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2024年7月 5日 (金)

プレイバック春日局・(15)秀頼・千姫 婚儀

【アヴァン・タイトル】

岐阜県武芸川町(むげがわちょう)谷口──山に囲まれたこの静かな町には、今なおおふくたちの暮らした名残りが残っています。おふくが日々使ったといわれる局道。この2kmほど続く道の一角に乳地蔵があります。地元の人々は赤ちゃんが産まれると乳母になったおふくにあやかり、母乳がたくさん出るようにとお参りに訪れます。

局道を登りきったところに臨済宗汾陽寺(ふんようじ)があります。1441年建立、当時は7つの伽藍を持つ壮大なお寺でした。創建はおふくの父方の祖先・斎藤利永。この寺の存在は、当時この土地が斎藤家の庇護下にあったことを今に伝えています。そして正成の親戚にあたる開田家もあり、おふく夫婦にとって隠れ住むには絶好の場所だったのです。

しかし新たな仕官を望んだ正成には、情報の入りにくい土地柄が裏目となりました。結局正成は壮年期、この土地で無念の日日を送ることになるのです。


慶長8(1603)年2月、稲葉正成が美濃谷口に隠棲して1年余り、秀秋に帰参の許しを得ながらその死に仕官の望みが断たれ、正成には新しい仕官の道が開けず苦悩の日々が続いていました。おふくは思うようにいかない夫の苦労を理解し、あえて明るく振る舞っています。そこに開田孫六が駆け込んできました。徳川家康が朝廷から征夷大将軍に任じられたそうです。

家康は征夷大将軍になるのを機に、これまで徳川に功のあった者を次々と大名に取り立てているそうで、孫六は正成にもいよいよ運がめぐってきたと大騒ぎします。家康が征夷大将軍になったことで豊臣家が黙っていないと、おふくは戦になることを心配していますが、今や諸大名は家康から所領をもらっていて、徳川はそこまで力をつけたのだと正成はおふくに説明します。

大坂城では、伏見城の家康と対面した大蔵卿の局が茶々に責められていました。家康は豊臣秀吉との約束を破って実権を握り、豊臣を一大名に蹴落としたわけで、豊臣は潰されてしまうかもしれません。徳川が豊臣秀頼を大事にする証として、徳川の千姫を輿入れさせる約束を取り付けてきました。横車を押して事を荒立てるより、千姫を迎え入れて秀頼の成人を待つ方がいいと考えたのです。

お江与は千姫を大坂に輿入れさせることに異議を唱えます。輿入れの約束は秀吉存命中で徳川が豊臣の力を恐れていたころの話であり、家康が征夷大将軍になったことでその必要はなくなったと言いたげです。しかし秀忠は、征夷大将軍になった今こそその約束を守らなければ、豊臣恩顧の大名たちも黙ってはおらず、戦に発展しては和平を願ってきた家康の意にも反することになると説明します。

お江与は、せめて千姫が成人するまで待ってほしいと食い下がりますが、珠姫はわずか3歳で加賀前田家に嫁ぎました。千姫は7歳で、しかも義母の茶々は実の伯母、夫の秀頼は従兄妹です。千姫を嫁がせて徳川の誠意を見せなければならないと秀忠は諭します。5月、お江与は5人目の子となる姫を出産します。そして7月には秀頼と千姫との婚儀のために京へ向かいます。

 

そのころ正成は、美濃での浪人暮らしが続いていました。待ち望む家康からの召し出しもなく、正成はそろそろ仕官を諦めるときかもしれないと考え始めます。家康を当てにするなど正成自身の自惚れのような気がしているのです。正成は、関ヶ原の戦いでした寝返り行為は間違ったとは思っていませんが、他人から見れば裏切りにしか映っていない自分自身に自暴自棄になっているのです。

おふくは、正成が自分を信じて進んできた道なのだから、きっと認めてくれる主君に出会えるから断じて焦らないように激励します。夫と家族と戦の心配をせずに暮らしていくのが夢だったおふくです。そしてこの年の冬にはまた新たな命も産まれる予定で、今がいちばんの幸せなのです。正成は子らのためにも埋もれず、がんばる姿勢を見せてくれます。

お安のところに、次男斎藤利宗から近況を知らせる文が届きました。利宗と三存(みつなが)の主君・加藤清正が、秀頼と千姫の婚礼に参列するため肥後から伏見入りすることになり、二人もそれに従って上洛するそうです。ただ上洛の合間を縫って美濃へ来ることは難しく、正成はお安とおふくが京に行って二人に会ってくればいいと背中を押します。しかしお安は、正成の申し出を笑って固辞します。

夕餉のあと、おふくは正成の好意を受けたいとお安に打ち明けます。夫が浪々の身でありながら妻と母が旅するのは許されないとお安は反対ですが、おふくは京に出向いて兄たちに会い、三条西家にも赴いて正成の仕官の道を探りたいのです。このまま仕官を待っていても叶いそうになく、焦る正成を見るのはまた苦痛なのです。おふくは正成の力になりたいと、お安を説得します。

お安とおふくは美濃を発ち、伏見の加藤清正邸で利宗らと再会を果たします。兄妹が別れたのはおふくがまだ8歳のころで、まだ謀反人の子と言われていた辛い時期でした。おふくの成長した姿に、よくここまで生き延びたと三存は目を細めます。正成が仕官の道を斡旋してくれて、今ではそれぞれ5,000石、3,000石の武士です。利宗も三存も正成には感謝しているわけです。

そして立場は逆転し、今は正成が浪人です。関ケ原の合戦のあと浪人たちは増える一方で、しかも小早川家の家老をしていたなら仕官は難しいかもしれないと厳しい表情を浮かべる三存は、お安とおふくに肥後に来ればいいと提案します。おふくは正成と離別するつもりはないと反発し、場の空気は悪くなりますが、利宗は屋敷でゆっくり逗留するよう声をかけ、わざと明るく振る舞います。

 

慶長8年7月28日、7歳の千姫が11歳の秀頼に嫁ぎます。花嫁を乗せた御座船は豪華に飾られ、淀川を下って大坂に入ります。そして輿入れの行列には諸大名たちが続き、徳川の権勢を誇っているかのようなきらびやかさです。そして千姫とともに大坂入りを果たしたお江与は、姉の茶々と、婚儀に参列した京極高次の妻・お初と久々の再会を果たします。

千姫を秀頼の妻としたことで、豊臣と徳川は切っても切れない絆で結ばれました。家康も秀忠も秀頼を大事にしてくれるだろうと笑みを浮かべる茶々ですが、いずれは秀頼に天下を譲ってもらわなければならず、それだけは秀忠に念押しするようお江与に言い置きます。そしてお初はお江与に、京極家にもお江与が産んだ初姫を嫁がせてほしいと頼みます。お江与は慌てて拒否しますが、茶々は乗り気です。

三条西家に出向いたお安とおふくは、当主の三条西実条と、本能寺の変のころに世話になった海北友松と東陽坊長盛とも再会します。本能寺の変、関ケ原の合戦と、大きな転機を乗り越えてきたおふくの幸せのためにも、実条は仕官のことなど一肌脱いで斡旋を模索する約束をします。頭に白いものが混じる友松と長盛は、成長したおふくを見てほくほくと嬉しそうな表情を浮かべて杯を傾けます。

お安とおふくが美濃へ戻り、日常が戻って来ました。肥後の兄から書状が届き、おふくは喜々として正成に手渡します。清正が1万石で召し抱えるそうで、ようやく仕官の道が開けた……かに見えました。正成は妻の世話で仕官したとあっては義兄たちに合わせる顔がないと、お礼とお断りの書状をしたためていました。「二度と差し出た真似はしてもらいとうない!」

この機会を逃したら、もはや100石でも召し抱えてくれなくなってしまうと、おふくは焦りをにじませます。お安は、正成には正成の意地があって、その覚悟を持っているならここで一生を終えるのもいいではないかとおふくを諭します。
その年の暮れ、おふくは将来の不安を抱きながら高丸を出産します。しかしこの高丸の誕生が、おふくの運命を大きく変えることになったのです。

開田家へ友松が訪ねてきました。なんでも実条の遣いで来たと聞いて、おふくは仕官のことだと合点し、正成を呼びに行こうとしますが、友松は首を横に振ります。「正成どのの仕官ではない。実条どのが、ぜひおふくどのにと」 友松の来意を測り兼ねているおふくでしたが、その日はおふくの人生において忘れられない日になりました。おふく26歳の春のことでした。


慶長8(1603)年7月28日、
徳川家康と生前の豊臣秀吉の約束で、婚約していた豊臣秀頼と千姫が結婚する。

寛永6(1629)年10月10日、おふくが上洛して昇殿し「春日局」名号を賜るまで

あと26年2か月──。

 

原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
長山 藍子 (お江与)
中村 雅俊 (徳川秀忠)
山下 真司 (稲葉正成)
橋爪 淳 (三条西実条)
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吉 幾三 (海北友松)
ガッツ 石松 (東陽坊長盛)
せんだ みつお (開田孫六)
馬渕 晴子 (大蔵卿の局)
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大空 眞弓 (茶々)
松原 智恵子 (お初)
佐久間 良子 (お安)
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制作:澁谷 康生
演出:富沢 正幸

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第16回「乳母の条件」

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