大河ドラマ光る君へ・(30)つながる言の葉 ~まひろは物語を披露~
まひろが夫を失って3年目の夏、都を干ばつが襲った。寛弘元(1004)年、都は川が完全に干上がり、民がよろよろと倒れて動かなくなります。そんな中を牛車で通り過ぎる藤原道長ですが、道長が目にしたものはわずかな水を奪い合い、干上がって作物が獲れない畑の土を投げつける民たちの姿でした。雨乞いの祈りをする人たちの真横で、まひろと乙丸は恨めしそうに天を仰ぎ見ます。
帝自ら雨乞いをするのは200年ぶりだったわけですが、一条天皇による雨乞いも効かなかったようです。安倍晴明が引退してこういう事態に陥っているようで、公卿たちの怒りは新しい陰陽師に向かいますが、道長はそれとなく陰陽師をかばいます。右大臣藤原顕光も、何とかしなければと危惧しますが、これといって有効な手段を持っているわけではありません。
のどの渇きをいやせるような果物を所望するまひろですが、農民がそのような都合のいい食べ物を持っているわけもなく、我々も動けば干上がってしまうと乙丸に促されて帰宅を余儀なくされます。帰って早々、藤原為時は寂しそうに「井戸が枯れた」とつぶやきます。今年の夏は乗り越えられないかもしれないが、何とか賢子だけでも生き延びさせてやりたいという思いです。
道長は晴明の屋敷を訪れます。現在陰陽寮には力のある者はおらず、道長は晴明に復帰を求めますが、雨乞いの祈祷をすると身体が持たないと84歳の晴明は断ります。それでもと食い下がる道長に、晴明は自分も差し出すのだから左大臣さまも、と交換条件を提示します。道長は一瞬考え、つぶやきます。「私の寿命を10年やろう」
龍神広く厚く雲を作り、甘雨(かんう)を降し給え、民の渇きを潤し給え──。多くのかがり火と札などで結界を張り、剣を持った晴明が根気強く祈祷します。その横では従者の須麻流(すまる)も控えていますが、祈祷が続くにつれて晴明も須麻流も体力が奪われてフラフラになっていきます。次第に都の天を雲が埋め尽くし始めます。
突然の大雨に、物語を執筆しているまひろも、そして都の民もとても驚き、大喜びです。道長は天を仰ぎ、うんうんと何度も頷いてホッと一安心します。そして祈祷をし続けた晴明はその場に倒れ、その横では須麻流が涙を流していました。
このころ、清少納言が託した『枕草子』が評判を呼び、貴族たちの間で広まっていった。帝も『枕草子』を読んでいると、中宮定子がそばにいるような気持になり、昔の楽しかった日日のことが思い出されてフッと笑みをこぼすこともあり、復職した藤原伊周は帝を励まします。
まひろは6日に一度、四条宮で女房たちに和歌を教えていた。この学びの会は、藤原公任の妻・敏子の主宰である。“和歌は人の心を種として、それがさまざまな言の葉になったもので──とまひろは丁寧に説明しますが、参加者には難しくてよく理解できません。「“もののあわれ”が分からねば、よい歌は詠めない、ということです」
そこに「私は思ったことをそのまま歌にしているだけですけれど」と割って入ったのがあかねです。こちらは後に、和泉式部と呼ばれる歌人である。敦道親王と密会後に薄着でこの会に現れたあかねの、敏子の評価は決して高くありません。あかねは敦道親王からもらった『枕草子』を披露しますが、敏子はまひろの『カササギ語り』の方がおもしろいと肩を持ちます。
道長のところに甥の藤原隆家が来ていました。兄の伊周には困ったものだと愚痴をこぼす隆家は、亡き定子のことを振り返るより前を向いてもらいたいとつぶやきます。隆家が去り、入れ替わりに入ってきた藤原行成は、隆家は道長を取り込んで失脚を目論んでいるのでは? と信じないよう進言します。隆家は伊周とは違うという道長は、行成を諭します。「疑心暗鬼は人の目を曇らせる」
為時は賢子と遊んでいます。まひろは四条宮に出かけている間、賢子に文字を教えてやってほしいと言いますが、母の言葉にも反応せず、見送りもせず、賢子はなぜかムッとしていて全く反応がありません。
人の親の
心は闇に あらねども
子を思ふ道に まどひぬるかな
一条天皇は亡き定子との子・敦康親王と、ひょうたんに絵を描いて遊んでいます。その横で中宮彰子は、帝に見られることも話しかけられることもなく放置されています。その彰子の様子に源 倫子は危機感を覚え、隣にいる赤染衛門を問い詰めます。「中宮さまが何をなさったというの? このままでは中宮さまがあまりにも惨めだわ」
四条宮での和歌の会を終え、自邸に戻ろうとするまひろは、酔ったあかねと遭遇します。どうやら敦道親王とけんかしたようで、まひろはじっくりと話を聞いてあげます。代理で歌を詠んだだけなのに自分以外の男に懸想したと、親王はあかねを疑っているらしいのです。まひろは恋に身を焦がすあかねは素晴らしいと感じます。「私はあかねさまのように、思いのまま生きてみたかった」
為時は道長に請われて、嫡男藤原頼通の教育係を務めています。その学問中をのぞいている道長は、為時が頼通の聡明さを褒めたたえて、とても気分がいいです。それとは対照的に、倫子が不安げな表情で道長の前に現れます。
帝を介して中宮彰子へ『新楽府』などを献上する倫子ですが、礼を言う帝に彰子にも言葉をかけてやってくれと異例のお願いです。彰子のほうが自分を受け入れないと帝は反論しますが、倫子は食い下がります。「出過ぎたことと承知の上で申し上げます。どうかお上から中宮さまのお目の向く先へお入りくださいませ。母の命を懸けたお願いにございます」
お前はどうかしている! と道長は倫子をたしなめます。これで帝が彰子へ気持ちを向けられなければ、この先ずっと気持ちが向かないことを確定させてしまいかねないわけです。しかし待っているだけよりはいいと考える倫子は、道長が自分の気持ちを分かってくれないと不満をあらわにし、夫婦は別々に分かれていきます。そんな中、伊周は相変わらず道長への呪詛を続けています。
道長は晴明に相談しますが、確かに闇の中にいると認めつつ、しばらく待てばいずれ光が差してくると諭します。道長は大きくため息をつき、それがいつか分からなければ身体が持たないとつぶやきますが、乗り越えれば光は煌々(こうこう)と照らすと答えます。「今あなたさまのお心の中に浮かんでいる人に会いにお行きなさいませ。それこそがあなた様を照らす光にございます」
まひろは賢子に文字を教えています。ひらがなの「つ」を逆に書き、何度言えば分かるのとまひろに叱られ、そこに現れた為時に駆け寄る賢子です。己の生き方を己で選べる子に育ってほしいまひろですが、様子を見に来た惟規には「それも姉上の押し付けだけどね。賢子は姉上みたいに難しいことを言う女にならないほうがいいですよ」とけんか腰に言われ、為時はあわてて仲裁に入ります。
まひろは和歌の会で『カササギ語り』の続きを朗読します。女になりたいと願う男と、男になりたいと願う女の話で、少々難しそうなテーマです。男になれれば政に携われるかもしれないものの、それも偉くならなければ叶えられないし、面倒なことは男に任せておけばいいという女房たちの感想です。
道長、公任、藤原斉信、行成の4人が食べ物をつついて呑み会です。亡き人の思い出は特に美しく残るわけで、帝の気持ちを彰子に向けるのはちょっと難しいと公任が冷静に分析する中で、少納言の『枕草子』の力がますます強まり、帝は書物が好きだからと、行成は『枕草子』を超える面白い読み物があれば、気持ちも和らぐのかもしれないと道長に進言します。
おはじきやろう! と賢子がまひろの肩を揺らしますが、『カササギ語り』の続きを執筆していたまひろは相手にしません。いとがなだめても、母上とやる! と賢子はいうことを聞きません。それでもいとに無理やり連れだされ、賢子は不満そうな顔を浮かべてまひろの部屋から出ていきます。
まひろの執筆は夜遅くにまで及び、途中で中断し出て行ったまひろを確認し、賢子はその部屋に足を踏み入れます。書きかけの紙を手にした賢子はそれを行燈の火をつけ、それを書き溜めた束に乗せて合わせて燃やしてしまいます。戻ってきたまひろは自分の部屋に戻る賢子を見かけますが、直後に火災が起きていることに気づき、慌てて消火します。
自分のやったことが分かっているの!? とまひろは賢子を問い詰めます。自分が相手をしないからといって、思い通りにならなかったからといって、火をつけるのはとんでもないこと! とまひろはすごい剣幕です。泣きじゃくる賢子は謝り、為時も賢子をかばって一緒に謝っていますが、まひろの怒りは収まりません。物語が一瞬にしてなくなったことを思えば、こちらも泣きたい気持ちです。
翌朝から執筆を再会するまひろです。不満がたまっているであろう賢子は、気晴らしにと為時が外に連れ出しています。そこに現れたのは道長でした。行成が面白い読み物の話をしたとき、誰がそんなものを書けるかと疑問に思った道長に、和歌を教えている女──為時の娘──を公任は道長に紹介したのです。まひろと道長の久々の再会です。
作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
高杉 真宙 (藤原惟規)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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ユースケ・サンタマリア (安倍晴明)
塩野 瑛久 (一条天皇)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
秋山 竜次 (藤原実資)
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岸谷 五朗 (藤原為時)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:中島 由貴
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『光る君へ』
第31回「月の下で」
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