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2024年3月 1日 (金)

プレイバック風と雲と虹と・(18)氏族放逐(ほうちく)

小次郎は、伯父良兼とともに常陸の石田(しだ)に向かっていた。そこには坂東平氏一族の長である伯父国香の館があり、さらに坂東源氏の長、源 護の新しい館もあった。馬上の人となってゆっくり進む平 将門と平 良兼ですが、石田の手前の水守にある平 良正の館に伊和員経を派遣し、良正に直接石田へ来てもらうことにします。

良兼が、源 護の長女・詮子に恋していると良子から聞いた。この伯父は一刻も早く目指す源家の館に着きたいのだと思うと、笑いがこみ上げてきた。小休止しているところへ員経が戻ってきたわけですが、良正は今朝早くに源家へ向かったとのことで、良兼は国香館に寄って行くと慌てて向かいます。将門は員経から、良正は護の二の姫・定子に恋をしていると聞き、やれやれと呆れます。

国香と駆けつけた良兼は、ニヤニヤしながら詮子のご機嫌伺いです。お守りを渡してニッコリする詮子と楽し気に笑っている、良兼の声を聞きながら、国香は定子の居室へ向かいます。そこにはすでに良正がいて、こちらも酒をあおって話がはずんでいます。国香は良正に将門が来ていることを伝え、良正は千鳥足でその対面に向かいます。

源 護は大掾(だいじょう)の任期が終わると、かねての計画通りこの石田に館を構えた。この坂東でこれだけの富を作り上げるには、常陸大掾として在任中よほど民人から搾り上げたに違いなかった。それは、小次郎が都で宮人たちの内幕を知ったからこそできる観察であった。

 

さっそく5人が揃い、将門の亡き父・良将が護に譲ったと証明できる手形を見せてやってほしいと国香は頭を下げます。護と険悪な関係になりたくない良正は酒の勢いも手伝って、将門の手落ちでそうなったことを批判しますが、将門は納得できるまでは引き下がりません。護も、あれだけ公にした方がいいと言っていたのにと言いつつ、その書類を探しに行きます。

「あの一件の折、石田の兄者のせがれのおとなしい太郎貞盛まで巻き込んで!」と、国香が止めるのも聞かずに良正の攻撃は続きます。小次郎は言いたかった。確かにあの事件の責任は自分にもある。しかし事の原因は自分ではなかった。正直に言うという将門を止める平 貞盛、罪をかぶった将門を悲しむ母正子。そして貴子姫を我がものにした貞盛……。

護が手形を手に戻って来ました。手形は4枚あった。それぞれに譲り状と国府の認可状がついている。いずれも手落ちなく既定の手続きを踏んだものであった。しかし将門は、この手形の日付が事件の2年後、つまり良将没後1年が経過しての発行だと指摘します。役所の仕事が遅くて手続きが遅くなったと国香は笑います。ただそれだけで納得しろというのも難しい話です。

すると国香は懐から良将の文を取り出します。確かに父の筆跡であった。懐かしさが小次郎の胸を熱く浸した。文面には小次郎の不始末を詫び、その処置についての礼がしたためられていた。しかし将門は、この文に土地のことが触れられておらず、納得がいきません。「お取り計らいくだされし条々すべて結構とそこに明記してあろうが。それが土地のことじゃ」

一族の者を信じることから始めろという国香の言葉はもっともながら、土地は民人の命と教えてくれた父が、そういうことをするとは思えなかったのです。良兼は、良将も将門のようなまっすぐな気性だったからこそ、土地を譲ったなどとは将門に告げられなかったのではないかと諭します。将門はまっすぐに見つめて告げます。「お言葉、信じられませぬ」

すると、それまで黙っていた護がすっくと立ちあがり、平家の中での話なので当家とは関わりないと去っていきます。国香は「他家にまで来てよくも一族の恥をさらしてくれたな!」と怒ります。良正は将門に掴みかかり、良兼に止められます。伯父たちをギロリと睨みつけた将門は、そのまま館を後にします。

馬に乗った将門を、追ってきた良正は鞭で殴りつけ、刀を抜きます。小次郎ははっきりと、伯父たちの殺意を感じた。喧嘩にことよせ、ここで殺してしまうつもりなのだと思った。斬りかかる良正の相手をする将門ですが、そこに護が娘たちを引き連れて近くの寺に参篭のために館から出て来ました。「どなたさまも、また」と、去っていきます。

この時、小次郎は自分の中で、小督とのことは確実に終わったと感じていた。用を思い出した、と良正はその後を追い、良兼も慌てて追いかけます。国香は良正が酒に酔っていることを伝え、気にするなと諭します。「仕掛けられた喧嘩は逃げる気がないだけです。昔も今も」 去ってゆく将門を見送り、このまま豊田に帰るかの? とつぶやく国香の意を汲み、佗田真樹は将門を追います。

将門は、かつて筑波明神の祭りで立ち寄った老郎党の屋敷(小屋?)に立ち寄ります。あの時聞いた話では、ここの領地は国香が預かっていると言っていました。それを証明してほしいと言われ、困惑する郎党ですが、立ち上がった時に矢で射られます。「ここは……あなたのお家の領地……」といって落命してしまいます。

その後、小次郎は問題の荘が源 護の名義になった日付の少し後に、叔父たちが源家から多少の所領をそれぞれに譲り受けていることを知った。つまり伯父たちはまず小次郎の家の領地を盗み、それが追及されるのを恐れて小次郎の留守のうちに源家の土地と交換したのであった。小次郎は一族の伯父たちの怒りを働くことによって忘れようとした。大地こそが彼の友であった。

 

その年の秋、上総の良兼は源家の長女詮子を後妻に娶った。その祝いに小次郎は招かれなかった。明けて2月、水守の良正が源家の次女定子を第二夫人として迎えた。良兼の時も良正の時も、一族の秩序を乱す者の祝儀は受けないとのことです。これは将門の家が一族から放逐されたことになるわけで、それでも将門は立ってゆくと正子や将頼、家臣たちに決意表明します。

そんな折、貞盛が国香に呼ばれて帰ってきました。貴子姫のこともあり、将門は貞盛を喜んで出迎える気にはなりませんでした。貞盛はすべてお前が悪いと将門を責めますが、将門はうそはやめろと冷めた表情です。「いやぁすまんすまん」と謝る気のない貞盛は、護の三女小督との縁談が持ちかけられたと話します。貞盛は海賊討伐の話をして話をそらしますが、将門にはもはや聞く気すらありません。

貞盛が帰った後、将頼は国香ら伯父たちへのとりなしを頼まなかったのかと聞きますが、頼まぬ! と声を荒げます。貞盛が嫁取りで戻ってきたことを知っている正子は、将門に思い人はいるのか尋ねます。今日の女は嫌いという将門は、妻に迎えるなら坂東の女がいいと考えています。将門の脳裏には、「坂東に生まれ坂東に死ぬの!」と言っていた良子の姿が映っていました。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
吉永 小百合 (貴子)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
真野 響子 (良子)
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新珠 三千代 (将門の母 正子)
佐野 浅夫 (平 国香)
長門 勇 (平 良兼)
多岐川 裕美 (小督)
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星 由里子 (詮子)
新藤 恵美 (定子)
西村 晃 (源 護)
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制作:小川 淳一
演出:岸田 利彦

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第19回「桔梗の里」

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