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2024年9月22日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(36)待ち望まれた日 ~彰子の出産まひろが~

寛弘5(1008)年。漢文の講義が嫌になった敦康親王に、あらあらとほほ笑ましく感じる中宮彰子は、宮の宣旨が持ってきた「荷葉(かよう)」の香を嗅いだ途端、吐き気を催します。その後、宮の宣旨から女房たちに発表があり、これまで以上にしっかりとお世話申し上げるように、と訓示されます。

土御門殿でくつろぐ源 倫子ですが、そこに藤原道長が慌てて駆けこんできます。「中宮さまが……ご懐妊あそばされた」 とても喜ばしい報告に倫子は言葉なく、そばに仕えていた赤染衛門と顔を見合わせます。倫子は感無量です。

彰子は藤式部を呼び出し、他の女房たちを下がらせます。今日は気分がいいから、式部とないしょの話をしたいというのです。かつて式部が一条天皇と『高者未だ必ずしも賢ならず、下者未だ必ずしも愚ならず』と話していたのを持ち出します。これは唐の国の詩人・白居易(はくきょい)が民人の声を代弁した、為政者のあるべき姿を示した漢詩・新楽府(しんがふ)の一節で、帝の好きな書物なのです。

「それを学びたい! ないしょで」 亡き皇后定子は漢籍も得意で、それを知った彰子は密かにそれを学び、帝を驚かせたいのです。学ぶことはいつからでも始められます と背中を押した式部は、それから彰子に漢籍の講義を受け持つことにします。彰子は漢籍を学びながら、政の頂(いただき)にある者の心得を知り、どんどん吸収していきます。

道長のところにいつもの幼馴染みたちが集まって呑み会です。もし彰子が皇子を産めば道長の立場は盤石ですが、すこしややこしいことになりそうです。しかし藤原行成は、居貞(いやさだ)親王のあとは敦康親王が東宮(皇太子)となるのが倣いと説明します。道長は彼らの話に乗ってきませんが、次の東宮の話をするということは、帝が皇位を降りる時の話をするということと、無言を貫きます。

花山院が“お隠れあそば”した(=亡くなった)、と藤原道綱が居貞親王に報告し、なんということだと居貞親王は落胆します。これで冷泉天皇の子は居貞親王だけになってしまいました。子・敦明(あつあきら)親王が次の東宮にならなければ冷泉の皇統は途絶えると、居貞親王は危惧します。「中宮さまのお産みになる子が皇子でないことを祈るばかりだ。中宮さまのご様子、逐一知らせよ」と居貞親王は道綱に命じます。

彰子と遊んでいた敦康親王は、彰子が里に下がるに際して、子が生まれたらその子が愛おしくなって自分と遊ばなくなるのでしょう? と寂しそうな表情を浮かべます。敦康親王が幼いころからずっと一緒に過ごしてきた彰子は、帝のお渡りがなくてもずっとそばにいてくれた親王に感謝しているのです。「この先も私のそばにいてくださいませ。親王さまのお心を裏切るようなことは決してございませぬ」

 

中宮彰子は、出産のため土御門殿に退出した。彰子を迎える道長と倫子、そして祖母の藤原穆子です。藤壺の女房たちもそれに合わせて土御門殿に詰めることになりました。道長は式部に、思う存分 物語を執筆でき、夜もゆっくり休めるように専用の局を与えます。倫子は、笑顔を見せなかった中宮をここまでにした式部に頭を下げます。

彰子への漢籍の講義は、土御門殿に移っても続けられます。好きとなれば羽が生え飛ぶほどに持ち上げて大事にするが、嫌いとなれば瑕(きず)ばかり探し出す──。自分も帝に瑕を探されるのだろうかと心配する彰子ですが、瑕とは大切な宝と式部は諭します。「瑕こそ、人をその人たらしめるものにございますれば」

そこに道長が4人の子どもたちを連れて、彰子への挨拶に訪れます。藤原妍子(きよこ)のあいさつの後、藤原教通(のりみち)と藤原威子(たけこ)は、彰子の横に座す式部を「誰?」と話していて、彰子は式部を紹介し、大切な指南役とやさしく教えます。みな式部に頭を下げます。

左衛門の内侍は赤染衛門に、悔しくはないのかと怒りをぶつけます。式部が来たことで、衛門は指南役の座を奪われ、内侍は彰子のそばに仕える務めを奪われたわけです。衛門は、彰子が式部を求めれば仕方のないことと笑ってやり過ごしますが、食い下がる内侍は道長と式部の間柄について指摘します。「ただの主従ではありませんわよね。左大臣さまは藤式部の局にお立ち寄りに……ひそひそと」

中宮彰子懐妊の陰で、定子の産んだ媄子(よしこ)内親王はこの世を去った。わずか9歳であった。力を落としているであろう藤原伊周のところに、久しぶりに清少納言が見舞いに訪ねてきます。少納言は今も竹三条宮で脩子(ながこ)内親王に仕えしながら、亡き定子を思い出す日々です。何もかも左大臣の思いのままだ、と伊周はため息をつきます。

定子に一途だった帝が今は彰子に心を移したことが、少納言には信じられません。藤式部が書く面白い物語で帝が藤壺に向かうようになったと聞き、その女房がまひろのことだと分かった少納言は、目をむき出しにして顔を引きつらせます。「伊周さま、その物語を私も読みとうございます」と少納言は声を絞り出します。

 

帝の子の出産時には、漢文による公式記録をつけるのが通例であった。その例に倣い、今回も記録係を4人用意した藤原行成ですが、道長はそれとは別に、式部に出産記録を作ってくれと頼みます。公の記録と聞いて式部は固辞しますが、彰子のそばにいて心をよく知る式部にも作らせ、後に続く娘たちにも役立つように残したいと言われ、しぶしぶ承諾します。

出産を控え、お産で命を落とした定子のように自分も死ぬのかなどと不安げな彰子に、式部はその不安はよく分かると、自分が娘を出産した時のことを思い出します。彰子の相手をしながら物語も執筆し、うとうとしていた式部です。「真夜中からお屋敷が騒がしくなり始める。日がな一日、中宮さまはとても不安げに起きたり伏せったりしてお過ごしになられた」

「祈祷僧たちは中宮さまに憑りついている物の怪どもを寄坐(よりまし)に駆り移そうと、限りなく大声で祈り立てている。南には高貴な僧正や僧都(そうず)が重なり合うように座り、不動明王の生きたお姿をも呼び出してみせんばかりに、頼んだり恨んだり。みな声が枯れ果てているのがとても尊く聞こえる」

巫女たちが大声で何かに抵抗し暴れているようで、藤原斉信は「恐ろしく強いもののけが」とつぶやくほどに、なかなかに威力の強い物の怪のようです。それもそのはずで、同時刻に伊周が呪詛をしているのです。恐れをなす女房もいて、お清めが降りかけられます。「頭には邪気払いの米が雪のように降りかかり、しぼんでしまった衣姿がどんなに見苦しかったことか、後になるとおかしくてならない」

伊周が、彰子と書かれた札に叩きつける刀の刃が折れたと同時に、暴れ苦しんでいた巫女が音もなく倒れ、その直後に元気な赤子の声が館中に響き渡ります。「皇子さまにございます」との倫子の言葉に、その場に居並ぶ者たちはおおっと安堵の声を上げ、どよめきが起きます。「皇子であったか……皇子……」と道長は呆然と立ち尽くします。伊周はこと敗れたりと脱力します。

めずらしき
 光さしそう 盃は
  もちながらこそ 千代もめぐらめ
「中宮さまという月の光に、皇子さまという新しい光が加わった盃は、今宵の望月のすばらしさそのままに、千代もめぐり続けるでありましょう」 道長と満月を見上げながら、式部は今詠んだ歌の意味を道長に説明します。「よい歌だ。覚えておこう」

彰子出産を経て、これで左大臣も盤石だと喜ぶ源 俊賢ですが、源 明子はうちの寛子も必ず入内させると対抗意識を燃やします。子らを政争の具にするなと道長か言っていたことを伝えますが、明子は聞く耳を持ちません。俊賢や道長をバカにするように「フフ……ハハ……」と笑って立ち去り、俊賢は大きくため息をつきます。

 

一条天皇は、敦成(あつひら)と名付けられた若宮に会いに、土御門殿に行幸した。一条天皇は、この日敦成に親王宣旨も下した。彰子は敦成親王を帝に渡し、帝は愛おしそうに親王を見つめて笑っています。彰子も子どもっぽい表情からすっかり母の顔になっています。そんな姿を見つめる道長・倫子夫妻に式部です。

この日は五十日(いか)の儀。子どもの誕生50日に行われる、今でいうお食い初めの祝いである。倫子が抱き、道長がすくって口元に運びます。そして参列者には膳が振舞われ、道長は無礼講とほほ笑み挨拶します。

藤原顕光は酔って足を滑らせ、藤原実資は女房の単衣の数を数えて今にも眠りそうです。若紫ほどの美しい女性はいないと言い放つ藤原公任には、式部は「光る君のような殿御もおられませぬ。ゆえに若紫も」と手痛いしっぺ返しを食らわせます。そんなふたりの様子を見ていた道長は式部を呼び、歌を詠め、と求めます。

いかにいかが
 数えやるべき 八千歳(やちとせ)の
  あまり久しき 君が御代(みよ)をば

さすがであるな、と道長は式部に近づきます。

あしたづの
 よはひしあらば 君が代の
  千歳の数も 数え取りてむ

あうんの呼吸で歌を合わせたふたりに、倫子は少し気分を害して外に出ていってしまいます。その場にいて式部をギロリと睨みつけていた衛門は、廊を歩いていた式部を呼び止めます。左衛門の内侍に言われた一言が引っ掛かっていたようで、思い切って尋ねます。「左大臣さまとあなたは……どういうお仲なの?」

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
黒木 華 (源 倫子)
三浦 翔平 (藤原伊周)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
木村 達成 (居貞親王)
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塩野 瑛久 (一条天皇)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
ファーストサマーウイカ (ききょう/清少納言)
秋山 竜次 (藤原実資)
石野 真子 (藤原穆子)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:田中 陽児

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第37回「波紋」

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