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2024年3月24日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(12)思いの果て ~道長の縁談が進みまひろは~

寛和2(986)年、まひろと乙丸が高倉に行ってみると、藤原為時の介助を受ける女・なつめが出家するところでした。よかったな、と為時はなつめの頭を優しく撫でますが、なつめは息も絶え絶えに、別れた夫との間の娘・さわに会いたいと為時に訴えます。まひろが来ていることに気づいた為時は、娘に会わせてやりたいとそのことをまひろに依頼します。

なつめが出家し、いよいよかと悟ったまひろは、教えられた屋敷へと急ぎ、さわを連れて戻って来ます。為時はさっそくなつめとさわを対面させ、ふたりの手をつながせます。なつめは声を上げて涙を流し、その対面をまひろはじっと見守ります。為時に慈しまれたなつめは、穏やかに世を去った。

日常が戻って来たまひろを、喪が明けたさわが訪ねてきました。家のことでドタバタと走り回るまひろに、憧れの気持ちを抱いたようです。さわの父は後妻の子ばかりを可愛がり、それも宿命だと諦めているさわは、まひろの庭仕事の手伝いをさせてほしいと名乗りを上げます。床を拭きあげ野菜を収穫するさわに、まひろは母を亡くした悲しみに共感したのか、母愛用の琵琶も弾かせて教えてあげます。

そのうちさわはまひろがたくさんの書物を読み、和歌も上手だと知り、たくさんの殿御から文を送られたのだろうと想像をたくましくします。まひろに文を送ったのは一人だけですが、その相手・藤原道長との恋を振り返るまひろに、いま思い出していましたね? とさわは意地悪そうな顔で見つめます。その相手が“背が高くてシュッとした感じ”とさわは勘を働かせます。「隠してもお顔に出てますよ! まひろさま」

藤原宣孝が為時家の窮地を救おうと、まひろの婿に正四位下左中将の藤原実資はどうかと提案してきました。まひろは実資を五節の舞の時に見かけただけですが、為時は位が高すぎて実資は恐れ多いと難色を示します。近ごろ北の方を亡くした実資はかなりの知恵者で、まひろの賢さに惹かれるかもしれないというのです。「学識があり人望があり、何より財がある。まひろの婿に願ってもないフフフ」

実資は赤痢にかかっていた。蹴鞠(けまり)の集いで実資を知る宣孝はたくさんの巻物を献上し、文とともに実資に渡してほしいと郎党に申し出ます。お会いになれますが? と言われて、いやいやと固辞する信孝はサラサラと筆を進めますが、腹を押さえ家臣に支えられながら厠へ向かう実資を遠巻きに見て、宣孝は「あれはダメだ、もう半分死んでおる」と目標を変えることにします。

宣孝に託された書状に目を通す実資は、“鼻くそのような女との縁談あり”と日記に記します。そして傍らにある巻物が気になって、ほどいて開いてみると、中から天女の絵が出て来ました。しかもうっすらと身体のラインが写り、「おふ……見えておる」と実資は鼻の下を伸ばして喜んでいます。

まひろは野菜についた泥を水で洗って落としながら、“見知らぬ方の北の方になる”ことを考えていました。道長の、2人で生きていくために考えたこと──妾になってくれ、という求婚を、耐えられない! と拒絶したまひろは、あの場面を思い返していました。「ならば、どうすればいいのだ」と、まひろは汗を拭います。

 

東三条殿に藤原道綱が訪ねて来て、道長と酒を飲んでいます。藤原兼家は妾である寧子(やすこ)のところに通っていると打ち明ける道綱は、男から見れば嫡妻も妾も大事にしているけれど、妾にしてみればいつ来るかも分からない男を待ち続け、常に辛いのだとつぶやきます。道長の脳裏に、妾の話を持ち出して拒絶したまひろのことが思い出されます。「ならば、どうすればいいのだ」

直廬(じきろ=政務室)に源 雅信を呼び出した兼家は、雅信の娘・倫子を慕っている道長の思いを叶えてやりたいと言い出します。難色を示す雅信ですが、左大臣家の婿にふさわしい地位を与えていくとか、承諾いただいたと伝えてよろしいかとか、雅信にたたみかけます。雅信は、娘の気持ちも聞いてみないとというのが精一杯です。「どうかお力添えを賜りたく、お願いいたします」

なぜ下女に暇を出したの? とのしをりの疑問に、父が官職を失って雇えなくなったとまひろは返答しますが、デリカシーのない質問をしたとしをりは沈んでしまいます。まひろは明るく、畑仕事は楽しいし、床を拭くのも板目が龍に見えたり川の流れに見えたりして飽きないと助け舟を出しますが、それでもどんよりとした雰囲気は変わらず。倫子は「板目、私も見てみましょ」と立ち上がります。

左大臣家の集いも終わり、しをりや茅子が帰っていきます。まひろは倫子に助けてくれた礼を言いますが、倫子はまひろが堂々として立派だったと評価します。倫子はまひろがこの会に来るようになって楽しくなったし、始めこそ居心地が悪かったまひろも、この会に参加することが癖になってしまったようです。二人でうふふと笑い合う、もはや“同志”です。

兼家からの書状を持って、道長が土御門殿の雅信を訪ねます。書状には「此者道長也 摂政」とだけあります。雅信は大きくため息をつき、素早いのうと皮肉を漏らします。道長はここで行われている集いの会に興味があるようです。その様子を対岸の御簾の内側から、藤原穆子(むつこ)と倫子が様子を窺っています。「……涼やかだこと」

対面も終わり、(摂政兼家は)なめておる! と雅信は立腹しますが、私は藤原道長さまをお慕いしております、と倫子は打ち明けます。摂政家でなければよかったのだがと雅信は難色を示しますが、「道長さまをどうか私の婿に……倫子の、生涯一度のお願いでございます」と倫子は雅信に泣きつきます。愛娘にここまで懇願されては、父としては叶えてやらないわけにはいきません。

詮子(あきこ)は、道長が土御門殿に赴いて倫子の顔を見たのかと尋ねます。姉として弟の縁談に口を挟まずにはいられないようで、詮子は源 高明(たかあきら)の一の姫・明子女王と会わせようとします。明子なら以前見かけたと道長は興味がなさそうですが、詮子はしきりに対面を勧めてきます。「醍醐天皇の御孫君よ? もう一回見なさい、妻にする気分で。妻を持つなら1人も2人も同じでしょうに」

源 高明を大宰府に追いやったのは藤原の仕業で、3年前に亡くなりましたが、このままでは高明の怨念で帝や摂政家に災いが起きると、詮子は心配しているのです。そのために道長が高明の忘れ形見を妻にして慈しみ、怨念を鎮めて高貴な血を摂政家に入れれば最高! と詮子はなぜか楽しそうです。「分かりました。お任せします……えっ今日ですか!?」

明子は、いろいろと世話を焼く詮子に“何のかかわりもない自分になぜ?”と訝(いぶか)ります。御簾の外で道長が控えている前で、一瞬、冷たい風が吹き抜けたように間が開きますが、詮子は道長の話を持ち出し、優しく気立ても良いと伝えたうえで、お世話させていただきたいと言います。明子は行く当てもない身だからと承諾し、詮子は御簾を開けさせますが、そこには道長の姿はありません。「……あら?」

高松殿に戻った明子は、兄の源 俊賢(としかた)に相談します。俊賢は、皇太后(詮子)の後見のもとで道長の妻になれば、醍醐帝につながる自分たちにも光が当たるかもしれないと大いに賛成します。こちらは明子の兄・源 俊賢である。明子は藤原の施しが欲しいのかと冷たく言い放ちます。

明子の目論見は、道長の妻になって兼家に近づき、その髪の毛一本手に入れれば呪詛できるというわけです。いらぬことをするなと俊賢はたしなめ、道長の妻になって幸せと栄達を手に入れろと諭します。「私の心と身体なぞ、どうなってもよいのです。必ずや兼家の命を奪い、父上の無念を晴らします」

 

竈(かまど)に火吹き竹で空気を送り込むまひろですが、もうそれくらいで、といとに止められるぐらい思いきり空気を吹き込みます。「北の方になるなら誰でもいいの? このままあの人を失ってもいいの?」と、まひろは心の中で自問自答をしています。

道長は藤原行成の指導の下、かなを書く練習をしていました。甘えていたのは自分だと思い至り、心残りなどは断ち切らなければならない……と思いながら、かなは難しいと大きくため息をつきます。では次はこれを書いてみましょう、と練習を続ける二人に、藤原公任は目を丸くします。「道長がやる気になっているの、初めて見た」

屋敷に帰った公任は、道長の見たままを父・藤原頼忠に報告します。道長までやる気を出しているということは、摂政家がすべてを意のままにしようとしている証拠……。自分が最も賢く先頭を切って上がっていくつもりだった公任ですが、頼忠は内裏に出仕するのをやめようと思うと打ち明けます。「ああ、それと、摂政家では道兼の懐に入っておくのがよいとわしは思う。道兼をそらすな」

その道兼は、藤原顕光らに“例の一件”をよしなに、と挨拶して回ります。「さすれば摂政さまもお喜びになりましょう」 そして迎えた庚申待(こうしんまち)の夜──。庚申待とは古代中国起源の行事である。この夜、人々は眠らない。眠ると腹の中にいる3種の虫が天に上り、天帝にその人の罪を告げると言われていた。

倫子はネコの小麻呂を抱いて、明子は書状をしたためながら、そして道長も文机に向かいながら夜を迎えます。為時家ではさわが遊びに来ていて、まひろと帰って来た弟の藤原惟規(のぶのり)と3人で雑談しています。「俺に惚れてもダメだよ。ロクな男じゃないから」と惟規は気取っていますが、そういうところがさわの心をくすぐっているのかもしれません。

まひろは、天帝に告げられたら困る罪があるかさわに尋ねられ、あると返答します。ちやはが死んだのは自分のせいだし、それで為時も傷つけ、好きな人も傷つけてしまいました。そのころ厠(かわや)に立っていた惟規は、門の外で乙丸を呼ぼうと小石を投げている百舌彦を見かけます。百舌彦が手にしているのがまひろへの恋文と知って、大喜びです。「おお! ご苦労! 渡しておこう!」

百舌彦が帰るのを見届けてからこっそり恋文を見た惟規は、道長って誰なの~? とまひろに尋ねます。返して! と手を伸ばすまひろですが、惟規がそう簡単に返すわけがありません。姉弟でもみ合っているうち、さわが手にします。優しい筆跡にうっとりするさわですが、まひろはさわから奪い取り、いつもの廃屋敷へ走ります。「妾でもいい……あの人以外の妻にはなれない……」

廃屋敷には道長が待っていました。道長は「左大臣家の一の姫に婿入りすることとなった」と打ち明けます。あまりの衝撃にまひろは言葉を失いますが、涙を浮かべながら、それでも倫子のことを大らかなすばらしい姫君と賞賛します。お幸せに、とつぶやくまひろに、道長は“妾でもよいと言ってくれ……”と願っていました。「私は私らしく、自分の生まれてきた意味を探してまいります。では」

道長はその足で土御門殿に向かいます。文もよこさずに!? と穆子は困惑しますが、道長を館に入れます。倫子の許しを得て中にゆっくりと近づいてくる道長を倫子は押し倒し、顔を胸にうずめます。「道長さま……お会いしとうございました……」 道長も倫子の顔を見つめ、触れ合います。

まひろが廃屋敷からとぼとぼと歩いて帰ってきました。屋敷を飛び出して行った時とはまるで違うまひろを察したのか、惟規は飲みなよと器を差し出します。酔ってしまうかも……とつぶやくまひろに、「こらえずともようございますよ」とさわは優しい言葉をかけてあげます。まひろは器の酒を一気に飲み干し、月を仰ぎ見て涙を流します。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
高杉 真宙 (藤原惟規)
秋山 竜次 (藤原実資)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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石野 真子 (藤原穆子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
橋爪 淳 (藤原頼忠)
益岡 徹 (源 雅信)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:佐々木 義春

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第13回「進むべき道」

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