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2024年4月 5日 (金)

プレイバック風と雲と虹と・(28)坂東震撼(しんかん)す

田原藤太は、武蔵が平 将門のことを知っていることに興味を示します。下野の豪族・田原藤太の館に、かつて坂東へ向かうといったきり消息を絶っていた武蔵の姿がある。藤太は山道に倒れていた武蔵を救って館に連れてきたのです。いつもでもいてくれていいと言いつつ、去りたいときに去れと武蔵に任せます。「が、どうやら戦が起きるような。それが落ち着いてからにせい」

同じく坂東の武蔵国、消息を絶った主の姿を求めて季重が来ていた。山賊たちが京から来たいい女にはもう出会えねえと鼻の下を伸ばしています。季重は山賊たちの前に現れ、殴りつけます。彼は山賊たちの話題の主がもしや武蔵ではないかと思ったのである。山賊のひとりが婆から貴子姫と呼ばれていたと思い出し、季重は思い出します。

時は少しさかのぼるが、失火から住む家を失い、都に頼る人もない貴子主従の行き先は坂東であった。自分の運命は東の男によって開けるという、あの火雷(からい)天神の託宣、多治比の文子の言葉にしか、頼る宛てのない貴子であった。途中で見かけた山賊は貴子たちの後を追い、荒れた屋敷で宿を取っているところを襲われます。抵抗した乳母が斬り殺されてしまいました。

季重には武蔵でなかったことが確かめられれば、それで十分であった。季重を腕が立つ者と悟った山賊たちに、自分は盗賊だと名乗った季重ですが、襲い掛かろうとする山賊たち3人を、季重はあっという間に仕留めてしまいます。「主らのような汚い奴ら、許さぬ」 そう吐き捨てた季重は、林の奥に人影を見つけます。出てきたのは鹿島玄道と手下の者たちでした。

季重が斬った山賊たちとは関係がなく、俺でも斬っただろうとニッコリする玄道に、季重は何かを感じていました。馬上の人となった玄道は、季重が探している女の頭について尋ねます。季重の坂東に来た目的はもう一つあり、坂東には平 将門という弟の仇がいるのです。その名を聞いた玄道は「え!? あや……」と驚きます。

 

そのころ小次郎将門は、下野小山郡に集結した良兼ら連合軍の動きについて、軍議を開いていた。2,000の兵を集めてもなお将門に攻めかかる様子もありません。そして藤太も良兼側に味方しそうな気配もありません。将門は自ら物見に立って、1か月以上も田畑を留守にしている駆り出された兵たちの様子を探ってくることにします。

承平6(936)年の7月26日、今日の暦では8月21日にあたる。日の出とともに急速に暑くなった。小次郎は毛野川沿いに北上し、下野との国境に差し掛かっていた。将門は、国境から下野国に入り良兼の軍に近づきますが、待った! と鹿島玄明は将門を止めます。地面に耳をつけ、辺りの様子を探ります。「大軍だ。こっちへ向かってる」

まさにこの時、良兼・良正らの率いる大軍2,300がついに動き始めていた。ひと月に及ぶ小山での対陣に、兵たちは膿・疲れ・不平を生じ始めていたため、良兼らも一路南下を決意せざるを得なかったのである。ついに藤太は良兼軍に加勢しませんでしたが、軍勢も2,300にまで膨れ上がって良正は満足げです。その後方には平 貞盛の姿もありました。

良兼全軍が近づきつつあり、物見の兵もすぐそこまで来ていると玄明が伝えると、「我らは100か」と将門は吐き捨てます。将門は玄明を豊田へ走らせ平 将頼らに後詰100足らずを頼みます。将門は進軍する良兼軍の向こう側から50の兵で伊和員経に矢を射かけさせ、その乱れに乗じて残りの50騎で将門が軍勢に突っ込むという策です。

豊田に向けて全速で走り抜ける玄明ですが、途中で玄道と季重らとばったり会います。良兼・良正連合軍と将門軍が合戦と聞き、小次郎? と季重は目を輝かせますが、馬上の玄道を引きずり降ろして馬に乗り移り、駆けて行ってしまいます。玄道は2,000と100の戦いと聞いて、どうすればいいのか頭が混乱していますが、とりあえず見物に行くことにします。

将門の目の前を良兼や良正、貞盛らが通り過ぎようとしていたまさにその時、向こう側に回りこめた員経たちが、一斉に矢を放ちます。たちまち大混乱に陥る良兼軍です。将門は混乱に乗じて軍勢を本陣に突っ込みます。攻めかかる将門の姿を見ると、貞盛は単独で戦線離脱していきます。

小次郎の戦法は功を奏した。長く、長く伸びた良兼たちの大軍に対して、小次郎は小勢であることの利点を十二分に活用した。員経たちは場所を敏速に移動し矢を射かけ、いなずまのように襲い掛かった小次郎たちは、思うままに大軍を分断し蹴散らした。

良兼たちは2,000に余る大軍であることを過信していた。2,000の大軍とはいえ、多くは無理やりに動員された人々である。戦意が高いとはいえない。ひとたび混乱が生ずると、恐怖がとめどなく波及した。玄明の知らせで、三郎と清忠の率いる援軍が到着し、豊田勢の意気はさらに上がった。

 

ひとたび崩れ立った軍勢は建て直しようがなかった。良兼たちはひたすら逃げに逃げた。そして下野府中の国府に近いさる豪族の館に逃げ込んだ。2,300もの軍勢も散り散りとなり、この館にたどり着いたのはわずかに100、貞盛たちの姿もありません。加勢した他地方の豪族は将門との和睦を勧めます。そこに後詰の軍勢と合流した将門軍がこの館目がけて攻め込んできました。

良兼たちを追い詰めた小次郎の群れには、迷いが生じていた。館を取り囲み、火をかけて出てきたものを射ようと将よりは提案しますが、将門はそれに同意せず、馬と人を休ませるように命じます。戦に勝ったことを称える清忠ですが、小勢で大軍を打ち破った3回の戦では勝てても、4度目は勝てるとは限らないと諭します。将門は無言のままです。

玄道とともに館の裏山に上った季重は、将門の活躍をこの目で見ていなければ信じられなかったとつぶやきます。ともかく玄道に「おい都の盗賊、お前ならどうする?」と尋ねます。季重は、四方を取り囲んでいる館の一か所を開け、そこから逃げ出した者たちを射ると策を練ります。坂東の山賊、と呼ばれた玄道は、なるほどと唸ります。

良兼たちは特に守りを固めるようなことをしていません。員経はこのすぐ近くにある下野国府の守(かみ)が口を差しはさんでくることを危惧しますが、将門は首を横に振って良兼らを助けようと考えています。玄明は、命を助けたからといって恩に着るような人たちではなく、将門にさらに恨みを抱いて戦を起こすと進言しますが、将門はこれ以上同族の血を流したくないと、西側の兵の囲みを解かせます。

西門から撤退し、良正は館を出たところを討ち取る作戦だと将門を疑います。兵たちに出るなと厳命しますが、兵たちは雪崩を打って館の外へ。良兼も、西門から外に出て逃げていきます。その様子を近くの茂みから見ている将門たちです。そして裏山から見ていた季重は、自分が思い描いていたような将門ではないと、彼への見方を変えるほど今日の出来事は衝撃的だったようです。

将門は員経と清忠とともに、下野国を騒がしたと国府に詫びを入れに行くため、将頼に全軍の指揮を託します。豊田に帰ったら戦勝祝いを盛大にしようと、兵たちは盛り上がります。今度の勝利は、全坂東を文字通り震撼させた。だが同時にそれは、彼が否応なく中央の権力と対立してゆく道の、確実な始まりでもあった。


原作:海音寺 潮五郎「平 将門」「海と風と虹と」より
脚本:福田 善之
音楽:山本 直純
語り:加瀬 次男 アナウンサー
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[出演]
加藤 剛 (平 小次郎将門)
吉永 小百合 (貴子)
山口 崇 (平 太郎貞盛)
真野 響子 (良子)
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草刈 正雄 (鹿島玄明)
宍戸 錠 (鹿島玄道)
太地 喜和子 (武蔵)
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長門 勇 (平 良兼)
奈良岡 朋子 (乳母)
露口 茂 (田原藤太)
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制作:小川 淳一
演出:重光 亨彦

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』
第29回「脅える都」

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