ち上がることすらかないません。修理に後を託された甲斐はさっそく井伊直孝と話し合いますが、秀頼と淀に輿の用意を求めた甲斐に対し、利勝は二度の戦に敗れた罪人と吐き捨て、輿がなければ切腹するのだな? とニンマリします。

淀は、取り囲んだ井伊の軍勢が秀頼を迎えに来たと期待していましたが、曲輪に戻った甲斐の話を聞き衝撃を受けます。あくまでも捕虜の扱いに、淀は竹筒に残った水で別れの盃を用意させます。秀頼とは何としても親子の縁を切らねばなりません。「わらわはこれで三度、我が住もう城の焼ける炎を見ました。父を失い、母を焼き、今度は子を殺す……これ以上恐ろしい呪われた宿望がまたとあろうや」

このころ家康は、秀頼親子が無事であることを知り、ホッとしていた。芦田曲輪は井伊に守護させているので、心配いらないと言葉をかける家康ですが、千姫は秀忠から夫に殉ずべきと叱責を受けたばかりで、離れてはならなかったと後悔しきりです。目を細める家康は、自分が曲輪に迎えに行こうと提案します。

だがそのころ、この戦の最大の汚点である京橋口での残党狩りが始まっていたのである。そしてその中に、秀頼親子を連れ出すべく水路の様子を見に来た奥原信十郎が巻き込まれている。数多くの悲鳴の中、信十郎は水に溺れる女たちや武士たちを引っ張り上げて助け出しています。

一方、籾蔵の中では、別れの盃が終わろうとしていた。淀は、盃が終わったら秀頼を弔うように命じ、お供に数名の家来の名を挙げます。寂しそうに笑みを浮かべる秀頼は、ともによく戦ってくれた毛利勝永に介錯を頼みます。淀は顔色を変えて止めますが、その時に銃声の音が聞こえてきて曲輪の中は騒然となります。

そしてその銃声の音を、大坂城桜御門にいた家康も聞いていました。「わしが迎えに参っておるのに!」と曲輪を守護しているはずの直孝を非難しますが、秀忠の家来はみな 自分に隠して密命を遂行しようとしているのかと本多正純を疑います。正純は慌てて否定しますが、銃声はまた聞こえ、正純は曲輪に向かって駆けていきます。家康は顔面蒼白です。

籾の俵に火がつけられ、家来や侍女たちは自害していきます。「上様……のちの世に……」と言い残し、淀も懐刀を胸に突き刺します。秀頼の方に手を伸ばし、何かを訴えかけていますが、そのままついに落命します。それを見届けた秀頼も、刀を腹に突き刺します。家康が最後の最後まで無事を願ったふたつの命は、あえなくも炎の中に消えていった。

たわけものどもめが! と家康は叫びます。そこに現れた直孝を見て、秀頼親子を助けよと言ったのだと叱りつけますが、わけも分からずただ家康の顔を見上げる直孝に、家康の怒りは頂点に達します。「ようも……ようもこのわしをたばかりおった! こうしてくりゃわ!」と腕を振り上げますが、家康は頭に血が上ってそのまま倒れます。

取り返しのつかぬことになり、失望した家康はそのまま二条城に戻ることにします。いま秀忠と会ったら、家臣たちの前で家康自身が秀忠の髪を掴むなど、目も当てられぬありさまになってしまいかねません。家康は涙を浮かべ、声を上げて嘆き悲しみます。

家康が直感した通り、火は消し止めたものの、籾蔵の中ではすべてが終わっていた。その惨状に正純は絶句します。二条城に引き揚げる家康からは、後のことは丁重に進めるようにとの伝言がありました。茶磨山の陣払いも済ませず戦場を後にした家康は、やり場のない淋しさに呆然としていた。一方、死の知らせを受けた一心寺の千姫は。床に崩れ落ち、悲しみます。

涙雨の降る中、信十郎はひとり狂ったように草花を引きちぎっています。そしてここにも、無残にその生きざまをねじ曲げられた男がいた。残党狩りの争いに巻き込まれ秀頼親子を救えなかった奥原信十郎。地面に草花をたたきつけ、大粒の涙を流します。後ろから近づいた宗矩はそっと言葉をかけますが、信十郎は「許せ……わしが豊臣家をつぶしてしまった……」と突っ伏し泣き崩れます。

秀頼と淀の死は、二条城に戻った家康もとても堪えています。こんな寂しさは人質時代にも岡崎城主時代にも経験したことがなく、家康の生涯で初めてかもしれません。運命の中心として人々に信頼され、子孫の訓育を担いたい家康でしたが、秀忠や側近たちにはそれはあまり尊重されていなかったようです。あれほどくぎを刺しておいたのに、秀頼親子のことは完全に無視された形です。

横で黙って聞いている茶阿局に、家康は自分が泣き顔で語っているのは末代まで内緒にするようにつぶやきます。家康は、千姫と秀頼を救出できたら、家康の前にふたり並べて説教をしてみたかったわけです。そんな家康の夢は無残にも崩れてしまいました。二条城にも涙雨はずっとずっと降り続いています。


原作:山岡 荘八
脚本:小山内 美江子
音楽:冨田 勲
語り:館野 直光 アナウンサー
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[出演]
滝田 栄 (徳川家康)
勝野 洋 (徳川秀忠)
久米 明 (片桐且元)
本田 博太郎 (本多正純)
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若林 豪 (真田幸村)
谷 隼人 (大野修理)
利重 剛 (豊臣秀頼)
石原 真理子 (千姫)
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夏木 陽介 (柳生宗矩)
井川 比佐志 (奥原信十郎)
夏目 雅子 (淀君)
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制作:澁谷 康生
演出:加藤 郁雄

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『徳川家康』
第50回「泰平への祈り」(最終回)

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