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2024年6月16日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(24)忘れえぬ人 ~揺れるまひろの心に周明が~

長徳3(997)年、藤原為時の赴任地・越前国を電撃訪問した藤原宣孝は、その帰り際、まひろに「都に戻ってこい。わしの妻になれ」と突然の求婚です。動揺するまひろを見ていて宣孝は笑えるし心が和むわけですが、まひろとしては決して誰かを安心させたり和ませたりさせているわけではありません。ムキになって反論するまひろを置いて、宣孝は都へ帰っていきます。

周明がやって来ました。宋人として生きるものの実は日本人であったことで、居場所がない周明ですが、まひろは励まします。宋の国に興味を持つまひろは機会があれば宋に行ってみたいと思いを募らせますが、周明はまひろに一緒に宋に行こうと笑顔を見せます。「そのためには宋の言葉をもっともっと学ばねば」


女院・藤原詮子は、大宰府に流罪となった藤原伊周が枕元に立ったとパニックになります。伊周に殺される……そうつぶやく詮子に、藤原道長は安倍晴明に邪気払いをさせると安心させようとします。依頼を受けた晴明は穏やかに邪気払いしますが、その間も詮子は呼吸が苦しそうに表情をゆがませます。看病する源 倫子もとても心配そうです。

一条天皇は、詮子の病気平癒を願って恩赦を発令することにします。大宰権帥(だざいのごんのそち)伊周と、出雲権守(いずものごんのかみ)藤原隆家を都へ償還すべきかどうか意見を求め、さっそく陣定めで諮られます。罪は許すべきではあるが、と公卿たちは枕詞をつけて、肝心させるべきとか前例を調べるべきとそれぞれの意見を発言します。

それらの意見の集約を道長から聞いた帝は、すみやかに召還せよと道長に命じます。あの事件も、隆家が花山院を狙って射かけたものではなく、牛車に当たったものだったし、詮子や道長を呪詛したこともうわさに過ぎず、それを知っていたら伊周と隆家、そして中宮定子に処分は下さなかったと帝はひどく後悔しているのです。そしてその分、帝の怒りは道長に向けられます。

源 明子の館を訪れた道長は、冷静にあの事件を振り返ります。藤原斉信は確かに、院が何者かに射かけられたと報告したのです。もしかしたら道長は斉信にはめられたのかもしれないと考えます。確かに“院に射かけた”と“車に当たった”では罪の重さが違うわけで、そこまでして人は上を目指したいのかとつぶやきます。「上に立つ者の隣は敵なのです」と明子は微笑みます。

出雲から都まで20日はかかる道のりを、隆家はもう都に帰ってきました。さっそく出雲で採れたしじみを道長に献上する隆家ですが、道長の疑問は、矢を放ったのが隆家であるならば、なぜ事件発覚時にそう弁明しなかったかということです。隆家は悪びれもなく、何も信じてもらえそうになかったからと言い放ち、しじみを再度推してにっこり笑います。

 

子どものころよく嘘をついていた、とまひろは周明に打ち明けます。勝手に物語を作っていた幼いまひろに周明は笑いますが、早く二人で宋に行くために左大臣に文を書いてほしいとつぶやきます。まひろは「あなたは嘘をついている。私を好いてなどいない」と周明を見据えます。自分を利用しようとしている図星を言い当てられた周明は、壺を割ってその破片でまひろを連れ出します。

「左大臣に文を書け……左大臣が決意すれば公の交易が叶うのだ。書け!」と脅す周明ですが、まひろは頑なに拒絶します。書かなければまひろを殺して自分も死ぬという周明を、まひろは睨みつけます。「“死”という言葉をみだりに使わないで。私は目の前で母を殺されるのを見た。周明なんて海に捨てられて命の瀬戸際を生き抜いたのでしょう? 気安く死ぬなど言わないで!」

周明は宋に憧れを抱くまひろに、そんな国ではないと悲しい現実を伝えます。宋は日本を見下していて、民に等しく機会を与える国なんてこの世のどこにもないのだ、とつぶやきます。「つまらぬ夢など持つな」と吐き捨てて、周明は屋敷を後にします。まひろは、文机にあった周明から習った宋の言葉の書き記しを丸めて火に投じようとしますが、思い直して文机に戻します。

夕餉を取らないと下女から聞いた乙丸は、心配してまひろに声をかけます。まひろは乙丸になぜ妻を取らないのかと尋ね、動揺する乙丸です。乙丸はまひろの母・ちやはが殺された時に何もできず、せめてまひろを守って生きていこうと決意したわけで、それだけで精一杯なのです。そばにいても何も分からないものだとまひろはつぶやき、乙丸はまひろが周明との間に何かがあったのだと察知します。

 

帝は詮子を見舞います。今や父となった帝は、生まれた女の子を内親王とし、定子を内裏に呼び戻すと言い出します。慌てて止める道長ですが、帝は公卿たちが黙っておらず、代理に波風が立っても、最初で最後の我がままを通すと聞きません。これまで帝を追い詰めていたのだと気づいた詮子は道長に、帝の願いを叶えてやってほしいと言葉をかけます。

道長は藤原行成に意見を求めます。藤原実資あたりは厳しいことを言いそうだと行成は答えますが、実資だけではなく公卿みんなが平然と帝を批判するようになれば、政はやりにくくなるわけです。どうしても出家した者を内裏に呼び戻すのは難しいと頭を悩ませる道長に、行成は職御曹司(しきのみぞうし)ではどうかと助言します。帝の会いたい願いも叶えられ、他の女御たちの顔も立ちます。

その日のうちに、定子は職御曹司に入った。職御曹司は内裏の東側に隣接していた。わずかな距離ではあったが、天皇が職御曹司へ行くには、いちいち輿に乗らねばならなかった。帝は定子と、娘の脩子(ながこ)と対面します。そばに控える清少納言にも労わりの言葉をかけます。この日から、一条天皇は政務もなおざりで、連日定子のもとに通い続けた。

「どの面下げて戻ってきたの?」「自ら髪を下ろしたくせに」と女たちがひがみ、「やり手でおいでだ」と藤原道綱がつぶやけば、実資は「前代未聞! 空前絶後! 世にためしなし!」と呆れ果てています。

 

為時が越前国内の巡検から帰ってきました。ともに巡検に回っていた大掾(だいじょう)大野国勝とはすっかり打ち解けたようです。国勝は国府に届けられた書状の山を為時に渡して下がっていきます。まひろは自分に届けられた文に目を通し、息をのみます。肥前でさわが亡くなったというのです。

ゆきめぐり
 まふをまつらの かがみには
  たれをかけつつ いのるとかしる
まひろにまた会いたいと願いながらの死に、さわのこの歌を大切にするとまひろは決意します。

まひろは、都に戻って宣孝の妻になると為時に打ち明けます。さわの死があり、生きているのもむなしい気分のまひろに理解を示しつつ、それがなぜ宣孝の妻になるという結論に至ったのかが為時には分かりません。先日宣孝に求婚されたと知って為時は驚き、振り向いたときに腰を痛めてしまいます。為時は横になり、まひろに腰を揉んでもらいます。

為時は宣孝は大事な友人ながら、まひろと夫婦になるのは不釣り合いと考えています。まひろは不承知ならやめておくと言いますが、女にマメな宣孝の妻になればまひろが辛い思いをすると心配しているのです。「ありのままのお前を受け入れる。それができるのはわしだけだ。さすればお前も楽になるであろう」という宣孝のプロポーズが、まひろの胸に少しばかりしみたようです。

為時の腰を見てくれる薬師が到着しました。周明の師だそうです。周明は生まれ故郷を見てみたいと言って出ていったと朱 仁聡に聞き、まひろは複雑な表情をします。治療が終わり、朱は交易が認められなければ自分たちは国に帰らず、国に帰らなければ二度と博多に宋の船が着くことはないと為時に告げます。為時は顔色を変えて朱を見据えます。「それは脅しか?」

松原客館に戻った朱は周明に、ここを出ていったことにしておいたと告げます。それは周明自身が望んだことなのです。周明はまひろの心に入り込めなかったと朱に打ち明けます。周明の心の中から、まひろが消え去るとよいな、と朱は微笑みます。

 

宋の脅しに屈してはならぬ──。帝は、宋人がいま越前に持ってきている品を朝廷がことごとく買い上げれば、彼らもあきらめて帰るだろうと考えます。朝廷にそのような余裕はないと道長は断りますが、であれば宋と交易を始めればいいと帝は投げやりです。現状、大宰府では藤原氏が交易のうまみを独占しているわけです。

帝は越前を朝廷の商いの場にする案を出しますが、都に近い越前で交易を始めれば、もし宋軍が押し寄せてきたときに都に攻め上られる危険性が高まるだけだと道長は訴えます。しかも宋と商いをすれば、宋は日本を属国扱いとすることが予想されます。帝は分かったと、この件は道長の思うようにせよとしぶしぶ返答します。

左大臣からの為時への返答は、このまま様子を見て時を稼げとあり、為時と国勝はため息をつきます。そしてまひろの元には宣孝から“早く都に帰ってまいれ”との文が届いていました。まひろはフッと笑いがこみ上げてきました。

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
松下 洸平 (周明)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:佐原 裕貴

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第25回「決意」

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