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2024年7月26日 (金)

プレイバック炎 立つ・第一部 北の埋み火 (06)阿久利川の陰謀

【アヴァン・タイトル】

多賀城が築かれたのは8世紀のはじめである。当初は陸奥の国府と鎮守府とを兼ね備え、朝廷の東北支配の一大拠点として、政治・軍事の両面にわたる中心的役割を果たしていた。

軍事機構としての鎮守府は、その後、坂上田村麻呂によって胆沢城に移されたが、国府の命脈は12世紀に至るまで保たれていたのである。国府の長である陸奥守は任期5年、その間地方の行政に携わり、陸奥の豊富な財物を都へ貢納する職務のかたわら、将来への利権獲得にも励んでいたのである──。


天喜2(1054)年 秋──。藤原経清と結有の婚儀が、陸奥守 源 頼義の仲介で多賀城で盛大に執り行われます。頼義と安倍頼時が酒を酌み交わすほど、両者の関係は丸く収まっているかに見えました。安倍貞任は経清の前にどっかと座り、結有(つまり安倍)を裏切らない誓いを立ててほしいと迫ります。その後、平 永衡の先導で結有が現れ、経清の横に並びます。頼義が音頭をとり、2人の門出を祝います。

 

天喜4(1056)年 春・亘理(わたり)の藤原館──。婚儀から1年半、結有は経清の子を身ごもっていました。仏事と重なり、藤原家ならではの作法、客の接待に後片付けと、ただでさえ多忙な多磨は結有の世話もさせられて、不満たらたらです。結有は自分がやると起き上がろうとしますが、こき使ったら経清に叱られると断りつつ、自分との境遇の違いに愚痴も止まりません。

負けず嫌いの結有は率先して家事を手伝おうと、大きなお腹を抱えてたくさんの皿を運びますが、棚の最上段に持ち上げようとしてバランスを崩して皿を落として割ってしまいます。大きな物音に気付いた経清が結有に駆け寄ると、結有は産気づいていました。その後、結有は無事に出産します。清丸、後の藤原清衡です。

藤原館での継母(=多磨)が嫌味ばかりらしいとの話が持ち上がり、頼時は女の諍(いさか)いなら世も安泰だと笑います。一方で男同士の……頼義の陸奥守の任期満了までの3か月を堪(こら)え、このまま平穏に終わらせるために、何かにかこつけて献納する必要があると頼時は考えます。3月といえば節句ということで、頼時はその荷駄を仕立てるよう安倍宗任に命じます。

多賀城にはたくさんの進物が運ばれます。頼義の方でも安倍側に難癖のつけようがなく、このまま平穏無事に任期を終えようとしていました。そのころ経清は、生まれたばかりの清丸と結有を連れて安倍の衣川館に入ります。

清丸を見て巫女の紗羅は、いずれ陸奥を支配する人物になる強運の持ち主と結有に伝えます。その占いの結果は、陸奥はこのまま平穏に過ごせるとか、仮に戦があったとしても安倍が勝利するともとれますが、頼時はいずれにしても清丸が一族をまとめて陸奥を安泰に導いてくれるならめでたいことはないと笑みを浮かべます。

そんな紗羅の占いに不満を持つのは流麗です。頼時の嫡孫にあたり安倍を継ぐであろう千世丸(貞任との子)を差し置いて、清丸をもてはやす頼時や宗任、乙那を許せないのです。大の字になって昼寝をしていた貞任にその愚痴を吐き、貞任は「うるさーい!」と遠駆けに出かけてしまいます。

途中で経清と合流した貞任は、子どものころによく釣りをして遊んだ池のほとりで馬を下ります。経清とともに釣りをしたいものだとつぶやきつつ、そんな暇はないかと貞任は寂しそうです。「いや、来る。必ず来る」と経清は貞任を見つめます。あと2か月我慢すれば、ふたりでゆっくりと釣りができる。出会いこそいがみ合っていた2人は、いつしか同志と固く絆で結ばれていました。

そこに小田忠平が駆けつけます。頼義が最後の務めを果たすため、任期満了までの50日間を鎮守府胆沢城で過ごすと言い出したのです。頼義ほどの人物が、任期を終えたからといってあっさりと都へ引き上げるとも思えません。奥六郡のど真ん中に腰を据える頼義のやり方に、貞任は腹を立てます。「あの頼義のことだ。戦のネタをしかけたくてうずうずしておるに決まっておるわ」

吉次は頼時に、罠にかかりに行くようなものだと胆沢城行きを止めますが、行かないなら行かないで難癖をつけられそうで、判断の難しいところです。頼時の頭の中には“あと50日”というのがあり、残り日数でできることは限られますが、吉次は口実はいくらでも作れると諭します。頼時は自分一人で胆沢城へ行くことを決断します。「今度ばかりは私心を捨てて、頼義の臣下に徹しまする」

 

胆沢城では宴三昧、頼義の嫡男・源 義家は、酒と女の毎日にうんざりしています。座を蹴った義家は、いろいろな部屋で遊び狂う者たちを目にし、苦々しい顔でその場を後にします。義家と入れ替わりに、頼義に呼ばれた頼時が現れます。1,000人単位でのもてなしのため、なかなか訪問する時間が取れずに申し訳ない、と下手に出る頼時です。

頼義は、安倍が内裏に恭順を示す証として、小松柵を壊して平地にしてもらいたいと言い出します。頼時は、小松柵は弟安倍良照が守る柵で、さっそくに手配すると二つ返事で話を受けます。頼時は芸人ににぎやかにやれとはっぱをかけますが、頼義は見世物芸には飽きたと、頼時の芸を披露してもらいたいと無茶ぶりします。頼時は何度も固辞しますが、食い下がる頼義に頼時は折れます。

赤い布を被り笠を手にして舞い始める頼時に、頼義は舌を巻きます。しかしここで諦めればこれまでの年月が無駄になると、家臣たちは頼義を励ましますが、戦を仕掛けるには口実がいるのです。陸奥権守(ごんのかみ)の藤原説貞(ときさだ)は、安倍方は今はネコを被っているが頼義が去れば傍若無人に振る舞うようになると、安倍に仕掛ける罠を頼義にこっそり提案します。

舞い終わった頼時は館の裏で布と笠を投げ捨て、がっくりとうなだれます。なぜ芸人のまねごとをしなければならないのか。奥六郡のためにこれぐらいのことで音を上げてはならないと瑞乃は叱咤しますが、頼時にも誇りがあるのです。その誇りをズタズタにされた頼時は、柱を叩いて悔しがります。

 

頼義は頼時に、安倍方の宴の返礼として、別れの宴を催したいと言ってきました。胆沢城から多賀城に戻る前日に頼義の手で宴を催し、その宴には貞任はじめ頼時の子らも顔を出すように頼時に依頼します。そして翌日に多賀城に戻る頼義を、胆沢城から伊治城あたりまで貞任に見送りを頼むとも伝えます。貞任の名が出て不安がよぎる頼時ですが、ここは話を受けるしかありません。

3日後、先発隊として義家軍が出発し、しばらくして後を追う頼義軍に貞任が随行します。貢ぎ物が多すぎて軍勢が遅れ気味になり、貞任は足並みを遅らせます。もしかしたら先発隊と本隊の間にいる自分たちを挟み撃ちにしようとしているのかもしれない、とも考えますが、疑えばきりがない、と苦笑して再び馬を進めます。

先発していた義家は、本隊のあまりの遅さに阿久利川あたりの頼義本陣まで引き返してきました。貢ぎ物で浮かれるのは武士の恥と義家は真面目ですが、頼義の説得でしぶしぶ伊治城に戻ります。そしてそのころ貞任の陣には、説貞が火急の用件で訪問していました。「即刻にこの陣を退いてもらいたい。深夜を待って頼義さまの兵が襲いまするぞ」

何の口実がなくても、貞任が奇襲をかけて来たから討ち取ったと頼義が内裏に報告すれば、内裏はそれを信じるしかないわけです。貞任は激高しますが、夜陰に紛れて陣を退いても、随行から外れたと口実を与えてしまうことになりかねません。それは説貞が命に代えて言い訳すると約束します。「頼義の挑発に乗るなと親父からもきつく言われておる。ここは説貞どのの顔を立てて」

一斉に軍勢が動けば頼義に感づかれる恐れもあり、説貞は10人ほどの兵を寄越して時を稼ぐ間に、貞任たちは撤兵をすることになりました。説貞は頼義軍と間違われないよう、安倍軍の目印となる幟旗を貸してもらいたいと頭を下げます。貞任たちは説貞の配慮に感謝し、幟旗を用意します。幟旗を預かった説貞はニヤリとします。

その幟旗を掲げた説貞軍が頼義軍を襲撃します。本陣では家臣たちが「貞任軍が押し寄せて来たぞ!」と叫び、兵たちが応戦します。頃合いを見て、説貞軍は引き揚げていきます。

 

亘理の藤原館に一報が入ったのは翌朝、頼義からの号令で伊治城に集結せよとのことです。経清には、わずか30騎で貞任軍が夜襲するとは思えないわけですが、永衡は頼義の罠だと吐き捨てます。そのやり方を許せない永衡は、安倍につくと態度を明らかにして、経清を誘います。安倍を裏切るつもりかと迫る永衡に、経清は動揺を隠せません。


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
新沼 謙治 (平 永衡)
川野 太郎 (安倍宗任)
鈴木 京香 (菜香)
財前 直見 (流麗)
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寺田 稔 (乙那)
赤座 美代子 (瑞乃)
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佐藤 浩市 (源 義家)
佐藤 慶 (源 頼義)
多岐川 裕美 (紗羅)
西村 晃 (吉次)
里見 浩太朗 (安倍頼時)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:三井 智一

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第7回「経清決断」

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