« 大河ドラマ光る君へ・(13)進むべき道 ~4年が過ぎまひろと道長は~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(28)坂東震撼(しんかん)す »

2024年4月 2日 (火)

プレイバック風と雲と虹と・(27)折れた矢

承平6(936)年6月、平 良兼は1,000騎を動員し、小次郎将門を討つため兵を起こした。上総を出た良兼は、良正の済む水守(みもり)へとその軍勢を進めていた。平 良正は凛々しい姿の兄 良兼に大喜びです。案の定、平 貞盛はここにはいないわけですが、良兼は蓮沼五郎に常陸府中の貞盛のところへ書状を持って向かわせます。

良兼には、一門の統制を乱す者として平 将門を討つという目的がありますが、貞盛には“考えるところがあって”合戦には加わらないと断言します。五郎は、貞盛が参陣しない場合は首に縄をかけてでも連れて来いと良兼の言葉を伝えますが、自分の屋敷でそれができるかと貞盛はニヤリとします。五郎は「またこうも申されました。一門の長たるわしの命に背けば兵を送って討つ」と伝え、帰っていきます。

対面所のとなりにいた秀子は、軍勢に加わらないなら討つと脅してきたと知り、唖然とします。貞盛は自分も一族であり、血を分けた甥なわけですが、秀子は「でもそれなら……」と言いかけます。それなら──小次郎もまた良兼にとっては同じく血縁の甥である。母の目は不安に満ちていた。そんな時、平 繁盛が合戦の支度にとりかかっていると小督が知らせに来ました。

貞盛が急いで馬場に向かうと、繁盛が命じて支度にとりかからせていました。貞盛は意気地がないから父の仇は私が討つと言う繁盛に、貞盛は平手打ちします。慌てて駆けつける佗田真樹に、お前がついていながら! と叱責し、支度にとりかかっている者たちにも鎧を脱げと命じ、貞盛は去っていきます。繁盛は、父の無念を晴らしたい一心なのですが、それが叶わず大泣きします。

源家の姉妹には男をけしかけ争いをさせる血が混じっている、と貞盛は小督を睨みます。小督は、貞盛が参陣せずとも良兼が攻めかかることはないと断言します。貞盛の妻は小督であり、その姉2人はそれぞれ良兼と良正の妻です。自分の娘の婿は討っても、自分の妻の妹の婿は討たない──。「だからあなたは安全。私があなたの妻でいる限りはね」 貞盛は小督を抱き寄せ、夜が更けていきます。

夜中過ぎ、繁盛と真樹らは合戦支度で館を出発します。とりあえず軍勢を追いかけていって連れ戻すしかありません。貞盛の密書を持って朝早くに豊田へ向かう予定にしていた秀子には、早く将門のところへと向かってもらいます。しかし気になるのは、小督の姿がないことです。太郎貞盛は、繁盛たちの後を追って良正の館・水守へと向かった。そして母の秀子は、太郎貞盛の手紙を持って豊田へ。

水守館に到着した貞盛ですが、良兼や良正たちはすでに下野へ出立した後でした。小山郡(おやまごおり)あたりで味方の集結を待つようです。繁盛も下野へ向かったと聞き、よし、と貞盛は下野へ追いかけていきます。水守に集結した良兼・良正の連合軍は、意外にも豊田へと攻め下る道をとらなかった。繁盛らの手勢も加えて北に向かい、伊讃郷(いさごおり)、今日の茨城県下館市付近にその日の陣を取った。

 

馬上の人である秀子は、暑いねえ、と汗を拭います。旧暦の6月といえば、もう夏の盛りである。 豊田の館では、将門や平 将頼、三宅清忠が、良兼の軍勢が北に向かった理由を考えていました。そこに秀子が到着し、将門は対面します。貞盛の密書を読み、よくわかりました、と返答します。「小次郎が心から礼を言っていたとお伝えください」

とはいえ、信じていた貞盛ももしやと将門は考えることもあり、この密書を呼んでそんな心を恥じている将門です。正子は、かつては一族がみんな睦み合っていたのに、とつぶやくと、なぜこうなってしまったのかと秀子は涙を流します。本来であればいきり立つ若者をなだめる立場の良兼や良正が戦に立つとは……。「きっとまた、昔のように」と正子は励まします。

良兼本陣に到着した貞盛は、繁盛と対面を求めます。待っている間、ものものしい兵たちを見て、将門も今度ばかりは大変だと貞盛は感じています。良兼本陣を探りに来た伊和員経はその様子を見て、貞盛は将門を裏切って良兼軍に加わるつもりかと腹を立てます。さっそく報告に走る員経に、鹿島玄明はもうしばらく様子を見ていくと、この場に残ることにします。

貞盛は良兼と良正のところに案内され、繁盛の不心得を諭して連れ帰ると良兼に伝えます。貞盛は、世人は同族同士が相争う戦を笑っても褒めることはないだろうと主張します。良兼は、貞盛が将門の味方をするのかと責め立てます。貞盛は兵たちに取り囲まれ、あっさりと良兼側につくことにします。本陣の世話をしていた貞盛の姉・定子も顔を出しますが、そこに小督の姿もありました。

豊田の館に戻って来た員経は、貞盛の裏切りを報告します。小次郎には信じられなかった。もし伊和員経の報告が真実ならば、あの手紙は……。まさしく太郎貞盛の真実の心を訴えているとみえて小次郎の涙を誘った、あの手紙は……。後から到着した玄明も、貞盛の裏切りを認めます。「あなたを裏切るまいと努力していた。しかし裏切りだ、結果は。弱い男です、太郎貞盛」

翌朝早く、将門と正子、良子は帰る秀子を見送りに出ます。秀子は最後まで、あの子は始めから将門を騙そうとしていたわけではないと弁明しますが、将門は男の誓いは守られなければならないと突き放します。矢を1本取って折り、貞盛に届けるように手渡します。「この折れた矢が再びもとに返らないように、俺たち二人の間ももう、昔の二人に返ることはない」 正子はその場に泣き崩れます。

 

良兼たちの軍勢はさらに北へ、常陸と下野の国境をはるかに超えて、下野国小山郡へと進んでいた。その中には、もはや諦めをつけた貞盛もいた。彼は心の中でこうつぶやいていた。「どうしようもないのさ。許せ小次郎」

水守からすぐの豊田の館ですが、伊讃郷から小山郡へ北に回り、豊田から離れていく一方です。清忠は下野にまで足を伸ばして、坂東一の豪族であることを示したいのだと予測します。将門は、農業繁忙期に出陣するには自分の首を取るだけでは勘定が合わなかったのだろうと笑います。玄明は、下野の豪族たちが良兼の機嫌を損ねたくなくて加勢していき、今では2,000にもなっているだろうとつぶやきます。

良兼たちが対陣した下野国小山郡は、今日の栃木県小山市あたりである。これは下野の国府から駆けつけた国の守(かみ)・大中臣全行(おおなかとみの またゆき)。全行は、先の上総介である良兼が大軍を率いて、一族においてのもめ事に関係のない下野にいることに不快感を示し、見逃せば大変な落ち度になると言葉を荒げます。なだめる良兼は適当にあしらって全行を帰します。

満足そうな良兼ですが、良正は下野の豪族でまだ大きな権力を誇る田原藤太(藤原秀郷)がいると伝えます。
そのころ将門も、田原藤太のことを考えていました。小次郎はその名を忘れてはいない。あれは幼い日の彼が父を追って陸奥の鎮守府へ向かう途中のこと。不公平な裁きに役人を殺した反逆の罪で捕縛された田原藤太に、将門はそのはなむけに腰刀を献上していたのでした。

下野の田原藤太の館には、蓮沼五郎が赴いていました。病気を理由に対面が叶わず、出直すと五郎は帰っていきます。そこにいた武蔵は、将門を“仇”と言って藤太を驚かせます。客人(まろうど)の姫と呼ばれた女は、かつて坂東に向かうといって消息を絶っていた武蔵。この時の田原藤太は、いま坂東を騒がせている小次郎将門とかつて出会ったことがあるなどとは思ってもいない。

その小次郎将門は、いま静かに時を待っている。その時とは、伯父良兼・良正の2,000を超える軍勢との戦いである。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
──────────
[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
草刈 正雄 (鹿島玄明)
真野 響子 (良子)
──────────
新珠 三千代 (将門の母 正子)
丹阿弥 谷津子 (秀子)
多岐川 裕美 (小督)
──────────
長門 勇 (平 良兼)
太地 喜和子 (武蔵)
露口 茂 (田原藤太)
──────────
制作:小川 淳一
演出:松尾 武

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第28回「坂東震撼す」

|

« 大河ドラマ光る君へ・(13)進むべき道 ~4年が過ぎまひろと道長は~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(28)坂東震撼(しんかん)す »

NHK大河1976・風と雲と虹と」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ光る君へ・(13)進むべき道 ~4年が過ぎまひろと道長は~ | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(28)坂東震撼(しんかん)す »