« プレイバック風と雲と虹と・(40)夜襲(やしゅう) | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(41)貞盛追跡 »

2024年5月19日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(20)望みの先に ~為時の処遇にまひろは…~

長徳2(996)年、藤原斉信の屋敷から出てきた僧姿の男に、藤原隆家は矢をかすめさせて脅します。大騒ぎになり、藤原伊周と隆家は慌てて立ち去ります。射かけられた花山院は恐れおののき、ここには来ておらぬぞ! と保身に精一杯です。屋敷に戻った伊周は、行かねばよかったと後悔しきりです。母の高階貴子は居間こそ中宮を頼る時だと伊周を落ち着かせ、京のところは休むよう勧めます。

院の襲撃事件は斉信によってすぐさま藤原道長に知らされます。院の警護兵が2名亡くなり、立ち去ったのが伊周と隆家ではないかと斉信は打ち明けます。命に別状はなかったとはいえ、伊周と隆家が院の命を狙ったのか? と道長は顔面蒼白です。「だとしたら、伊周と隆家は終わりだ」 嬉しそうに言う斉信を、道長はたしなめます。

藤原実資は、下手人が中宮定子の身内であるだけに、一条天皇に裁可を仰ぎます。院が斉信の妹・儼子(たけこ)の元に通っているのを、自分が通う光子に懸想したと勘違いしたことから起きた事件です。綱紀粛正について通達を出したばかりなのに、こともあろうに院に矢を放ち死人まで出すとはと帝は激怒。伊周と隆家の参内を禁じ、謹慎を命じます。そして定子には身内に会うなとくぎを刺します。

帝は、淡路守を希望していた藤原為時には、従五位下に任じて希望通り淡路守を命じ、その内容は道長によって記帳されます。為時にとって意外な任官はまひろや藤原惟規も大喜びで、為時は10年間無位無官でいて、最後のご奉公のつもりで任期の4年間を務め上げるつもりです。他国を見てみたいとまひろも父に同行することにします。

一方、交易を望む宋人が多い越前守には、かつて女院詮子が推薦していた源 国盛が任命されますが、立派な申文は文章(もんじょう)博士に代筆してもらったもので、本人は漢文が苦手なのです。道長は、越前守には漢語が得意な者を充てるつもりだったのですが、本人は悪びれもなく通訳はどうしましょうと笑うばかりです。推挙した詮子も、ここまでうつけな人物であったかと呆然としています。

それよりも、伊周や隆家の処分はまだ決まらないのかと詮子は道長に迫ります。除目が発表された後で2人への処分が帝から下る予定ですが、中宮の身内である伊周には厳しい処分は期待できなさそうです。不満そうな詮子ですが、道長はただ厳しく罰すればいいという考えではなく、温情で事にあたる帝が尊いと考えているのです。「敵であろうとも、です。失礼いたします」

 

藤原宣孝は、学問一すじに生きて来た為時は、藤原兼家にクビにされても恨みもせず、淡々と生きてここまで行きつないできました。まひろは為時を真面目な男だと見ていますが、宣孝の話では、若いころ宋の国に無断で渡ろうとして船頭に見つかり、身ぐるみはがされて海に捨てられたという型破りな一面も持っていると笑います。まひろも父親のそういった面を受け継いでいるかもしれません。

道長の元には、また大量の申文が届けられます。その一通一通に目を通す道長ですが、為時の名で漢詩が送られてきました。自邸に戻った道長は文箱の中から、まひろにもらった漢詩の文を取り出し、申文と筆跡を合わせてみます。「為」の字がどう考えても同じです。大きくため息をつく道長ですが、詮子が気分が悪く臥せっていると源 倫子が伝えに来て、慌てて文をしまいます。

道長には言うなと言ったはずなのに、倫子が道長に伝えたことを詮子はたしなめます。伊周と隆家らが失脚して中関白家を追い落とし、我が世の春が来たといういい機会だというのに、自分の身体がきかないことを自嘲します。詮子は道長に心配をかけたことを詫び、倫子にはよくできた妻だがいささか口が軽いと微笑みます。道長も倫子も、とりあえずは安心します。

 

苦学寒夜
紅涙露袖
除目春朝
蒼天在眼

(学問に励んだ寒い夜は、血の涙が袖を濡らした。除目の翌朝、無念さに天を仰ぐ私の眼には、ただ蒼い空が映っている──)
道長はまひろから贈られた漢詩を帝に見せます。蒼天とは天子、帝と読み変えることもできるわけです。道長は、越前を国盛に任せるのは心もとなく、道長は越前守には漢語ができる為時を推挙します。

やがて為時は赴任地が越前に国替えとなりました。使者が帰り、為時はまひろを座らせ説明を求めます。為時が博学であることを帝が知ったからでは? とまひろが答えますが、帝に知らせたのは右大臣道長のはずです。従五位下叙爵(じょしゃく)も淡路守任官も越前への国替えも道長の計らいで行われたもので、それらは道長のまひろへの思いとしか為時には考えられません。

「何も知らずに越前に赴くことはできぬ……まことのことを聞かせてくれぬか」 見据える為時に、まひろは道長との関わりを告白します。道長は恋焦がれた殿御で、身分の差は越えられず、遠くの国へ逃げようと考えたこともありましたが、遠い昔のことだとスッキリした表情です。胸を張って赴かれませ、というまひろの言葉に、為時は微笑して頷きます。

詮子の容態が一向に良くなりません。倫子は悪しき気が漂っているから調べよと女房たちに命じます。屋敷内をくまなく探し回ると、床下に怪しげな壺があり、呪いの護符が入っていました。倫子が詮子の居室を改めると、やはり呪いの護符を発見します。それだけではなく文箱や碁笥(ごす)、巻物に至るまで護符があちこち……。定子は詮子を嫌い、伊周は道長を恨み、詮子は「許すまじ!」と声を荒げます。

これだけの護符が出て来て、道長はこの屋敷に伊周の息のかかった者がいるのかと愕然とします。倫子はこの件については自分に一任してほしいと申し出ます。女院を呪詛することは帝を呪詛するも同じことですが、それだけに倫子は丁寧に処理したいわけです。結局道長は折れ、倫子に一任することを認めます。このことは帝にも報告しないことになりました。

 

調べでは、伊周は母方の祖父である高階成忠に命じて道長と詮子を呪詛。3月21日法琳寺(ほうりんじ)で、臣下の修してはならない大元帥法(たいげんのほう)を修して、道長を呪詛したことが判明しました。道長が「お待ちください」と引き止めるも、帝は伊周と隆家の両名を厳罰に処すよう実資に命じます。

兄弟の不祥事により、定子は内裏を出ることを命じられ、実家である二条北宮に移った。貴子は斉信を屋敷に招待し、厳罰にしないよう帝へのとりなしを依頼しますが、斉信はやんわり断ります。伊周が命じた呪詛に帝はたいそうお怒りと斉信に聞き、伊周は顔から血の気が引いていきます。「呪詛などしておらぬ!」

屋敷を退出する斉信は、先導する清少納言に「中宮は見限れ。伊周らが逃げたらすぐ知らせよ」と見据えます。驚愕する少納言の脳裏には、女房たちの“清少納言は裏切り者……裏切り者……裏切り者……”との声が響き渡ります。

謹慎中であるはずの伊周は、道長の屋敷に現れます。院に矢を放ったのは隆家と認めた伊周は、その責めは自分が負うと言いながら、呪詛はしていないと弁明します。それを帝に伝えてほしいと訴える伊周ですが、「私も苛酷(かこく)なことは望んでおらぬ。されどお決めになるのは帝ゆえ」と道長はやんわりと断ります。伊周は何としても内裏に戻れるよう帝へのとりなしを、涙を流して望みます。

夜、定子のいない部屋を見渡す帝ですが、振り返るとそこに定子が立っていました。内裏から追い出したはずなのにといぶかる帝に、定子は右大臣が手引きしてくれたと打ち明けます。兄と弟の罪を軽くしてほしいと土下座する定子ですが、微動だにせず返答一つしない帝に、定子のほうから退出していきます。黙って見送っていた帝は、急に定子が恋しくなったのか、追っていって抱きしめます。

「謀反の罪は死罪であるが、罪一等を減じ遠流(おんる)に処す──」 伊周は大宰権帥(だざいのごんのそち)に、隆家を出雲権守(いずものごんのかみ)に任じて配流と決定します。それに伴い、藤原道綱は中納言に、藤原斉信は参議に出世します。

 

道長は安倍晴明を呼び、甥である伊周と隆家が自分を呪詛したのだろうかとつぶやきます。しかし晴明は、そのようなことはもうどうでもよいと言い放ちます。「大事なのは、いよいよあなた様の世になるということ」 晴明は、隆家はいずれ道長の強い力となり、伊周は道長次第と煙に巻きます。

定子は付き従う少納言に、一度里に下がった方がいいと勧めます。定子のそばにいたいと少納言は必死ですが、嫌がらせがひどくなって少納言の身が危うくなることを定子は恐れているのです。それでもと食い下がる少納言ですが、沙汰の下った伊周は「俺はどこにも行かぬ! 大宰府など死んでも行くものか!」と駄々っ子のように暴れていて、定子も少納言も唖然とします。

結局ききょう(少納言)は二条邸から出て来ました。伊周と隆家は処分に従わないため検非違使が屋敷回りを囲んでいて、さらに京の民が捕らえられた伊周と隆家見たさに屋敷に集まっているようで、定子の身が案じられてなりません。ききょうはまひろに、一緒に屋敷に行ってほしいと手を握ります。

民の格好をしたききょうとまひろは、どさくさに紛れて二条邸に忍び込みますが、ちょうどその時、帝の許可が下りたため検非違使が屋敷の門を打ち破って突入してきました。なおどこにも行かないと伊周は座り込みますが、隆家は兄にはついていけないと、出雲に向かうと言って貴子と定子に別れを述べます。栄華を極めた家の急転直下に、貴子は涙に震えます。

検非違使とともに現れたのは、別当の実資でした。伊周の引き渡しを求める実資ですが、貴子はそれには答えません。定子は御簾を開け出て来ますが、検非違使が牛車に案内しようとしたところで刀を抜きます。寄るな! と刀を突き出す定子ですが、周囲にいる実資、貴子、そして遠くで身をひそめるききょうとまひろは息をのみます。定子が髪を切ったのです。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
──────────
[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
板谷 由夏 (高階貴子)
高杉 真宙 (藤原惟規)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
──────────
ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
本郷 奏多 (花山院)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
──────────
佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
──────────
制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・高橋 優香子
演出:中島 由貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第21回「旅立ち」

|

« プレイバック風と雲と虹と・(40)夜襲(やしゅう) | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(41)貞盛追跡 »

NHK大河2024・光る君へ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« プレイバック風と雲と虹と・(40)夜襲(やしゅう) | トップページ | プレイバック風と雲と虹と・(41)貞盛追跡 »