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2024年9月 6日 (金)

プレイバック炎 立つ・第二部 冥き稲妻 (15)亀裂

【アヴァン・タイトル】

前九年の合戦での勝利で、清原氏は出羽の山北三郡を拠点に、安倍氏の勢力範囲であった奥六郡の実権も握った。さらに武則が鎮守府将軍となったことで、陸奥・出羽両国全域にわたる軍事指揮権を掌握した。武則の孫・真衡は、この強大な権力を独占する。当初は一族の連合体だった清原氏が、真衡による独裁体制となったのである。その象徴が真衡の養子問題である。

子どものない真衡は、清原一族ではなく武家の名門・平氏と源氏から夫婦養子を迎え、後継者にするというのである。弟の家衡はじめ、無視された清原一族たちの真衡への不満は、頂点に達した──。


永保3(1083)年7月、江刺・清衡館では清原清衡と源 義家の対面がなされていました。その様子を柱の陰からこっそりうかがう小矢太と柾(まさき)です。義家は清衡に、黄海の戦いで藤原経清に命を助けられた話をしますが、不愛想に聞く清衡はなぜ父をのこぎり引きで殺したのかと睨みます。「せめて武士らしい最期を父に遂げさせてやっていただきたかった……」 慌ててたしなめる乙那です。

父の最期を聞いて以来、義家と源 頼義を仇と思って育った清衡は、義家が会いに来ても思いが覆るわけもなく。義家は下がろうとする清衡を呼び止め、20年前にこの屋敷を訪問した時に経清のものと取り換えた太刀を、清衡に進呈します。初めは断っていた清衡は、その太刀が経清のものだと知るや、目を丸くして驚きます。「受け取られよ、お父上の太刀。そなたの手に換えればこの太刀も喜んでいよう」

清衡が下がり、乙那は清衡の無礼を詫びます。若武者ならばあれぐらい頑固な方がいいし、仇相手であればそう簡単には心は開けないものだと、義家は清衡の気持ちも汲み取ります。乙那は義家に、清衡と対面したことは伏せるよう念押しし、陸奥守としてこの地に戻りたいとつぶやく義家のために、内裏の公卿たちを動かしてみると約束します。

太刀を見つめていた清衡は、鞘を取り刃を見つめて亡き経清を思い出します。ハッと気づいた清衡は、たった今義家が帰って行ったという貴梨に、清衡の不愛想ぶりに気分を害したのだとたしなめられながら、白寝間着のまま表へ飛び出して行きます。すでに義家一行の姿はありません。「父上のこと……もっと聞いておけばよかった。義家どのにしか分からぬ父上の話がもっともっとあったはず」

 

胆沢・真衡館には家衡の姿がありました。真衡の呼び出しに応じなければ謀反の兆しありと見なすところだったわけです。これから行われる武貞の葬儀の準備のために、真衡は家衡に胆沢に詰めるよう命じます。葬儀が終われば夫婦養子の婚礼が続くわけで、家衡はしばらく出羽には帰れないことになります。家衡は怒りをにじませながら出ていきます。

結有は、吉彦秀武らに煽られた家衡が戦の準備に取り掛かることを真衡に気取られる危険性もありつつ、この胆沢に詰めていれば真衡でも表立って攻めるようなことはしないだろうと考えます。そのような悠長なことを言っていられる事態ではないと家衡はイライラを募らせますが、結有は今こそ我慢のしどころと家衡をなだめます。そこに岐巳が到着したと村雨から報告が入ります。

多くの武士、公家、僧侶、子どもたちが見守る中、門をくぐったのは多気致幹(たけ むねもと)と、馬に乗った孫娘の岐巳でした。後に異母兄義家も武貞の葬儀と続く婚礼に出席するために到着します。再び義家に会えるとはと感慨深げな秀武は、家衡を紹介します。出迎えた家衡は義家に挨拶しますが、義家は家衡を一瞥して通り過ぎていきます。

義家たちが対面所でしばらく待たされた後、瓶子を持って現れた真衡は酒を勧めます。元の出羽守と元の陸奥守の家系が一つになるのは何かの縁だと言う義家は、何かを警戒しながら盃を受けます。続いて真衡が義家の盃を受け、グイッと飲み干した真衡は盃を床にたたきつけます。「これで我らの縁は固まった。これからは身内同士でござるぞ。幾久しゅう誼(よしみ)を」

同席する秀武や義家の家臣らにも酒がふるまわれます。真衡の義家に対する態度にイライラしていた秀武は、めでたいことでござるの! とわざと明るく振舞いますが、叔父貴どのはどうぞ、と真衡は秀武に退出を促します。「義家どののお相手は手前一人で十分じゃ。どうぞ。表周りの掃除の監督でもしておられよ」

そもそも真衡がなぜ夫婦養子にこだわるか。真衡の祖父武則も父武貞も鎮守府将軍を務めましたが、征伐対象となった俘囚(ふしゅう)であることには変わりありません。そこで真衡は、武門の両雄で帝の末裔でもある平氏と源氏の家系を清原に持ち込むことで、俘囚から脱却したい考えなのです。そのためには弟たち身内に真衡の跡を継がせても何も変わらないわけです。

これは身内同士の戦になる、と義家はつぶやきます。自分の血を否定するとは何ともわびしく、危険な香りすら感じられます。そこに清衡が先日の非礼を詫びつつ、致幹と岐巳を義家の部屋へ案内します。初めて対面する兄と妹、岐巳は義家の活躍を聞くたびに、兄への会いたい思いが膨らんでいったわけです。義家は、亡き頼義に会わせてやりたかったと岐巳を抱きしめます。

 

武貞の葬儀が滞りなく終わり、真衡館は3日後の婚礼に向けて大忙しです。そんな中、結有は嫌でも思い出さずにはいられないと義家への挨拶を拒みます。とはいえ結有は夫婦の義祖母、義家は花嫁の兄にあたり、顔を合わさないわけにもいきません。結有の髪を梳く菜香は、顔を背けて遠くから睨んでやればいいと笑います。

暑い中、秀武は1時間も真衡を待たされ続けます。家臣によると真衡は左大臣家の名代と対面していて、すぐには抜けられないと弁明します。しかし息子の吉彦武忠は真衡が客殿にいると伝え、秀武は砂金を武忠に持たせて客殿に向かいます。真衡は奈良法師と碁を打っていました。

庭先で片膝ついた秀武は、出羽からの祝いだと称して朱塗りの盆に盛った砂金を真衡に頭上高く差し出します。真衡は手が離せないと相手にせず、秀武は差し出したままの姿勢で動けません。秀武の表情がみるみる真っ赤になっていきます。ついには砂金をぶちまけます。「おのれ……そなたの家来になった覚えはない。思い高ぶりもいい加減にしろ!」

真衡の家来たちが秀武をなだめますが、全く聞き入れません。駆けつけた家衡の首根っこを掴まえ、必ず真衡を討つと宣言した秀武は、家衡も婚礼が終わり次第すぐに出羽へ戻り、決起するように告げます。清衡も帰ってゆく秀武に言葉をかけますが、秀武は無視して館を後にします。何が起こったか分からない清衡に、一部始終を見ていた乙那は、秀武による真衡への宣戦布告だと教えます。

この機を逃せば二度と立つ時がないと、家衡は秀武に味方して決起するつもりです。真衡が家衡を出羽へ帰さないことも考えられますが、結有はその時は清衡と綿密に策を練り、助けを借りるよう助言します。家衡はのらりくらりと誰に味方するか見せない清衡を信用していないところがありますが、兄弟2人が力を合わせるよう結有は念押しします。

秀武一族が出羽へ帰ったことを己の不徳の致すところと、左大臣家名代や公卿たちに詫びた真衡は、立派な殿様と逆に評価を上げることにつながります。さすがの真衡もこのままいけば戦になることは分かっていて、清衡を呼び出した真衡は、真衡と家衡とどちらに味方するのかと尋ねます。「どちらを選ぶか……言え!」


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
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[出演]
村上 弘明 (清原清衡)
古手川 祐子 (結有)
萩原 流行 (清原真衡)
豊川 悦司 (清原家衡)
鈴木 京香 (菜香)
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渡辺 謙 (藤原経清(回想))
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坂本 冬美 (貴梨)
寺田 稔 (乙那)
渋谷 天外 (清原武衡)
大出 俊 (奈良法師)
洞口 依子 (柾)
高橋 かおり (岐巳)
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河原崎 建三 (兵藤正経)
李 麗仙 (村雨)
蟹江 敬三 (吉彦秀武)
佐藤 浩市 (源 義家)
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制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:竹林 淳

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第16回「清衡の反乱」

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