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2024年3月17日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(11)まどう心 ~父の復職のためまひろが奔走~

寛和2(986)年、屋敷に戻って来た藤原為時は、もう終わりだ と青ざめ、崩れるように座り込みます。出迎えるまひろといとは何のことだか分かりませんが、直後、藤原惟規(のぶのり)が「帝が退位したって聞いたけど?」と戻って来ます。為時は帝の退位により式部丞を免ぜられ蔵人の職も解かれたのです。「新しい帝はわずか7歳、これからは摂政さま(藤原兼家)の思いのままだ。この先の除目に望みは持てぬ」

19歳の花山帝が出家するとは……と宮中では藤原公任たちの話題に上がります。公任は、夜遅くに藤原道長が帝の退位を父の藤原頼忠に告げに来たのを目撃していて、道長が一枚かんでいるなら一家を上げての謀だと藤原斉信は分析します。そこに出仕してきた道長に、どうやって真夜中に帝を連れ出したのか斉信が尋ねますが、道長は「聞かない方がいいよ」とサラリと返します。

まひろは土御門殿の屋敷を訪れ、源 倫子に帝の退位で父が失職したことを打ち明けます。次の帝の役に立つからと左大臣源 雅信を通じて推挙をお願いしますが、それは難しいと倫子にはっきり断られます。摂政の決断は帝の決断であり、雅信でさえ覆せないのです。まひろは食い下がり、摂政に直接お目にかかると言い出します。「おやめなさい。摂政さまはあなたがお会いできるような方ではありません」

それでもあきらめきれないまひろは、東三条殿の屋敷の裏門に居座り、兼家に会うまで帰らないと言い張っています。それを聞いた兼家は対面してやることにします。屋敷の中を案内されるまひろは、「ここが、あの人の家……」と思いを巡らせながら、案内役について歩いていきます。対面所に現れた兼家は、賢いと評判の娘がまひろのことかと興味津々です。

まひろは、為時がこれまで兼家に尽くしてきて、不得手な間者もこなしてきたわけですが、今回のことでなぜ官職を追われなければならないのかと訴え、官職を与えてほしいと頭を下げます。兼家は、命令は聞けないと為時のほうから去っていったと事情を説明し、去るものは止めぬが背いた者に情けもかけないと突き放します。「わしの目の黒いうちに、そなたの父が官職を得ることはない。下がれッ」

お勤めから戻って来た道長ですが、兼家と対面を終えて屋敷を出ようとしている客人がまひろであると気づき、慌てて身を隠します。どうにかまひろに気づかれずに済みますが、道長は兼家に、客人のことを尋ねます。「虫けらが迷い込んだだけじゃ」と吐き捨てる兼家に、道長はまひろが何か願い事をして、斬り捨てられたなと思い至ります。

まひろが屋敷に戻ると、為時は高倉に行っていて不在だというのに、藤原宣孝が来ていました。まひろが兼家に直接直談判に行ったと知り、「お前すごいな」と驚きます。下女を暇に出し自分も働きに出なければと考えるまひろですが、宣孝は婿を取ればいいと笑います。「そなたは博識であるし話も面白い。器量も……そう悪くない。身分の高い男より富のある……かくてわしのような男はおらぬかの」

 

摂政となった兼家は、内裏の後宮内に直廬(じきろ)という自らの政務室を持った。さっそく臨時の除目を行った。一の座は摂政兼家、ついで太政大臣頼忠、左大臣雅信、右大臣藤原為光……と続き、権大納言藤原道隆と参議藤原道兼の名が挙がります。参議たちはその除目に驚き、道隆や道兼を蔑んだ目で見ています。兼家は息子たちを露骨に昇進させていった。

帝の母である詮子は「国母」となり皇太后の称号を授与され、兼家の亡き長女の産んだ皇子で花山院と腹違いの弟の居貞(いやさだ)親王が東宮となった。懐仁親王は、走ってはダメ、すばらしい帝になれ、覚悟をしろ、と立て続けに詮子に諭され、ちょっと窮屈なようでため息交じりに「はい」と応じます。

兼家は藤原道綱の屋敷に顔を見せますが、兼家の子であっても時姫との子たちとは雲泥の差の道綱の扱いに、藤原寧子は不満をくすぶらせます。道綱もちゃっかり蔵人にしてもらっているわけですが、欲がないと寧子に呆れられます。「母上! もうやめて!」と兼家を気遣いますが、兼家は笑って聞き流します。

わずか7歳の天皇が即位する朝が来た。これは天皇の即位式の時のみに用いられる高御座(たかみくら)である。突然悲鳴が上がり、検非違使の任務中の道長たちが駆けつけます。高御座の中には子どもの生首が据え置かれており、役目の者がおののいていました。そのころ花山院は、恨みを込めて呪詛をしていたのです。

道長は生首を鴨川に捨てて来させ、儀式を続けるように告げます。「このこと一切他言ならぬ。外に伝えれば命はないものと思え」それでも穢(けが)れているとわなわな震える男に、道長は生首があったところを雑にふき取り、穢れてはおらぬとつぶやきます。何事もなかったかのように、即位式は執り行われた。失意の花山院は、播磨国書写山の圓教寺(えんきょうじ)に旅立っていった。

兼家は道長と酒を酌み交わし、高御座が血で穢れていたことが知れれば、即位式は取りやめになっていたところだったと、道長の機転を褒めたたえます。誰の仕業か尽き止めなくてもいいのかと道長は兼家に確認しますが、兼家は誰がやったかは分かっているようです。皇子が帝に即位し、今さら突き止めるまでもないと判断したのかもしれません。即位式の当日、道長は五位蔵人となった。

 

道隆は安倍晴明に、嫡男藤原伊周(これちか)と一の姫の定子を紹介します。伊周は父道隆が“笑裏蔵刀”、顔は笑っていながら刃を隠し持っていると忠告して母の高階貴子にたしなめられます。そして定子はいずれ帝に入内させ、皇子を産ませるつもりです。兼家は摂政まで上り詰め、これからは道隆の時代であると、晴明によろしく頼むと微笑みかけます。

場はそのまま宴になりますが、そこに道兼が現れます。帝の譲位には自分が身を賭して働いたのであって、道隆ではないと不満顔ですが、まあまあまあと兼家は外に連れ出し、少し待つよう諭します。道兼の3歳になる姫もいずれ入内させるつもりです。「お前が道を切り開いてくれたと思うておる。道兼、まずはあやつらの心を掴め。さすれば堂々と兄を抜くことが出来よう」

蔵人所で働く道長の様子を、道綱が見に来ました。道綱に挨拶をする書記官・俊古ですが、蔵人務めが長い俊古は人の浮き沈みをいろいろ見てきたわけで、今回の帝の譲位によって為時や藤原実資もあんな形で職を解かれるとは驚きだったようです。そしてその為時の屋敷から、下男下女が去っていきます。為時が官職を得たら戻って来てねと言いつつ、そんな日がくるのか不安なまひろです。

為時が官職を失っても、道長とまひろの文のやり取りは相変わらずで、左大臣家の集まりも続いています。倫子には求婚の文がたくさん来ているのに、なぜ婿を取らないのかと尋ねます。倫子は実は狙っている殿御がいるらしく、その相手のことは婿に取るまでナイショとニヤリとします。そうですよね~とまひろも乙女になって聞いていて、女子トークに花が咲きます。

まひろは屋敷の拭き掃除を終わらせると写本を作り、庭の畑を手入れしては書き写し、と生活が一変します。下男下女がいなくなり、乙丸も木の枝をたくさん取って背負って帰ってきますが、もうヨロヨロです。そんな時、道長が為時の屋敷を訪問します。庭の畑で取れた野菜を洗っているまひろを目撃し、サッと身を隠します。

いとにお使いを頼まれた乙丸が表に出て来ますが、道長はいつものところで待っているとまひろに伝えてもらうよう乙丸に頼みます。「若君……もういい加減にしてくださいませ」と勇気を出してたしなめますが、頼む! と言われては、乙丸も断るわけにもいきません。従者百舌彦にせっつかれてムッとする乙丸は、そのまままひろに伝えます。まひろは門から外に走って出ますが、すでに道長の姿はありません。

夜、いつもの廃屋敷にまひろが走ってきて道長の胸に飛び込みます。熱いキスを交わし「妻になってくれ」という道長ですが、まひろの扱いが正妻「北の方」ではなく妾(しょう)であると知り、耐えられない! と反発します。道長の中では一番の存在であることを必死に伝えても、まひろは納得しません。道長は「勝手なことばかり言うな!」と声を荒げ、まひろの元を去っていきます。

屋敷に戻った道長は、兼家に頭を下げます。「お願いがございます……」
そしてまひろは、ずっと廃屋敷に残って、自分の顔が映る水面に石を投げます。すすり泣く声が、寂しく響いていました。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
高杉 真宙 (藤原惟規)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
上地 雄輔 (藤原道綱)
本郷 奏多 (花山院)
橋爪 淳 (藤原頼忠)
益岡 徹 (源 雅信)
財前 直見 (藤原寧子)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・高橋 優香子
演出:中島 由貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第12回「思いの果て」

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