大河ドラマ光る君へ・(17)うつろい ~衰弱する道隆・まひろ道長は~
正暦5(994)年。床上げをしたまひろを見て、乙丸は再び声を聞ける喜びを身体全体で現します。為時が言わないことを自分が言うことに躊躇しながら、乙丸は倒れたまひろをこの屋敷まで連れ帰り、夜通し看病したのは藤原道長だと打ち明けます。まひろが、道長がいたような気がすると考えるのは、間違いではなかったのです。
道長は悲田院の状況を藤原道隆に訴えます。道長も藤原道兼も、何のためにそんなところにとあきれ果てる道隆は、先ほどからしきりに水を飲んでいます。疫病により民が絶えれば、その害は必ず自分たちにも降りかかると危機感を募らせますが、救い小屋を作りたければ私財でしろと突き放します。「お前と道兼はなにゆえ手を組んでおる? まさか……私を追い落とそうというのではあるまいな?」
生まれたばかりの赤子を抱きながら、源 明子は兄の俊賢と対面します。俊賢は明子に、次は娘を産めと言葉をかけますが、娘が産まれれば入内させればいいとの考えからの俊賢の助言です。道兼が次の関白になれば道長は左大臣に進む可能性が高いわけです。しかし明子は、偉くなれば妬む人も増えて心配します。
救い小屋を作るにあたって、源 倫子は自分の財も使ってほしいと道長に伝えます。あまりの太っ腹な発言に、道長はとても驚きます。平安時代の夫婦は別財産で、この夫婦の場合は倫子のほうが多くの財を持っていた。倫子は、道長が悲田院に赴いた夜はどこに泊まったのかと尋ねますが、道長は内裏に戻って仕事をしていたとウソをつきます。
為時は、道長との仲はどうなっているのかまひろに尋ねます。必死に看病する道長の姿があったのか、為時はこれを縁に道長の世話になるわけにはいかないのかと言い出しますが、もしご縁があるなら今ごろ文のひとつぐらい届いているはずだと笑います。「お望みどおりにならず、申し訳ございません」
まひろの容態が気になる道長は、従者百舌彦に様子を見て来いと命じます。いやいやながらまひろの屋敷に向かう百舌彦ですが、乙丸からはやめてほしいと言われてしまいます。そこをまひろが通りかかり、百舌彦は慌てて身を隠しますが、まひろにはバレてしまいます。悲田院で助けてくれたかもしれない百舌彦に、まひろは礼を伝えます。
「なぜ返歌をくれぬのだ」と藤原斉信は清少納言(ききょう)に言い寄りますが、自分の女みたいに言わないでと少納言はつれないです。新しく男が出来たか? 前の夫とよりを戻したのか? と斉信はたちまち気になりますが、そういうことをネチネチ聞くようになったの? と少納言は皮肉たっぷりに返します。
登華殿では道隆が笛を吹こうとしますが、音色がか細くせき込んでしまいます。次の瞬間 道隆は卒倒し、一条天皇と定子は驚いて顔を見合わせます。目がかすむ、手がしびれる、のどが渇く……これは誰かの呪詛に違いないと道隆は考えますが、呼び出された安倍晴明は、呪詛ではなく寿命が尽きようとしていると無情の宣告をします。道隆は祈祷で寿命を延ばせと晴明に無理難題を命じます。
自邸に戻った晴明ですが、関白の病気平癒について従者 須麻流(すまる)に祈っておくように命じます。須麻流は自分でいいのかと困惑しますが、晴明は振り返り「お前でよい。もう関白は何をしても助からぬ」とさじを投げます。晴明は病の者と対面して穢れをもらってきてしまったようで疲れ切っていますが、呪文でそれを取り払います。
正暦6(995)年正月。疫病で傾く世の流れを止めるべく、道隆は改元を進言します。元号は正暦から「長徳」となりますが、“疫病は長引く”につながるとして、公卿たちには不評です。ただ関白が言い出したことだろうと公卿たちもあきらめ顔で、帝も関白の言うことを聞きすぎだと藤原実資も苦々しい表情です。そんな苦言を、帝は立ち聞きしてしまいます。
定子は、道隆が病に倒れてからというもの、一人で寂しい思いをしています。帝は二条邸に行ってもいいと許可しますが、帝と片時も離れたくないのもあり、定子は兄藤原伊周に父の様子を聞いてみることにします。一方、詮子は道隆の容態を道長に聞き、浮かれすぎてばちが当たったと冷静です。次の関白は道兼であるべきと主張する詮子は、道隆が苦手で、出過ぎた伊周のことはもっといやなのです。
まさか女院の助けを借りるとはと道兼は笑いますが、帝に進言するという話になって、内裏に行きたくないと詮子は言い出します。「定子に首根っこ掴まれているような帝、見たくないもの」 帝に進言せずにどうやって道兼を関白に推薦するのか──詮子は、ほかの公卿を取り込んでおくと告げます。大納言も中納言も参議もみな伊周を嫌っていると、詮子はそこを後押しするつもりなのです。
一方で定子は内々に先例を調べさせ、道隆存命中に伊周は帝から内覧の許しを得るように進言します。内覧とは、帝に奏上する文書(もんじょ)や帝が宣下する文書を事前に読むことが出来る、関白に準ずる職である。「内覧になってしまえば関白になったも同じですから、ともに力を尽くしましょう」と、定子は伊周に微笑みます。
道兼は道隆に火急の用で呼び出しを受けます。道隆は手招きしますが、自分がよろめきながら道兼に近づいていき、力なく手を握ります。自分が倒れても、中宮や高階貴子、伊周と隆家を支えてやってほしいというのです。「酷なことをしないでくれ……どうかどうか伊周を……我が家を頼む」と涙ながらに訴える道隆に、道兼は愕然とします。
まひろのところにさわが久々に現れ、深々と頭を下げます。実は兄弟を疫病で亡くしていたのです。まひろ自身も疫病にかかっていたことを知ったさわは、まひろに再び会えて嬉しいと手を握ります。まひろからさわに宛てた文も、実は1枚1枚をすべて書き写していたようです。まひろに近づきたいという表れなのかもしれません。「また私と仲良くしてくださいませ」
──私の書いた文が、さわさんの心を。
──書くことの何が。
まひろは何かに突き動かされ、墨をすり筆を進めます。
──何を書きたいのかは分からない。
──けれど筆を執らずにはいられない。
道隆は帝に、病の自分に代わって全ての政務を伊周に委ねることを命じてもらいたいと帝に進言します。帝は即答せず、しばらく考えた後に宣旨を下すことを約束します。なお食い下がる道隆に帝は、下がれ、と命じます。帝としては関白の申し出を無下に断るわけにもいかず、かといって言いなりになってもいけないと葛藤していたわけです。伊周のことは嫌いではありませんが、何ぶん若すぎるのです。
帝の前を辞した道隆は定子のところへ向かい、早く皇子を産めと迫ります。帝はまだお若いのでと言いつつ、「毎夜のお召しにお応えしております」と定子は冷静です。足りない足りない足りない! と道隆は狂ったように定子に迫ります。「皇子ができれば帝は我が一族の真の味方となる。皇子がないゆえ帝のお心が揺れるのだ! 皇子を……皇子を産め!!」
後に一条天皇は伊周に内覧を許すが、そこには“関白の病の間”という条件がつけられていた。陣定めでは、公卿たちも疫病に対して戦々恐々としていますが、実資は内裏に疫病をもたらしたのは関白の横暴のせいであり、長徳という元号にして息子を内覧に据えた積悪の所業は許せないと高らかに発言します。藤原道綱がたしなめる中、伊周が姿を現し大きな顔をしています。
道隆は帝の御簾を勝手に上げ、伊周を関白にするよう迫ります。みなに止められ連れ出される道隆を前に、帝が恐怖に震えます。
床についた道隆は、貴子との馴れ初めを思い出します。
忘れじの
行く末までは 難(かた)ければ
今日を限りの 命ともがな
この歌で、貴子を妻にと決めた道隆です。長徳元年4月10日、藤原道隆は43歳で世を去った。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
──────────
[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
──────────
ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
──────────
岸谷 五朗 (藤原為時)
──────────
制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・高橋 優香子
演出:佐々木 義春
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第18回「岐路」
| 固定リンク
「NHK大河2024・光る君へ」カテゴリの記事
- 大河ドラマ光る君へ・(49-5)総集編終の巻(2024.12.29)
- 大河ドラマ光る君へ・(49-4)総集編四の巻(2024.12.29)
- 大河ドラマ光る君へ・(49-3)総集編三の巻(2024.12.29)
- 大河ドラマ光る君へ・(49-2)総集編二の巻(2024.12.29)
- 大河ドラマ光る君へ・(49-1)総集編一の巻 ~まひろ道長幼き出会い 千年の傑作源氏物語を紡いだ特別な愛と絆~(2024.12.29)
コメント