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2024年3月26日 (火)

プレイバック風と雲と虹と・(25)風の決意

承平5(935)年10月21日、世にいう「川曲(かわわ)の戦い」で再び小次郎は勝った。馬上のまま両手を広げ、自分目がけて突進する平 将門に、恐怖に襲われた平 良正は身を翻して敗走。水守の館に逃げ込みます。平 将頼らは土地を得るため水守館を焼き払えと兄を唆しますが、もうよい、と将門は館を睨みつけます。「この坂東で土地を増やしたいなら、額に汗して開墾すればよいのだ」

将門勝利の報を佗田真樹から聞いた平 貞盛は、良正叔父でも叶わなかったかと大笑いします。睨みつける真樹は、貞盛が良正に加勢していれば勝てたなどと言うつもりはなく、そもそも貞盛が父・平 国香の仇討ちをしなければならないのは、それが坂東武者の道だからだと説得します。貞盛は庭を眺めて息をつきます。「やれやれ。いずれにせよ当分都へは帰れぬのだな」

この勝利は、坂東における小次郎の評価を決定的なものにした。春の勝ち戦までは・・勝ちかもしれないと疑っていた人々も、もはや小次郎の力量を信じないわけにはいかなかった。勝ち戦に沸き立つ郎党たちは、勇んで帰還する将門たちを大喜びで迎え入れます。その中心には、愛する良子の姿がありました。将門の誇らしげな表情です。

上総・良兼の館では、家臣たちが話をしていました。坂東平氏の棟梁だった石田(しだ)の国香が討たれ、武勇の名がとどろく常陸の六郎良正が将門に一蹴されたとなると、頭領の座を継いだ良兼が何もしないことを世の人々は許すわけもありません。右か左か、事を決せねばと厳しい表情を浮かべています。

その良兼は薬を飲んで苦そうな顔です。詮子は、将門が良兼によらずに良正に討たれたとすれば、それは良兼にとっては恥辱とにっこり微笑みます。しかし良兼はその詮子の言葉にも影響されず、のらりくらりと薬を飲んでいて、詮子はよよよと泣いたふりをします。「殿はわたくしをお責めになっておられるのです。今度のことはすべてわたくしが原因を作ったのだと」

良兼は、将門の詫びを受け入れてもいいと考えなくもなかったのですが、本来であれば良兼がすぐに豊田の将門館に押し寄せ、将門を討ち取らねばならないところ、良兼はにわかの病のため、詮子は仕方なく騙し討ちという謀を立てたわけです。それを今さらに自分を責めるとは……。「愚かでございますとも詮子は。しかし恥は知っております。卑怯者! 恥知らず! 腑抜け!」

詮子に平手打ちされた良兼は、じわじわと逆上します。家臣が圧倒する中、詮子の居室に向かった良兼ですが、そこでも詮子に罵声を浴びせられます。詮子が振り返ると、憎悪に満ちた良兼の姿がそこにありました。詮子は危機を感じて人を呼ぼうとしますが、震えて声を出せず。このことに関する良兼夫婦の争いは、これが最後であった。「どのみち小次郎は討ち取らねばならぬ……」

 

小次郎将門が伯父良正との戦いにも勝ったという知らせは、やがて都の忠平にも届いた。忠平にすれば、貞盛が敵討ちすることはどうでもよく、戦がなかなか鎮まらないことにいら立っていました。東に合戦騒ぎがあれば、西には海賊の跳梁(ちょうりょう)。今日でいえば総理大臣の職にあたる藤原忠平は、しかしなお、事態を楽観していた。まさかこれ以上悪くなるはずはない、と。

純友は伊予に帰っていた。第二の追捕使とそれに従う坂東武者たちの接待も、前回同様、伊予の掾(じょう)たる彼の役目にされていたのである。純友のところに現れたくらげ丸と鮫の情報によれば、第二の追捕使は慎重でなかなか動こうとせず、海賊調査に放った間者間者が大浦秀成の館に忍び込んだそうです。間者のひとりは逃げ、「もはや潮時だ」と秀成はもう一人を刺し殺してしまいます。

逃げた一人が情報をどこまで掴んだか……。場合によっては海賊と純友の関わりまで掴んだかもしれません。いずれにしても支度をせねばなるまいと純友は螻蛄婆(けらばあ)に打ち明けます。「潮時だ……そろそろ」とつぶやく純友は、秀成も似たようなことを言っていたと婆に教えられ、我が意を得たりの心境です。役人の顔をしているのも飽きたと、純友は日振島へ向かうことを決断します。

翌朝、純友は伊予の国府に登庁した。第二の海賊追捕使として伊予に来たのは、大中臣康継(おおなかとみの やすつぐ)。都では小一条院の家司(けいし)であり、忠平の寵を得ていると自認している人物であった。評定の場では守(かみ)の平 維久がおろおろし、介(すけ)の藤原正経がうつむき加減です。その二人の横では、康継が手をわなわな震わせています。

そこに余裕の顔でゆっくりと入っていった純友は、漁師から海上で死体を発見したとの報告を伝えます。漁師は、追捕使が遣わした“海辺の村々を聞き糺していく感じの悪い者”に違いないと言っているそうです。しかもその証拠となる死体を引き揚げたわけでもなく、縁起が悪いと漁師はみすみす海に流してしまったことから、康継は自分をバカにしているのかと立腹します。

康継が調査していたのは、前回の追捕使がどのようにして壊滅したのかであり、前回の追捕使はひとりを除いて全員が討ち死にしたことは、記録と実態が同じでした。しかし伊予で集められた兵は、多大な損害ありと記録されつつも、実態はひとりの死者どころかけがを負った者すら存在しないことが分かったわけです。康継は、国府の者が海賊に通報していることは明白だと糾弾します。

純友は腹が立っていた。目の前の男たちに対してだけではなく、一切の司人というものに我慢が出来ない思いが、いま爆発しようとしていた。自分たちを犯罪者扱いされた純友は、民人に恩恵を施す瀬戸内の海賊が民人の軍勢に手を出さなかったのは当然と主張します。「海賊を作り出したのは誰か。お偉方ですよ、中央の、京の都の」

民人が先祖代々血と汗で切り開いた土地を、権勢で次々と荘園にしているのが都の公卿たちである。天下もろもろの悪の根源は、朝廷と都の高貴な方々にあり──。スッキリした純友は国府を後にします。正経は海賊と通じたということにして純友を捕らえようと提案し、全てを純友に罪を着せて……と維久はニッコリします。康継は自分の手で捕らえると、兵たちに純友を追えと命じます。

純友を追って館に押し入った兵たちですが、そこはすでにもぬけの殻です。康継は一瞬考えて「海じゃ」と方向転換しますが、時すでに遅く、くらげ丸と鮫と小舟に乗って脱出した後でした。ただ康継たちが軍勢を従えて大津の純友屋敷を攻め込むのは時間の問題で、純友は自分の領地に彼らを引き込む作戦を考えています。

 

承平6(936)年の春が坂東に来た。依然として合戦の噂は絶えなかった。いっぱい地にまみれたとはいえ、良正がこのまま引き下がるとはだれも考えなかったし、やがて上総の良兼も、そしていずれは太郎貞盛も起つだろうと、人々は信じて疑わなかった。将門は郎党たちと畑を耕して開墾し、良子は侍女たちと川で野菜を洗っています。

上総の良兼の領地では、戦に備えて武具の手入れを命じるお触れが回っています。血相を変えて平 将頼が知らせに来ますが、これから田植えが忙しい時期に入り、いくら良兼でもそんな時に兵たちを借り出して戦はしないだろうと笑います。

夜、尋ねてきた鹿島玄明と将門は対面します。純友のことは任せろと螻蛄婆は言うし、都に用はなく、玄明はしばらく将門館に居候することになりました。ただ純友や螻蛄婆から要請を受けときは、伊予に向かうつもりです。「見たいんですよ、純友の殿とその仲間たちが立ち上がって、世の中をひっくり返す時を」

今の将門の戦相手は大地であり、一族の争いの子とも、都のことも、純友のことも忘れて、ただ働くのが似合っていると将門は考えています。玄明は、将門と純友が似ているとフッと微笑みます。小次郎は、玄明の言葉に衝撃を受けていた。自分の心の奥深いところにある何かを、それは確実に刺激していた。言い換えれば、それはひとつの予感であった。

将門の館目がけて矢文が放たれます。鹿島玄道の手下の者で、良正が忍び姿で良兼の館に向かったとあります。将門は、今の幸せを崩したくないと、自分の気持ちに正直にありたいと考えています。すると、今はるか遠くに感じられている純友が、ある時自分と背中合わせのすぐそばにぴったりと寄り添っているかもしれない。それが、小次郎の身を狂わせるような予感であった。

お忍びで良兼館を訪問した良正は、6月に挙兵を進言します。農作業に忙しい6月に挙兵するなど、土地を踏み荒らされる民人に迷惑がかかると良兼は否定的ですが、敵の意表をついて将門領に攻め込んで分捕った土地をエサに兵を集めればいいと良正は自信たっぷりです。加わった詮子も、良兼のおかげで平和に暮らせる民人は、戦による農作業の少々の手不足を生じても文句は言わないと背中を押します。

もはや詮子の言うことには逆らうまいと覚悟を決めている良兼であった。密談の末、6月……とつぶやく良兼でしたが、天井裏では玄明がその会話をすべて聞いていて、敵の裏をかくという必要がありながら速攻で出陣の情報が敵に漏れてしまうのは、こちらの脇の甘さです。

玄明はさっそく将門に報告します。小次郎の父の代から仕えているこの年老いた郎党が、いま腹の底から泣いている。坂東では、大地との格闘こそすべてであり、農事はすべてに優先していた。いかなる争いごとも農繁期には避けられ、収穫の秋を過ぎて初めて喧嘩や合戦が行われる。この時代、坂東武者とはまず開拓者であり農民であり、そして最後に戦う者であった。

将門は、良兼や良正がどれだけ違法な戦をしても自分は乗らないと、戦える者だけで戦うと決断します。ただ良兼が全力を挙げれば700~1,000には膨れ上がり、当方はわずか150人程度にしかなりません。将門は坂東の男として、恥ずかしくない戦いだけをしたいわけです。「古(いにしえ)より今に変わらず、坂東の野面を吹き渡る風のように、俺はそういう男でいたいのだ」


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
真野 響子 (良子)
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草刈 正雄 (鹿島玄明)
仲谷 昇 (藤原忠平)
吉行 和子 (けら婆)
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長門 勇 (平 良兼)
星 由里子 (詮子)
緒形 拳 (藤原純友)
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制作:小川 淳一
演出:大原 誠

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第26回「海賊大将軍」

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