プレイバック炎 立つ・[新] 第一部 北の埋み火 (01)黄金の王国
川を上って進軍する征夷大将軍・坂上田村麻呂の一軍。そしてその軍勢を林の奥から見つめる胆沢の豪族・阿弖流為(あてるい)の一軍。阿弖流為の「かかれ!」の号令で坂上軍を追いかけて襲い掛かり、田村麻呂は後方からの敵の来襲を受けます。延暦20(801)年9月の胆沢(現・岩手県水沢市)です。しかし阿弖流為は後に、礼を尽くした田村麻呂の勧告を受け入れ、余力を残して500余の軍勢とともに降伏します。
これにより15年続いた戦乱が収まり、奥羽の平定が成ります。田村麻呂は阿弖流為と母礼(もれ)の将2人の命を保証し、都に同道して凱旋。しかし朝議によって2名の斬首が決定してしまったのです。檻の中で母礼は、死ぬまで戦うべきだったと阿弖流為に反発します。阿弖流為は裏切った田村麻呂に恨みを抱きます。「このままでは済まぬぞ……たとえ怨霊となろうともこの恨み、晴らさぬではおかぬぞ!」
原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:大友 直人
演奏:アンサンブル・レニエ
語り:寺田 農
監修:高橋 富雄
入間田 宣夫
風俗考証:山中 裕
建築考証:平井 聖
衣裳考証:小泉 清子
芸能考証:野村 耕介
所作指導:猿若 清三郎
馬術指導:日馬 伸
殺陣・武術指導:林 邦史朗
題字:山田 惠諦
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協力:岩手県・江刺市
秋田県・鹿角市
山形県・酒田市
[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
新沼 謙治 (平 永衡)
川野 太郎 (安倍宗任)
鈴木 京香 (菜香)
財前 直見 (流麗)
竹田 高利 (瀬田剛介)
稲垣 吾郎 (小田忠平)
名古屋 章 (藤原登任)
石田 太郎 (清原光頼)
寺田 稔 (乙那)
伊藤 孝雄 (藤原頼遠)
藤堂 新二 (大藤内業近)
塩見 三省 (母礼)(安倍良照)二役
赤座 美代子 (瑞乃)
南原 宏治 (金 為行)
ドーリー (多磨)
三上 剛仙 (金 為時)
若松 俊秀 (安倍正任)
松田 敏幸 (安倍重任)
森永 健司 (安倍家任)
安倍 高志 (安倍則任)
藤原恭次 (安倍行任)
二宮 千尋 (希久)
高橋 りつ子 (衣千)
花ヶ前 浩一
青柿 ひろし
川島 正人
大森 一
鏡味 仙寿郎
扇家 和楽
福田 庸子
小川 知子
塩川 優美子
中村 かおり
西村 美枝子
武田 美和
柳澤 昇一
本田 清澄
加世 幸市
高橋 豊
島 英司
福永 幸男
飯野 真由美
葉子 きよみ
荒木 美操
幸 亜矢子
山川 美加
米沢 智美
播磨 和加子
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天台声聲明音律研究会
楽劇コースケ事務所
若駒スタント部
JAC
クサマライディングクラブ
鳳プロ
NHKアクターズゼミナール
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江刺市のみなさん
鹿角市のみなさん
佐藤 慶 (坂上田村麻呂)
多岐川 裕美 (紗羅)
西村 晃 (吉次)
里見 浩太朗 (阿弖流為)(安倍頼良)二役
制作:音成 正人
美術:増田 哲
技術:大沼 伸吉
音響効果:藤野 登
記録・編集:高室 晃三郎
撮影:杉山 節郎
照明:高橋 猛
音声:鈴木 清人
映像技術:横山 一夫
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
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制作協力:NHKアート
NHKテクニカルサービス
演出:門脇 正美
永承4(1049)年12月・雪深い陸奥国亘理(わたり)の藤原館では、経供養が行われていました。その屋敷の外では、奥州藤原氏の祖・藤原経清(つねきよ)の家臣である瀬田剛介が、貢物を運ぶ民に声を荒げていました。経清は供養の席を立ってそれを注意しに外に出ます。そこに郎党が、都からの便りとして文箱を持ってきました。文箱を開いてみると、「つねきよどの あこね」とあります。
亜乎根(あこね)は経清の母で、藤原頼遠(よりとお)の元妻です。諍(いさか)いを起こして下総国から陸奥国に移らさせた頼遠に同行せず、18年前に離縁したのです。文の内容は「アザラシの皮が手に入らないか」「法成寺新堂に仏像を収めるにあたり、金箔を施したいので砂金を」と金の無心です。経清は実母の声に応えたいのですが、頼遠は亜乎根に対する愚痴が止まりません。
頼遠が陸奥に赴任して作った側室の多磨は、実母からの文が届くたびに心を砕く経清に不満をあらわにします。頼遠に嫌われ、経清に厭(いと)われ、藤原家の家風にも合わないと卑下する多磨は、実母の面影が邪魔をしているからその歳でも妻を娶ろうとしないと、愚痴はさらに続きます。経清は聞こえないふりをして飯をかきこみます。
吹雪の亘理を早朝に出た経清一行が、日の落ちる前に多賀城にたどり着くころには、雪も降りやみ穏やかな天候となっていました。その日は多賀城内に宿泊し、翌朝に日高見川(ひだかみがわ/現・北上川)を陸奥守・藤原登任(なりとう)とともに北へのぼります。途中からは陸奥国伊具郡の郡司である平 永衡の案内で、日高見川と衣川の合流地点にある船着き場にたどり着きます。
出迎えたのは安倍頼良(よりよし)の三男・宗任(むねとう)です。休み処では都でも珍しい茶が振る舞われ、宗任はご希望ならば帰りの船に積み込ませると言って登任を驚かせます。それどころか、休み処にある調度品から館そのものまですべて献上するとのことで、破格の引き出物に登任は声を上ずらせます。
船の中に置いてある頼遠からの預かり品が心配で、様子を見に経清は船に戻りますが、永衡も同行します。どうやら頼良は衣川の関に貞任の住まいとなる新たな館を築いていて、登任や経清に見せまいと船で来るよう根回ししたようです。もし登任がそのことを知れば、朝廷と安倍との間で戦になる可能性もあり、永衡は戦にはさせないと口を真一文字に結びます。
経清は永衡にアザラシの皮が欲しいと伝えると、宗任に用意させようと二つ返事で約束します。そして眠ってしまうのですが、その隙に経清は剛介と小田忠平を伴って、馬で衣川の関近くの新しい館まで遠駆けします。川底が浅くて船で登ることもできず、館が破られても衣川の関がある難攻不落の要害。経清は頼良という人物の大きさを実感します。
日高見の山に写経した経典を埋めよとの頼遠の願いもあり、経清主従は言われた通りに経典を土に埋めますが、その帰り道に迷っていると、金山採掘場を偶然に発見してしまいます。かつて永衡から、陸奥の奥六郡には安倍が掌握する金山が方々にあり、1,000や2,000の人足が金を掘っていると聞いたことがあります。経清たちが見入っているうち、気づけば監視の兵に取り囲まれていました。
その主と思しき乙那(おとな)は経清たちを捕らえ、牢に閉じ込めます。剛介は婚礼客に無礼な働きと憤慨しますが、名乗らない自分たちが悪いのだと経清は剛介をなだめます。経清は、彼らが国府多賀城に対してどう考えているかで今後のことが分かるとつぶやきます。そこに現れた女は、見張りの男を館に向かわせると、牢に近づきます。「亘理の経清さまですね。ここから出して差し上げます」
女はその交換条件に、自分を亘理の館に連れて行ってほしいと告げます。亘理で旅支度を整えて京に向かいたい……婚礼など見たくない、こんなところにはいたくないと言う女は、牢を開けて経清たちを逃がします。もし約束を破ったら兄に命じてあなたを殺す、そう言う女を見つめる経清は、名の知らない女に感謝しながら金山を後にします。
衣川の町では、宗任を先頭に登任や経清、永衡らの行列が続きます。その向かう先は、衣川の安倍館──。館内では男たちが太鼓を叩き、登任はその音に圧倒されますが、行列はその中をしずしずと進んでいきます。「陸奥守、藤原登任さまのお成りじゃ!」と頼良六男の安倍重任が叫ぶと、館の安倍の者たちは一斉に頭を下げ、登任らを出迎えます。
着座した登任に、花嫁の父・金 為行(こんのためゆき)と兄・為時、続いて大藤内業近(おおとうないなりちか)、清原光頼ら豪族が挨拶をします。後から頼良と次男貞任、頼良の弟・安倍良照も加わり、登任は貞任に声をかけますが、貞任はムスッとして登任を睨みつけます。頼良は、自分と為行とで引き出物を用意したと、金の盃を登任に差し出します。持てばズシリと重く、登任は目を丸くして驚きます。
そこに頼良の妻・瑞乃(みずの)、花嫁・流麗(るり)、頼良の娘で永衡の妻・菜香(なか)が入ってきますが、経清はそれに続いて入ってきた女に目が釘付けになります。金山の牢に押し込まれたところを救ってくれた女だったのです。結有(ゆう)──頼良の側室の娘で、菜香とは異母姉妹になります。永衡は経清が結有を気に入ったのかと目を細めますが、経清は謎の女の正体が分かって大満足です。
婚礼の宴が3日3晩続きます。菜香は“姉”を連れてきましょうかと経清をからかいますが、経清は慌てて断ります。憮然と座る貞任は、経清の前にどっかと座り大盃を勧めます。何とか酒を飲む経清に、貞任はギロリと睨みつけます。「お主見たべ? 安倍の者以外には見てはならんものを……覚悟しておれよ」
吉次の館に頼良が現れます。金の盃を贈り、休み処に女を遣わし、船いっぱいの土産を約束した頼良に、吉次は、そこまでしてどうしたいのかと不満顔です。放っておいても登任の任期はあと2年という吉次に、頼良は登任を通じて朝廷に陸奥のすごさを伝えてもらいたいわけです。未だに陸奥はひなびた山奥という考えを改めてもらい、少なくとも陸奥守以上の位階を授かりたいという思惑があります。
この奥六郡を朝廷の力の及ばない土地にする必要があり、吉次はそのためには無位無官こそ誇りだと諭します。しかし頼良は、朝廷がさほど警戒していない出羽国の光頼が従七位を授かっていて、自分たちも位階を授かって奥六郡を取り戻したいというのが願いです。吉次は不気味に笑います。「登任は自らの眼で衣川の隆盛を見てしもうた。そなたの富が無尽蔵であることをしかと胸に刻み込んだであろう」
吉次は、任期中に衣川を滅ぼせば登任の手柄になると真面目です。あの男にそれほどの器量がと頼良は下に見ていますが、器量のない男ほど己の器量をわきまえないものだと警鐘を鳴らします。吉次の娘でアラハバキの神をつかさどる巫女、頼良の妻でもある紗羅(さら)も、占ったところ戦になると告げますが、頼良はまさかと驚き、紗羅の話を笑って聞き流します。
吉次は、紗羅の占いを馬鹿にしてはならぬと頼良をたしなめます。遠い昔、朝廷に弓引く者として陸奥に来た祖先以来、吉次たちはアラハバキを守り通してきたのです。いつどんな時でも安倍一族を陰から盛り立てて守り、決して表舞台には出ないというのが吉次たちの掟です。だからこそ頼良にとって耳の痛いことでも心して聞くよう説教します。
頼良が用意した舞人の宋の者たちや、宋の壺や茶もあり、登任は頼良が宋と取引をしているのではないかと疑います。永衡は博多から取り寄せたものではと言いますが、にわかに信じられません。「これからはわしらの考えを改めねばなるまいな。いずれにしても金じゃ。頼良の富の根源は」
金山に亘理の経清が──!? と頼良は驚きを隠せません。経清を逃がした結有は紗羅の娘、吉次の孫にあたります。吉次は経清が道に迷ったといいつつ、実のところは登任に命じられて偵察していたとしか考えられないわけです。経清を用心せよ、と吉次は頼良に警告します。「あの男の武勇は音に聞こえている。戦になればやっかいな男ぞ。心して近づけ」
登任一行は半月も安倍屋敷でぜいたくなもてなしを受け、帰途につきます。登任は、衣川の館からさらに奥に進んだ磐井の山中に陸奥の民が移り住んでいると情報を掴んでいて、いざとなれば戦の口実にするつもりのようです。経清は目をむき出しにして驚きますが、登任は安倍をこのままのさばらせておくつもりはありません。「明らかに遠(とお)の朝廷(みかど)への挑戦じゃ!」
その時、船内に怪しい者がいたと報告があります。連れ出されてきたのは結有でした。うそつき! と叫ぶ結有に戸惑う経清です。登任は経清と安倍の娘が……と面白がっていますが、結有の安倍を出たいという気持ちは本当のようです。「私を粗略に扱うと、戦になりますよ」と脅されて、経清はほとほと困ってしまいます。
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第2回「恋の予感」
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