« プレイバック春日局・(25)こころの教育 | トップページ | 大河ドラマ光る君へ・(32)誰がために書く ~まひろは宮中で執筆~ »

2024年8月23日 (金)

プレイバック炎 立つ・第一部 北の埋み火 (12)厨川(くりやがわ)落城 (第一部最終回)

【アヴァン・タイトル】

安倍軍の最後の砦「厨川柵(くりやがわのさく)」は貞任を主とし、安倍氏の柵の中でも最も堅固な柵である。厨川柵は南を雫石川に面し、東西は大きな沢で守られた天然の要害であった。柵の周りは断崖絶壁となっており、10メートル近くの高さがあったという。また川と柵との間に空堀を掘り、そこに刀の刃を立て敵の侵入を防いだ。源氏・清原連合軍は攻めあぐみ、わずか一日で数百人の死者を出したという。

安倍一族の存亡をかけた「前九年の戦い」は、ここ厨川柵で最大の決戦を迎えようとしていた──。


陥落不能の厨川柵(現・岩手県盛岡市)を前にして、源 頼義軍は攻めあぐんでいました。源 義家は安倍軍が柵に籠る以上 攻撃できず、瀬田剛介に討つ手はないかと相談しますが、剛介に策が思いつくわけがありません。頼義は剛介が元は藤原経清の家臣だったことを持ち出し、いざ経清を前にしたとき、前の主君を討てるのかと迫ります。頼義は剛介のことを信用していないわけです。

必死に忠義を訴える剛介ですが、頼義は湯漬けをかきこみ聞いていません。義家は父をたしなめ、行くがよいと剛介をこの場から離れさせます。去りかけた剛介は戻ってきて、厨川柵の水門は飲み水となっていると源氏に有益な情報をもたらします。義家はこの事実に全く気付かず、なるほどと頷きます。

乙那は経清と対面し、清丸を鹿角(かづの)に逃がすよう結有を説得してほしいと頭を下げます。「ここだけの話だかな」と身を乗り出す乙那に、そんな話は聞きたくはないと経清は厳しい表情を向けます。乙那が言う、朝廷とは別の新しい国を陸奥に作るには、戦に勝たなければならない……。内裏とは外れたところにこそ自由があると、安倍に加わって強く思った経清です。

 

翌日、義家の命で清原軍の兵たちは厨川柵周辺の家々を取り壊し、柵の堀を埋め始めます。柵の本丸では、その攻撃を食い止めることが出来ないと報告が上がります。柵を木材で埋めて火攻めにするつもりと経清は考えますが、安倍貞任は飲み水となっている水門の水を放ち、木材を押し流す作戦に出ます。しかし思ったほどの効果はありません。木材は杭で止められ、流されなかったのです。

義家は残った木材の上に乾いた萱(かや)を積ませ、頼義と清原武則はそれに向かって火矢を放ちます。柵はたちまち火に囲まれます。井戸水を木材の押し流しに使うか、堀の消火に使うか。貞任と安倍良照が議論しているところへ、安倍重任が1,500の兵で駆けつけたと報告があります。対峙するのは義家軍1万で、貞任はなぜ自分の指図を待たないのかと苛立ちます。

このままでは重任軍が危ないと、良照は重任を助け出さねばと主張しますが、ここで外に出れば全てが台無しと貞任は座り込みます。安倍は結束が全てだったのに、重任を見殺しにしようとする兄の発言に、良照は睨みつけます。

 

煙に包まれる中、女たちがあつまる広間に紗羅が来て、結有の手をつかんで出て行こうとします。結有は頑として動かず、安倍は負けないと主張しますが、紗羅のやることに反感を持つ瑞乃は、アラハバキの神に背いて“安倍は負けない”と言ってみろと迫ります。目を背けていた紗羅は、瑞乃を見つめます。「負けぬとは言えませぬが、最後に私の身を賭して祈りましょう。みなさま方、私の申す通りに」

外で護摩を炊く紗羅は、一緒に祈祷文を読み上げるように求めます。女や子どもたちは紗羅に倣い、手を結んで祈ります。立ち上がった紗羅は白い布に護摩の火をつけ、空に高く放ちます。火のついた白布は飛んでいって雫石川に落ちます。そして紗羅は刀で自らの首を斬ります。「よいか……私の死骸を……川へ沈めるのです……最後に私にできることは……神のために……人柱になることだけ」

吉次と乙那、貞任と経清が駆けつけた時には、紗羅の亡骸が横たわっていました。経清は結有だけを呼び、重任を助けるために柵を出て戦うと告げます。もしものことがあれば、清丸を守って生き延びよ──。出ていく経清を呼び止めた結有は、経清にしっかりと抱きしめられます。「楽しき日々であった」 結有は泣きじゃくります。

門が開き、馬上の人となった経清が出てきます。経清は柵の内側に向かって深々と一礼し、重任救援に向かいます。そのことを知った貞任は、経清を柵から出した安倍宗任を殴りつけます。人には外してはならない道がある、と貞任は経清を追いかけて柵を飛び出して行きます。出て行ったら敵の思うつぼと宗任は貞任を引き止めるも、その背中を見送ることしかできませんでした。

 

経清軍は雫石川で敵と交戦中でした。そこに貞任軍が追いつきます。馬を並べた貞任の顔を見るや、経清は「アホが!」と怒鳴りますが、それでも友の参戦に笑顔を見せます。その目の前で小田忠平が敵の矢を受けて落馬、助け出そうとする経清を見て、もういけませぬと刀を首に当て自害します。その怒りはそのまま敵に向けられます。

しばらくして貞任も無数の矢をうけながら、敵に切り込んでいきます。貞任目がけて放った敵の矢を受け、家臣たちが集まってきますが、「もうよい、守る必要はない」とゆっくりと前進して安倍の意地を見せよと命じます。そして次の矢を受けたときついに落馬、それでも川からムクリと起き上がる貞任は、敵に斬られて倒れます。「経清……先に逝くぞ……」

頼義本陣からも無数の矢が降り注がれ、出てきた義家軍に経清軍が真正面に立ち向かいます。貞任も重任も戦死し、義家は経清に縛につくことを勧めます。それでも経清は、あくまで死に場所を用意してほしいと義家に伝えます。「お望みとあらば、そのように」と義家も同意すると、経清は義家と交換した太刀を川に投げ沈めます。その様子を剛介は複雑な思いで見つめています。

 

本陣に戻った義家は、助命だけが武士の情けかと思い悩みます。経清にも武将の誇りがあるはずで、よい死に場所を与えることがいいと考えているのです。頼義は、経清ほどの武将はまたと出ないし、殺していくばかりでは勝ったとしても先細りだと義家を説得します。「まあ任せておけ。わしはあの男を好いておったのじゃ。度量、配慮、才知、決断力、どれ一つとってもわしの敵わぬものばかり」

座る経清を前に、頼義は懐柔しようとしますが、ブタめ! と暴言を吐かれます。「何が武門の頭領じゃ、何が源氏の大将じゃ。ブタの家来にはならぬ! 早う首をはねられよ」 激高した頼義は刀を石に打ち付けて刃をボロボロにし、経清の後ろに控える剛介を指名して、のこぎり挽(び)きするよう命じます。号泣しながら中止を進言する剛介にも、止めに入った義家にも、頼義はその言葉に耳を貸しません。

「怯えるな。お主に首を落としてもらえるとは幸せじゃ。親しき者の手にかかって死にたい……。剛介、遠慮はいらぬ。やれ、俺の首を挽け!」 剛介は泣きながら首に刀を当ててのこぎり挽きし、義家は思わず目を背けます。口から血が流れ出しながらも、経清は目の前の頼義を睨みつけます。

そのころ、厨川柵は敵の手におちようとしていました。館は火に包まれ、黒煙がもくもくと空高く上ります。瑞乃ら女たちが自害した中を、結有は清丸を探して館内を駆け回りますが、敵の兵に取り囲まれて捕えられます。安倍の身内の者は柵からでますが、後に捕らえられた千世丸は処刑されてしまいます。

ついに安倍は滅びたか──。柵から遠く離れた場所で、吉次は館に向かって手を合わせます。乙那が乗る馬には清丸が乗せられていました。すんでのところで救出されたのです。吉次は曽孫にあたる清丸に優しい顔を向けます。「あの火を忘れるではないぞ。安倍は滅びてもそなたは生き延びて、新しい火を起こすのじゃ。藤原と安倍と我ら一族をあざなって、さらに大きな炎を燃やすのじゃ」

 

頼義が安倍を征伐し、陸奥を平定したという知らせは内裏にももたらされます。しかし藤原頼通は、清原のみならず坂東武者も付き従った頼義に危機感を抱きます。藤原経輔ら公卿たちも、“武門の力が内裏を脅かさなければよいが”と心配します。もしかしたら貴族にとっての敵は、安倍などではなく武士そのものなのかもしれません。

翌 康平6(1063)年2月、経清、貞任、重任の首が京の町でさらし者にされます。牛車からそれを見る亜乎根は、経清の変わり果てた姿に涙を流します。その横で経清の名を呼んで悲しむ女(多磨)の存在に気づきます。経清どのの母じゃ、と言われて仰天する亜乎根は、彼女が陸奥で藤原頼遠に嫁ぎ経清の母代わりとして過ごしたのだと知ります。亜乎根と多磨は“母として”号泣します。

12年間にわたって奥州を戦乱のうずに巻き込んだ「前九年の合戦」が終わりました。しかし新たな戦乱の火種がすでにこの時から芽生えようとしていました。薄暗い中を、清丸はじめ吉次たちはゆっくりと去っていきます。


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
──────────
[出演]
渡辺 謙 (藤原経清)
古手川 祐子 (結有)
村田 雄浩 (安倍貞任)
川野 太郎 (安倍宗任)
鈴木 京香 (菜香)
──────────
寺田 稔 (乙那)
赤座 美代子 (瑞乃)
新橋 耐子 (亜乎根)
新 克利 (清原武則)
イッセー 尾形 (藤原経輔)
名高 達郎 (清原武貞)
──────────
蟹江 敬三 (吉彦秀武)
多岐川 裕美 (紗羅)
佐藤 浩市 (源 義家)
佐藤 慶 (源 頼義)
西村 晃 (吉次)
──────────
制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:高沢 裕之
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:門脇 正美

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第13回「母子の契り」(第二部「冥き稲妻」第一回)

|

« プレイバック春日局・(25)こころの教育 | トップページ | 大河ドラマ光る君へ・(32)誰がために書く ~まひろは宮中で執筆~ »

NHK大河1993(2)・炎 立つ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« プレイバック春日局・(25)こころの教育 | トップページ | 大河ドラマ光る君へ・(32)誰がために書く ~まひろは宮中で執筆~ »