大河ドラマ光る君へ・(03)謎の男 ~まひろに近づく男の狙いは~
永観2(984)年。追っ手を撒くために違う方向を指し示したのに、たまたまそこに立っていた三郎が捕らえられてしまいました。「待ってください! 逃げてたのはその人じゃありません! 違うんです!」と弁明しますが、大丈夫だ、という顔で道長は連行されてしまいました。まひろは自分のせいでと感じながら、何もできません。
とはいえ、道長は右大臣藤原兼家の三男であり、そんな高貴な人物を盗賊と間違えた失態の方が大問題で、夕方には放免されます。屋敷に戻ると兼家から、この家がどういう状況に置かれているのかきついお説教です。道長は三男だからとあまり肩ひじ張らずに過ごしていますが、それが兼家には腹立たしくもあります。父子のやり取りを見ていて、実家に帰って来ていた詮子(あきこ)はフフフと笑います。
下々の格好をして町をふらついていた道長が、下々の女子に懸想していると詮子は勘違いし、「やぁね!」と呆れています。一時の慰み者なのだから早く捨ててしまいなさいと助言する詮子に、道長は怒りに任せた兼家に従者の任を解かれた百舌彦を助けるためにとりなしてほしいと泣きつきます。「なんだ。分かっているじゃないの父上のお立場。さっきはとぼけておいて」
まひろは館で元気なく座っていました。外からフクロウの鳴き声が聞こえ、ふと何かを感じて外に出ますが、屋根の上には男が座っていました。男は道長が無事であることを知らせます。えっ!? と男の方を振り向くと、男はサッと身を翻して姿をくらませますが、まひろには昼間に逃走してぶつかってきたあの男だと分かります。
まひろは道長の似顔絵を描き、探してほしいと太郎に依頼します。四条万里小路の辻あたりにいるかもしれない、身の丈6尺以上の、名前は三郎──。姉の思い人と察知した太郎は、道長が貴族ではないのかとがっかりしますが、とりあえずまひろは道長が無事かどうかを知りたいだけです。「高辻富小路の絵師を訪ねてみて」
検非違使庁では、宿直の道長と藤原斉信(ただのぶ)が囲碁を楽しんでいます。道長が捕まったと聞いて、斉信は獄がどのような場所だったか興味津々です。そんな話は止めよう、と藤原公任は自分に送られた恋の歌の品評会(?)を始めます。「歌はうまいが、顔がまずい」などと悪げもなく言ってのけます。藤原公任は関白の息子で中宮遵子(のぶこ)の弟。藤原斉信は大納言の息子である。
だいたい恋の歌は男から送るものですが、女からも来るんだと道長は感心しています。斉信は道長も恋の歌を隠し持っているのではないかと道長の懐を混ざ繰り、1通の文を取り出します。しかし道長はそれに記憶がなく、女に興味がないのかと公任に笑われます。一方斉信は、左大臣の姫・倫子(ともこ)にアタックしていますが、年上であることに何か不都合があるのかもと公任は余計な心配をします。
絵師の小屋を訪れた太郎は、三郎が来たら住まいを聞いてくれと絵師に頼みますが、藤原為時からの命令もあり絵師は曖昧な返事に終始します。まひろのおかげで相当儲かったのに「恩知らず!」と吐き捨てて、太郎は市の者たちに道長のことを聞いて回ります。実はその横を馬上の人となった道長が通り過ぎていくのですが、絵の下手さもあってか、道長を見上げた太郎は三郎だとは気づきません。
安倍晴明の祈祷の甲斐もなく、帝の容態は一向に回復しないまま時が過ぎた。父・兼家の命で女房に帝の膳に薬を入れさせた藤原道兼は、円融天皇の様子を藤原実資に尋ねます。ひどくはなっていないが、回復の兆しがない。邪気払いして5日目というのに容態が変わらないというのはおかしいと考えた実資は、陪膳の女房達を取り調べすると言い出します。
道兼は兼家に報告します。陪膳の女房が吐かねばいいだけだと兼家は気にする様子もありません。ただ頭中将(とうのちゅうじょう=実資)は思い込んだら誰よりもしつこい性格で、そこから暴かれることを道兼は危惧しますが、実資を味方にしておくために道兼によく仕えるように命じ、陪膳の女房にも“道兼に守られている”と思わせるためにしばらく大切に扱えと助言します。
屋敷の庭で懐仁親王と鞠遊びをしていた定子が転び、道長が駆け寄りますが、母の高階貴子は道長を止め、定子に自分で起きるように教えます。詮子は貴子の教えを素晴らしいとつぶやきます。藤原道隆は懐仁親王が帝に即位したら定子を入内させるつもりでして、貴子は定子が后になるために何にも動じない強い心を養わねばと考えているのです。道長は複雑な思いで定子を見つめています。
晴明まで“一番重い荷物を下ろすよう”、つまり譲位を勧めたことに天皇は力を落とします。実資は天皇がまだ若く、これから力を発揮していく年齢だとして、譲位をしないように進言します。兼家の“してやったり”の顔が目に浮かび、悔しい思いをする天皇ですが、自分の血筋を絶やしたくない天皇と、孫を天皇にしたい兼家との思いは一致しているため、進むことも引くこともできません。
しつこく探索する実資を、女房たちは“いけすかない” “無礼”と陰口をたたいています。天皇には少しずつ回復の兆しが見え、実資は早とちりだったかもしれないと、内侍所(ないしどころ)の検分をやめることにします。女房たちの憤りも日に日に増し、やりにくさを感じ始めていたところです。道兼は検分が終わったことで、晴れ晴れとした表情です。
為時は、即位も近いと覚悟したのか東宮(皇太子)の師貞親王が勉学に励んでいることを兼家に報告します。帝にも東宮にも娘を后にしようとしない左大臣・源 雅信の思惑を測り兼ねる兼家は、その北の方・藤原穆子(むつこ)を親戚に持つ為時にそれを尋ねますが、要領を得ない答えしか返って来ません。いったんは下がりかけ、再び戻って来ます。「左大臣さま……お役に立てるやもしれませぬ」
こちらが左大臣家である。左大臣・源 雅信、その妻・穆子、一の姫・倫子(ともこ)。土御門殿では琵琶を奏でる倫子に、上達したと正信は目を細めています。宇多帝の血を引く家柄であり、雅信は年齢がいくつであっても慌てることはないと、兼家のようにガツガツはしていません。
軟禁中のまひろに、為時は左大臣の姫たちの集いに行ってみないかと勧めます。穆子の女房に赤染衛門という和歌の名人がいて、和歌を学ぶ会が開かれるのです。まひろは身分が低い自分が行くようなところではないと固辞しますが、乳から見てもまひろは和歌が得意だし、穆子は親戚にあたるので、楽しんで来いと背中を押します。
その当日。高貴な姫たちの前で緊張に身を固くするまひろを「私の親戚の娘ですの」と穆子が紹介します。前播磨権少掾 藤原朝臣為時の娘、と名乗るまひろですが、父親の官職がないことを打ち明けると、姫たちの間を冷たい風が一瞬吹き抜けます。ご研鑽(けんさん)の場に加えていただきたく、とうつむくまひろに、倫子は微笑んでまひろを迎え入れます。
赤染衛門は“偏(へん)つぎ”という、示された旁(つくり)に合う偏の札を取る遊戯から始めます。どうやら姫たちが苦手とするもののようですが、「月」に「日」で「明」、「古」に「木」で「枯」など、結果的にまひろがほとんどの札を取ってしまいます。何だかしらけムードが漂いますが、漢字がお得意なのね! と倫子は笑って場を和ませます。
姫たちののどかな遊びとは対照的に、関白の屋敷では休日であっても上級貴族の子息たちが、国家を率いてゆく者としての研鑽を積んでいた。孟子の「人に忍びざるの心有り」を公任が諳(そら)んじ、続いて書の練習をする道長と斉信です。こちらは後に書で名をはせる藤原行成である。すでに飽き飽きしている道長は、面白そうに行成の書を眺めています。
楽しい時間を過ごせたと満足げのまひろですが、倫子について縁談について話が出なかったかと尋ねる為時に、兼家に何か頼まれて自分を間者にしたのかとまひろは感づきます。為時は、高貴な姫に近づくのも損はないことだし、何よりまひろ自身が外に出たがっていたから勧めただけだと言い張ります。「はい、余計なことを申しました。倫子さまのお気に入りになれるよう努めます」
その次の時にもまひろは左大臣屋敷に赴きます。和歌とは自分の心を見つめて自分の言葉で歌を作ると赤染衛門は教えます。古今和歌集を暗記している赤染衛門に、倫子は小野小町の歌を求めると、スラスラと諳んじるのですが、まひろも「すごい! 合ってます!」と声を上げます。それを見て倫子は、まひろは赤染衛門のよいお相手になりそう、と笑います。
その帰り道、乙丸にせがんで散楽を見物するために立ち寄るまひろですが、もちろん散楽に興味はなく、道長の姿を探しています。そして偶然そこを通りかかった道長と再会することになります。そっと近づくふたりですが、散楽の演者の面が外れ、顔が露わになります。その男の顔を見て、まひろは衝撃を受けます。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
高杉 真宙 (太郎)
秋山 竜次 (藤原実資)
板谷 由夏 (高階貴子)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
石野 真子 (藤原穆子)
本郷 奏多 (師貞親王)
坂東 巳之助 (円融天皇)
毎熊 克哉 (直秀)
三遊亭 小遊三 (絵師)
益岡 徹 (源 雅信)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:中島 由貴
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第4回「五節の舞姫」
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