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2024年8月 5日 (月)

プレイバック炎 立つ・第一部 北の埋み火 (08)黄海(きのみ)の戦い

【アヴァン・タイトル】

奥州北部はかねてより豊富な金を産出し、駿馬を飼育する地としてその名をはせていた。また後に有名となった名刀「舞草刀(もくさとう)」も作られていた。

金は寺院、仏像の製作に用いられたばかりでなく、宋から輸入する高級品の支払い手段でもあった。この広大な山野から産み出される力強い馬も、都の権力者にとっては必要不可欠なものであった。その利益を求めて京の商人が行きかい、これにより安倍氏は絶大なる財力と軍事力を物にしていったのである。しかしここに着目していた源 頼義によって、奥州は泥沼の戦場と化してゆくのであった──。


天喜5(1057)年──。多賀城下の町を泥酔した瀬田剛介が彷徨っています。途中の遊女屋で髪を梳く女に声をかけますが、それが多磨であることに、酔いも覚めるほどに驚きます。源 頼義の配下の者が多賀城の藤原館に踏み込み、多磨と娘の希久(きく)は慰み者にされ、今は離れ離れになってしまいました。あまりのことに絶句する剛介も、これから藤原経清と敵味方で戦わなければならないと気が重いです。

経清が衣川の安倍館に入り、安倍貞任と仲良く会話する姿を見て、願ってもない婿どのが、と吉次は目を細めます。2人が両輪となってけん引していけば、安倍はさらに堅固なものになるわけです。安倍頼時は経清に奥六郡の要である江刺の地を任せていて、乙那は火のような貞任と芯を燃やす経清と2人を例えます。「2つの火が重なれば激しく燃える“炎”。これからの奥六郡を支える2つの火が、やっと揃った」

頼時を清原光頼が訪ねてきました。安倍一族の安倍富忠が密かに頼義と誼(よしみ)を通じ、いざとなれば海上から頼義軍を仁土呂志(ニトロシ=二戸付近)に入れることまで約束しているようです。結束でここまできたつもりの頼時は、その話に愕然とします。安倍にとっては遠縁にあたる光頼は、富忠の話を手土産に仲直りをしたいと照れ笑いし、頼時も中立を固く守ってくれている光頼に感謝を伝えます。

富忠を筆頭にして安倍の結束を崩す者が現れれば──と頼義は考えています。秋の借り入れを待ち、兵たちを入れて戦に備えたいところですが、1~2年持ちこたえられるだけの食料が欲しいところです。そこに源 義家が来て、戦に反対を唱えます。陸奥の平穏を守るのが陸奥守の役目なのに、父は頼時追討を懇願して宣旨を得、それを錦の御旗にして陸奥の平穏を壊していると反発するのです。

永衡のこともあって経清は父を見限ったのだと義家は訴えます。そもそも阿久利川で安倍の旗をかざし攻め込んだのは藤原説貞(ときさだ)の部下であり、頼義が仕組んだとしか思えません。頼義は、平穏な世に武士の値打ちはなく手柄を立てる場が武士には必要と義家をなだめますが、「手柄を立てるために戦を起こすなど本末転倒」と反発します。頼義はすべては源氏の礎を固めて義家に継がせたいのです。

 

頼時が仁土呂志に攻め込むために出陣の支度をしています。紗羅は頼時のまわりに重い気を感じると仁土呂志行きを止めますが、悠長なことは言っていられません。経清は自分もお供をと申し出、紗羅もそれがいいと勧めますが、瑞乃は紗羅をたしなめます。アラハバキの巫女である側室と、アラハバキを信じない本妻のバチバチの中、光頼に促されて頼時は出陣していきます。

衣川から仁土呂志に進軍する頼時軍が切り通しの中に差し掛かったとき、絶壁の上から軍勢に矢が射かけられます。突然の襲撃に軍勢は乱れ、前進を阻むかのように大量の丸太が上から転がされます。襲撃軍をどうにか倒した後、その生き残りの首を落とす兵を「明日には味方になるやもしれぬ」と助けた頼時と光頼は再び進軍を開始します。その直後、頼時の「うっ!」という声が……。

紗羅はアラハバキの神に頼時の無事を祈っていますが、その祈りの声がピタリと止まります。命を助けた男が放った矢が、頼時の背中に刺さったのです。急な知らせで鳥海柵(とりのうみのさく)から安倍宗任が駆けつけ、軍勢はそのまま衣川へ引き返しますが、戸板に乗せられた頼時の容態は悪化の一途をたどります。宗任は衣川への搬送を諦め、鳥海柵へ頼時を運び入れます。

鳥海柵に駆けつけた貞任は光頼に殴りかかりますが、それを宗任と経清に引き止められます。血気盛んな嫡男に頼時は目を細め、「もういかん」と弱気です。頼時は、暴走しがちな貞任を助けてやってくれと経清の手を握り、「戦は今まで通り守ることのみ」と経清と貞任に諭すと、悲しむ結有や子どもたちの声を聞きながら、ついに落命します。

 

頼義は内裏への報告に“2日がかりの大戦の果てに”という文言を入れさせます。富忠ごときが半日で倒した相手に、頼義は手こずっていたわけで、自身の面目を守るためです。富忠を味方に引き入れたのも自分の手柄、ただこれで内裏が安心してしまわないように、頼時が倒れても安倍はびくともしないと喚起しておくことも忘れません。

11月中旬、深い雪に包まれた陸奥。頼義軍は雪をついて磐井の境界を越え、黄海川の近くに陣を敷きます。まずは貞任を討って勝利を見せつけ、来春に衣川を攻めると展望する頼義でしたが、悪天候すぎて進軍は思うようにいきません。敵にできて自軍にできないわけはないと進軍を続ける頼義に、義家は戦いの後では退却する余力が残らないと、今のうちの撤退を進言します。

猛吹雪の中、坂の上から「鹿踊」の一団が現れます。その一団が左右に分かれると、安倍軍が大軍で坂を駆け下りてきます。「まさか……まさか!!」 この期に及んでも頼義が撤退を迷っていますが、そうしているうちに安倍軍との激闘になります。弓矢で応戦する義家ですが、大軍には敵わず。源氏の家臣たちが次々と倒されて、戦いはあっけなく終わります。

安倍軍に身をやつして逃亡を図る頼義たちですが、瀬田剛介が残党狩りの安倍軍の接近を知らせます。ひざまずく頼義たちに、馬上の経清は剛介の姿を見つけ、彼らが頼義たちと察知します。「武士(もののふ)にとって義のない戦ほど切ないものはない。早く立ち戻って身体を温めるがよかろう」と、敵と知りつつ見逃して去っていきます。苔にしてくれた激怒する頼義、見逃しに感謝する義家です。


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
川野 太郎 (安倍宗任)
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寺田 稔 (乙那)
赤座 美代子 (瑞乃)
石田 太郎 (清原光頼)
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佐藤 浩市 (源 義家)
佐藤 慶 (源 頼義)
多岐川 裕美 (紗羅)
西村 晃 (吉次)
里見 浩太朗 (安倍頼時)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:門脇 正美

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第9回「密通」

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