プレイバック炎 立つ・第一部 北の埋み火 (11)血戦
【アヴァン・タイトル】
安倍軍と国府源氏軍の戦いは、出羽の豪族・清原氏が源氏軍に加わったことで、戦局が一変した。国府軍が連戦連勝、安倍軍は苦戦を強いられる。その転機は小松柵での攻防だった。
小松柵は貞任の叔父・良照が守る柵で、奥六郡への敵の侵入を防ぐ前線基地であった。安倍軍はこの小松柵で大敗を喫し、本陣を衣川柵から厨川柵(くりやがわのさく)へと撤退する。厨川柵は貞任を主とし、安倍氏の柵の中でも最も堅固な柵だったからである。敵を奥六郡の懐深くへ誘い込むという策略はあるものの、安倍軍は最後の砦へと追い詰められていったのである──。
アラハバキの巫女・紗羅が「ただごとではありませぬ……」と占い、バタリとその場に倒れます。乙那からの知らせでは、小松柵・川崎柵では敵に踏みにじられたとのことで、安倍氏にとって今回のような負け戦は初めてだと吉次は厳しい表情を浮かべます。占いの直後、館の内に運ばれた紗羅は、放心状態です。
厨川柵でもその報告を受けて瑞乃は力を落とし、菜香は励ましますが、結有は予測しなかったことが起きたのだと悟ります。顔を背けた流麗を怪しんでいたところ、結有は真夜中に出かける流麗を見とがめます。侍女は流麗が清丸の無事を祈って山の向こうの毘沙門天にお参りをしていて、口を聞いてはならないことを伝えます。そういわれれば結有も何も言えず、去ってゆく流麗を見送るしかできません。
策を変えて反撃を試みた安倍軍でしたが、敵の追尾が激しく窮地を脱するのがやっとで、明け方に大藤内業近が守る琵琶柵に引き上げてきました。敵が安倍軍の策略を知っていると聞き、業近は内通者の存在に気づいて腹を立てますが、今は結束うんぬんよりも、どうにかして厨川までたどりつく方法を考えなければなりません。貞任は金 為行に言われた言葉で藤原経清に疑念を抱き始めます。
高梨宿(たかなしのしゅく)の清原の陣には、源 頼義の姿がありました。安倍軍はすでに衣川から撤退してしまっていますが、頼義は安倍軍がこちらに柵が知られたことを察知しているのを考え、空白の衣川の襲撃を提案します。頼義は清原武則をひどく持ち上げ、鎮守府将軍に推挙すると言って武則を喜ばせます。そんな会話を聞く源 義家は、表情を曇らせます。
頼義は、清原軍には最後の最後まで戦ってもらうため、おだてていればいいのだと義家に陰で打ち明けます。衣川襲撃の真意も、安倍の本陣たる衣川を滅ぼした者こそ、この戦の功労者と見るわけで、そのために衣川に向かうのです。誰がやっても戦に勝てばいいと考える義家ですが、吉彦秀武に呼び出されて頼義の陣所を出ていきます。
秀武は義家に宛てた為行の文を持っていました。流麗が厨川を抜け出して衣川へ来るらしく、よほどの覚悟なのだろうと秀武はニヤリとします。こうなったら大事に迎えることだと義家に勧めて出ていきます。義家も、まずは厨川から衣川への遠距離を無事に着くことだけを願っています。
衣川の安倍館には続々と安倍軍が戻ってきました。休んでいた貞任のところに安倍宗任がきて、為行が戻ってこないと報告します。一方で、貞任は為行の讒言(ざんげん)で経清の心の中に何か隠し事があると見ていて、頼義への内通ではないかと宗任に打ち明けますが、宗任には全く信じられない話です。疑心暗鬼に陥る貞任を、大将が上の空では全軍の士気に関わると宗任は叱咤します。
宗任が経清を呼びに行っている間に、蔵から流麗の侍女が出てくるのを目撃した貞任は、その蔵にそっと足を踏み入れます。そこに来た経清に、蔵に残る物をどれでも持って行けと勧めます。固辞する経清に、貞任は経清がたとえ自分を裏切っても、経清すべてを受け入れると言い出し、経清を困惑させます。その時、蔵の奥からコトリと音が聞こえます。
経清と貞任が音のした方へ近づいていくと、流麗が逃げ出そうとしていました。安倍軍が衣川に入ったと知りながら、その身内がなぜコソコソしているのかと考えた時、奇妙な動きをしている為行と示し合わせて安倍から逃げるつもりだったかと合点がいきます。しかし流麗は叫びます。「殺してください! どうせ私は地獄に落ちる身、私がここで誰と落ち合うつもりだったかお分かりですか」
。父ではありませぬ……義家さまですッ! と言葉を放った時、刀を振り上げる貞任を押さえていた経清も、この話を知っていたため、もう終わりだと目を閉じます。そしてその衝撃の事実を知った貞任は、怒りに任せて流麗を一思いに刺し殺してしまいます。貞任の胸で落命する流麗、経清は目を背け、うつむいています。貞任は流麗の亡骸を抱きしめて号泣します。
琵琶柵は予想に反して半日も持たず、館は炎上します。安倍軍は満足に休息も取れず衣川を後にしなければなりませんでした。経清たちは先に落ちていき、貞任は焼け落ちる館を、しっかりと目に焼き付けておきます。そしてそのころ、衣川の町に頼義軍が入ってきました。闇に浮かび上がる赤い火に、義家は衣川館のほうへ確認しに向かいます。
義家が衣川館にたどり着いた時、騎馬で出ていく武者がいました。呼び止めると貞任です。一騎打ちを望む義家に、貞任は女性ものの衣をふわりと放り投げ、悔しければ厨川に来い! と馬で去っていきます。血がついております、と近習が衣を取り義家に渡すと、義家の顔色が変わります。炎上する館を前に、流麗の名を叫びますが、流麗の返事はもはやありません。
9月半ば、安倍軍の本陣と決めた厨川柵に5,000の兵が籠ります。結有たちは先んじて柵に入っているので、久しぶりの対面です。結有は経清から流麗の最期を聞き、お気の毒なお方だとつぶやきます。瑞乃は流麗が内通していた事実を知って、これまでつらく当たったことを結有に詫びます。経清は結有を見つめながら尋ねます。「女同士はうまくいっておるのか?」
乙那と紗羅とともに厨川柵に入った吉次は、柵の立派さに感嘆の声を上げます。軍議が始まるからと吉次たちはそそくさと席を立ち、軍議が始まります。厨川に3万の兵が来ても、1か月も持ちこたえられる堅固な柵です。安倍軍の総攻撃で頼義軍の退路を断つと、貞任や宗任は気合十分です。頼りにしていると言われ、経清も雄叫びを上げます。「必ず勝たねばならぬ。気合を入れてかかろうぞ!」
吉次と紗羅は結有と清丸に会っていました。安倍一族の、そして吉次一族の地を守るため、清丸とともに鹿角(かづの)に逃れるよう結有を説得する紗羅ですが、そんな卑怯な真似はできないと結有は首を振ります。アラハバキの神を信じないのかと迫る吉次ですが、それでも結有は承服しません。清丸はそんな母を見上げています。
じき頼義・清原連合軍が厨川柵に攻め込みますが、絶壁の上から大岩を落とされ、矢が降り注ぎ、攻撃はままなりませんでした。戦況はだれの目にも安倍有利と映っていました。千世丸も、母(流麗)の敵討ちだ! と戦に加わります。そんな千世丸を、経清は複雑な思いで見つめていました。
原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
川野 太郎 (安倍宗任)
鈴木 京香 (菜香)
財前 直見 (流麗)
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寺田 稔 (乙那)
赤座 美代子 (瑞乃)
新 克利 (清原武則)
清水 綋治 (藤原茂頼)
名高 達郎 (清原武貞)
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蟹江 敬三 (吉彦秀武)
多岐川 裕美 (紗羅)
佐藤 浩市 (源 義家)
佐藤 慶 (源 頼義)
西村 晃 (吉次)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:竹林 淳
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第12回「厨川落城」(第一部最終回)
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