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2024年1月 9日 (火)

プレイバック風と雲と虹と・(03)矢風

筑波明神の祭りが終わり、平 将門は生まれて初めて女と夜を明かします。まことに奇妙な、すべてが夢のような一夜だったと小次郎は思った。しかし、あの美しい姫の姿は鮮やかにまぶたに焼き付いていたし、五体にはまだ生々しく肌触りが感じられるようであった。将門は落ち合うはずの屋敷(小屋?)で平 貞盛を待ちますが、まだ帰ってきません。

将門の世話をする郎党は、この辺りは平家と源家の領地が入り乱れていて争いが絶えないと漏らします。源家は3人の息子と3人の姫を持つ常陸大掾(だいじょう)の源 護(まもる)のことで、将門は早く立ち退かねば危ないと理解しながら、郎党に勧められた汁をすすっています。その間に屋敷の周囲を武士たちが取り囲み、突然襲撃してきました。

その一団を率いているのは護の嫡子・扶(たすく)で、貞盛を匿っていると疑って押しかけて来たのです。将門は堂々と名乗り、扶は将門をけしかけますが、そんな脅しに乗るような将門ではありません。扶は貞盛を匿えば殺すと言い置いて、睨みつけて出ていきます。源 扶と小次郎は、やがて一人の女のために激しく相争い、それが歴史に名高い承平の乱を引き起こすことになる。

そのころ貞盛は、将門が初めて抱いた女を連れていました。ふたりが呑気に歌っている間にも、扶率いる一団の探索が続けられていました。貞盛は、女の唄の詞から別の男の存在を察知し、追いかけているうちに、扶の一団と遭遇してしまいます。捕らえようとする扶らに、貞盛は女を盾に身を隠し、押し倒してそのスキに逃げ出します。

女は扶の妹で、護の三の姫・小督(こごう)です。扶は小督の昨晩の行動を咎めますが、ムッとした小督は、女を追いかけまわして犬にかまれたという日ごろの扶の振る舞いに文句を言います。何も返せず黙り込んでしまった扶は思わず小督を平手打ちし、この始末は父・護に言いつけると言い置いて、貞盛を追いかけていきます。その後姿を睨みつける小督です。

郎党は将門と貞盛の馬を2頭用意します。そこに慌てて帰ってきた貞盛に、源家の領地は避けて屋敷に帰るように忠告します。扶らは将門と貞盛が馬で逃げたと知り、自分たちも馬でふたりを追いかけていきます。しばらく追われた二人は途中からわき道に入り、扶らはそこを直進して分かれ分かれになります。とうとう諦めたか、と貞盛は息を切らしながらため息をつきます。

もう少しで平家領というところまで来ました。源家領を通らずに行く道はなく、ここが最短の道だという貞盛に、将門は扶らもそれを予測して待ち伏せしているかもしれないと主張します。なるほどと納得したものの この道しかないわけで、二人は周囲に気を配りながらゆっくりと進んでいきます。しかしそこに現れたのは、扶ではなく鹿島玄道と玄明の兄弟でした。

玄道は喧嘩の続きをここで果たしたいと言い出します。「先を急いでいる、またにしてくれ」と頼む将門ですが、玄道は容赦なく将門と斬り合いになります。しかし玄道と玄明は待ち伏せされるより相手を引き出した方がいいと、喧嘩をしているふりをしているのです。現に扶ら一団が数十騎で将門たちを取り囲み、近づいてきます。将門たちはひとまず林の中に身をひそめます。

将門は、騎馬で逃げてくるという相手の思い込みの裏をかき、弓で敵をかき乱したスキに歩で後ろに回ることにします。何も知らない扶は、将門たちがいた無人の林に向けて矢を射かけますが、反応はなく、徐々に包囲網を狭めていきます。その間に将門たちは後方で見張っている兵の馬を奪い、玄明の援護もあって駆け抜けていきます。そして川を渡り、領内に戻っていきます。

領内に逃げ込めば扶らも追ってくることはできず、まずは一安心です。玄道・玄明兄弟は将門たちが追われていることを知っていて、助けてくれたわけですが、その根底にはひと癖ある玄道が将門を気に入ったからに他なりません。玄明は無表情に「もういいだろ」と、将門たちと別れて行ってしまいます。無事に屋敷に戻った貞盛は、父が納得するように今日の出来事を報告せねばなりません。

 

扶の父は、常陸国の源大掾、常陸源氏の頭領・源 護である。扶は一通り、自領に貞盛らが忍んできていたこと、貞盛と小督が密会していたことを報告し、今すぐに貞盛の屋敷を攻めることを進言しますが、護は「馬鹿め!」と一喝します。ただ、護は貞盛と小督が関係を持ったことを知り、不安な表情を浮かべます。

貞盛は「謀は密なるを以ってよしとす」と小次郎に言い残し、父・国香に諍(いさか)いの報告に行った。事情がこうなっては帰るわけにもいかず、小次郎はひとり貞盛の帰りを待った。小次郎の胸に、昨夜のあの姫の姿がよみがえった。その人の名が小督であり、源 護の三女、すなわち源 扶の妹であること、そして今日の扶との諍いの原因が太郎貞盛と小督との関係にあることなど、この時の小次郎は知るはずもない。

平 国香が将門に会いたいと言っていて、眠っていた将門は貞盛と屋敷に向かおうとしますが、貞盛は国香に報告したことの口裏合わせを頼みます。すなわち、女のことで玄道と諍いになり、遺恨に思った玄道が帰り道を待ち伏せた。さらに兵たちが続々と集まり、貞盛たちはてっきり玄道が差し向けた兵だと思って、数人に手傷を負わせて囲みを突破した。彼らが源家の郎党であることは後に知った──。

そのようなでたらめを……!! と将門はムッとした表情です。将門が正直に話せば、将門の気が晴れるし、将門はいずれ陸奥に帰っていく身なのでいいのでしょうが、ここに残された貞盛や国香は源家と顔を突き合わせて過ごさねばならないのです。貞盛は、将門の言動によってはいずれ自分の身にも災いが降りかかってくると脅すことを忘れません。

「困ったことをしてくれたの」と国香はがっかりします。貞盛が引き起こした諍いが、いつの間にか将門が原因に仕立て上げられていますが、将門は反論もせず謝罪します。将門に坂東にいてもらっては都合の悪い国香は、一日も早く陸奥へ帰るように強く勧め、抗えない将門はそうするしかないと座を立ちます。国香は佗田真樹に、将門の父・良将宛ての手紙を持たせてともに陸奥に発つように命じます。

屋敷に戻り、母・正子には正直に報告する将門ですが、諍いに巻き込まれただけでなく他人の罪を着せられたことに、正子は衝撃を受けます。叔父(正子にとっては兄の国香)は腹黒い人と、人を悪く言う母に将門は嫌気が差します。たとえ貞盛がどうであっても、従兄であり幼なじみでもある貞盛のことを将門は悪く言いたくありません。

そして今から陸奥へ発つと宣言する将門に、せめて出立は明日にと母は涙ながらに食い下がりますが、将門は大きく首を振って拒絶します。小次郎の心には不思議な急所があった。そこに触れられると果てしもなく意固地に強情になってしまう。母に「すまない」と小次郎は思った。

道中で小休止、将門と真樹は握り飯をほおばります。将門は、生まれ育った坂東より陸奥のほうがいいところだと感じていました。荒々しくも素朴で率直な人たちばかりです。真樹は坂東の民人も率直で人情に厚いと微笑みます。ただ、そうでない人──上に立つ者は、京の風に侵されているように思えて仕方ないようです。

ちょうどそこに、輿を伴った風格ある行列が通りかかります。輿に乗った浮かない顔の姫君に、一昨日の夜の姫の面影を見る将門です。名も知らぬままに小次郎が思い続けている筑波の女・小督も、これは姉・詮子(せんこ)。その激しい気性から、正平天慶の戦乱を引き起こす口火となった女性のひとりである。

笛の音に聞き覚えがある将門は、その笛の主が玄明だと感じ呼びかけます。音もなく現れた玄明は、年上の女性を見ると吹きたくなるのだと笛を見つめてつぶやきます。「俺には縁のない女だった。小次郎どの、いずれまた」 将門は、馬で駆け去ってゆく玄明の後ろ姿に、フッと微笑みを隠しません。

その二人のやり取りを見ていた真樹は、玄明が将門の身を案じてついてきたのだと推測します。この道中、真樹が将門を殺すのではないかと──。将門がこの世から消えれば簡単に解決する話であり、そして国香自身もそれを命じかねない人物なのです。ただ、それを知っていながらここから立ち去ったということは、真樹は将門を殺さないと信じてくれたのだろうと、真樹は笑います。

小次郎は陸奥への道を走る。彼が坂東へ戻ってくるのは、このわずかに1年後のことである。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
山口 崇 (平 貞盛)
佐野 浅夫 (平 国香)
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草刈 正雄 (鹿島玄明)
多岐川 裕美 (小督)
宍戸 錠 (鹿島玄道)
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星 由里子 (詮子)
西村 晃 (源 護)
新珠 三千代 (将門の母 正子)
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制作:小川 淳一
演出:松尾 武

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第4回「筑波の楓(かえで)」

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