大河ドラマ光る君へ・(08)招かれざる者 ~因縁の相手とまひろ対面~
寛和元(985)年。藤原道長は打球を見に来ていたまひろの姿が頭から離れず、ため息交じりで月夜を見上げます。一方まひろも、文机に向かいながら道長のことを考えていましたが、こちらは同じ月を見上げながら、「あの人への思いは断ち切れたのだから」と自分を納得させようとしていました。
左大臣家の集いですが、話はもっぱら打球のことです。まひろは小麻呂を探しに雨に打たれていたので風邪気味ですが、茅子は藤原公任に心を奪われ、しをりは道長だと譲りません。源 倫子は、公任は少しおとなしかったと微笑みます。赤染衛門は道長と息がぴったりの公達(きんだち)がお気に入りですが、倫子から人妻なのにとからかわれます。「人妻であろうとも、心の中は己だけのものにございますもの」
打球の打ち上げ会? が東三条殿の道長の館で行われ、藤原行成の代わりに打球に出た直秀も呼ばれます。公任も藤原斉信も直秀を道長の弟だと信じ切っているのです。直秀は道長を「兄上」と呼び、身分の低い出だから屋敷を案内してほしいと懇願します。しかし道長の脳裏には、あの夜に矢を射た相手と横に座る直秀がつながって仕方がないのです。
屋敷を案内しながら、「“兄上”はやめておけ」と道長は直秀につぶやきます。道長は左腕の矢傷のことを持ち出しますが、けいこの途中でしくじったと直秀はごまかします。門の場所、東宮の母(=詮子)の在所など事細かに聞いてくる直秀に、藤原をあざ笑いながらやけに興味を持つと道長は皮肉ります。「俺は芸人だぞ。よく知ればよりあざ笑えるからだ」
一座のねぐらを訪ねて来たまひろは、直秀が公達を知って散楽に生かすために打球に出たと知り頷きます。あの時彼らが語っていた「女子を作って入内させて家の繁栄を守り次の代につなぐ」などの内容について、直秀もまひろも聞いていました。直秀が走ってゆくまひろを目撃していたから知っているわけで、まひろはそれを思い出しつつ、どうでもいいけどとうつむきます。
やがて京を離れるという直秀に、京の外の世界を尋ねるまひろは目を輝かせます。海があり、海の向こうにはかの国がある。海には漁師、山にはきこり、かの国と商いをする商人もいる──。所詮都は山に囲まれた鳥かごだ、という直秀の言葉が胸に刺さったのか、一緒に行くか? と見つめられたまひろは、直秀をじっと見つめ返します。「……行っちゃおっかな」
花山天皇は藤原義懐を従二位に上げ、権中納言に任命します。このままいけば関白の座を追われるかもしれないと、藤原頼忠はもう終わりだと悲観的ですが、弱気なことを! と藤原兼家は叱咤します。源 雅信は、今こそこの3人が仲間割れしないことが大事だと考えていますが、兼家はここぞとばかり、三男道長を雅信の娘・倫子へ婿入りさせてほしいと話を持ち出します。
従五位下 右兵衛権中将のような下位の者を婿入りさせられないと、雅信は藤原穆子(むつこ)に愚痴を言いますが、右大臣の三男だから出世は間違いないと穆子は諭します。ただ今の状況では義懐が力を持つことは確実で、その出世も確実なものとは言えず、そこが悩ましいところです。雅信は倫子の婿に公任を考えていますが、女たちに人気の公任では倫子が寂しい思いをするだけだと穆子は反対します。
とかく子どもは父親に似ると困り顔の雅信ですが、ネコ命の倫子は誰に似たのかという話はさておきw、道長を倫子の婿にという話をしていたと穆子から聞いて、頬を赤らめます。まんざらでもない倫子に雅信は意外ですが、それを指摘されると「まんざらでもないような顔など、しておりませぬ!」と怒ってしまいます。しかし居室に戻った倫子は、打球の道長のことが忘れられず、胸のときめきが止められません。
寛和2(986)年、陣定(じんのさだめ)を当分の間開かないと帝が決定をします。反論する兼家は、義懐に「帝の叡慮に背くは不忠の極み」と言われて、どちらが不忠かと義懐を非難します。帝といえども政を誤ることもあり、それを陣定で諫めてきた古来からの習わしに背くものなのです。義懐が帝を諫めないため、兼家が帝のところへ諫めに行こうとして、卒倒します。
目の上のたんこぶがいなくなった! と帝はニヤリとします。傍らでは義懐のほか、藤原為時も控えています。これは天の助けだと義懐が告げると、帝は大喜びしていますが、その胸中を他では見せないようにとたしなめられます。きっと忯子(よしこ)が助けてくれたとつぶやく帝は、フッと表情を曇らせ忯子のことを思い出します。
横たわる兼家を看た薬師は、毒を盛られた様子はないものの、このままでは命が危ういと藤原道隆に告げます。今はともかく道隆・道兼・道長の3人で魂が去らないように呼びかけるしかないと、薬師もさじを投げます。そこに詮子が現れ、兄弟4人が集まって今後を話し合います。兄弟4人が力を合わせてという点では共通の認識です。
兼家の代理を道隆が務めますが、義懐に追越されて参議にもなっていない道隆に務まるかと詮子は皮肉ります。詮子は東宮の懐仁親王とともに左大臣雅信の忠誠を得ていて、特に影響はありません。詮子は道長を左大臣家に婿に出そうと話を進めていたと明かし、道隆や道兼にも源家と手を組む覚悟を求めます。詮子は雅信の動きを見極めて文をしたため、道長に届けさせるように伝えます。
呼び出した安倍晴明が来ると、早速にお祓いの祈祷が始まります。祈りを捧げていた巫女が倒れ、「命を返せ……子を返せ……!」と発します。乗り移った者の名を聞いた坊主や道隆たちは、一様に衝撃を受けます。弘徽殿の女御・忯子の名を告げたのです。兼家に襲い掛かる巫女を必死で止める道長は、代わりに巫女に首を絞められますが、晴明が指を鳴らすと、巫女は急にパタリと倒れて意識を失います。
忯子の怨念がなぜ兼家についたのか? と道長は道隆と道兼を問い詰めますが、腹の子だけを流すつもりで晴明に呪詛をさせたら、忯子まで亡くなってしまったということを道隆から聞き出します。そして帝は、呪詛を仕組んだ兼家を恨む忯子が成仏できていないと知り、かわいそうに……と泣き崩れます。
「右大臣と手を切っておいてよかったですね!」と愉快そうな惟規を、為時はたしなめます。兼家に東宮(※当時)への漢学指南役の斡旋がなければ飢え死にしていた可能性すらあるのです。兼家は政の名手で、関白や左大臣ではそうはいかなかった。いま権勢をふるう義懐は帝の寵愛をいいことに横暴が過ぎるわけです。兼家を追い詰めたのは義懐だとつぶやきます。
父上は我々をどこに導こうと? 我らの行く先は? と、道長は横たわる兼家に尋ねますが、昏睡状態の兼家は答えません。「生き延びて、その答えを教えてください」 兼家を見舞うのは道長だけではなく、道隆も詮子も、そして道兼もそれぞれが兼家を見舞います。道兼がそっと兼家に触れようとするとき、兼家がカッと目を見開きます。
為時が宮中の書庫(ふみぐら)の整理をしていると、道兼が現れます。整理を手伝おうという道兼ですが、父を見舞ったところで嫌われているからと表情を曇らせます。ふと道兼の腕が露わになり、あざだらけです。昨晩の正気に戻った兼家にやられたらしく、道隆や道長とは違って道兼だけは幼いころから殴られるなど折檻を受けてきました。生死の境をさまよいつつ道兼を嫌う父……。為時は道兼に同情します。
夕方、為時が帰宅すると、道兼が来訪していると知ります。ちょうどその時まひろも帰宅して、為時は慌てて外にいるように伝えますが、道兼に見つかってしまいます。一礼して頭を上げると、目の前にいるのは母の敵──。まひろの表情が固まります。「ご息女か?」との道兼の問いにも答えず屋敷内に駆け込み、座り込んでしまいます。傍らには母が愛用した琵琶があり、まひろはそれを見つめます。
為時は道兼の酒に付き合いますが、そこに琵琶を手にしたまひろが現れ、お耳汚しに と琵琶を奏で始めます。幼いまひろに笑顔を振りまく母のちやはのことを思い出しながら……。身体中に響き渡ったと賞賛を送る道兼は、琵琶を習った母は7年前にみまかったとまひろに聞きます。「ご病気か?」 為時もいとも表情を固まらせる中、まひろは表情を変えないまま「はい」と答え、下がっていきます。
「一族の罪を許してくれ。俺はまひろの言うことを信じる」 母は道兼に殺されたと打ち明けたまひろに、兄はそのようなことをする人ではないと言わず、詫びる道長の姿を思い出していました。道兼が帰り、為時はよく辛抱してくれたとまひろに詫びます。「私は道兼を許すことはできません。されどあの男に自分の気持ちを振り回されるのは、もう嫌なのです」
帝に書状を運んでくる道兼ですが、帝は道兼が右大臣家の人間であることから遠ざけようとします。しかし為時は道兼が兼家から疎まれていることを伝え、腕にできたあざを見ると、帝は力の限り腕を掴みます。痛いのを必死でこらえる道兼ですが、病に倒れても息子を殴るのかと大笑いします。「地獄に落ちるな、右大臣は」
道長は半月を見上げていました。その時「上だ!」という警護の者の声が聞こえます。忍び込んだ盗賊が逃げていくところでした。二手に分かれた盗賊たちですが、取り押さえられた男を助けるべく、逃げかけた盗賊が引き返してきて応戦しますが、多勢に無勢、捕らえられてしまいます。
覆面をはがされ、その顔を見た道長は、あまりの衝撃に言葉も出ません。男は直秀だったのです。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
高杉 真宙 (藤原惟規)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
石野 真子 (藤原穆子)
本郷 奏多 (花山天皇)
毎熊 克哉 (直秀)
橋爪 淳 (藤原頼忠)
益岡 徹 (源 雅信)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・高橋 優香子
演出:佐々木 義春
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第9回「遠くの国」
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