プレイバック春日局・(17)世継ぎ誕生
【アヴァン・タイトル】
おふくが江戸、現在の東京に来たのは、今から380年前のことです。380年前の東京。最新のコンピュータ・グラフィックスで再現してみましょう。江戸時代の資料を基に一軒一軒忠実に再現した江戸の町です。当時の江戸は建設ラッシュです。徳川家康の号令の下、江戸は小さな田舎町から日本の中心となる大都市へと変わろうとしていました。
現在の皇居の位置にある丘、家康はこの丘を切り崩し、半年がかりで新しい城を建設しました。西の丸です。西の丸は江戸城のほんの一部にすぎません。城の建設は三代将軍家光の時代まで続く、半世紀にわたる壮大なプロジェクトなのです。慶長9年の春、ひとりの女が西の丸に到着しました。おふく、26歳。初めて見る江戸の町、初めて見る江戸城でありました──。
ひとまず美濃から岡崎城に入ったおふくと千熊ですが、腹を空かせている千熊を見て、用意しておいた干し柿を千熊に食べさせます。二人はまだ見ぬ江戸の町に大きな憧れを抱きます。千熊は美濃での楽しかった暮らしを思い出し、いつか必ず美濃へ戻れるようにお勤めに励みたいと決意します。
美濃谷口村では、江戸へ発ったおふくの代わりに、その役目をおふじが担うことになりました。稲葉正成の薬湯の世話から、弟たちの面倒まで大変そうです。おふじは、もし将軍御台所が姫君を産んだならば母はすぐにでも江戸から帰ってくると聞いて、姫君誕生を祈っています。
美濃を出てから10日余り、おふくたちは江戸城に入ります。同行した家康の側室・お勝は、同じく側室の阿茶の局と対面させます。阿茶は将軍家江戸城の奥の一切を取り仕切っているため、おふくと千熊は阿茶の下に入ることになります。嫡男誕生の折は、おふくにはお局さまとして部屋を与えられ、千熊も若君の小姓として屋敷を賜ることになります。まずは阿茶の指図に従うところからです。
徳川秀忠とお江与がおふくと千熊に対面します。お江与はおふくが伯父を殺した謀反人ゆかりの娘と、乳母を別の者にしてほしいと願い出ていましたが、ついにそれも叶わず。おふくはふたりに挨拶をしますが、おふくを睨みつけていたお江与の目線は、明らかに外されてしまいました。おふくは自分が受け入れられていないことを感じ取ります。
乳母になるまでの間をすごす部屋へ案内されたおふくは、お江与が自分を気に入っていない不安をお勝に吐露します。お勝はそのようなことを悩んでいては大任は果たせないと励まします。おふくは将軍自らが決めた乳母であり、将軍の決定事項は秀忠でもお江与でも逆らえないことなのです。「おふくどのは徳川家の乳母じゃ。それだけはゆめゆめお忘れ召されますな」
夜、千熊が目覚めると、おふくは隣の部屋で張った乳を搾っていました。将軍になる方に乳を与えて、生まれたばかりの子・高丸には乳を与えない……高丸より将軍のほうが大事かと千熊は疑問です。乱世のむごさを経験したお福は、和平を願って育てた将軍が和平の時代を作り上げてもらいたいという希望を持っているからだと説明します。
お江与産み月の7月、おふくは阿茶から今宵から明朝の間に生まれると知らせを受けます。おふくは千熊に、もし嫡男が誕生したら母とともに暮らすのも最後、千熊には小姓という別の役目があると諭します。「もはや母と子ではない。たとえ若君のそばでともにお仕えしようと、乳母と小姓じゃ。ゆめゆめ母と思うてはならぬ」
産気づいたお江与ですが、阿茶からおふくが乳母として控えていると聞いて、やはり自分の希望は聞き入れてもらえなかったかと残念がります。そしてその時、お江与の出産を待つおふくは、務めにより徹夜で手を合わせ続けます。お勝も寝ていられないと起きてそわそわします。そして夜明けとともについに──。「若君さまのご誕生じゃ!」「若殿さまじゃ!」という侍女たちの声が響き渡ります。
阿茶は産湯を使った赤子を抱いておふくの部屋へ。乳母として初めて乳を与える瞬間です。赤子はおふくの乳に吸い付き、ゴクゴクといい飲みっぷりです。おふくは赤子が乳を飲んでくれたことにホッとした表情を浮かべ、阿茶もお勝もその様子に安堵し、肩の荷を下ろしたようです。
母親のお江与は出産を終え、秀忠が労わりの言葉をかけます。乳母としての挨拶をするおふくですが、お江与は男子を産んだばかりに、自分は赤子を育てられず、おふくは自身の子に乳を与えられず、母としての辛さは同じと表情は穏やかです。「今となっては何も言わぬ。若君のこと、そなたの子と思うて愛おしんで差し上げてくだされ」
お勝の予告通り、おふくにはお局さまとして部屋が与えられます。若君の諸事万端を取り仕切る役目に就任した土井利勝は、おふくのお局部屋を訪れ若君に仕える小姓たちを紹介します。稲葉千熊(8)、松平長四郎(9)、永井熊之助(5)、岡部七之助(9)です。千熊以外の3人はいずれも三河譜代の家臣の男子で、利勝はおふくに、若君養育と同じように小姓たちも育ててもらいたいと提案します。
伏見城では重臣の本多正信が家康に、男子出生を報告します。大喜びの家康は、若君の幼名を自身のものと同じ「竹千代」にすると決めます。
それを知った江戸城の秀忠はお江与に知らせます。お江与は家康がいずれ若君に天下を譲ってくれると信じ、秀忠は家康のような元気な武士に育ってほしいと願いを込めます。
徳川に世継ぎが出来れば、徳川の豊臣への出方が変わってくる──。大坂城の茶々は厳しい表情です。今は幼少の豊臣秀頼が成人した暁には天下を譲ると約束していても、孫ができれば思いも代わってくるわけで、大蔵卿の局や正栄尼はお江与を味方として、その夫・秀忠には勝手をさせないつもりです。
秀忠に男子出生の知らせは、美濃の正成にも届けられます。おふくは若君の乳母に、千熊も500石の小姓に就任しました。おふじはおふくと千熊が帰ってこないことを覚悟します。会えない辛さはおふじもおふくも千熊も同じであり、愚痴を言ったらばちが当たると笑います。正成はおふくが稲葉の家を盛り立ててくれる嬉しさから、七之丞たちを抱きかかえて喜ばせます。
さまざまな人々の思惑の中で誕生した、徳川の世継ぎ・竹千代の人生は、決して平穏なものではありませんでした。そして竹千代の乳母として竹千代を守るおふくもまた、いまその多難な道を歩こうとしていました。おふくは竹千代に「良い名をいただきましたの」とあやしています。
慶長9(1604)年7月17日、徳川秀忠の次男として江戸城西の丸に生まれ、竹千代と命名される。おふくが乳母となる。
寛永6(1629)年10月10日、おふくが上洛して昇殿し「春日局」名号を賜るまで
あと25年5か月──。
原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
長山 藍子 (お江与)
中村 雅俊 (徳川秀忠)
山下 真司 (稲葉正成)
東 てる美 (お勝)
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中条 きよし (土井利勝)
馬渕 晴子 (大蔵卿の局)
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大空 眞弓 (茶々)
丹波 哲郎 (徳川家康)
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制作:澁谷 康生
演出:富沢 正幸
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『春日局』
第18回「二代目決まる」
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