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2024年4月 7日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(14)星落ちてなお ~兼家死す・まひろ道長は~

永祚2(990)年、倫子と対面した帰りのまひろと、屋敷に帰宅した道長が遭遇します。道長は何事もないかのようにまひろの横を通り過ぎ、倫子と彰子が道長を迎える一家のほのぼのとした様子を見ようともせず、逃げるように出て行ってしまいます。道長は、彰子が「ちちうえ」と言えたのに気づかず、心ここにあらずといった感じで、倫子は少し気になります。

女房として働き先が決まったという倫子への言葉はうそだったわけですが、いとは土御門殿の屋敷から呼ばれたのになぜ不採用だったのかと腹を立てます。まひろはうそをついたとも言えず、気に入られなかったのでは? とか女房としては使いにくかったのでは? と適当に答えていますが、あまりにいとが腹を立てるので、黙らせるためにも期待に添えず許しておくれと謝ります。

藤原兼家は、気分がいいからと起き上がり、藤原道隆・道兼・道長の三兄弟を呼びます。関白を辞し出家すると宣言した兼家は、後継として道隆を指名します。自分が指名されると信じていた道兼は、「お前のような人殺しに一族の長が務まるか」と兼家に言われ、逆上。円融院に毒を盛り、花山院女御と皇子を呪詛し殺めたと兼家の悪行を明らかにしますが、この家の汚れ仕事を担えと兼家からの厳しい言葉です。

今より父は亡い者と思って生きよ──。そうつぶやいた兼家は、支えられながらゆっくりと戻っていきます。その様子をじっと見つめていた道長は、そのまま振り返りますが、その方向には道兼が愕然とした様子でうなだれていました。これ以来、道兼は参内しなくなった。道長の複雑そうな表情です。

出家した兼家は病床に伏し、傍らには道綱と母藤原寧子が座っています。道綱のことも道隆に取り計らってくれるよう、耳元で何度も何度も「道綱……道綱……みちつな……」と吹き込みます。やがて眼を開いた兼家は、薄目で寧子を見ると、
歎きつつ
 ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は
  いかに久しき ものとかは知る

とつぶやきます。寧子が書いた『蜻蛉日記』の中の一首です。寧子は涙を浮かべます。

その間にも、兼家所有の扇を手に入れた源 明子はそれに向かって呪詛し、兼家を苦しませ続けます。安倍晴明は夜空を見上げ、今宵星が墜ちるとつぶやきます。「次なる者も長くはあるまい」 そのころ兼家も天を仰ぎ、月を見上げます。しばらくすると明るく光る月が赤く染まっていきます。まるで兼家の生気が吸い取られていくようです。兼家の表情もだんだんと険しくなっていきます。

呪詛し続ける明子は、兼家の扇に念を送ると激しい物音とともに扇が落下し、豪雨になります。しかし直後、明子も腹を押さえて倒れ込み、ひどく苦しみ出します。屋敷の庭、高蘭橋のところで兼家が横たわっています。そのまま朝を迎え、その姿を発見したのは道長でした。手を握り、父を抱き起こす道長は涙を浮かべます。

 

為時屋敷を訪問した藤原宣孝は、3日前に兼家が薨去したことを伝えます。兼家によって為時は官職を失ったわけで、いとは隠れてガッツポーズしますが、世話になった為時は「激しいご生涯であった」とその死を悼みます。さらに宣孝は守(かみ)として筑前に下ることになったと報告します。支度があると言って宣孝が辞すと、為時は涙を流します。

明子は腹の子を流産してしまいました。道長は明子を見舞いますが、生まれ出でぬ宿命の子もおる、と慰めます。明子は、父の喪に服している時に流産した妻を見舞ってくれるなんてとつぶやきますが、「しきたりなぞ気にするな」と道長らしい返答です。そんな道長を迎える倫子ですが、明子は若いからいくらでも子ができるとつぶやき、自分も気張らねばとニッコリします。

関白藤原兼家の喪に服して、都はしばらく静まり返っていたが。道兼は酒に酔って舞い、ヤケになっています。妻の繁子は離縁を申し出ます。「好いた殿御ができました。お父上の喪にも服さぬようなあなたのお顔はもう、見たくもございませぬ」 娘の尊子は置いていくよう道兼は言いますが、尊子は繁子と一緒に出たいというらしく、前に屋敷から出しています。

藤原頼忠の遺言通り、道兼をひいきしていた藤原公任ですが、父も見る目がなかったなと遠い目をします。公任に誘われていた藤原斉信は、道兼につかなくてよかったと晴れ晴れしています。どちらにしても取り入る相手を道隆に乗り換える必要があります。考えてみれば定子を入内させた道隆が後継になっただけで、藤原行成は「なるようになった、ということ」と分析しています。

 

摂政となった道隆の、初めての公卿会議が行われた。一条天皇の「蔵人頭(くろうどのとう)、参れ!」の掛け声に参上したのは、藤原伊周(これちか)でした。道隆は、まだ17歳の息子・伊周を一足飛びに蔵人頭に任命した。その伊周の姿に宮中の女たちは黄色い声を上げ、漢詩も和歌も笛も弓も誰にも負けない腕前と評判です。

伊周や高階貴子がいる中、双六で定子に勝った帝は、定子の背中に抱きついて遊んでいますが、そこに詮子が現れます。にぎやかでよいのう、と皮肉を忘れない詮子は、そのような乱れた姿を見せてはならないと帝に注意します。定子が謝罪しますが、詮子は帝に言っているわけで、定子に言っているのではありません。「出直して参る。それまでにお上はお心を整えなさいませ……見苦しや」

藤原実資は、伊周を蔵人頭にするのは異常だと酒をあおります。花山院の元女御で実資に嫁いだ婉子女王は「う~ん、この張り具合……」と実資の腹をさすり、満足げです。腹をつかむな! とたしなめる実資ですが、その話は日記に書けばいいでしょ、と言われて、前妻も同じことを言っていたとつぶやきます。拗ねる婉子をなだめつつ、日記に書くことを約束します。「関白藤原道隆の横暴!」

貴子は伊周によい婿入り先を見つけてやりたいと道隆に進言、和歌の会を開いて女たちの品定めをすることにします。貴子が考える姫たちの他に、漢詩の会の時の2人も呼びたいと言い出します。「あの2人? ああ……あの出すぎ者の」和歌の会は5年前の漢詩の会と同じく、道隆の屋敷で行われた。

招待されたのはまひろとききょうでした。ききょうは6月に肥後守として赴任した父を亡くしており、一人で赴任させたことを悔やんでいますが、京から離れれば取り残されてしまいそうで、都を離れる気にはなれなかったのです。ちなみにききょうは今回の目的が伊周の妻選びと分かっていて、あほらし! とつぶやきますが、すぐに呼び出しを受けます。「……聞こえたわね」

ききょうがお題「秋」を発表し、姫たちがそれぞれ和歌を詠みます。時間が経ち、出来上がった和歌をまひろが読み上げます。秋風の うち吹くごとに高砂の 尾上の鹿の鳴かぬ日ぞなき──。威厳に満ちながら秋にふさわしい涼やかな響きのお歌、とききょうが評し、御簾の中の伊周は貴子に向かって頷きます。

 

和歌の会も終わり、まひろは屋敷に戻ってたねに文字を教えています。たねは父と母の名前を書いてみせ、もう何でも書けるんじゃない? とまひろに褒められます。もう時間だとたねが帰っていくと、入れ替わりで市女笠姿の女が屋敷を訪問します。ききょうでした。汚らしい下々の者に文字を教えているまひろに、なんと物好きな……!! と目を大きくしておどろくききょうです。

ききょうは、和歌の会に参加した「よりよき婿を取ることしか考えられず、志を持たず己を磨かず、退屈な暮らしもそうと気づく力もないような姫たち」が一番嫌いだと言い放って、まひろはドン引きです。宮中に女房として出仕し世の中を知りたいききょうは、その志のために夫を捨てたいと言い出します。和歌は詠めずとも女は慰み者であればいいと反対する夫を「下の下でございましょ」と酷評します。

ちなみに夫とききょうの間には男の子もいますが、夫におっつけてやるつもりです。息子を手放してでも、ききょうは自分自身のために生きたいわけです。広く世の中を知り、己のために生きることが他の人の役にも立つような……。ききょうの考えを聞いて、まひろは雷に打たれたような、何か自分の中に考えが芽生え始めていました。

 翌日、たねの姿がありません。まひろが乙丸を伴ってたねの家を訪問してみると、畑仕事を手伝うたねが父のたつじからぶたれているのを目の当たりにします。たつじはまひろに詰め寄り、文字なんか教えるなと文句を言います。「うちの子は、一生畑を耕して死ぬんだ。俺ら、あんたらお偉方の慰み者じゃねえ!」

道隆は、検非違使庁の改革案を提出した道長を呼び出します。何度も却下したのですが、それでも道長は諦めていません。検非違使庁の下僕(しもべ)は裁きの手間を省くために罪人を密かに殺し、その非道を許せば国は荒んでしまうと道長は危惧するのです。罪人がどう処分されようと知ったことかと道隆は言い放ちますが、「身分の高い者だけが人ではありませぬ」と道長は食い下がります。

道隆は、定子を中宮にすると言い出します。すでに円融院の中宮として遵子(のぶこ)がいますが、遵子には皇后に上がってもらい、定子を中宮にするのです。皇后と中宮が並び立つ前例はないと道長は忠告しますが、どんな前例でも、その最初にはそもそも前例がなかったと言われてしまいます。道長は公卿たちへの説得役を命じられてしまいます。「これは相談ではない。摂政の命である」

まひろは、たつじに言われた一言が堪(こた)えたようで、がっかりしています。そしてまひろが見上げた月を、やるせない気持ちの道長も見上げていました。俺は何ひとつ成していない……。道長も、ぶつけようのない怒りを押し殺すしかすべがありません。

道長は公卿たちに諮りますが、やはり皇后と中宮が並び立つのは前例がないと難色を示されます。実資も、藤原顕光(あきみつ)も、藤原公季(きんすえ)も、源 重信も、そして源 雅信も「あり得ぬ」という返答です。唯一藤原為光のみが「皇后はさきのさきの帝の后、中宮は今の帝の后ということであるならば、あるやもしれませぬ」と答えます。

そしてその数日後。道隆は帝に定子を中宮に立てることとすると提案します。それに対して帝は「朕は定子を中宮とする」と答え、前例なきことも瞬時に決定してしまいます。道隆の独裁が始まった。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
秋山 竜次 (藤原実資)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう)
益岡 徹 (源 雅信)
財前 直見 (藤原寧子)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
段田 安則 (藤原兼家)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・高橋 優香子
演出:黛 りんたろう

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第15回「おごれる者たち」

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