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2024年3月 8日 (金)

プレイバック風と雲と虹と・(20)良子掠奪(りゃくだつ)

小次郎将門は、豊田の里から遠からぬあしえつ村?に、長百姓(おさびゃくしょう)の娘・桔梗とともにあった。その夜、上総の良兼の館では、源 扶(たすく)が侍女の元へ忍ぼうとして、深い霧にその方角を見失っていた。侍女の部屋と思って忍び入ってみると、そこで休んでいるのは良子でした。扶は良子を抱き寄せますが、良子はたまらず立ち上がります。「誰か灯りを! 灯りを持ってきて」

扶は良子に、この縁組はすべて姉(良子にとっては継母)の詮子が仕組んだことだと明かします。坂東平氏に比べれば、源家はまだ勢力も非常に弱く、縁組をして勢力の拡大を図ったのです。私が好きかと扶に問われた良子は、片思いのような、相手には子どもにしか映らないながらも気になっている相手がいると明かします。「あなたに次にお目にかかるときは、私の妻になる時だ」と告げ、失礼したと去っていきます。

舞の輪から勇気を出して将門を連れ出した桔梗は、ずっとおそばに、桔梗をお屋形に置いてくださいと告白します。しかし桔梗は、将門に好きな女の人がいると感づきます。他の男の妻になるのだと打ち明ける将門に、桔梗は見つめます。「殿は卑怯よ。欲しければ取ればいいのに」 “欲しければ取ればいいのに” その言葉は小次郎の胸にくさびのように打ち込まれた。

ひとり夜道を駆けていく桔梗を、将門も追いかけます。そんな2人のやり取りを木の上から鹿島玄明が見ていました。2人が消えていった方角を見つめていた玄明は、ふと人の気配を感じてひらりと身をかわすと、林の中から男の声が聞こえてきます。「我らは東の傀儡、御用があるなら我らが務めよう。小次郎どののご様子は」 玄明は、何かを忘れようとしている、とつぶやきます。

やがて、豊田の里に冬が来た。桔梗が希望通り館に働きに来るようになったころ、新たに加わった召使いに子春丸という若者がいた。子春丸は石田(しだ)の館に好きな女がいるようで、行って帰ってを毎晩繰り返しているようです。将門は伯父国香の様子を尋ねますが、特に変わった様子はなく。ただ源 護の若殿(扶)と上総の姫(良子)との婚儀が2月に執り行われると子春丸は教えてくれます。

明けて935年、承平5年という年が来た。承平天慶の動乱の口火が切られた年である。小次郎将門は館に住む人々を集め、正月を祝った。下働きの者たちに酒をふるまう将門は、子春丸から婚儀が2月7日に源 護の館で行われると聞かされます。薪を運んできた桔梗を将門は呼び止めます。「俺に言ったことがあったな。欲しければ取れと」 頷く桔梗に、将門の決意が固まります。

 

承平5年2月はじめ、今日の暦でいえば春3月である。あと3日で良子は石田の源氏館に入り、扶の妻となる。突然、小次郎の全身に噴き上げてくるものがあった。それは怒りであり、愛であり、燃える炎だった。将門は伊和員経(かずつね)に子春丸を呼ぶように命じ、自分がどんなことをしても付いてくるかと問います。「今さら水くさいことを」と頷きます。

坂東の男・小次郎にとって、決心はそのまま行動開始を意味した。彼は子春丸を使って石田源氏館の情報を集めた。それによると良子の輿入れの行列は祝言の前日2月6日に筑波山の南麓を通って石田に向かうという。2月6日早朝、小次郎将門は郎党伊和員経だけを連れ、豊田の館を出た。筑波山のふもとの草むらに身をひそめる2人、子春丸が駆け込み、花嫁行列が来たと知らせます。

馬に乗った詮子と良子、そしてその前後には警護の兵と侍女らが連なります。詮子は、後方の浮かない顔の良子を振り返り、人の妻となる時にかえって沈んでしまうものかしらと意地悪そうに笑います。良子には詮子の言葉がほとんど聞こえていなかった。自分の胸の中で、次第に高くなっていく問いの声に苦しめられていたのである。「私には、この道しかなかったのかしら」

花嫁行列が近づいてきました。将門は遠方から弓矢で先頭の兵を射抜くと、雄たけびを上げながら行列に突進します。そしてすれ違いざまに良子を抱きかかえ、突破していきます。掠奪の際に詮子は吹き飛ばされ、落馬します。良子の姿がないと分かると、警護兵が2騎、将門たちを必死に追いかけていきます。

突然のことに良子はパニック状態に陥りますが、将門は駆けながら「欲しいから盗った! そなたが愛しいのだ」と説明します。良子はその言葉を聞くと、フッと意識をなくします。後方からは兵たちが追ってきますが、良子が被っていた市女笠(いちめがさ)が落ちているのに気づきます。兵たちは下馬し周辺を詮索しますが、そこに立っていた水干姿の童に、姫を抱えた男の行方を尋ねます。

知らねえなあ、ととぼけた返答にイラッとする兵ですが、かまわず探します。すると道の先は行き止まりになっていて、兵たちは慌ててきた道を引き返していきます。去った後、童姿の螻蛄婆(けらばあ)は号令して、覆った草木を除けさせます。それを指揮したのは玄明で、将門も思い切ったことをしたものだと感心しますが、「これで黙ってはいまい、源家も上総の良兼も」と新たな心配が出て来ます。

 

豊田の将門館では母正子が険しい表情で、将頼も人の妻を奪うとはと怒り爆発です。将門は別室で、今宵そなたを嫁にする! と良子に宣言します。いつもの無邪気な笑顔は影を潜め、良子は衝撃を受けたような表情をします。将門は、気は確かか!? という将頼や郎党たちの攻撃には一切答えず、正子を無人の別室に呼びます。

正子は息子の暴挙に唖然としています。良子が他人の妻になるのが耐えられなかったとしても、良子の心がどうあれ妻にすると聞かない将門を、正子はたしなめます。「いいえそれはいけませぬ。女は弱いものとはいえ、いったん心にこうと決めたら、これほど強いものはないのですよ」

熱くなった母の胸の内に、息子のこれまでの数々の不運が思い出されていた。母の言葉が、小次郎に都の貴子のことを思い出させた。女というものがみな母の言葉の通りとは、小次郎には信じることが出来なかった。ともかく正子はまず、良子に会ってみることにします。良子が幼い時に一度会ったきりなのです。

良子は、幼い時分に正子と会ったことは覚えていません。正子は良子に心を強いることはさせないと約束します。良子は、なぜ欲しいと言わなかったのか、人の妻と決まって奪うのは卑しいことだと将門を非難します。正子は、将門が良兼に結婚を申し込んだものの、断られた経緯を打ち明けます。しかし良子は知りませんでした。自分への将門の思いを知った良子は、正子に初めて笑顔を見せます。

正子に言われて、己の行動を後悔している将門と、将頼と郎党たちのところに、正子と良子が入ってきます。「上総の良子でございます。私、小次郎さまの妻にしていただきます」と手をつきます。戸惑う将門に、正子は笑みを浮かべています。実は良子は子どものころから将門のことが好きで、嫁ぎたかったわけです。郎党たちは2人の結婚を大喜びします。

一時ほど経ってから、祝言が行われた。この時代、掠奪結婚といえば、豪族といわれるほどの身分の者はもうしないことであった。しかし民人にとっては違っていた。それは珍しいことではなかったのである。将門と良子、そして将門の郎党たちだけが集まる質素な婚儀です。2人が杯を交わすと、外から笛の音が聞こえてきました。

将門が庭に出てみると、木の上に玄明がいました。「おめでとう!」と祝福し、螻蛄婆も笑顔を見せます。そこに祝儀待ちの民人たちが雪崩を打って庭に流れ込み、宴となって一気に賑やかになります。桔梗の父もやってきて、歌を披露します。相変わらず言葉の意味が分かりませんが、螻蛄婆に歌の意味を尋ねると、こう教えてくれます。

「湖にの、鴨が2羽。夫婦の鴨じゃ。仲が良うての、チュチュと鳴いてはつがい、ルルと鳴いては並んで泳ぐ。夫婦じゃものな。湖に鴨が2羽」 海の向こうの歌であることは知っている将門は、螻蛄婆の正体を尋ねようとしますが、螻蛄婆はそれには答えず、ルルと鳴いて仲良うなされや、と微笑みかけます。

 

良兼のもとに事件の急報が届いたのは翌日であった。良子が略奪されたことに愕然とする良兼ですが、以前結婚を申し込んだ将門のことを思い出し、奪ったのは将門であると断定します。その怒りは尋常ではなく、賊を追いかけて引き返してきた兵を掴み蹴飛ばし、行列に加わった者たちを罰する気でいます。

5日の後、詮子たちが帰って来た。良兼が知らせを受けたら後詰に来てくれると信じていたのに、と詮子は腹を立てます。詮子には、坂東平氏同士の諍いに躊躇する良兼が臆病で気力が衰えているようにしか見えません。良兼はその言葉に奮起し、挙兵するために兵を集める準備に入ります。「豊田をひと揉み……揉みつぶしてくれる!」

こうして承平の乱は今、口火が切られようとする。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
草刈 正雄 (鹿島玄明)
真野 響子 (良子)
高岡 健二 (平 三郎将頼)
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長門 勇 (平 良兼)
森 昌子 (桔梗)
吉行 和子 (けら婆)
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星 由里子 (詮子)
峰岸 徹 (源 扶)
新珠 三千代 (将門の母 正子)
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制作:小川 淳一
演出:松尾 武

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第21回「騙し討ち」

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