大河ドラマ光る君へ・(28)一帝二后 ~まひろは子育て・道長が危篤~
充てられた乳母・あさが横で心配そうに見守る中、産まれたばかりの女の子の世話にいそしむまひろです。母親としてどうしてもやっておきたいわけですが、襁褓(むつき)を替える手もどこかぎこちない様子です。乳飲み子の扱いは下手だなァと笑う藤原惟規は、顔が藤原宣孝に似ているとつぶやきます。もうやめて、と真顔になるまひろですが、これは事情を知る惟規なりの気遣いです。「無理してないよ、別に」
そのころ女院詮子は、道長が“一帝二后”などとんでもないことを考えるようになったと変に感心します。円融院に捨て置かれた経験を持つ詮子ですが、可愛い道長がやりたいのなら止めはしません。一条天皇に対して文を出してほしいと道長から求められ、いいわよと安請け合いしますが、自分の文ごときで帝が承諾するかは分からないと、詮子はため息をつきます。
翌日、蔵人頭の藤原行成が詮子の文を帝に渡します。しかし帝は、朕にとって后は定子ひとりであり、后を2人立てるなど受け入れられるものではないと、行成から詮子と道長に伝えさせます。帝と道長の間で苦悶する行成は、帝が考えてくれる“ご様子がございました”とぼかして返事します。何とか彰子を中宮に立てる流れを作ってもらいたいと、道長は行成に期待します。
土御門殿の源 倫子は、彰子が帝に気に入られるために、帝の好きな物事を詮子に尋ねますが、詮子はそれをよく知りません。「あなたは子らの好きなもの、知っているの?」と逆に問われた倫子は、自分の子らの好きなものをよく知っていて、すらすらと答える倫子にフッとほほ笑みかけます。
赤染衛門は彰子の女房になっていた。帝が彰子の元を訪れます。暖かく過ごせと言葉をかけた帝は、笛を吹いて彰子に披露しますが、耳だけ傾けて一向に帝を見ようとしません。帝は思い切って中宮になりたいのかと彰子に尋ねますが、「仰せのままに」といつものクセが出てきてしまい、赤染衛門はしまったと思い目をつぶります。
帝から見て、彰子には己というものがないと感じます。帝も詮子の言いなりで育ってきたため、彰子にも同じものを感じたわけです。帝は改めて、自分にとって愛しい女子は定子だけだと思っていますが、そんな彰子を形だけでも后にしてやってもいいのかもしれないと考え始めます。「朕も左大臣と争うのは辛いゆえ」
このことは行成から道長に報告されます。道長は帝をそういう考えにさせてくれた行成に感謝します。四条宮で学んでいたころから、行成はさりげなく道長を助けてくれる……。行成の立身は道長が、そして行成の子どもたちの立身は道長の子どもが請け負うと約束し、行成は感動しますが、その直後に道長は卒倒してしまいます。
まひろは漢詩を赤子にささやきます。それはさすがに早いとあさは苦笑いですが、子守歌代わりに聞いていればいつの間にか覚えてしまうと止める気はなさそうです。学問の分かる女子に育ってほしいと、教育ママぶりが発揮されています。それはそうとそろそろ名が欲しいといとは笑いますが、まひろは宣孝が帰ってきてから付けてもらおうと考えています。
長保2(1000)年。詔(みことのり)が下りる前によい日を決めておきたいと、道長は安倍晴明に占いを出してほしいと求めますが、藤壺の女御、中宮立后(りっこう)は2月25日と即答します。ほう、と感心する道長に、晴明はニヤリとします。「こうなることは分かっておりましたゆえ、先に占っておきました。国家安寧のために、先を読むのが陰陽師の仕事でございますれば」
その後、道長は日記をつけます。『雪が大いに降った。一尺二~三寸ほど積もった。晴明を召して立后の雑事(ぞうじ)などを勘申(かんじん)させた。女院様に献上することとする。晴明が申して言ったことには』とまで記して、まだ詔は下りてはいなかったと思い直し、つけた部分を線で引いて消します。
帝は彰子の立后について行成を呼び出します。正直、まだ心が決まらず、それまでの間、くれぐれも公にすることがないように取り計らえと命じます。誰かから定子が聞けば、傷ついてしまうという気遣いからです。しかし行成は、そんな帝に珍しく諫言します。「お上はお上にあらせられまする。一天万乗の君たる帝が、下々の者と同じ心持ちで妻を思うことなぞ、あってはなりませぬ」
大原野社(おおはらのしゃ)の祭祀(さいし)は代々、藤原家から出た皇后が神事を務める習わしですが、中宮定子が出家して以降、神事を務める后がいないのです。神事が果たされないのは神への非礼であり、そんな神の祟りが大水や地震などの天変地異につながっていると行成は説得します。道長もそれを憂えて彰子を入内させたわけで、行成は彰子を中宮とし、神事第一を強く求めます。
一条天皇は、一帝二后を承諾した。前代未聞のこの宣旨を聞いて、反発する公卿はいなかった。あのご意見番の実資さえ、異を唱えなかったのである。
豊前から宣孝が帰ってきました。いつものようにまひろと姫のために土産をたくさん持ってきた宣孝は、まひろに求められて姫を抱き上げます。名前をつけてやってほしいと言われた宣孝は、もう決めてある、と笑います。「賢子(かたこ)じゃ」 名を聞いて戸惑うまひろですが、“賢い子”との説明を聞いて、一応は納得します。
宣孝はさっそく道長に帰国の報告をします。馬を2頭献上したこともあり、道長は宣孝に礼を言いますが、宣孝は女の子が生まれたことも報告します。宣孝にとっては初めての女の子で、とても嬉しそうにしています。道長はこれからも仕事に励むよう宣孝に言葉をかけます。そういった面会や事務などの仕事を終えると、道長は文机に突っ伏しそうな感じでぐったりとしています。
彰子が立后の儀式のため、内裏を一旦退出した翌日、一条天皇は定子と皇子たちを内裏に呼んだ。内裏の女たちは、どういうつもりで内裏に来たのか、帝が皇子敦康(あつやす)さまのお顔を見たかったとしても、どの面下げて? 恥知らず! 最低! などと言いたい放題です。
日が暮れ、定子と二人きりになった帝は、二后を定子に詫びます。定子は、父母が亡くなり兄弟が身を落とす中で、中関白家のことばかり考えてきて、帝の苦しみより己の苦しみに捉われていたと打ち明けます。「どうか彰子さまを中宮に。さすればお上のお立場も盤石となりましょう。私は家のために入内した身、人の思いと行いは裏腹にございます。見えておるものだけがすべてではございませぬ」
内裏では、彰子立后の儀が執り行われようとしていた。前例なき一帝二后の世の始まりである。藤原実資は「天皇(すめら)が 詔旨(おおみこと)らまと 勅(の)りたまふ 命(おおみこと)を 親王(みこたち) 諸王(おおきみたち) 諸臣(おみたち) 百官人等(もものつかさのひとども)」と宣言、道長はじめ公卿たち、そして御簾の中では帝がその言葉を聞いています。
源 明子は生まれたばかりの姫を抱きながら、いずれ道長のお役に立つように育てるつもりですが、入内して幸せなことなどない、と道長は従来の考えに戻っています。カチンときた明子は、道長の前で息子らに「蒙求(もうぎゅう)」を諳(そら)んじるよう求めます。道長は、今は疲れているので今度ゆっくり聞かせてもらうと約束し、ゆっくり立ち上がります。しかし明子の目の前でまた卒倒します。
明子のいる高松殿に3日も滞在し、出仕もしていないと知った倫子は従者百舌彦を問い詰めますが、そこに高松殿から使者が到着します。事情を知って高松殿に駆けつける倫子は、昏睡する道長の前で明子とバチバチのやり取りを繰り広げます。「お世話になります。心の臓に乱れがあるそうですね。このようなご容態では動かしてはよくないと存じます。どうぞ“我が夫”をこちらで看病願いますね」
道長の体調不良は瞬く間に知れ渡った。異母兄にあたる藤原道綱は、道長死なないよね? と実資に尋ねますが、実資はもしそうなれば朝廷は大崩れと不安に感じているようです。今回の一帝二后のことは、道長は多少強引ではありましたが、右大臣藤原顕光や内大臣藤原公季では頼りにならず、自分なら……と言いかけますが、訊ねたはずの道綱は、はなから実資の話を聞いていません。
虚室重招尋 忘言契断金
英浮漢家酒 雪儷楚王琴
広殿軽香発 高台遠吹吟
河汾應擢秀 誰肯訪山陰
(虚室(きょしつ)重ねて招き尋ね、忘言(ぼうげん)斷金(だんきん)契る。英(はなぶさ)は漢家(かんか)の酒に浮かべ、雪は…)と、まひろは賢子に李嶠の詩を読み聞かせます。そこに宣孝が帰ってきますが、いつもの笑みを浮かべた宣孝ではなく、珍しく表情が曇っています。
「言うべきか言わずにおくべきか迷ったが、知らせないのも悪いと思ったので、言うことにする」と口を開いた宣孝は、左大臣道長が高松殿で倒れ、危篤であるとまひろに伝えます。できることは自分たちにはないがと言い残し、宣孝は戻っていきます。まひろの表情から血の気がみるみる引いていきます。今のまひろには「逝かないで……」と心から祈ることしかできません。
道長が目を覚ますと、辺りが眩しいほどに明るく、枕元にいるまひろは道長の手を握り「戻ってきて……」とつぶやきます。そこで現実に目を覚ました道長は、目の前にいるのがまひろではなく、そばでずっと看病していた明子だったことに一瞬困惑します。道長が意識を取り戻したことで涙を流す明子の肩を抱いています。そして土御門殿に戻ってきた道長は、一門総出で出迎えを受けます。
定子は三度(みたび)身ごもっていた。食欲のない定子を心配し、清少納言は「青ざし」という節句の麦の菓子を差し出します。少納言の心遣いに感謝する定子は、菓子に引いていた敷紙を切り取り、筆を走らせます。「みな人の 花や蝶やと いそぐ日も 我が心をば 君ぞ知りける」 いつまでもそばにいておくれと言葉をかけられ、少納言はとても嬉しそうです。しかし──。
出産の時、夜通し詰める藤原伊周・隆家兄弟のところへ来た少納言は、うつむきます。その表情から事態を察した伊周は、産所に急ぎますが、定子は静かに横たわっていました。定子はその年の暮れ、姫皇子を出産し世を去った。几帳の横木に結ばれていた定子の歌を少納言が見つけ、伊周に渡します。伊周は悔しさのあまり怒りに震えます。「すべてあいつのせいだ……左大臣だ! あいつが大事にしているものを、これから俺がことごとく奪ってやる!」
よもすがら
契(ちぎり)しことを 忘れずは
恋(こ)ひむ涙の 色ぞゆかしき
帝は放心状態で涙を流し、危篤から生還した道長は衝撃のあまり思考が止まっています。そしてまひろは、そんなことがあっているとは知らず、すくすく成長する無邪気な賢子がよちよち歩く様子を宣孝と楽しんでいます。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
吉田 羊 (藤原詮子)
高畑 充希 (藤原定子)
高杉 真宙 (藤原惟規)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
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佐々木 蔵之介 (藤原宣孝)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:中泉 慧
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第29回「母として」
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