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2024年3月22日 (金)

プレイバック風と雲と虹と・(24)川曲の戦い

太郎貞盛は坂東へ帰って来た。坂東の人々は、彼が小次郎将門を父の仇として弔い合戦を挑むものと期待していた。いや、そう信じて疑わなかった。坂東での最初の宿を相模国の府中でとった貞盛一行は、翌日の夕方には下総に入った。今夜は下総の府中で泊まり、明日に常陸の府中に向かうと思われます。

常陸の府中には、石田(しだ)から落ちた源家の残党や平 国香の家族がいて、水守(みもり)の平 良正も出入りしているようです。平 将頼は、下総から常陸に向かう貞盛を討たせてほしいと願い出ますが、将門はそれを認めません。貞盛は平 繁盛や佗田真樹ら少人数で下総入りしたということは、将門を信じている証なのです。「戦う用意のない敵を不意打ちなどはしない。男としてその信頼を裏切ることが出来るか?」

なるほどと頷いた玄道ですが、将門としては玄道一味の助けは借りず、将門だけで肩をつけたいと考えています。将頼は、才のある貞盛を討てる時に討っておかねば取り返しがつかなくなると食い下がります。「兄者が太郎のことを思うほど、太郎は兄者のことを思っているだろうか」 将門は、貞盛が卑怯な真似をしても貞盛の恥になり、自分の恥にはならないと諭します。戦うなら正々堂々と戦いたい──。

無事に帰還した貞盛は、涙を流す母の秀子を労わります。小督が迎えに出ないことを気にしていた貞盛ですが、貞盛が不在の間は実家の方に帰っているそうです。わざわざ呼びにやらずとも明日には小督に会えるわけですが、それよりも貞盛は、秀子と二人きりで話したいことがあると繁盛に座をはずすよう求めます。

貞盛は秀子に、将門と和談をするつもりだと打ち明けます。父の無念も母の思いも理解しつつ、これ以上恨みに恨みを重ねて難になるという思いの方が勝るのです。秀子も一族の戦に嫌気が差していて、貞盛の申し出に嬉しそうな表情を浮かべます。ただ、貞盛が先頭に立って弔い合戦するものと信じている郎党たち、貞盛の帰還を待ちわびた源家もいて、和談するのは難しいことだと諭します。

 

貞盛は、邪魔者が入らない早朝早くに屋敷を発ち、将門のいる豊田に向かいます。貞盛は京で面識のある菅原景行に、小次郎との仲立ちを頼もうと考えたのである。原野を開墾しているという景行を追って、豊田郡広川に着いたときは、すでに夜もだいぶ更けていた。貞盛は驚いていた。右大臣であった菅原道真の三男ともある人物がこのような暮らしを、しかも楽し気にしていようとは。

景行はあばら家で暮らし、農夫の格好ですが、都にいたころよりはずっと有意義なようです。その翌朝である。石に腰かけて待っている貞盛のところに、将門がやって来ました。貞盛の意向を受けて朝早くに出かけていった景行が、将門と三宅清忠を連れて戻ってきたのです。去年の夏以来の再会に言葉を交わし、貞盛はあばら家の中に将門を誘います。

貞盛は懐かしく将門の顔を見つめていますが、将門は目をそらしたままです。話のきっかけになればと、貴子姫と乳母の近況、二度目の追捕使の件などを将門に伝えますが、将門は我慢しきれなくなって貞盛を睨みます。「なぜまっすぐに言わないのだ! 俺はお主の父を討ったのだ。お主にとっては仇だ。憎いなら憎いとなぜ言わぬ?」

景行はやさしい表情で将門の名を呼びます。将門は堪えきれず涙を流し、悪かったと謝罪します。悪いのは俺だ、と貞盛も謝り涙を浮かべます。ふたりの心は溶けた。決して憎み合いたくないふたりである。今は互いの間に起こったさまざまなことが、すべて過ぎ去った夢のようにも思えた。

すべてを水に流して昔の仲になることは無論のこと、かつて国香が横領した分を除く、貞盛の家の領地はすべて貞盛のものとなり、それを小次郎が管理し、さまざまな掛かりを差し引いた上で貞盛の家へ入れる。そのように話は決まった。将門と貞盛、景行と清忠も酒を酌み交わし、明るく語り合います。「小次郎、また会おう」「ん。また会おう」

貞盛の屋敷では、帰還の翌朝に姿をくらました兄を、どこかに潜んでいた将門に討ち取られたかと心配して、繁盛が探しに行こうとしていました。そこに貞盛が帰宅し、秀子はホッと胸をなでおろします。貞盛は秀子に首尾よく進んだことを報告しますが、源屋敷で水守(みもり)の平 良正が待っているらしいと聞き、さっそく向かいます。「これからが大変ですよ」と秀子は貞盛を送り出します。

 

常陸府中の源屋敷では、源 護と良正が酒を飲んでいました。かつては威厳に満ちていた護が、今はやつれ、悲しみに打ちひしがれているのを見ると、貞盛も胸が迫った。貞盛の姿を一目見た護は「待ちかねましたぞ……」と涙を浮かべます。良正は貞盛に盃を勧め、将門討伐の相談に入ります。良兼は病気、源 扶は重傷から未だに本復せず、良正と貞盛で討つしかないのです。

帰国途上、各国府に立ち寄って評判を聞いた貞盛は、人々はこちらに好意を持っていないと分かりました。妻の略奪は責められるべきことですが、詫びに来いと言って騙(だま)し討ちする手法が受け入れられないのです。父の仇は我が一族であり、通常の方法で律するわけにはいかないと貞盛は主張します。良正は怒りに震え、貞盛を床にたたきつけます。

伯父良正がこれほどまでに激高するのは、半ばは舅の前で忠実な婿ぶりを見せたいためか。貞盛には理解できない心情であった。掴みかかる良正を止めた護は、ここは良正と貞盛に頼むしか手段がないわけです。そこに平 良文(よしぶみ)が貞盛屋敷に来たとの知らせが入ります。良正はこれ吉報と護を励ましますが、郎党2人ばかり連れての来訪に、護は不安な表情です。

平 良文──国香・良兼の弟であり、良正の兄にあたる。その館は遠く武蔵の村岡にあった。良正は源家の館で話し合った方がと引きつった笑いを見せますが、源家の婿である良正や貞盛とは違い良文は源家とはなんら関わりなく、ずかずか上がり込むのはおかしいわけです。「あまり血迷うな!」とたしなめられて、さすがの良正もうぐぐと口ごもります。

事情をあらかた秀子に聞いていた良文は貞盛の主張に賛成します。もう頼まぬ! と良正は自分一人で将門を討つと宣言します。親の敵討ちに指一本動かさない貞盛が世の笑いものになると捨て台詞を吐き、農事に忙しい季節にわたくしの恨みで出兵すれば良正の負けだとたしなめる良文の言葉には耳を貸さず、怒り肩で良正は出ていきます。

帰ろうとする良文を見送る貞盛ですが、良文には貞盛が父の死を悲しむ気持ちが薄いように感じられてなりません。貞盛の賢さは良文も評価するところですが、その賢さ、心の冷たさが新たな争いを産むのではないかと危惧しているのです。貞盛は自分の心の奥深いところを、グサリと刺されたような気がしていた。

 

坂東の夏。人々は労働に忙しい。その中にも水守の良正が密かに合戦の準備を進めているという噂が流れていた。しかし駆り出した農民たちの集まりが悪く、良正は苛立っているようです。将門は収穫を終えた秋には戦になるだろうと考えますが、将頼は貞盛が良正と手を組んで一気に襲撃する算段ではと疑念を抱きます。将門は貞盛の苦しい立場を察せられるだけに、信じるのみです。

そのころ良兼の館では、芋をうまいうまいとほおばる良兼ですが、あまり戦に乗り気ではないのか、病気のフリをしているところです。詮子は良正が挙兵する話を持ち出し、秋になったら今度こそ良兼も兵を率いて将門を討てと発破をかけます。「殿にとってはお兄上・国香のの殿の敵、私にとりましては弟どもの仇、国香の殿亡き今、殿こそが坂東平氏の棟梁。一日も早くご本復を」

その年の秋、好天が続き取り入れは順調に進んだ。良正の水守館に続々と兵たちが集まり出し、今夜あるいは明朝に出兵との物見の報告です。ついにきたか──将門は戦の支度にかからせます。集まった兵たちに良子は“勝ち戦の前祝い”として酒をふるまいます。そして良正軍が水守を出たと聞き、将門はほら貝を吹かせ出陣します。

小次郎将門は、夜の明けるころ豊田の館を出発し、水守へと軍勢を進めた。一方、平 良正が率いる水守の軍勢も、すでに豊田への道を進んでいた。豊田と水守の距離はわずか3里(11.8km)である。合戦は夜明けを待って行われた。『将門記』にいう「新治郡(にいはりごおり)川曲村(かわわむら)の戦い」である。時に承平5(935)年10月21日であった。

両軍が対峙してにらみ合う中、良正と将門が一騎打ちします。小次郎の刀が折れた。良正はしめたと思った。折れた刀を投げ捨てた将門は、馬上のまま両手を広げて良正目がけて突進します。良正は恐怖に襲われていた。手に武器もなくしかもためらわずに向かってくる小次郎の姿を見た時、彼は生涯で初めての底知れぬ恐怖感を覚えたのであった。

たまらず良正は身を翻して敗走していきます。小次郎は再び勝った。しかしこの勝利は次のより大きな戦いを導く、導火線でしかなかった。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
真野 響子 (良子)
多岐川 裕美 (小督)
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西村 晃 (源 護)
丹阿弥 谷津子 (秀子)
宍戸 錠 (鹿島玄道)
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星 由里子 (詮子)
高橋 昌也 (菅原景行)
長門 勇 (平 良兼)
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制作:小川 淳一
演出:松尾 武

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第25回「風の決意」

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