大河ドラマ光る君へ・(16)華の影 ~都で疫病がまん延・まひろは…~
正暦4(993)年。さわの誘いで近江の石山寺に詣でたまひろは、『蜻蛉日記』作者の寧子(藤原道綱母)と偶然出会い、興奮気味です。さわはその息子の藤原道綱にまひろと間違われて寝床に忍び込まれ、『蜻蛉日記』の話をしている時にも自分をのけ者にされ、自分には才気も魅力もないと深く傷ついています。「私なんか生きてる甲斐もない! これ以上……私をみじめにさせないでください……」
正暦5(994)年。年が明け、定子がいる登華殿は華やかさを増し、積極的に若者たちを招いていた。弟の隆家も加わり、中関白家(なかのかんぱくけ)はことさらに見せつけた。藤原行成は古今和歌集の写しを一条天皇に、そして藤原斉信は越前から取り寄せた鏡を定子に献上します。
何をして遊ぶか帝に一任された定子は、“香炉峰の雪はいかがであろうか”と清少納言に問いかけます。少納言は一瞬考え、御簾を開けさせます。白楽天が詠んだ「香炉峰の雪は簾(すだれ)を撥(かか)げて看る」のことだと分かったのです。帝や定子、公卿たちは雪の山を作って遊んでいますが、そこに現れた藤原道長は、その様子を見て「またにしよう」と引き返していきます。
源 倫子は娘の藤原彰子の寝顔を見つめながら、この子を入内させようなどと考えないでほしいと道長に告げます。道長は無論その気はなく、このまま苦労なく育ってほしいと考えています。彰子がぼんやりしているのは自分に似たのだなと道長は笑いますが、ともかく倫子は、彰子には道長のように心の優しい人に育つことを願っています。
藤原道隆や道綱の前で伊周や藤原隆家が舞い、それに帝が笛で、定子が琴で合わせていきますが、そこに詮子が現れます。円融院の死後、詮子は史上初の女院の称号を与えられた。騒々しい舞に対して詮子は帝に苦言を呈しますが、伊周がしゃしゃり出て、誰もが楽器を奏で、歌い、舞う、帝が望む後宮の姿だと詮子を説教します。詮子は伊周を睨みつけたまま何も発しません。
道綱は、伊周が詮子を説教する様子を興奮気味に道長に話します。書状に目を通す道長は話半分で聞いていますが、道綱は先日石山寺へ行った時の話をします。まひろといういい女がいて、忍びに行ったらその友と間違えてしまった──。道長はまひろという名に反応しますが、話を聞き終わると大きくため息をつきます。そのまひろは、絶好状態にあるさわに文をしたため乙丸に託します。
弘徽殿(こきでん)から火の手が上がり、帝と定子は避難します。先日も後涼殿(こうりょうでん)から出火があり、中関白家への妬みが帝に向かうと考えると高階貴子は怯えますが、隆家は妬む張本人が詮子、そうでなければ道隆を恨む人と隆家は笑います。難しい表情を浮かべていた道隆は、フッと笑い出します。「恨みの数だけ私たちが輝いているということだな。動じないのが肝心だ」
中関白家の栄華が極まるこのころ、公卿たちは都をむしばむ疫病の対策をすべきと道隆に提言した。しかし道隆は、それを無視し続けた。安倍晴明は従者の須麻流(すまる)に、全ての門を閉じさせ人の出入りをなくさせます。今夜“疫病の神=疫神(えきしん)”が通るというのです。「これから都は大変なことになる」
帝は道隆に、疫病が流行しているのかと尋ねますが、疫病は下々の者が罹る病で我々には関わりないと返答します。唐の「貞観政要」によれば、煬帝(ようだい)の隋が滅びたのは民をおろそかにし、徳による政治を行わなかったからとあり、そのようにはなりたくないという帝は道隆を見据えます。「忠臣としての、そなたの働きを信じておる」
疫病の嵐にさらされる都をよそに、道隆は息子の伊周を内大臣にした。伊周は右大臣(前内大臣)の藤原道兼に挨拶します。疫病について伊周は、貧しい者がかかる病だから我々には関わりないと言い放ち、そのような考えで内大臣が務まるとは思えないと道兼にたしなめられます。「叔父上は何かよきことをなさったのでしょうか?」
さわのところへ行けず、乙丸が戻って来ましたが、姿を現したのはまひろがかつて文字を教えたたねでした。父母が昨日悲田院に向かったまま帰ってこないというのです。悲田院の前には疫病で苦しむ人たちが列をなしていると乙丸は必死に止めますが、まひろはたねを連れて突っ走ってしまいます。乙丸は仕方なくまひろについていきます。
悲田院にはせき込む民が列をなし、命を落とした者もいます。中に入っていくまひろの足を掴んだ少年は水を所望し、たねは命を落とした父母にしがみついて泣き崩れます。薬師は死んだ者は運び出せ! とたねを父母から引きはがします。たねは呼吸が荒くなり、まひろはたねを抱きしめて介抱します。
「あめ……つち……」とたねはつぶやき、意識が遠のきます。まひろは「ほし、そら、やま、かは、みね……」と教えたことばをつぶやきますが、見かねた乙丸はまひろに「姫さま……もう死んどります……」と告げます。そして無情に連れていかれるわけですが、別のところでせき込む少年がいて、まひろはそのままその少年の看病にあたります。
いつもの疫病であれば自然に収まるのですが、今回の疫病は猛威を振るっていて、貴族の屋敷の者も倒れる始末です。道長は、疫病対策を陣定めで諮るよう道隆から帝へ上申してもらうよう提言しますが、道隆にそのつもりはありません。それよりも相次ぐ放火で、中宮大夫である道長の役目不行き届きになります。「今回は見逃そう。下がれ」
道隆の元を辞す道長は、道兼とすれ違います。道長は道隆に言っても無駄なので自分で悲田院に行こうと考えていますが、やめておけ、と道兼に止められます。「都の様子なら俺が見てくる。汚れ仕事は俺の役目だ」
まひろが看護をしている悲田院に、道兼と道長が来ました。外には死体が並べられ、鼻を覆いたくなるほどの死臭が漂っています。薬師はひとりで、内裏に何度訴えても何もしてくれないと諦め顔です。視察する道兼と道長ですが、立ち上がったまひろとぶつかってしまいます。まひろは疫病がうつったようで、そのまま意識を失って倒れてしまいます。
道長はまひろを家に連れ帰り、寝かせます。慌てて駆けつける藤原為時といとですが、大納言に看病してもらうなどと困惑する為時に「私のことはよい!」とピシャリ。道長は献身的にまひろを看病し続けます。逝くな……戻ってこい……。
長い長い夜が明け、まひろの熱も落ち着いてきました。為時は大納言としての仕事もあるだろうからと、看病を代わると申し出ます。わかりました、と道長は告げ、まひろの手を握ろうと手を差し出しますが、結局は握らぬまま、心の中で“大事にいたせ”とつぶやいて立ち上がります。
土御門殿の屋敷に戻った道長を出迎える倫子です。赤染衛門は昨晩は高松殿(の明子女王)のところかと口を滑らせますが、倫子は高松殿ではないと考えています。「殿のお心には、私ではない、明子さまでもない、もう一人の誰かがいるわ。ふふふ」
眠っているまひろは、道長に呼ばれたような気がして目を開きます。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
井浦 新 (藤原道隆)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:原 英輔
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第17回「うつろい」
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