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2024年3月31日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(13)進むべき道 ~4年が過ぎまひろと道長は~

4年前の政変劇で、孫である一条天皇を即位させ摂政となった兼家は、瞬く間に息子たちを昇進させ、政権中枢に置いた。この日は一条天皇元服の日。加冠役を務めた兼家は、政権トップの座を揺るぎないものとした。永祚2(990)年正月5日、一条天皇が元服をします。姿を現した一条天皇の前には、藤原兼家はじめ道隆、道兼、道長といった息子たちが居並んでいます。

藤原定子が兄伊周(これちか)の恋文を見つけたといってはしゃぎ、伊周と取り合いになります。父道隆は過ちは人の恋文を勝手に盗み見た定子の方にあるとたしなめますが、母高階貴子も自慢の息子の恋文を読んでみたかったと微笑みます。定子は恋文の相手に婿入りするのかと尋ねますが、婿入りと聞いてまだまだ早いと貴子は驚きます。

一条天皇元服の20日後、定子が入内した。道隆たち中関白家(なかのかんぱくけ)絶頂期のはじまりである。帝の緊張をほぐそうと、いろいろ変顔して笑わせる定子は、帝の好きなものを全て好きになると宣言し、何が好きか尋ねます。母上(藤原詮子)、つばき餅、松虫……。定子は扇で口元を隠したまま、そっと帝に耳打ちします。「私、虫だけは苦手なんです」

道兼は7歳の尊子(たかこ)に、大きくなったら入内するのだと教え込みます。繁子は自身の栄達も大事ですがと表情を曇らせますが、入内ほどの誉れはないと信じる道兼は、帝と定子との間にしばらく子が出来ず、仮にできたにせよ皇子とは限らないと、その時こそ尊子の出番だと見据え、厳しい表情で「分かったな」と念押しします。尊子は恐れから繁子の陰に隠れてしまい、道兼は睨みつけます。

市を進む市女笠姿のまひろは、針を入手しようとカブを出して針売りに変な顔をされます。ついてきたさわは隣のアユの干魚(ひうお)をみておいしそう! と笑顔ですが、買えないものはみないようにしているとまひろはつぶやきます。その時市の片隅で言い争いがあっているようで、まひろはその声の方へ駆けつけます。

コノモノハ貨物ノ代トシ 布一端ニテウリワタス──。子ども1人を布1反で売る。その証文を手にする男は、代金として子ども3人を連れていこうとし、返してと母親が必死に訴えているところでした。まひろはとにかく子どもたちを取り返そうとしますが、男に押し倒され、乙丸も突き飛ばされてしまいます。さわは怖くて手が出せません。

ひじをすりむいたまひろはさわに手当てしてもらいます。自分が非力なことを後悔するまひろは、民たちに文字を教えたい! と言い出します。一人二人教えたところで……とさわは現実的ですが、一人でも二人でも救えた方がいいとまひろは真面目です。私は私らしく自分の生まれてきた意味を探していく──。道長にはより良き世の中を求めて上から政を改めてほしい、と夜空を見ながら思うまひろです。

市の大路で、左腕を負傷した乙丸とまひろは寸劇を始めます。名前を書いてみましょう、とまひろは一文字ずつ「を」「と」「ま」「る」と地面に書きます。乙丸だぁ~! と乙丸は必死に叫んで目を引こうとしますが、大路を往来する人たちは物珍しそうに通り過ぎるだけで、まるで反応がありません。すると一人の少女が、地面にかかれた文字をじっと見つめています。「あなたも……書いてみる?」

まずはまひろが手本を見せ、次に一緒に木の棒を持って。そして3度目に書かせてみる。書けた! と少女はとても嬉しそうです。そうした日々が続き、少女はひらがなを読めるまでになります。しかしいとは、まひろがまた何の足しにもならないことを始めたと為時に訴えますが、為時は空返事で受け流します。為時は花山天皇の退位で官職を失って4年、収入はほとんどなかった。

 

国司の横暴への上訴が後を絶たず、陣定(じんのさだめ)の席で雅信は嘆きます。強く訴えれば通ると民が勘違いするため、道隆は上訴を却下と提案します。しかし道長は、遠方から来た者の訴えは切実だと、詳しく審議することを求めます。「民なくば我々の暮らしもありません!」 そう主張する道長を、藤原実資は感心した表情で見つめます。しかし兼家は、橋の修繕うんぬんと別のことを言っています。

陣定後、道兼は、父が正気を失ってしまう前に後継者を指名してもらわなければならないと道隆に進言します。それをたしなめる道隆ですが、その2人の様子を柱の陰から道長が見ていました。しかしその背後には実資がいて、「精進、精進……」とつぶやきます。道長は黙って実資をやり過ごします。

父上は、今年の夏は越えられまい。今日、内裏で正気を失われた……と道隆は貴子に打ち明けます。もしもの時は自分が摂政になると宣言する道隆は、その妻として忙しくなるから心づもりをしておけと貴子に伝えます。しかし貴子は、心づもりはとうの昔にできていると微笑みます。「さすが殿が見込んだ妻でございましょ?」

道兼には、自分がいなければ父の今日はない、と第一功労者としての自負があります。それは亡き藤原頼忠も言っていたようで、息子の藤原公任もそういうふうに理解しています。うんうんと頷く道兼は、自分が摂政か関白になれば、その時は公任を取り立てようと口約束をします。蔵人頭(くろうどのとう)である公任に、父兼家の様子を逐一知らせるよう依頼します。

 

この子は道長と倫子の一の姫、彰子である。明子の寝顔を覗き込む倫子と藤原穆子です。そこに道長が帰宅しました。浮かない表情の道長は、父がまるでもののけにでも取り憑かれたようだと不安げです。もしかしたら帝が即位し定子も入内して、兼家は気が抜けてしまったのかもしれないと思い直し、眠る彰子の顔をなでています。

為時の屋敷には、御嶽詣でから戻った藤原宣孝が来ていました。その奇抜な格好に為時は目を丸くします。お似合いでございます、とまひろは笑顔で見つめていますが、宣孝が婿入りの話を持ち出すと、顔色をサッと変えて「私はどなたとも夫婦(めおと)になる気はございません」とピシャリ。為時はまひろの夫に宣孝の子どもを推薦しますが、「あれはダメだ、あれはダメ」と即座に断ります。

摂政さまのお加減が悪いそうだ、と宣孝は為時に耳打ちします。兼家の目の黒いうちは官職を得られないと諦めていたところですが、兼家が亡くなれば……? まひろは、父為時は人の死を望む人ではないというと、そうだなと宣孝は納得します。それじゃ、と為時による自分の子どもの推薦話を振り切るかのように、宣孝は風のように去っていきます。

宣孝が帰っていくと、為時はまひろに 夫を持たないという強い気持ちは分かったものの、その真意はどこにある? と尋ねます。まひろは口をつぐみますが、為時は己の行く先を決めつけないほうがいいと諭すにとどめます。つまり好きな人ができる可能性も示唆するのです。それも踏まえてまひろはどこかの屋敷に勤めに出たいと訴えますが、無官の為時の娘で雇ってもらえるかどうか分かりません。

夜、源 明子は道長に、子どもができたと打ち明けます。「こんな時でも笑顔はないのだな」と道長は冷静に言いますが、笑顔がないのは明子も道長も同じですw 明子はこれまで微笑むことなく生きてきたわけで、こういう顔になったと寂しそうにつぶやきます。立ち上がる道長に、明子は願い出ます。「お父上のお見舞いに行かせてくださいませ」

さっそく道長は明子を連れて兼家のところへ赴きます。お前は誰だ? と尋ねる兼家は、妻の明子と紹介されて引きつった笑みを浮かべます。あぁあぁ……お父上は息災か? そのやりとりがいたたまれず、道長は対面所を飛び出します。兼家が手にしていた扇を所望する明子に、持ってゆけと、兼家は求めに応じて扇を投げ渡します。「ふふふ……ありがとうございます」

兼家のもとを辞した明子は、今度こそ息の根を止めてやると扇に手を合わせます。兄の源 俊賢(としかた)は、呪詛などやめるようたしなめます。父が亡くなった時はとても怒っていた俊賢が、今は腑抜けになったことを明子は呆れます。俊賢は、自ら命を絶てぬなら生きていくしかなく、生きていくなら力ある者に逆らわない方がいいと諭します。「分かりました。ただ私は必ずやり遂げます」

眠っている兼家はうなされて目を覚まします。辺りを見回しますが、ここがどこか分かりません。安倍晴明を呼んだ兼家は、自分の寿命を尋ねますが、朝は力が衰えて何も見えないと晴明は弁明します。後継者についても、それは兼家の心のうちにすでにあると言い当てます。「そのお答えこそが正しいと存じます。ご無礼つかまつりました」 兼家は、引導を渡されたような形にすすり泣きします。

帝は定子と橘 徳子(のりこ)とかくれんぼをして遊んでいます。そこに藤原詮子が現れます。帝は手習いにしぶしぶ向かい、詮子は何の用でここに来たのか忘れてしまったと、クスリともせずに言います。大人の中で育った帝には遊び相手がおらず、定子が入内して帝の顔つきが明るくなったと、詮子は定子を見据えます。「これからも、せいぜい遊んでさしあげておくれ」

様子を見に来た道長に、兼家は 民におもねるようなことだけはするなと忠告します。道長は民を虫けらのように斬り捨てる道隆の政がおかしいと言っただけなのですが、兼家は道長が守るべきものは民ではなく、この家だと諭します。「家のためになすこと、それがわしの政……その考えを引き継げる者こそわしの後継だと思え」

 

女房として屋敷に務めるために、まひろは方々を訪ねて回りますが、やはり父為時の官職がないことで難色を示されます。女房ではなく下女ならというところもありますが、まひろは表情が固まります。まひろほどの女性がそこまで下げてまで務めるわけにはいかないのです。

左大臣家の集いでは、倫子に道長が婿入りしたからか、まひろが来なくなって久しいです。まひろの話を持ち出すしをりは、出入りの家司(けいし)の屋敷に雇ってほしいと来たと打ち明けます。茅子の友だちの家にも来たそうで、どうしているのかと心配していた倫子は「そんなに困っておいでなの?」と表情を暗くします。

まひろを気にかける文を倫子が送り、まひろがやってきました。この屋敷で雇うという申し出ですが、仕事は他で決まってしまったのでとまひろは断ります。道長は権中納言に出世し、その目覚ましい出世ぶりは倫子も驚くばかりです。倫子は思い出したように、夫の文箱の中に隠してあったと、かつてまひろが道長に送った漢詩を出してきました。「あの方が送ってきたのかしら。高松殿の明子女王さまよ」

まひろはその漢詩について解説をしますが、もういい、と言葉をかぶせるように止めます。明子とは文のやり取りがあり、こちらには文のやり取りがなく、庚申待(こうしんまち)の夜に突然訪ねてきたと倫子は打ち明けます。庚申待の夜といえば、まひろと会い倫子に婿入りすることになったと打ち明けられた夜です。あの人はこの文を捨てずに土御門殿まで持って来ていたのかと、少し嬉しく感じます。

そろそろ、とまひろは倫子の元を辞そうとしますが、廊を歩いていると、目の前に現れたのは道長でした。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
秋山 竜次 (藤原実資)
町田 啓太 (藤原公任)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
石野 真子 (藤原穆子)
益岡 徹 (源 雅信)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:中泉 慧

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第14回「星落ちてなお」

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