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2024年3月 3日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(09)遠くの国 ~捕らえられた直秀の運命は…~

寛和2(986)年、東三条殿に盗賊が入ります。その一味に、弟のようにかわいがっていた直秀がいたことに、藤原道長は愕然とします。「やはりあの時、射たのはお前であったか」 直秀は、捕らえた警護兵を睨みつけ、お前らも貴族らに見下されてきた輩だろとあおり立てます。道長は、直秀たちは人を殺めてはいないと命を奪うことを良しとせず、検非違使に引き渡すよう命じます。

この事件はさっそく左大臣家の集いで話が上がります。道長が獅子奮迅の働きで盗賊を捕らえたと茅子としをりが盛り上がりますが、まひろと源 倫子とは温度差があるようで、浮いていたことに気が付いて陽気に笑っていた声も思わず止めてしまいます。空気を呼んだ倫子は、先日当家(土御門殿)に入った盗賊と同じかしら? と口走ってしまい、しをりや茅子を困惑させます。

藤原穆子(むつこ)は赤染衛門を呼び止め、道長のことをどう思っているか尋ねてみます。思わず「さあ」と答える衛門ですが、源 雅信とはそんな話をしているというのに、自分の問いには答えなかったことにムッとします。もうよい、お行きなさい、と衛門に行って踵を返す穆子に、衛門の頭の中はわけがわからず「???」となっています。

乙丸を供に連れて外出するまひろですが、散楽一座がねぐらにいません。かつて直秀は、鳥かごを出てあの山を越えてゆく、と言っていたことを思い出し、もう旅に出てしまったのかと残念がります。その直後、ねぐらに押し入る男たちにまひろは抵抗しますが、こいつらも盗賊の仲間だと、まひろと乙丸は捕らえられてしまいます。「仲間は東三条殿で捕らえられた。お前らも獄でたっぷり詮議してやるぜ」

盗賊たちが捕らえられ、検非違使庁の周囲では民たちが一目見ようと人だかりができています。道長は、当家では被害が何もなかったから早めに解き放ってほしいと役人に頭を下げます。役人は、被害者たる道長が盗賊に情けを駆けることをいぶかりますが、そっと近づいた道長は、ふところから砂金の入った巾着袋をチラリと見せます。役人は辺りを見回しながら、サッと懐に入れます。「承知いたしました」

そこに新たにまひろと乙丸が連行されてきました。連れて来られたまひろに直秀は驚き、まひろも獄の中にいる直秀に衝撃を受けます。顔色を変えた道長はまひろに駆け寄り、「この者は私の知り合いゆえ身柄は預かる」と縄を解かせます。盗賊の仲間だと言い張る男は困惑しますが、袖の下をもらったばかりの役人は、皮肉っぽくふたりを解放します。

誰もいない屋敷に連れ出されたまひろは、なぜ道長は直秀たちを検非違使に引き渡したのかと尋ねます。盗賊である手前、それを許しては他の武者たちへの示しがつかないからですが、散楽も盗賊も“敵は貴族”であることが筋が通っていると、道長は直秀を買っているようです。やがて放免されるであろう直秀が、流罪で流される国が海の見えるところであればよいが、と呑気です。

乙丸は、藤原為時の帰宅の時間が迫っているのでそろそろ帰りましょうと促します。道長は送っていこうと言いますが、まひろは断ります。自宅は土御門殿(左大臣家)の近くにあり、道長と一緒にいるところを見られたら、あれこれと言われてしまいかねないわけです。まひろは後ろ髪引かれる思いを感じながら帰っていきます。道長はまひろの言葉に意味が分かっていません。「……何を言われるというのだ?」

帰り道、検非違使庁の獄の前を通った道長は、民衆が手を合わせて祈っている姿を目の当たりにします。従者の百舌彦に尋ねさせたところ、盗賊は奪った金品を貧しい者たちに配っていたらしく、その恩恵にあずかっていた民衆たちが、盗賊たちの無事を必死に祈っているわけです。道長はそんな情報を耳にし、複雑な表情を浮かべます。

まひろが帰ってきたときには、日も落ち夜も更けていました。為時になるだけ気づかれないように忍び足で館に入るまひろですが、自分の居室には書物を読む弟の藤原惟規(のぶのり)がいて、まひろは驚きます。まひろは為時の居場所を尋ねますが、隣の部屋に控えているいとは「殿はお帰りになりませんよ。今宵は高倉の女のもとにおでかけでございますから」と教えてくれます。顔を見合わせるまひろと惟規です。

 

「仲尼昔夢周公久 聖智莫言時代過……」と為時は花山天皇に自身の作った漢詩を詠んでいますが、帝は忯子(よしこ)のことで頭がいっぱいで、勉学に力が入りません。藤原道兼が帝の薬湯を持ってきて、帝は一気に飲み干しますが、とてもまずくて顔をゆがめます。忯子のことで涙し、薬湯で涙し、自分の人生とは何であろうか、とつぶやきます。

仕事をしている藤原実資のもとに藤原義懐(よしちか)が赴き、帝に女を送り込めと命じます。しかしすでに帝には姚子(ようこ)、諟子(たかこ)、婉子(つやこ)がいます。今のままでは皇子も生まれず政も滞ると危機感を抱く義懐は、蔵人頭の実資の怠慢だと叱責します。怠慢と言われて実資はたまらず立ち上がり義懐を睨みつけますが、「蔵人頭なんぞには頼まぬ」と義懐は出て行ってしまいます。

屋敷に戻った実資は、妻の桐子に愚痴を吐き続けます。自分を公卿にしていれば正しく政を導くことが出来、このようなことにはならなかったと、義懐を公卿にした帝に不満を募らせています。桐子はいい加減に実資の愚痴を聞き飽きたようで、日記に書くように強く勧めますが、実資はことの内容が恥ずかしすぎて、日記に書くつもりはありません。

詮子は眠ったままの藤原兼家を見舞います。東宮懐仁親王や自分の後ろ盾はいるからと、安心して旅立つようにささやきますが、その瞬間に兼家は目をカッと開き、詮子を睨みつけます。「そうはゆかぬぞ!」 あまりの衝撃に詮子は悲鳴を上げのけぞります。その悲鳴はあたり一面に響き渡ります。

倒れた兼家の枕元に駆けつけた安倍晴明が呪文を唱え、ようやく意識を取り戻した兼家でしたが、兼家が懐仁親王の即位を死ぬ前に見るためには、今のしぶとい帝をその座から引きずり下ろす必要があります。晴明が提案したのは、兼家は意識を取り戻し、忯子の御霊が内裏に取り憑いて、その霊を鎮めるために帝に出家してもらうわけです。兼家は子ら4人に叱咤します。

道隆は帝の信任を得るために、たまに正気に戻った兼家に折檻を受けたということにして、自ら身体中に傷をつけ、それを帝に見せていたのです。兼家に折檻されている道兼を哀れに思った帝は、忯子を失った悲しみを分かってくれる唯一の家臣ということで、一気に信任を厚くしていったわけです。それもすべては、これから行われる兼家の策謀の布石にほかなりません。

 

検非違使庁に捕らわれの身となっている直秀たちは、取り調べがないことを不思議がっていましたが、明日の卯の刻(午前6時)に出立して島流しとなりました。道長はそれを検非違使庁につてのある同僚に聞いたわけですが、それを知った百舌彦はまひろの館の乙丸に会い、別れを告げるなら明日しかないと一緒に行くことを提案します。無論、提案は乙丸を通じてまひろに伝えたものです。

卯の刻に検非違使庁に赴いた道長とまひろですが、門番はすでに出発したと言い張ります。行き先を問い詰めると門番は「鳥辺野……」と慌てて返答します。鳥辺野といえば屍(しかばね)が捨てられる場所ですが、ともかく道長はまひろを乗せて馬で鳥辺野へ急ぎます。空には不気味なほどカラスが飛び、何かを予見させるようです。

道長が鳥辺野にたどり着いたときには、捕らわれた7人が斬られて絶命していました。その中にも直秀の姿が……。土まみれの直秀の手をきれいにし扇子を握らせ、道長は冥福を祈ります。道長はまひろと土を掘り、直秀の遺体を埋葬します。道長は、付け届けなど余計なことをしてしまったと悔しがり、声を上げて泣き叫びます。まひろはいたたまれず、道長の背中を抱いてともに涙を流します。

 

弘徽殿(こきでん)では、得体の知れない物体が転がり、廊には水が溜まっていました。人々はそれを忯子の涙と噂し、怨霊だと騒ぎ立てます。兼家が死ななかったと帝は顔をゆがめますが、その報告に上がった晴明は、忯子の御霊を鎮めるには出家するしかないと帝を見据えます。帝は目くじらを立てて晴明を睨みつけます。

そのころ為時の屋敷では、惟規が大学に行くため出発しようとしていました。いとは太郎惟規が赤子のころから世話してきただけに、まるで今生の別れのように涙に暮れます。為時が言葉を送りますが、その1つしか理解できないなどまだまだ不安な旅立ちですが、しっかり学んで成長せよと為時に言葉をかけられ、勇んで出立します。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
高杉 真宙 (藤原惟規)
秋山 竜次 (藤原実資)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
石野 真子 (藤原穆子)
本郷 奏多 (花山天皇)
毎熊 克哉 (直秀)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:中泉 慧

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第10回「月夜の陰謀」

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