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2024年4月30日 (火)

プレイバック風と雲と虹と・(35)豊田炎上

焼けつくような暑い日と、戦いに敗れた焦りは、小次郎を過労に追い込んでいた。ひどい熱にうなされながらも目を覚ました将門は、誰にも言うなと良子に口止めします。翌朝になると容態が良くなり、寝ずに看病をした良子を労わると、将門は厠へ向かおうと立ち上がりますが、めまいがして座り込んでしまいます。発熱はその夜だけのことだったが、過労は小次郎に脚気を起こしたのである。

食事にもほとんど手をつけないまま軍議に参加する将門ですが、味方の兵が500も集まったと聞いて奮起します。大方郷堀越は豊田から北へ2里、今日の茨城県下妻市堀米である。前の合戦から10日目、秋風の渡るさわやかな日であった。味方はかつてない大軍であり、誰の胸にも不安はなかった。勝利を信じ切っていたのである。ただ小次郎だけが、自分の足が実は自由の利かないことに、かすかな恐れを抱いていた。

敵勢が近づき、平 良正は前の合戦で敗れた将門を非難します。平 良兼の命で、「故鎮守府将軍良将尊霊位」ののぼり旗とともに似せ絵も掲げられ、将門は腹を立てます。小次郎の父・良将の姿をまだ胸に焼き付けている郎党や兵が、豊田勢の中には少なくない。画像はあまりにも在りし日の良将に似ていた。

じわじわと進めと良兼は下知しますが、源 扶(たすく)は勝手に前進して将門をけしかけます。将門は画像を奪えば守り神になると乗馬を命じます。この時小次郎は鐙(あぶみ)に十分足がかからなかったように感じた。馬に乗りかけて落馬した将門を心配して駆け寄る郎党たち、そしてその姿を見て扶は大笑いし、良兼は攻撃を命じます。

豊田勢は再び崩れ去った。恐怖に浮足立って、大軍であるほどそれは歯止めがきかないのが常である。雪崩のような敗走であった。承平7(937)年8月17日、平 小次郎将門の生涯で、最大の屈辱に満ちた敗戦であった。平 将頼は将門の身体を心配しますが、「そんなことはどうでもいい」と将門は吐き捨てます。

豊田の館に戻った将門は、館に残る者たちをほかへ避難させます。老郎党の爺は、慣れ親しんだ豊田の館に手を振って別れを惜しみ、館の門を閉じます。小次郎もやがて伯父たちの兵によって火をかけられ、灰となってしまうに違いない館に向かって、心の中で別れを告げた。

 

一足先に館を出た良子と豊太丸、そして貴子主従は、桔梗の案内でひとまず葭江津(あしえつ)へ身を隠すことになった。桔梗はこういう危機にはかえっていきいきと働く坂東の女である。口笛を吹いて村の仲間を集め、敵兵がいないことを確認すると良子たちを案内しますが、後からついてくる貴子が足をくじいたように座り込んでいます。良子は励まし、少しずつでも前へ進んでいきます。

桔梗の父が船頭の小舟で川を進み森に向かう将門ですが、浅瀬から徒歩で向かう時によろよろと倒れかかります。桔梗は将門に肩を貸しますが、桔梗の父の声で振り返ります。豊田館の方角、天が赤く染まっているのがはっきりと分かります。それを見つめる将門主従と桔梗父娘は、赤い空を見つめて言葉を失います。

これでやったと良正は満足げですが、良兼は愛娘の良子の安否を心配しています。残敵を掃討して将門を捕らえねばと扶が提案しますが、良兼は躊躇し、扶は良子のことが気がかりなのだと悟ります。扶は探索役を引き受けると言い出します。「一度は俺の妻と決まった人だ。任せてもらいたい。粗略にはいたしませぬ」

水守館からも豊田館の方角の空が赤く染まっていました。とうとう源家の恥が雪がれたと喜ぶ詮子は後詰で館に詰めていた平 貞盛に、将門はあなたの妻の弟ふたりの仇だと言いますが、それを言うならわたしの父の仇だと貞盛に指摘されます。「あなたの目には坂東源氏しかない。あなたの目には坂東源氏のその将来と発展とそれしかないのだ。定子どのも同じだ。もちろん小督も」

その夜、良子たちと落ち合った小次郎は葭江津の森にいた。将門が脚気を患っていることを知った将頼や老郎党は、すぐに治ると将門を励まします。その輪から少し離れたところにいる貴子は、良子に誘(いざな)われて輪の中に入りますが、京から坂東へ来て、しかも負け戦に心労が重なったのか、気分が悪いと胸を押さえます。将頼は老郎党に命じて敷物の上に貴子を寝かせます。

将門や良子たちも横になり、休んでいます。召使の婆が貴子に貞盛のところへ行こうと説得しているのを、将門は聞いてしまいますが、寝たふりをします。貴子は休んでいる将門に音を立てずに近づきます。「小次郎さま。幸せでした、お会いできて……。貴子は……貴子は……」

貴子が、そのあと何を言いたかったのか、それは小次郎には永遠には分からないこととなった。この時、貴子はもはや自分の遠からぬ死を予感していたのかもしれない。あるいはひたすらに小次郎の胸に抱かれたかったのかもしれない。将門から離れた貴子は涙を流して将門を見つめていますが、小次郎は静かに目を開き、夜空を見つめています。

 

扶と良正が将門探索に集落を回りますが、誰ひとりとして将門の行方を知っていると名乗り出る者はありません。扶は村を焼き払えと命じ、家々が炎に包まれます。ついに葭江津の森も危険となり、小次郎たちは二手に分かれることになった。女こどもは広河の江の芦の間に、そして小次郎は身体の治療と兵を集めるため、古間木沼の岸に向かった。

扶や良正の探索は厳しかった。良正たちに従うと誓った村の長に、捕縛したこの村出身の将門の兵を殺すように命じます。黙ったままの村長に、良正は調べはついているとニヤリとします。捕らえた将門の兵は村長の息子たちなのです。殺せねば村人たちは一味とみなすと脅され、村長と母親はそれぞれの子を刺し殺します。良正たちは涼しい顔で村を後にし、村長の泣き叫ぶ声が響き渡ります。

2艘に分かれてゆっくりと進む小舟には、片や良子と豊太丸、片や貴子が乗っています。岸には扶たちの兵が小舟を見つけ、ゆっくりと追っていきます。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
吉永 小百合 (貴子)
真野 響子 (良子)
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山口 崇 (平 太郎貞盛)
新藤 恵美 (定子)
森 昌子 (桔梗)
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星 由里子 (詮子)
峰岸 徹 (源 扶)
長門 勇 (平 良兼)
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制作:小川 淳一
演出:岸田 利彦

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第36回「貴子無惨」

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