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2024年2月18日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(07)おかしきことこそ ~まひろ・散楽を披露~

この夜、花山天皇がただ一人心から愛した忯子(よしこ)が、おなかの子とともに世を去った。死は穢(けが)れと考えられていたこの時代、天皇はじめ家族たちが遺体に近づくことは許されなかった。帝は気が狂いそうになりながら、忯子の元へ駆けつけようとしますが、従者たちに止められます。せめて忯子がいた証をと思ったのか、忯子が身に着けていた装束を抱きしめ涙に明け暮れます。

寛和元(985)年、その夜に屋敷に忍び込んで盗みを働いた直秀たちは、盗んできたものを草むらに広げて姿を消します。やがて口笛を合図に民たちが集まって、「お天道さまのお恵みだ!」と大喜びで品々を物色します。その盗賊を射た藤原道長は、その鈍い感触が手に残っています。同僚武官の宗近は、獲物の狩りと同じで盗賊はそれらより下だと慰めます。

戻ってから傷の手当てを受ける直秀ですが、意外に深手を負っていてとても痛がっています。仲間の輔保(すけやす)は直秀が発熱し始めたことに危機感を抱き、磯丸も受けた矢が毒矢ではと心配しますが、貴族は毒矢は使わないそうです。しっかりしろよ、と百成(ももなり)は直秀の腕に白い布を縛り、その痛みに直秀は声を上げます。

「おかしき者にこそ、魂は宿る」と絵師は言っていました。「下々の世界では、おかしきこそこそめでたけれ」と直秀は教えてくれました。おかしきことこそ……。まひろは月を見上げます。

翌朝、藤原兼家は安倍晴明を呼び出し詰問します。腹の子は呪詛せよと言ったものの、弘徽殿(こきでん)の女御・忯子の命まで奪えとは命じたわけではないのです。晴明は、忯子が亡くなれば帝は政を投げだすか再び女に現(うつつ)を抜かすかになるわけで、兼家にとっては吉兆のはずだと主張します。「安倍晴明の仕事は、政をなす人の命運をも操ります」

そこに宿直の番から道長が帰ってきました。兼家は道長が盗賊と渡り合って頼もしくなったと目を細めますが、人は殺めるなとくぎを刺します。人の命を操り奪うは卑しき者のすることだ、と言って出ていきます。道長は晴明に父の失礼を詫びますが、晴明にとってはこのやり取りが楽しくて仕方ないらしいのです。ただ笑顔を見せない晴明に、道長は困惑します。

兼家が寧子(やすこ)の屋敷で休んでいると、悪夢から飛び起きます。兼家は院(先帝=円融天皇)にも帝にも忯子にも呪われているとガタガタ震えますが、寧子は兼家を抱きしめて落ち着かせます。「大丈夫大丈夫、道綱のことお願いしますよ。殿のお子ですよ、道綱も」 怖い夢と道綱と何の関わりがあるのだと兼家は疑問に感じますが、いまは寧子に甘えるだけで精一杯です。

散楽一座のねぐらでは、座員がアクロバットな動きの訓練をしていますが、直秀は左腕をケガしているので座って見ているだけです。そこに現れたまひろは、直秀がケガをしているのに気づきます。猿も木から落ちるんだ、と直秀はふくれますが、それてしょげているのねとまひろはからかいます。

まひろは考えてきた、キツネにだまされるサルたちの話を披露します。サルの顔をしているのはおなじみ右大臣家一族で、神のふりをしているキツネに福をくれとすり寄るわけです。その話を元に、座員たちが物語を組み立てていきます。果たして東の市で、まひろ案による散楽が始まります。観客の受けは上々で、まひろは充実した何かを感じていました。

 

右大臣兼家の横暴を阻んでみせると意気込む藤原義懐は、帝の一任を取りつけて陣定(じんのさだめ=重要政務の審議会)に赴きます。藤原為時は何もかも義懐に一任するのに難色を示しますが、帝にとって信用できる人物が義懐と為時しかいないわけです。自分が退けば兼家の孫(懐仁親王)が即位し、兼家は摂政になれるわけで、そのために忯子が呪詛にかけられたかもしれないと帝は兼家を疑います。

為時は、兼家が呪詛を企てたかどうかには答えず、東宮(懐仁親王)がまだ幼いことを理由に、いま天皇に即位することは兼家でも望んでいるとは思えないと冷静に返答します。兼家は、帝の気持ちや皆が望むことを義懐よりもずっと分かっていると肩を持つ為時に、やっぱり義懐が嫌いなんだと、帝はため息まじりに睨みつけます。「ああ、忯子に会いたいな……忯子……」

陣定では、帝が亡き忯子に「皇后」の称号を贈りたいとの議題に、身分の下位の者から意見を述べていきます。前例がないからと認めない意見が大多数ですが、義懐は皇后を追号してなぜいけないのかと反発します。そんな中、兼家は「先例が見つかればよろしいかと」と意見を述べ、その場に居並ぶ者たちは、えっ!? と兼家の顔を見つめます。

そんな中、藤原実資は帝が義懐を重用することに愚痴をこぼします。義懐は昨年蔵人頭(くろうどのとう)になったばかりで、先帝の時代に蔵人頭であった実資を追い越して、今は参議です。実資からみれば、そんなことはあってはならないことなのです。妻の桐子は、夫の不運は無念ですが、毎日毎日愚痴を聞かされて「くどい」とうんざりします。

そして義懐の出世を妬むのは、藤原道兼も同様です。兄の藤原道隆を追い越して参議になったのだから当然です。道隆自身が気にしていない様子なのは、兼家の時代つまり道隆らの時代はいずれくると余裕があるからなのかもしれません。それよりも、道隆は気が回るだけに父に酷使される道兼を心配しています。「わしは分かっておるゆえ、お前を置いてはゆかぬ」 道兼は涙を流します。

義懐への不満は、忯子の兄・藤原斉信も抱えていました。父も自分も不承知だったのにも関わらず、義懐がしつこく屋敷に来て帝の願いを叶えさせられたのです。藤原公任は、忯子が身罷(みまか)る前に偉くしてもらったらよかったな、と冗談を言いますが、道長は姉の詮子のこともあり、「入内は決して女子を幸せにはせぬ」とつぶやきます。湿った空気を打破すべく、斉信は打球をしないかと誘います。

その帰り道、従者の百舌彦はかつて道長がまひろに送った文のことを持ち出し、「あれはだめだったのでございますか」と勇気を振り絞って尋ねます。返事がないのは、先方の従者(=乙丸)が頼りなげだったからではないかと疑う百舌彦は、確かめましょうかと言いますが、道長は断ります。「もうよい。フラれた!」

右大臣家の武者たちが道長に一礼しながら大路を駆け抜けていきます。怪訝に感じた道長は屋敷に戻り、武者たちがどこへ行ったのかと尋ねます。なんでも藤原への中傷が過ぎる散楽があるといって怒って出ていったと聞きますが、それを言い終わらないうちに、なぜ止めないのだ! と怒鳴りつけ、慌てて来た道を引き返していきます。温厚な道長が怒鳴るなんて、とても珍しいことです。

市の散楽の舞台では、武者たちが役者たちを殴りつけます。追ってきた道長は必死に止めますが、もはや道長ですらその暴動を抑えることはできません。そこに検非違使たちが乱入し、散楽を見ていたまひろは逃げ場を失いますが、捕まえられたところを道長はまひろの手を引き、連れ出します。乙丸はまひろをかばって男になぐられ、のびて気を失っています。

人気のないところまで逃げて来た道長とまひろですが、手をしっかりと握っていることにふたりとも照れています。まひろはその散楽は自分が考えたと打ち明け、みんなに笑ってほしかっただけと言い訳します。俺たちを笑いものにする散楽をか? と道長は呆れた表情を浮かべつつも、それを責めることはせず「俺も見たかったな」と優しい言葉をかけます。まひろは一瞬だけ、はにかむ表情を見せます。

そこに乙丸と直秀が駆けつけます。乙丸は自分を置いてまひろが逃げたことをひどい! と言って、まひろを連れて帰路につきます。残された道長と直秀ですが、道長は右大臣家の武者たちが乱暴を働いたことを直秀に詫びます。お前らの一族は下の下だなと、直秀は相変わらず歯に衣着せぬ発言をしますが、道長は「まったくだ」と舌打ちし、直秀もプッと吹き出して笑います。

 

帝の様子を知らせる役目を負っている為時は、久々に兼家に報告に上がります。ただ、次第に弱気になっていく帝の様子を知らせることに辛さを覚えた為時は、役目からの辞退を兼家に申し出ます。帝が信じている自分さえ、実は兼家とつながっていることが、為時には耐えられないのです。兼家はこれまでの為時の役目を労わり、終わりとします。為時はこれまでの兼家のご恩に対して深々と頭を下げます。

「まひろ、喜べ。父は兼家さまの間者をやめるぞ」 帰宅した為時はまひろと、遊びに来ていた藤原宣孝に報告します。まひろは父の判断を歓迎しますが、宣孝は兼家が一度掴んだ関係をやすやすと手放すとは思えないと懐疑的です。次の帝は兼家の孫であり、右大臣側にいないでどうすると叱責した宣孝は、為時にもう一度東三条殿の屋敷に行って詫びを入れて撤回して来いと立腹します。

左大臣家の集いでは、打球の誘いが各屋敷に届いているそうで、源 倫子や茅子、しをりは参加するそうですが、まひろはその案内状に道長の名を見て、行かないことにします。若い殿御を見られる機会なんてそうそう巡ってくるものではないと、みんなでまひろを誘いますが、その声が屋敷内に響き渡り、赤染衛門ははしたないとたしなめます。倫子はちゃっかり、赤染衛門も打球に誘っています。

打球会場では準備が着々と進められる中、倫子たちが並ぶ横にはききょうが座っています。清原元輔の息女は才気あふれる方との評判を赤染衛門が伝えると、ききょうは胸を張ります。道長、公任、斉信、行成が参加予定でしたが、行成がにわかの腹痛で欠席します。4人 対 3人では勝負にならないと困惑する斉信ですが、道長は“最近見つかった弟がいる”と、百舌彦に直秀を呼びに行かせます。

まひろはそわそわして行ったり来たりしますが、意を決して打球の会場に向かうことにします。始まる直前に駆け込むまひろですが、前にはききょうが座っていて、まひろを振り返りニヤリとします。まひろは圧倒されつつ、空いたところに座ります。打球は紀元前6世紀ごろのペルシャを起源とする。日本に伝わったのはイギリスでポロとなるより何百年も前のことであった。

太鼓の音に合わせて入場してくる道長たちですが、ちゃっかり直秀が参加しています。しかし4人の息はぴったりで、次々と球を入れて得点を得ていきます。まひろは倫子が連れて来た猫の小麻呂をあやしていてほとんど見ていませんが、顔を上げた時には道長と目が合って、恥ずかしくて目を伏せます。そして道長の活躍を見た倫子は、目が星になっていました。

雨が降り出しました。小麻呂が逃げ出し、まひろは屋敷の中に入った小麻呂を追いかけます。しかしそこに打球の試合を終えた斉信たちが戻ってきて、まひろは思わず隠れます。そうとは知らず、斉信たちは見物に来ていた姫たちの品定め話をしていて、まひろはそれを立ち聞きしてしまいます。斉信はお気に入りのききょうだけでは釣り合いが取れないと、まひろも誘っていたわけです。

「ききょうも遊び相手としてしか考えてないけどな」「家柄のいい女は嫡妻にして、あとは好いた女子のところに通えばいい」という斉信の言葉も、「為時の娘みたいに邪魔にならないのがいい、身分が低いからダメだけど」「いいところの姫の婿に入って、女子を作って入内させて家の繁栄を守り次の代につなぐ」という公任の言葉も、まひろには筒抜けで、まひろは顔色を失います。

そそくさと屋敷を後にするまひろを見かけた直秀は、あっ…と思いますが、斉信たちにバレないように黙って見過ごします。雨に濡れた身体を拭う直秀の左腕に矢傷を見つけた道長は、直秀があの時の盗賊だと察知します。そしてまひろは、土砂降りの中を駆けて屋敷に戻っていきます。

 

越えてはならない神社の垣根を踏み越えてしまうほど、恋しいお前に会いたい──。夜、道長からの恋文を出してきて読み返したまひろは、その文を灯りの火で燃やしてしまいます。まひろの顔には涙が流れていました。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
秋山 竜次 (藤原実資)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
本郷 奏多 (花山天皇)
ファーストサマーウイカ (ききょう)
毎熊 克哉 (直秀)
益岡 徹 (源 雅信)
財前 直見 (藤原寧子)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:中島 由貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第8回「招かれざる者」

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