プレイバック春日局・(20)ゆらぐ夫婦
【アヴァン・タイトル】
埼玉県川越市は、江戸時代から江戸城の北の守りとして栄えてきた城下町です。「小江戸」と呼ばれた町には江戸情緒豊かな建物が立ち並んでいます。
天台宗喜多院。この寺には江戸城初期の面影を伝える建物が遺されています。「家光誕生の間」は、三代将軍家光が寛永年間に江戸城紅葉山から移築したものと言われています。上段の間の天井は、極彩色の花々で彩られた大天井です。喜多院には春日局ゆかりの小物も何点かあります。江戸城から移築されたもう一つの建物が、「春日局化粧の間」といわれる部屋です。4つの小部屋で仕切られ、天井が低く、大奥長局の特徴である2階部屋も見られます。
川越喜多院。部屋の隅々に建設途上の江戸城の息吹が漂っています──。
慶長11(1606)年3月。竹千代が生まれて2年になるのを機に、おふくは乳母の役目を終えて暇をいただきたいと家康に願い出ます。2年と期限を切った覚えはないがのう と家康はとぼけますが、お勝はおふくに付き添って江戸城に下った時、“長くて2年の辛抱”と言った覚えがあります。誕生日までまだ4か月ありますが、家康が江戸に戻れそうにないと聞き、今のうちに許しを得ておきたいというわけです。
竹千代のはしかも無事快癒させ、小姓たちも立派に仕込んで、家康はおふくが乳母としての役割を果たしてくれていると評価していますが、だからこそ家康はおふくを帰したくないのです。家族のことも忘れて仕えたおふくへ、暇の許しを快く出すようお勝も後押しします。それがおふくへの餞(はなむけ)でもなります。家康は、せめて自分が再び江戸城へ戻ってくるその時まで待っていてほしいと告げます。
竹千代は手放しで歩くようになり、侍女や小姓たちも笑顔です。そこへお江与の遣いでおくにがやって来て、気分がすぐれないため毎日恒例の対面は取りやめたいと言ってきました。容態を心配するおふくですが、おくには笑みを浮かべます。「ご懐妊でございます」 男子が生まれたら竹千代にとって弟となるわけで、いい遊び相手、いい勉強相手になるとおふくも喜びます。
待ちに待った竹千代との1週間ぶりの対面です。おふくはお江与の懐妊のお祝いを述べます。出産に向けて再び乳母を探さねばなりませんが、お江与の顔がサッと曇ります。これまで6人の子を産んで来たお江与ですが、お初が京極家へ輿入れすれば、手許に残るのは勝姫だけです。お江与は、今度産まれてくる子が男子でも女子でも、手許において育てると宣言します。
竹千代の時は世継ぎだからと養育を諦めたお江与は、男子が産まれても世継ぎではないので自分の手で育てたいわけです。たしなめる秀忠ですが、家康が乳母探しを始める前に、秀忠からの申し入れをと求めます。竹千代はお江与の子だとおふくは諭しますが、竹千代はおふくのひざ元に座り、お江与は涙目です。「竹千代は私を母とは思うておらぬ。おふくどのが母じゃ。幼子は正直なものよ」
9月、江戸城本丸が完成し、おふくと小姓たちも本丸に移り住むことになりました。おふくは新しい御殿を案内してもらいます。竹千代の成長に従ってお世話の部屋子も5人は増え、居室も広くなります。竹千代の居室など立派な作りにおふくは感服しますが、間もなく暇をもらう身なので戸惑います。案内した土井利勝は、おふくがいなくなったら竹千代が不憫だとがっかりします。
利勝の計らいで、書院番の堀田正吉がおふくの手伝いに付けられます。正吉は稲葉正成の元家臣で、おふくとも千熊とも久々の再会です。いい土産話になるとおふくは笑いますが、千熊は竹千代に仕える身なので、千熊を助けてやってほしいと正吉に頭を下げます。今の正吉は千熊よりもむしろおふじのことが忘れられないらしく、ひとりで照れてひとりで去っていきます。
そのころ美濃谷口村では、おふじがおふくの代わりに、弟たちの面倒を見ながらせっせと家の世話をこなしています。江戸城で正吉と会ったことをおふくからの文で知った正成は、正吉との結婚話を持ちかけますが、おふじはこの家でみんなの世話をすることが幸せだと、話を断ります。おふじはなかなか戻らないおふくを悪しざまに言い、正成はおふじに手を上げます。
たまたま開田孫六が来て、親子げんかをするふたりを仲裁します。孫六は駿府の家康からの使いが来たと伝えに来たのです。今ごろ何の用かと孫六は訝(いぶか)りますが、ともかく待たせてはならないとおふじは対面の準備に入ります。
おふくが暇の願い出をしていると知ったお江与は「ならぬ」と止めます。次に生まれてくる子が仮に男子でも、乳母については秀忠の勝手にしていいという家康の許可は下りたようで、秀忠もお江与が自らの手で養育することは認めてくれました。お江与が赤子に手を取られたら、竹千代を相手する人がいなくなるため、その時はおふくに竹千代を守ってもらいたいというのです。
駿府城に呼び出しを受けた正成は、家康と対面します。家康は正成が美濃国羽栗郡(はぐりごおり)の林家から稲葉家へ養子へ行ったことを聞き、美濃国羽栗郡十七条1万石を与えます。困惑する正成は固辞しますが、事情はどうあれ小早川を出奔し断絶に追い込んだ正成を即座に召し抱えるわけにもいかず、家康は時が過ぎるのを待っていたわけです。「わしのそなたへのせめてもの思いやりじゃ。承知してくれい」
11月4日、家康は8か月ぶりで江戸城に帰ってきます。竹千代の食事の面倒を見ているおふくですが、正成が来ていると聞いて驚きます。対面所に向かったおふくは、美濃で何かあったのかと涙声です。どうして正成が江戸城に来ているのか、おふくには分からないことだらけです。
原作・脚本:橋田 壽賀子「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
長山 藍子 (お江与)
山下 真司 (稲葉正成)
東 てる美 (お勝)
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中条 きよし (土井利勝)
せんだ みつお (開田孫六)
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中村 雅俊 (徳川秀忠)
丹波 哲郎 (徳川家康)
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制作:澁谷 康生
演出:小見山 佳典
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『春日局』
第21回「母去りぬ」
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