« 大河ドラマ光る君へ・(03)謎の男 ~まひろに近づく男の狙いは~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(08)京の姫みこ »

2024年1月23日 (火)

プレイバック風と雲と虹と・(07)女盗有情

かつては皇子の館であった荒れ屋敷ですが、平 将門はそこに人の気配を感じつつそのまま撤収します。息をひそめて将門の後姿を見ていた美しい姫と乳母は、礼儀知らずの者たちが多い京の町には珍しい、しっかりした人物だと関心を持ちます。乳母は、いつの日か立派な殿御が姫を救ってくれないだろうかと淡い期待を抱きます。

美しい姫は、乳母の愚痴にまたかという顔ですが、姫は皇子の姫君であり、その誇りを失ってはならないと諭します。ただ誇りだけでは腹は膨れず、貯えも底を尽いて明日をどう生きればいいのかと乳母は危機感いっぱいなのです。皇子は帝の皇子、姫は皇子の姫君、嵯峨天皇の曾孫にあたりますが、こんなに貧しい暮らしを強いられているのは藤原氏の飽くなき貪欲のせいだと、乳母は恨み節です。

藤原時平は菅原道真を都から追い落とし、筑紫大宰府で死去した道真の怨念が後の世に炎上や落雷を引き起こしたと言われています。乳母は火雷(からい)天神にお参りして多治比の文子(あやこ)に姫の将来を占ってもらいたいと考えていますが、姫は首を横に振ります。「私は知りたくありません。自分の運命など……このまま滅びていくならそれでもいいの。何も知らないまま滅びていきたい」

 

将門にとっては初めてのお役目です。大中臣康継から、忠平の書状を鳥羽御坊まで届けて返書を得てくるよう命じられ、夜道を勇んで出かけます。坊主に直接対面して書状を手渡すと、承知したとの返事をもらいます。返書を得てくるように言われていたため、戸惑う将門ですが、遊びのお相手の約束時間を一時ほど遅らせてほしいというだけです。わざわざ返書にしたためるほどのことではありません。

その帰り道、将門はさっそうと駆け抜ける盗賊の一団を目撃します。幸い武装している将門は付き従う伊和員経を屋敷に先に帰すと、塀に上って盗賊たちの動きをじっくりと観察します。そして弓を絞り矢を放つと、盗賊の一人に命中。将門は盗賊たちの前に姿を現し、対決姿勢を見せます。小次郎の中で何かが燃えていた。忘れていた野生の血が呼び覚まされたようであった。

飛んできた別の盗賊の攻撃を受けながら将門は善戦しますが、口笛を合図に盗賊たちは一斉に撤退していきます。そして一人残った盗賊との直接対決、全く怯まない将門の攻撃に、盗賊は太ももに傷を負い、面は割れて地に落ちます。弟の季光を殺された兄・季重は将門を恨み斬りこんできますが、員経が数人を連れて戻ってきて、季重は逃亡します。「仇は……きっと討つ!」

将門と員経たちはしばらく季重を追いますが、途中で見失います。ただそこにいたのは先輩家人の三宅清忠でした。将門が賊に襲われたと聞いて駆けつけましたが、実は賊を見つけて将門から仕掛けたと見抜いています。明日報告するという将門に、清忠は自分に任せておくように微笑み、帰ろうと促します。

 

とぼとぼと帰って来た武蔵を出迎えたのは、藤原純友でした。武蔵の顔を見て純友は今夜は不首尾だったと悟ります。季光を討たれ、季重にも手傷を追わせた男……そのような者が京の都にいることが純友には意外でした。この時、純友の頭にはなぜか東の市で見た坂東の男、小次郎将門のことがひらめいていた。

そこに、耳に入れたいことがあると純友を訪ねてきたのは、あろうことか清忠でした。純友は、季光を討ったのが将門であると確信します。ただこのままでは、恨みに思った季重が将門をつけ狙うことは必至です。純友は、将門は味方にすれば頼もしい男で殺したくないと強く感じていました。

清忠を帰し、再び武蔵たちの前に戻って来た純友は、仇討ちしたいという気持ちを抑えてほしいと頼みます。衝撃を受ける武蔵と季重ですが、純友は仇が自分の友だちなのだと打ち明けるのです。「あの者の名は平 小次郎将門、左大臣の家人だ。俺にはあの男がどうしても必要だっていう気がしてならない。俺の大望のために」 季重は、その願いは聞けないと声を振り絞ります。

武蔵は、純友の大望が何なのか尋ねますが、今はまだ言えないと微笑みます。それは大望すぎて言っても信じてもらえないという気持ちもあるのかもしれません。純友と武蔵との仲は、以前純友が“琵琶どのの大臣(おとど)”と言われる藤原仲平の家人であったころからである。武蔵は琵琶どのの女房であった。武蔵とは生国が武蔵であるところからの呼び名である。

 

盗賊を追い払った昨夜の小次郎の働きが評判になり、小次郎に第二の仕事が命じられた。小一条院の大臣・左大臣忠平の五男師尹(もろただ)の警護である。師尹の警護と言えば聞こえは良かった。しかしこの13歳の少年の行く先は、さる姫君のところである。屋敷から牛車に乗った師尹、そしてそれに付き従う将門は役目に複雑な表情を浮かべます。

師尹の初寝の夢を妨げることのないよう──小次郎は屈辱感に満たされていた。これが名誉の役目なのであろうか。かつて小次郎は、常陸府中の大掾・源 護の館に忍んだ。そこに恋する小督がいるからであった。そしてそれこそが、今 小次郎が平安の都のここにこうしていることのそもそもの原因なのであった。

左大臣忠平の子・師尹が、左近衛少将良高の姫のもとへ忍んで、上々の首尾にて世の引き明けに後朝(きぬぎぬ)の別れして帰ったと、都では高い評判のこととなった。

 

「亥刻 六角堂裏」とだけ書かれた紙が自邸に投げ込まれ、将門はその時刻に六角堂へ向かいます。そこで将門を待っていたのは螻蛞婆でした。将門は促されるまま螻蛞婆の導きについていきます。2人の後を追ってくる季重に螻蛞婆は気づき、「今宵は私が先約、悪う思うてくださるな」とつぶやくと、追ってきた季重はその場に立ち尽くします。

螻蛞婆に案内されて将門が足を踏み入れたのは、見るも無残な荒れ屋敷ですが、お着きにございます という螻蛞婆の声に合わせ、燭台には灯をともされ、女たちの舞が始まります。そして屋敷の奥に姿を見せたのは純友でした。「将門の殿、ようおいでなされた」とニッコリ微笑む純友です。やがて天下を揺り轟かす2人の男の出会いである。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
──────────
[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
仲谷 昇 (藤原忠平)
多岐川 裕美 (小督)
木の実 ナナ (美濃)
──────────
緒形 拳 (藤原純友)
太地 喜和子 (武蔵)
吉行 和子 (螻蛞)
──────────
奈良岡 朋子 (乳母)
吉永 小百合 (貴子)
──────────
制作:小川 淳一
演出:松尾 武

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第8回「京の姫みこ」

|

« 大河ドラマ光る君へ・(03)謎の男 ~まひろに近づく男の狙いは~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(08)京の姫みこ »

NHK大河1976・風と雲と虹と」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ光る君へ・(03)謎の男 ~まひろに近づく男の狙いは~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(08)京の姫みこ »