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2024年3月15日 (金)

プレイバック風と雲と虹と・(22)修羅(しゅら)の旋風(つむじ)

源 扶(たすく)とその弟・隆、繁らの率いる源勢は、小次郎の一行をだまし討ちにかけた。鬼怒川(けぬがわ)沿いの道をやがて大串にかかるあたりの地点である。かろうじて鬼怒川べりに逃れ得たのは、小次郎と郎党だけであった。振り返った郎党は、平 将頼や伊和員経(かずつね)が軍勢を率いて駆けつけてくるのを発見。将門の表情にようやく笑みが浮かびます。

そのころ扶らが包囲した地点では、討ったのが将門の身代わりの者と分かり、扶は将門を探させます。そこに後詰めの軍勢が迫っていると報告があり、扶はいったん退いて敵を誘い出し、一気に討ち滅ぼす作戦に出ます。てぬるい! と隆は反発しますが、扶は隆の胸ぐらをつかんで「俺の下知に従え」と睨みつけます。

扶たちが退いた後、そこに駆けつけた将門たちですが、郎党たちの無残な最期に将門は手を合わせて冥福を祈ります。将頼の言葉で奮い立った将門は、涙にくれる郎党たちの士気を高め、源屋敷へ攻め込もうと下知します。馬で駆ける将門ですが、敵は自分たちを誘い込む作戦だとにらみ、物見を立てて辺りを調べさせます。

確かに小次郎の思惑通り、源勢は大串で守りを固めていた。扶たちは大串の里に入り込み、将門たちに気づかれぬよう物音を立てずに守りを固めていきます。扶は老人や女・子どもたちに逃げるように命じますが、目の前を通り過ぎた里の女を「いい女だな、いずれ楽しもうぞ」と捕まえます。隆は呆れて女を解放し、扶をたしなめます。

大串の里は源領ではなく、平 国香の領地です。それで将門は国香も源勢と同腹なのだと察知します。そして里で待ち構える扶には、駒音が聞こえてニンマリします。十分に引きつけて弓を引き絞ると、そこに現れたのは無人の馬が数頭でした。それに驚愕しているころ、里の周囲を警戒する兵たちを、裏に回った将頼たちが次々と倒していきます。扶は隣村に引くことにし、里に火をつけて撤退します。

騎馬で駆けつけた将門の前に立ちはだかったのは繁でした。将門は繁と斬り合い、ついに倒します。里は炎に包まれ、村人たちが泣き叫ぶ中、撤退していく扶たちを将門は追いかけます。将門は弓を引き絞り、放った矢は隆に命中します。将門たちは炎上する里の中を突っ切り、扶たちを追います。弟ふたりを失った扶は自分を見失い、将門たちに立ち向かおうとしますが、郎党たちが必死に止めます。

 

すでに石田(しだ)の源家の館には、敗北の知らせが次々と届いていた。長く都の司人(つかさびと)であった源 護には、戦の経験がない。相次ぐ悲報にただ動転するばかりであった。護の館に駆けつけた国香と佗田真樹は隆と繁の死を悼み、将門らを討ち果たして坂東平氏の棟梁としての権威を示したいと主張します。護は女たちを連れて常陸へ落ちることにします。

将門と戦うことに躊躇する真樹に、国香は戦には出ず館を守れと命じます。そして館前で扶と合流し出陣していきます。敵は勝ちに乗っているとはいえ戦い疲れているから、小貝川あたりで仕掛ければたちまち乱れると国香はニヤリとします。この時、すでに小次郎は小貝川に差し掛かっていた。それを知った国香は、さらに奥の松山まで急いで向かいます。

しかしそれが敵の罠にかかってしまいます。国香は方向を変えて進みますが、将門たちは国香ら目がけて突っ込んできます。両軍が対峙し、将門と将頼は国香が源軍に味方しているのを確認します。小次郎は国香伯父を信じてはいなかった。しかし自分と源家との闘争に、坂東平氏の棟梁たる身を自ら出陣させてくるとは。国香も将門も、敵に向かって射かけよと命じます。

まさに射るその時になって国香は馬を前に進ませ、将門に出て来いと叫びます。前に進み出た将門は、坂東平氏の棟梁たる伯父がなぜ源家の味方をするのかと睨みつけます。「ほしいままに兵を動かし、合戦に及んで坂東の輪を乱すと、都の朝廷に聞こえたら何とする! 一族の迷惑これに過ぎるものはないぞ!」 国香は弓づるを外して刀を収め、戦を止めるように警告します。

将門は、国香こそ刀を収めて棟梁らしく揉め事一切を公正に裁けと主張します。「伯父上にそれがおできになるか?」と将門は国香にけしかけ、頭に血が上った国香は将門軍目がけて押し出します。相手は同じ坂東平氏の武者たちが主体であった。彼らもまた戦いを知り恥を知っている。敵勢は多く困難な戦いであった。

しかし豊田勢の気力が勝った。ひたすら怒りに燃える豊田勢に対して、国香の郎党や兵たちには同族の戦いであることについてのひるみがあったのかもしれない。後方の部隊に下知する国香ですが、振り返れば目の前に将門がいました。扶が将門目がけて矢を射かけますが、将門は矢を投げ扶の目に刺さります。国香はろくに対決せず、兵たちが将門に対している間に翻して駆けていきます。

国香勢は崩れたち、先を争って逃げた。戦いはここまでであった。追ってきた将門軍は源屋敷に押しかけます。将門は主の護と逃げ帰った国香を探せと命じ、屋敷に足を踏み入れます。奥へ奥へと進むと真樹がいました。その目線の先には横たわる国香の遺骸があります。国香は逃げ帰りながら背中に何本も矢を受け、館にたどり着いたときに息絶えたそうです。

真樹は主の仇と刀を振り上げますが、将門は首を横に振ります。「あなたには他に役目があるでしょう。太郎のことだ。逃げも隠れもせぬ。太郎が父の仇として戦いを挑むならいつでも受けて立つ」 将門は平 貞盛に伝言させるために、真樹に都へ向かわせます。真樹は刀を収め、だまって頷きます。

どの部屋も若どのも庭も、すべて小次郎には思い出のある館であった。幼いころ、小次郎はよくここへ来て太郎貞盛と遊んだ。あの筑波の山の花街に行ったのも、この館からであった。炎上する館で涙にくれる将門は、仮にも一族の長だからと国香の亡きがらを手厚く葬ろうと将頼に命じます。太郎、とうとう俺は、お主の仇になってしまった──。

将門についての記録『将門記』は言う。「野本・石田・大串・取木らの宅より始めて、与力の人々の小宅に至るまでみなことごとく焼き巡らす。その日の火声は雷(いかづち)を論じて響きを施し、雲を争(きそ)いて空を覆えり」まさしく貞永の乱の始まりであった。鹿島玄明と炎上する村を眺めながら螻蛄婆(けらばあ)は、始まりさ、とつぶやきます。「ゆくのさ遠くまで。歩み始めたからにはな」

 

貴子姫を久々に貞盛が訪問します。和歌に優れた小一条院の上臈との逢瀬に忙しいのかと乳母は皮肉ります。貞盛と対面した貴子姫ですが、貧しさより辛いものはないと、騙されても貞盛にすがって生きていくしかない我が身を悔やみます。つい将門の名を出す貴子姫を捨てて帰ろうとする貞盛に、貴子姫は懸命にすがります。いつものような争いに、また貞盛が勝ち貴子は負けた。いつもの通りに。

その夜更けのことである。太郎貞盛の弟・繁盛、一年前から兄について京へ出て、小一条院に勤仕(ごんし)している。国許からの火急の知らせがもたらされ、繁盛が知らせに来たのです。小次郎が貞盛の父を殺した。貴子にはことの原因が自分にあるのではないかと考えずにはいられなかった。貞盛は愕然とします。「戦う? 俺と小次郎が──」


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
吉永 小百合 (貴子)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
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草刈 正雄 (鹿島玄明)
吉行 和子 (けら婆)
峰岸 徹 (源 扶)
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佐野 浅夫 (平 国香)
奈良岡 朋子 (乳母)
西村 晃 (源 護)
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制作:小川 淳一
演出:岸田 利彦

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第23回「あだ桜」

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