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2024年6月 2日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(22)越前の出会い ~宋の若者とまひろが接近~

長徳2(996)年。越前入りした藤原為時は、国府に向かう前に松原客館の宋人の様子を見に来ました。屋敷の中では怒号が飛び交い、お静まりなさい と為時が宋の言葉でなだめると、奥から宋の商人・朱 仁聡が出て来ました。商人は為時が新国司であると知ると、お世話になっています と宋の言葉で丁寧にあいさつし、為時は大きく頷きます。まひろはひつじやオウムなど見たことのない生き物に目を丸くします。

為時とまひろは、この日は客館に宿泊することになりました。商人によれば船が壊れて前国司に修理を依頼していたのに、未だに完成していないようです。先ほどのもみ合いも、宋に帰りたい者と帰りたくない者が言い争いをしているように感じました。まひろは為時がかつて宋に渡ろうとしていたという藤原宣孝の話をし、為時は照れ笑いしています。

為時は通事(つうじ=通訳)の三国若麻呂から、宋人は領土を広げていく唐人のようには戦をしないという性質を教わります。それよりも為時が気になっているのは、客館にいる宋人はみな商人なのかということです。若麻呂は一瞬言葉に詰まりながら、舟のこぎ手以外はみな商人だとニッコリします。「そうか……これからもあれこれ教えてくれ」

乙丸を連れて越前の浜辺に出向いたまひろは、広い海に目を輝かせます。乙丸にすれば琵琶湖のようだと思えるのですが、この海を渡れば宋の国と知っているまひろは、それだけでこの海が雄大なものに思えてきます。そこに一人の宋人が浜辺に現れ、乙丸は帰りましょうとまひろに勧めるのですが、まひろはその宋人に近づいていきます。

まひろは日本語の分からない宋人に、自分を指しながら「ま、ひ、ろ」と自己紹介をします。宋人は落ちていた棒で浜辺に名前を記します。周明(ジョウミン)──。まひろは、どういう人か漢語を浜辺に書きますが、周明が戸惑っているうちに仲間が呼びに来ました。「ザイジェン」と周明は両手を合わせて礼をし、仲間の元に走って行ってしまいます。浜辺に書いた周明の文字が、波に洗われていきます。

客館に戻ったまひろは、為時に「ザイジェン」とは「また会おう」という言葉なのだと教わります。明日国府へ旅立つ為時のために、朱 仁聡が宴を催したいと言っているようで、そこに若麻呂が伝えに来ました。夜、招待された為時とまひろは商人たちの演奏で迎えられ、酒と食事が運ばれてきました。出された肉がひつじの肉と若麻呂に教えてもらい、目を白黒させます。

酒もだいぶ回り、為時は自分が作った漢詩を披露して上機嫌です。まひろは酔いを醒ますために館の外に出ますが、そこには周明がいました。まひろは宴の礼をしようと見よう見まねで手を合わせ、シェイシェイと周明に頭を下げます。もう飲めねえ……と出てきた為時と宿舎に戻るまひろは、周明のほうを振り返ります。「ザイジェン」

 

翌日、松原客館を出た為時らは、越前国府に到着した。重々しい朱色の扉が開き、越前介・源 光雅と大掾(だいじょう)・大野国勝が出迎えます。為時は船の修理状況を尋ねますが、光雅は遠回しに首を突っ込むなと言わんばかりの返答です。藤原道長の命を受けた為時は、越前が信用を落とすようなことはできないと告げると、役人たちは顔を見合わせて明らかに困惑しています。

かき曇り
 夕だつ浪の あらければ
  うきたる舟ぞ しづ心なき
まひろは、文机に用意されていた紙に和歌をしたためます。

光雅は目配せして人払いをし、為時に巾着袋を渡します。要は宋人のことは我々に任せて、国司はそれを認めてくれればいいわけです。袋の中身が金と知った為時は顔色を変え、巾着袋を光雅に突き返します。「そなたはわしを愚弄するのか。下がれ」 光雅は仕方なく、ははっ と下がっていきます。

民人たちからの訴えも、為時は一人ひとり聞き取りをします。夕暮れになっても人の波は途切れることがなく、為時はぐったりして宿舎に戻ります。嫌がらせでしょうかとまひろはいい顔をしませんが、為時もそれは否定しません。ただ光雅はやっかい者だと注意しておく必要がありそうです。「恐れることはありませぬ。父上は父上のお考え通りに政をなさいませ。私がおそばにおりますゆえ」

よくしてもらっている礼にと、朱 仁聡が朝廷に貢物をしたいと国府に願い出ます。どうしてもと食い下がる朱 仁聡に為時は、道長にお伺いを立てるので、しばらく待つように答えますが、急に差し込むような腹痛が為時を襲います。若麻呂は急いで宋の薬師を呼びますが、現れたのは周明でした。

この人は医者だったのかとまひろが驚く横で、周明の診察が始まります。顔を見、舌を見、脈を診て、1本の鍼を取り出します。背中を指でたどり、鍼を刺すと、為時の悲鳴が国府中に響き渡ります。しかし次の瞬間にはケロッとして、腹痛も収まったようです。これが宋の医学かと感心する為時を置いて、朱 仁聡や周明らが引き揚げていきます。「貢ぎ物の件、よろしゅうお頼みいたします」

 

朝廷に貢ぎ物が届けられますが、藤原公任は何も要求しないまま貢ぎ物を置いていったことに不可解さを覚えます。そして越前に戻った朱 仁聡は、無事に届けられた報告を為時にしますが、そこに国勝が駆け込んできて、通事の若麻呂が殺されたことを伝えます。咎人として朱 仁聡が捕らえられますが、朱 仁聡の話は自分が聞くという為時に、自分たちに任せるよう忠告する国勝です。

この件の扱いを誤れば、騒ぎはなお一層大きくなってしまうと心配する為時は、また腹を押さえて苦しみ出します。すぐに道長に知らせた方がいいと、まひろは急いで文をしたためます。

すぐに宋人を追い返すのが良いという意見、為時は優秀だから赴任させたわけで任せておけばいいという意見、式部省に勤めていた男に裁きができるとは思えないという意見、宋人の扱いで公卿たちは紛糾します。意見を求められた道長は、博士に調べさせたうえで帝に諮ることにします。

今夜は源 明子の高松殿屋敷に泊まる道長です。明子の父・高明も左大臣であり、失脚しなければ兄の俊賢が今ごろ左大臣であるかもしれませんが、妹から見て俊賢に務まるとは思えません。藤原憎しの明子も、道長に恋してしまったことが目論見違いでした。ほー、と間の抜けた返事をする道長を、明子は押し倒します。「こうなったら殿のお悩みもお苦しみも、すべて忘れさせてあげまする」

実資に代わって、今は公任が検非違使の別当になっている。大宰府に向かっているはずの藤原伊周が、都に戻ったというのです。病に伏せる高階貴子に会いに戻って来たようですが、心根の優しい公任は高階明順(あきのぶ)屋敷を改める前に、道長に確認しに来たわけです。公任に任せる、と道長は眉間にしわを寄せます。

よろめきながら母の元に急ぐ伊周は、寸でのところで公任にゆく手を阻まれます。一目だけでもと食い下がる伊周の涙に打たれた公任は、分かったと承諾しますが、こんどは清少納言が目の前に現れます。「ただいま御母君、お隠れになりました」
伊周は母の亡骸に近づき、膝から崩れ落ちて悔し涙を流します。

弔問に訪れた道長を呼んだ定子は、一条天皇の子を身ごもっていることを打ち明けます。父母は崩御し、兄弟は流罪となり、高階には力がなく、生まれてくる子をどう育てていけばいいかと定子は途方に暮れています。「左大臣どの……どうか、どうかこの子をあなたの力で守ってください。私はどうなってもよいのです。されどこの子だけは……!!」

それを道長から聞いた帝は高階の屋敷に向かおうとしますが、なりませぬ! と道長は帝を止めます。勅命に背き、自ら髪を下ろした中宮を帝が訪ねれば朝廷のけじめはつかないと、定子を内裏に呼び戻すことすら道長は認めません。「我が子まで宿している中宮に朕は生涯会えぬのか!」 遠くから見守ることしかできない、と道長は帝に非情な宣告をします。

 

そのころ越前では、越前のことは越前で何とかせよとの道長の返答が届いていました。ずいぶんと頼りないものですねとまひろはひどくがっかりします。そこに周明が男を連れて駆け込んできます。「話があって来た。朱さまは通事を殺していない。証人だ」と流ちょうな日本語で為時に訴える周明に、まひろは頭の中が混乱しています。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
高畑 充希 (藤原定子)
板谷 由夏 (高階貴子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
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塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
松下 洸平 (周明)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:佐々木 義春

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第23回「雪の舞うころ」

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