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2024年5月 5日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(18)岐路 ~疫病がまん延 関白になった道兼は~

長徳元(995)年。筑前守 兼 大宰少弐(だざいのしょうに)であった宣孝が4年ぶりに都に戻って来た。藤原宣孝は唐の酒を土産に藤原為時の屋敷を訪れます。兵たちが戦の前に己を鼓舞する酒とあって、戦をしない宣孝や為時には口には合わない酒ですが、試飲してみたまひろは“カッ”とする酒と表現します。しばらく見ぬ間に年を重ねて色香を増したなと、宣孝はニヤニヤします。

博多の津には、宋の人が商いに来るらしく、まひろは為時にその話をせがみます。宋には「科挙」という、身分が低くてもこれに受かれば政に参加できるという制度があり、そんな国があるなんて! とまひろは目を輝かせます。行ってみたい! というまひろに、行くのは難儀だが、と宣孝は宋の国からの品物をいろいろ披露してまひろを喜ばせます。その中からまひろは、紅を口に差してみます。

関白藤原道隆が身罷って10日、未だ決まらない次期関白について、中宮定子が兄の藤原伊周を推しているだとか、公卿たちがあれこれ言い合っています。何ぶん伊周は若すぎるし、伊周は一条天皇の従兄弟に過ぎませんが、藤原道兼は叔父にあたり、順当にいって道兼であると藤原実資が主張します。それを聞いてか、帝は次の関白を右大臣道兼と決定します。

右大臣を差し置いて内大臣を関白にすれば、公卿たちの不満が一気に高まりそうな気配です。伊周は表向きには従順に従いつつも、帝が退出すると、これでは亡き父上も納得しない! そなたは何のために入内したのだ! と定子に向けて言葉を絞り出します。責任を押し付けられた定子も負けてはいません。「もっと人望を得られませ。次の関白にふさわしい人物だと思われるために、精進していただきたく思います」

伊周が退出した後、清少納言は定子の様子を伺いますが、定子は、帝も兄も自分にとってはどちらも大切な存在なのにとため息交じりです。少納言は定子を気遣い、少し横になるよう勧めます。そして──正二位右大臣の道兼に“萬機(ばんき)を与(あずか)り申さしむ”と帝が告げます。一条天皇は、道兼を関白とする詔(みことのり)を下した。道隆の死から17日後のことだった。

 

道兼は、荒れていた自分を救い上げてくれた道長に感謝します。道長を右大臣にすると約束し、これからも自分を助けてほしいという道兼に、道長は救い小屋を公の仕事としてほしいと訴えます。「兄上ならよき政ができましょう」という道長に、道兼は「あの世の父上を驚かせるような政をしたいものだ」と、諸国の租税を減免し新規の荘園を停止する考えを道長に示します。

この日、道兼は関白就任の慶賀奏上ののち、清涼殿に向かった。「朕が意を奉じ、国家万民のためその力を尽くすべし」と帝から言葉をもらい、深々と頭を下げると、立ち上がり退出しようとしますが、公卿たちが居並ぶ前でフッと意識を失ってバタリと倒れてしまいます。道兼に駆け寄る道長、冷めた目で見つめる伊周、驚く公卿たち──。

道長は薬師を連れて病床に伏す道兼の元を訪れます。道兼は、悲田院で見た症状と同じことから自分は疫病であることを告げ、道長に近づかないように命じます。道長はそれにも構わず御簾を開けて中に入りますが、道長まで倒れれば我が家は終わると道兼は再度忠告し、道長は仕方なく命に従います。

静かに読経する道兼は「俺は浄土に行こうとしておるのか? ぶざまな……こんな悪人が」と吐き捨て、力なく笑います。笑いながらせき込み、苦しそうにしている道兼に、道長はいたたまれず再び御簾を開け抱きしめます。関白の慶賀奏上から7日、道兼は35歳で世を去った。

 

七日関白で終わった道兼を「情けないな」と藤原隆家は笑い、伊周も「よくぞ死んでくれたものだ」とニンマリします。高階貴子は、亡き道隆が守ってくれたのだと諭します。伊周には跡継ぎの男子も、帝に入内させる娘もいて、自分が関白になれば我が家の隆盛は約束されたも同然だと胸を張ります。そしてそのころ、道長は自邸で無気力に床に寝転がり、倫子は不安そうに見つめています。

道兼の死で為時は、彼が妻のちやはを殺した自分の仇ではあったが、これでよかったとは思えないと沈痛な面持ちです。それはまひろも同じだったようで、まひろは母愛用の琵琶を取り出し、道兼の死を悼んで奏でます。「あのお方の罪も無念も、全て天に昇って消えますように」道兼が死んでからわずかひと月の間に、道長、伊周を除く大納言以上の公卿は死に絶えた。

「次はお前よ」と女院(詮子)は道長を見据えます。しかし正直、道長は関白になりたいとは思っていません。道長が固辞すれば関白は伊周になってしまうと詮子は危惧しますが、倫子も道長の肩を持ち、今のままで十分と返答します。そなたは黙っておれ! と倫子を非難する詮子は、伊周が関白になれば自分たちは終わると説得を続けますが、道長には響きません。「うつけ者!」と詮子は声を荒げてしまいます。

伊周の屋敷に公卿たちが招待されますが、その中に実資はいません。集まった公卿たちに伊周は、亡き父道隆が公卿たちの意見を聞き入れる大切さを教えてくれ、その遺志を継がねばならないと表明します。妹中宮定子は帝の寵愛が深く、伊周自身も帝に近しく、帝と公卿たちの架け橋になりたいと笑顔を見せますが、公卿たちの間には白々しい空気が流れます。

帝は、定子の兄を堂々と関白にできるとニンマリします。実資は、伊周が次の関白となる流れを“よろしくない”と評します。藤原斉信や公任たちは、伊周が他の公卿たちの承認を取り付けたという認識で、人間的にも今までよりは“ややマシ”と評価します。藤原行成は、道長が関白になるのが道理だと主張しますが、道長には関白になる気はないと公任は推測しています。

 

まひろをききょう(少納言)が訪ねてきました。ききょうは内裏で、次の関白は誰だ論争に巻き込まれ、うんざりして避難してきたわけです。関白候補者は内大臣伊周と権大納言道長──。道長の政の才は、細かいことに口うるさく、公卿や女官の間でも人気はないとききょうはバッサリ。偉くなる気もないし権勢欲もなく、道長の関白就任はありえないとききょうは見ています。

あのひと、人気がないんだ……とまひろは心の中でつぶやきます。そこに弟の藤原惟規(のぶのり)が、文章生(もんじょうしょう)の試験を終えて戻って来ました。宣孝の土産である唐の酒を肴に、惟規は白居易(はくきょい)の『白氏文集(はくしもんじゅう)』について語ります。読んだことない! とまひろが目を輝かせると、惟規は「白居易が民に代わって時の為政者を正している」さわりを教えてあげます。

どういうふうに? と食い下がるまひろですが、読んでないから知らな~い! などと惟規が逃げてしまいます。深くため息をつくまひろは、為時に『白氏文集』の新楽府がこの家にもないと聞き、どうしても読んでみたいと惟規にせがみます。これ以上姉に賢くなってもらいたくない惟規は、意地悪く「どうしよっかなぁ~」とニヤニヤしますが、まひろは何度も懇願します。

帝のところに詮子が押しかけてきます。次の関白について、帝はすでに伊周に決めていて、明日公に発表する予定ですが、帝は何も見えていないと詮子は指摘します。道隆は幼帝をいいことにやりたい放題で公卿たちの信用を失い、伊周はその子であり、同じやり口で己の家のためだけに政を仕切るに違いないと主張するのです。

詮子は、道長を関白に推薦します。姉として見たところ、道長は野心がなく人に優しく、俺が俺がと前に出る人柄でもない。我の強い伊周に比べてずっとずっと帝に寄り添う関白になる──。何でも関白にお任せの帝でいいのかと訴える詮子は、関白に操られず己の信じる政ができるようにとだけ願っていました。それでも「朕は……伊周に決めております」と言い張って出ていく帝に、詮子は大泣きします。

 

翌日 一条天皇は、伊周ではなく道長に内覧宣旨を下した。登華殿に現れた伊周は、どけ! と大声で女房たちを遠ざけ、帝の心をも決めきれなかった定子をさんざんに責め立てます。内覧を取り上げられた上に内大臣据え置きの伊周は、定子に帝の皇子を産むよう煽ります。「皇子を産め……悔しかったら皇子を産んでみろ!」 定子は伊周の執拗な攻撃に、ただじっと耐えます。

夜、関白に伊周をという定子の意を汲めず、帝は定子を抱き寄せます。「嫌いにならないでくれ……許してくれ……そばにいてくれ……」と帝は定子に心から願っています。

さわが突然「お別れです」とまひろに申し出ます。さわの父が肥前守を拝命され、ともに旅立つのです。せっかく仲直りしたのにもう二度と会えないと泣くさわです。帰って来た惟規は、俺に会えなくなるから泣いてたのかとからかいますが、昔は片思いしていたが今はもうやめたとあっけらかんと話して惟規を唖然とさせます。「よき思い出でございます。でもお別れは寂しゅうございます……」

 

そしてひと月後、一条天皇は道長を右大臣に任じた。道長は内大臣の伊周を越えて、公卿のトップの座に就いたのである。藤原穆子は、女院を預かってよかったと笑い、帝が道長を“あえて”関白としなかったのは、女院と中宮の気持ちを慮(おもんばか)ったからと考えています。関白も左大臣も不在である今、内覧でかつ右大臣の道長が実質的に政権の頂点に立ったも同然なのです。

道長は、関白の座はいらない、存分に働ける場に留まりたいと言っているそうで、源 俊賢はそのことを妹の源 明子に伝えますが、関白でも右大臣でも殿には変わりないとつれない返事です。俊賢の道長への評価は爆上がりですが、「この前まで道長さまなぞ眼中になかったくせに」と明子も皮肉を言いたくもなります。俺のことを道長に褒めておけと、根回しだけは忘れない俊賢です。

「偉い人になって、直秀のような理不尽な殺され方をする人が出ないような、よりよき政を行う使命がある」「政によってこの国を変えていくさまを、死ぬまで見つめ続けます」そんなまひろの言葉を回顧し、道長はひときわ美しい満月を見上げています。

道長は、かつてまひろと密会していた廃屋敷を訪れます。そこにはまひろが立っていて、ふたりは再会します。昔の己に会いに来たのね──でも今語る言葉は何もない。まひろは道長の横をすり抜け、立ち去ります。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
玉置 玲央 (藤原道兼)
板谷 由夏 (高階貴子)
高杉 真宙 (藤原惟規)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
石野 真子 (藤原穆子)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:中泉 慧

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第19回「放たれた矢」

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