プレイバック炎 立つ・第二部 冥き稲妻 (18)兄と弟
【アヴァン・タイトル】
真衡の死後、源 義家によって奥六郡は2つに分割された。南の胆沢・江刺・和賀の三郡を清衡、北の稗貫・紫波・岩手の三郡を家衡の所領としたのである。これは清衡に一方的に有利な決定であった。南三郡には鎮守府胆沢城があり、奥六郡の中心として栄え、北三郡より温暖で、農業生産力が高かったのである。
真衡の死によって次期後継者を目論んでいた家衡は、この裁定を清衡の罠だと考え激怒した。兄弟の争いから清原一族を滅亡させ、奥州制覇を狙う義家の策略で、後三年の合戦は清衡と家衡の対決へと変わったのである──。
応徳3(1086)年・春。清原真衡が亡くなり、奥六郡を清原清衡と清原家衡で折半して3年目を迎えていました。相変わらず清原成衡と岐巳夫婦をもてなす江刺の清衡館ですが、疱瘡にかかって成衡の顔面にあばたが残り、酒量も増えて荒れた生活を送っています。真衡の養子として清原家を継ぐのは当然なのに、源 義家の妹を妻にしたばかりに江刺から動けない不遇を村雨に愚痴っています。
清衡は義家に国府多賀城に呼び出されていて、戻って来ました。その時館は、酒を薄めて用意させたことが成衡に気づかれ、それを用意した柾(まさき)が自分を愚弄したと、成衡が柾の首根っこを捕まえて暴れているところでした。酔った末の行動とはいえ、性懲りもないことだと清衡は呆れ、小矢太を成衡のところに行かせます。
清衡が義家に呼ばれたのは、家衡が「清衡が安倍にゆかりのある者を何人も要職に据えているのは、朝廷を侮る行為だ」と声高に主張しているため、義家はしばらく家衡を江刺で預かれと命じたのです。兄弟の確執は将来の不穏の元で、仲直りさせようという義家の考えではありますが、成衡だけで手を焼いている今、家衡までも引き取れば大変なことになるのは目に見えています。
2日後、紫波から結有が江刺に駆けつけます。結有は義家の操り人形の清衡に不満ですが、陸奥守の任期までは耐えねばなりません。義家は家衡を江刺に閉じ込め清原一族を討つつもりです。義家に加勢するのかと結有は目をむきますが、清原を滅ぼして藤原を再興する好機だし、そう決意させたのは結有の「成人した暁には、この母と力を合わせて経清どのの恨みを晴らさねばならぬ」という言葉なのです。
清原を滅ぼすのは今しかないという使命に燃える清衡に、結有は家衡をどうするつもりかと尋ねます。それは家衡次第と答える清衡は、家衡に罪はなくても仇の子をはらむ結有には罪があると突きつけます。いま清衡を立たせているのは母との誓いだけであり、清衡は結有に手をつきます。「どうか頼みまする。この清衡とともに仇を……!!」
わかりましたと答える結有は、家衡とともに自分も江刺に入って清衡を殺さぬよう見張ると言い出し、家衡の策を清衡に密告することがなぜできない? と乙那にたしなめられます。まだ覚悟が出来ていないようだ、と感じた清衡は、仮に自分の愛する家族が犠牲になったとしても、それは覚悟の上だと結有に言い放ちます。「よう言うてくれましたの。その一言を忘れるでない」
義家の命に従って、家衡が15名の家来を引き連れて江刺入りを果たします。土産をたくさん持ち込み、とても純情に従う家衡に、清衡は気持ち悪ささえ覚えます。家衡は、特に義家から何も言われてはいませんが衣川から女子を同行させませんでした。江刺預かりの1年間、女っ気なしで過ごすのはさすがに辛いと、清衡にこの館で斡旋してほしいと笑います。
家衡は成衡の酒の相手をし、澪丸(みおまる)の弓の稽古にも付き合います。しかし清衡は子どもには構うなと弓矢を取り上げてしまいます。家衡は一瞬ムッとした表情を見せますが、出過ぎた真似をしたと微笑んで去っていきます。貴梨は家衡に失礼だと困惑しますが、清衡は子どもを出しに使われたくないのです。「何事もないかのようによう耐えておるわ。じゃがな、今にわかる」
家衡が同居して半年が過ぎ、収穫の秋を迎えます。のんきに過ごす家衡ですが、やはり何か企てているようで、酒の相手をしながら、決心はつかれたか? と成衡をせっつきます。事が成った暁には江刺を与えるとニヤリとする家衡に、そのような話ここではなりませぬと村雨はたしなめます。
夜、柾が岐巳のために薬を持ってきますが、横たわっていたのは岐巳ではない手を縛られた死体でした。柾はのけぞりますが、直後に家衡と成衡が入ってきて密談を始めます。20日、江刺に集まった年貢のすべてを清衡らが100の兵で胆沢に運ぶことになっていて、その道中を千任率いる兵2,000で襲撃する計画なのです。貴梨や澪丸らを人質に清衡を脅せば、必ず乗り込んでくると家衡は自信を見せます。
片隅でその計画を耳にした柾は、急いで清衡に報告します。悪霊に取りつかれたとしか、と柾は顔をゆがめますが、その報告に清衡は感謝しつつ、余計な騒ぎを引き起こさないためにも、貴梨をはじめ女たちにはこのことは伏せるように柾に口止めします。年貢移送の時を狙うとはよく考えたものだ、と清衡はつぶやきます。
清衡の作った竹とんぼに澪丸と茜は大喜びです。貴梨は子どもたちも素直に育って幸せをかみしめます。清衡は家衡の囲碁の誘いに乗り碁盤を囲みます。幼いころ、おぼれた家衡がもがいた先に清衡の大きな背中にしがみつき、それ以来何かにつけて清衡を頼りにしてきたわけですが、そのことを思い出して涙を流す家衡に清衡は戸惑います。そこに結有が現れ、清衡とともに出ていきますが、それを見送った家衡は「ぶっ殺す」と睨みつけます。
清衡は結有に家衡が襲撃することを告白しますが、結有に邪魔をされては困るので、詳細な決行日までは教えません。「母上に、手前の決意のほどを見せて差し上げまする」と、あくまで企てをさせるつもりです。結有は、幼い日のおぼれた時の思いがあれば殺し合いはできないと訴えますが、清衡の気持ちは違ったようです。「死ねばよいと思い、じっと見ておった。人が来たから助けたのでござる」
清衡は、自分は昔からそんな人間だったと打ち明けます。父の仇の中で育てば、己の本心を隠して生きざるを得ず、それを教えたのは結有だったのです。結有は神も仏も恐れぬように見えると清衡を非難しますが、だからこそ……「やってやる。どんなことがあろうとも家衡ともども清原を滅ぼしてみせる!」
原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
村上 弘明 (清原(藤原)清衡)
豊川 悦司 (清原家衡)
鈴木 京香 (菜香)
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坂本 冬美 (貴梨)
寺田 稔 (乙那)
洞口 依子 (柾)
高橋 かおり (岐巳)
米山 望文 (清原成衡)
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李 麗仙 (村雨)
古手川 祐子 (結有)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
制作協力:NHKアート
:NHKテクニカルサービス
演出:榎戸 崇泰
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第19回「後三年の合戦」
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