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2024年7月22日 (月)

プレイバック炎 立つ・第一部 北の埋み火 (05)陸奥の春

【アヴァン・タイトル】

『陸奥話記』によると、安倍頼良は忠良の子であり、祖父忠頼の代から俘囚(ふしゅう=朝廷の支配に属するようになった者)の長の家柄であったという。安倍氏はその統率力を背景に、国府から奥六郡の軍事指揮権を任されるが、次第にそれを自らの戦略に組み込んでいった。

奥六郡の実権を握った頼良は、各地に柵と呼ばれる軍事施設を築いた。衣川柵を本拠として、厨川柵(くりやがわのさく)には嫡男貞任、鳥海柵(とりのうみのさく)には三男宗任、そして黒沢尻柵(くろさわじりのさく)には五男正任を配した。こうして安倍氏は、一族による支配体制を固め、朝廷をも凌ぐ強大な軍事力を持つことになったのである──。


永承6(1051)年9月──。多くの大道芸人が芸を披露する京の大路を歩く小田忠平は、一年半の間に2回も京へ足を踏み入れることができて感激し、そのはるか後方から歩く藤原経清と乙那は、何枚もの筵(むしろ)に覆われた背の高いものに目を奪われます。聞けば、安倍頼良が飼っていた大イタチだそうです。経清と乙那は、ばかばかしいと軽蔑の目を向けて立ち去ります。

陸奥の安倍軍が都に乱入して、来年は乱世になるという噂が都中でしきりにささやかれていたのです。乙那は、源 頼義がうわさを流しているのだろうと考えています。恐ろしい俘囚の大将を征伐し奥六郡を制圧すれば、頼義は国を救った英雄になるわけです。横で聞いていた剛介は、頼義はそんな人間ではないと腹を立てますが、経清は苦々しい表情で剛介をたしなめます。

藤原経輔の屋敷に入った経清は、実母亜乎根(あこね)に亡き父藤原頼遠を現す木彫りの像を見せます。亜乎根は、何か自分のことは言っていなかったかと尋ねると、特になかったようで経清は言葉に詰まります。経清は、もう一つの目的である経輔対面を亜乎根に求めます。亜乎根は経輔は計算高い人間だから、聞き入れてくれるかどうかは分からないと経清に伝えておきます。

経清の、源 頼義の陸奥守任官を取りやめてほしいという願い出に、「無理じゃな」と経輔はあっさり返答します。帝の勅命によるものであるし、経輔が異論を挟める立場にないというのです。経清は砂金を経輔に差し出すと、変なことを言い出します。「今さら頼義の陸奥任官を取りやめにすることはできぬが、頼義を陸奥に下向させても戦ができぬようにすることは、できぬことではないかもしれぬな」

頼義が陸奥守に着任するまでの間に、安倍氏も厨川を始めとする柵の防備を始め、戦に備えています。翌 永承7(1052)年3月、内裏に上がった頼義は後冷泉天皇から陸奥守就任の酒肴を賜る儀式に臨みます。鎧に身を包んだ頼義を、経輔は見据えます。

 

衣川の安倍館では、頼義着任後の対応について一族が揃って協議します。追討軍ではないためすぐには戦になる可能性は低いわけですが、頼義が安倍に対してどういう難癖をつけてくるか、どうかわすかです。安倍貞任は戦にして頼義を滅ぼせと言い出し、戦に勝って陸奥に平安が来たか? と主張する頼良と言い争いになります。宗任は時間稼ぎをするしかないとうつむきます。

初夏、頼義と嫡男源 義家は国府多賀城に到着します。頼良の返答如何で戦になるかもしれず、家臣たちに気を引き締めるよう号令します。前任者藤原登任に多少の落ち度があったにせよ、国府に対して反逆を試みたのは明白であり、頼義は特別の恩情で頼良に弁明の余地を与えることにします。その使者として頼義は、陸奥守代理だった経清を副官として指名します。

頼義は、頼良に首謀者貞任の首を差し出させ、奥六郡の柵を破却することを求めます。頼義にしてみれば貞任の首で事が済めば簡単だという認識なのですが、経清は難色を示し、頼義着任に合わせて安倍方の使者が対面するため控えていることを伝えます。頼義は立ち上がり、さっそく呼んで対面します。

使者として訪れたのは宗任で、貞任が厨川柵に籠って反乱を起こしていると訴えます。ただこれは身内の争いのため安倍の力で貞任を討ち取りたいと身を乗り出します。私闘に加担することは禁じられていることもあり、頼義はこれを認めますが、討ち取りに要する期間を3か月と決め、その間の柵の破却も時間的猶予を与えることをしぶしぶ承諾します。

内裏に報告するための監察使として頼義は義家と藤原景季を奥六郡に派遣します。途中、義家は川のほとりで会釈する宗任と結有を発見します。義家は俘囚の娘である女性が都の女性より美しいことに驚きますが、経清はそれには答えず、案内役として先を急ぎます。義家は結有を見つめながら、鼻の下が伸びています。

貞任屋敷に入った監察使は、頼義と約束した3か月より長くかかるかもしれないと、この屋敷でしばらく滞在するよう勧めます。この屋敷には貞任に味方する武士はひとりもいませんが、別棟に貞任の妻子がいると宗任は打ち明けます。義家は貞任の妻に会いたいと言い出します。「男の器量はその女で分かるとか。貞任がどんな男かその妻女に会えば見当はつく」

流麗はしおらしく、貞任のことで謝罪します。流麗の美しさに息を飲む義家は、自分が貞任なら流麗と子を殺して戦に行くとつぶやきます。義家の言葉に、流麗は涙を流して感動します。流麗は15歳の義家の、いずれ妻になるであろう女性を羨ましく感じます。「女とて好きな男に殺されるは本望。愛し愛されてこそ夫婦というもの」 泣き崩れる流麗を結有は対面所から連れ出します。

対面が終わり、流麗の取り乱し方に呆れている結有は菜香に愚痴を吐きます。義家には貞任が妻子を残していったことになっていますが、本当は厨川に来るなら来いと誘ったのに流麗が嫌がったのです。一度できた深い溝は修復にはかなり大変だと菜香はつぶやきますが、愛しさえすればいいと結有はあっけらかんと言ってのけます。菜香は経清の小袖を結有に持たせ、館に戻るよう促します。

鬼切部の戦に勝った貞任が作らせたアラハバキの石像。結有の母・紗羅はアラハバキの巫女であり、その素質を買われた結有は、戦の間経清のことを祈っていたと打ち明けます。「わたしく怖い……こんなにも経清さまに捉われている自分が」 抱いて! と振り返る結有に、経清はその言葉に導かれるように結有をしっかりと抱きしめます。

 

内裏・左近衛の陣では、藤原道長の娘・上東門院彰子の話でもちきりです。病の床につき、陰陽師に占わせたすべてのことに手を尽くしてきましたが、一行に効き目がなく。彰子の弟・右大臣藤原教通は唇を噛みしめますが、その子藤原能長は“アレ”を実行してみては? と提案します。藤原経輔も賛成し、藤原頼通は一度は散会した陣定めを継続して審議することにします。

夜中、寝静まる貞任の館内に流麗の叫び声が響き渡ります。貞任が厨川へ連れていくと無理やり連れ出そうとしているのです。叫び声を聞いた義家は一目散に駆けつけ、曲者に刀を抜きます。のちに経清と景季が追いつき、囲まれた貞任はそのまま庭に飛び出て逃走してしまいます。残された流麗は、乱れた着物を直しながら泣きじゃくるだけです。

多賀城に戻った義家は、館に貞任が戻ってきたことを報告します。頼義はこの事件から、身内争いだと主張したことは偽りかと疑いの目を向けます。頼義は安倍への怒りを煮えたぎらせ、藤原茂頼と和気致輔(むねすけ)に兵を招集するよう命じます。戦を仕掛けるのかと経清は顔色を変えますが、頼義は時間稼ぎをし国府を欺くのは安倍側だと、衣川柵に3,000の兵で攻め寄せることにします。

これまでの布石が台無しだと宗任は貞任に激怒し、頼良も非難の声を上げます。頼良は国府が求めれば貞任の首を差し出すしかないと神妙ですが、貞任はその前にひと暴れしてやると鼻息荒いです。これに弟たちや平 永衡が賛同し、頼良はみなをなだめます。宗任は頼良の言うように策を練ろうと提案しますが、そんな弱虫な意見は聞いていられません。貞任は頼良の前にどっかと座り、首を切れと迫ります。

頼良はしばらく貞任を睨みつけていましたが、立ち上がり太刀を抜きます。子や家臣たちが頼良を止めている間に、朗報だぞと乙那が駆け込んできました。「非常の大赦が発せられた」

ふざけるな! と頼義は激高します。上東門院病気平癒を願っての大赦が発せられ、すべての争いごとを不問に付すことになってしまったのです。もしこれに反すればどんなことであれ重い処分を下すとあります。「やられた……やられたぞ」と頼義は顔色をなくしますが、まさにその時、頼良と貞任が多賀城に向かっていると報告が入ります。

安倍に関するすべての罪を不問にされ、その礼を述べるための訪問です。その際、たくさんの金や財宝を献じることは忘れません。頭を下げる両名に、頼義は冷めた目で2人を見ています。頼良は、頼義と文字こそ違え同じ読みでは畏れ多いと、改名を言い出します。頼良から「頼時」へ──。「この頼時、奥六郡についても命に代えて争いごとを封じますれば、どうぞご安堵のほどを」


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
新沼 謙治 (平 永衡)
川野 太郎 (安倍宗任)
鈴木 京香 (菜香)
財前 直見 (流麗)
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寺田 稔 (乙那)
新橋 耐子 (亜乎根)
イッセー 尾形 (藤原経輔)
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佐藤 慶 (源 頼義)
里見 浩太朗 (安倍頼良)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:竹林 淳

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第6回「阿久利川の陰謀」

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