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2024年9月 1日 (日)

大河ドラマ光る君へ・(33)式部誕生 ~まひろの物語に一条天皇は…~

そなたは藤原、今日よりそなたを藤式部(とうしきぶ)と呼ぶことにいたす──。彰子に仕える女房・宮の宣旨(せんじ)が藤壺に出仕したまひろに命名します。まひろの父・藤原為時は、式部丞蔵人であったところからの命名です。式部は女房たちに「よしなにお導きくださいませ」と頭を下げますが、たくさんの瞳が自分に注がれて緊張した面持ちです。奥に赤染衛門の姿を見つけ、顔をほころばせます。

寛弘2(1005)年・藤壺──。まひろは宮の宣旨に仕事場に案内されます。物語を書くために藤壺に出仕したということもあり、左大臣藤原道長と北の方源 倫子の計らいにより、立派な調度品や筆記具などを用意してもらえています。そもそも女房の役割は、中宮の食事の世話、身の回りの世話、話し相手、内裏の公卿たちの取り次ぎ役などで、式部も手伝いたいと申し出ますが、宣旨にギロリと睨まれてしまいます。

さっそく物語を書き進める式部ですが、すぐ横の廊を女房たちが頻繁に通り過ぎ、大きな音を立てるなどして落ち着かない雰囲気で、式部はため息をつきます。そこに現れたのは藤原公任と藤原斉信です。式部を推挙したのが公任ですが、式部は扇で口元を隠しながら、公任にかつて言われた言葉で皮肉ります。「私のような地味でつまらぬ女は、己の才を頼みとするしかございませぬ。精一杯励みます」

中宮彰子の女房たちは彰子と同じような育ちの高貴な姫ばかりで頼りにならず。中宮のために働くという気概が薄く世間知らずで鈍いようです。中宮大夫の斉信は女房たちに指示を出しますが、返事がなくて困惑しています。斉信が去っていくと、「聞きたいことなどありませんわよねえ」「中宮大夫さまは何につけ偉そうになさりたいだけよ」と愚痴の嵐です。

夜になってもなかなか寝付けない式部です。それもそのはずで、式部が休む寝所の隣、またその隣でも、別の女房が休んでいるわけです。いびきをかく女房、寝相悪く寝返りを打つ女房、こっそり寝所を抜け出す女房……。寝言を叫ぶ女房もいては、式部は目が冴えてしまいゆっくり休むことが出来ません。

お目覚めあれ! と声がかかります。女房たちはすぐに支度に入ったのに、式部は掛け声に全く気付かず眠ったまま起きません。式部を衛門が大きな声で起こしに来ました。式部は物語を書く、衛門は学問の指南と、女房たちの役割はそれぞれ違っても、朝はちゃんと起きなければならないと注意を受けます。朝礼に遅れて参加した式部は、夜伽に召されていたのでは? と他の女房たちにからかわれます。

「中宮大饗(だいきょう)」では公卿らが中宮に拝礼し、宴が行われる。下賜する禄の用意や宴の準備で、女房たちは大忙しである。中納言の装束を運ぶ役目を終えた式部は、ちょっとした隙間から、公卿から挨拶を受ける中宮彰子の姿を見て目を輝かせますが、宮の宣旨に注意を受けます。その夜も物語の続きを執筆しますが、あまりの疲れでウトウトしてしまいます。

藤原行成より敦康親王にかかる室礼と装束の費用について報告を受けた道長は、藤壺に藤原伊周が来ていないかを行成に尋ねます。一条天皇が伊周の位を元に復したということは、いずれは敦康親王の後見にと考えているからで、このまま彰子に子が出来なければ、敦康親王の成長に伴って伊周の力も大きくなっていく可能性も十分にあります。この身を賭してお守りいたします、と行成は頭を下げます。

 

執筆作業の続く式部ですが、廊を女房たちが忙しく立ち回り、視線もあって、集中して書き進めることが出来ず、里に戻りたいと道長に申し出ます。しかし道長は“書くことが己の使命” “内裏でさまざまなことを見聞きし物語の糧にする”と言っていた式部の言葉を引用し、眠れない式部のために寝所を別に用意すると道長は提案しますが、それでは他の女房たちへの影響が計り知れません。

道長は、続きを読みたがっている帝が藤壺に来るようにしたいのです。式部は前に献上したものを手直しし続きを書いたものを道長に渡します。この章はこれで終わりで、続きの構想はできているので、続きは里で書きたいと食い下がる式部ですが、道長は認めず頭を下げて頼み込みます。「ならぬ。お前は我が最後の一手なのだ。藤壺で書け。書いてくれ。この通りだ」

式部は、自分が書く物語に帝の心を動かすような力があるのか疑問に感じています。道長自身それは分かりませんが、道長にはこの方法しかなく、いわば賭けなのです。賭けに負けたら……お役御免? 式部は涙目で道長を見つめます。「物語を書きたいという気持ちに偽りはございませぬ。里で続きは書きます。そして必ずお持ちいたします」

道長の元を辞した式部は、庭を眺めている彰子を見かけます。お寒くはございませぬか、炭を持ってこさせましょう、などと話しかけていると、彰子が冬と空の色のような青が実は好きなのだということを知ります。そこに左衛門の内侍が来て、何をしているのと式部をとがめます。「里に下がるご挨拶を。里に下がりお役目を果たそうと存じます」

屋敷に戻ったまひろに、乙丸や藤原惟規らも仰天します。涙で別れて藤壺に上がって8日目、追い出されてしまったのかといとにはからかわれますが、やはり家で物語を書いた方がはかどるという気持ちは間違いではなかったようです。惟規は「(藤壺で)いじめられたの?」と姉を心配しますが、まひろは笑って否定します。ただまた藤壺に戻るかもしれず、まひろ自身どうなるか分かりません。

 

寛弘3(1006)年。除目の儀で、伊勢守に平 維衡(これひら)を任じる考えの帝に、道長は真っ向から反対を唱えます。維衡は伊勢国の支配を巡って一族の平 致頼(むねより)と何度も戦をした人物であり、武力にものを言わせて瞬く間に戦乱の世になってしまうと危惧してのことです。右大臣藤原顕光は、維衡ひとりでそのようなと鼻で笑いますが、道長は顕光を一喝します。

維衡はもともと顕光の家人で、それで顕光が強く推挙したようです。しかし行成には帝が仰せなら異議は唱えられないという事情があったわけです。同じく、帝の考えには背けなかった藤原実資は、流されなかった道長の力量を「さすがである」と評価します。藤原隆家は、朝廷も武力を持つべきという道が肝要かもしれないと主張します。

空欄にしたはずの伊勢守の欄に、いつの間にか何者かによって、平 維衡の名が書き加えられていた。帝の裁可を得たということになるため、道長はそれ以上、手出しできなかった。

 

自邸で物語の続きを書いたまひろは、惟規といとに読み聞かせます。惟規は中宮彰子はうつけなのか? と失礼な質問をします。どうやら周囲の者たちは、亡き皇后定子は聡明だったが、中宮彰子はうつけだと話しているようで、それを惟規が耳にしたわけです。「うつけではありません! 奥ゆかしいだけ!」とまひろは口をとがらせて反論します。

道長は、一旦は伊勢守として維衡に任命し、速やかに交代させたいと帝に進言します。帝には由々しき過ちには思えませんが、寺や神社すら武具を蓄え武力で土地を取り合う世となりつつある中、国司たちが弓矢を専らとするようになれば、朝廷を蔑ろにする者が出てこないとも限らないわけです。そこまで言われては、帝も道長の言を聞き入れざるを得ず、伊勢守は交代させよと道長に命じます。

式部が再び藤壺に上がり、物語の続きを持参しました。「帝がお読みになるもの、私も読みたい。帝がお気に召された物語を知りたい」と彰子が言い出します。しかしここに持参したのは物語の続きであり、式部は彰子のために物語の初めから手短に紹介します。

帝は忘れ形見の皇子(みこ)を宮中に呼び寄せてかわいがられますが、この皇子が物語の主となります。皇子はそれは美しく賢く、笛もご堪能でした。あまりにも美しかったので、光る君と呼ばれました──。その皇子は帝(一条天皇)みたい、とつぶやいた彰子は、光る君は何をするのかと式部に尋ねます。「何をさせてあげましょう?」 彰子はフッとほほ笑み、うーんと考えています。

物語の続きを早速道長に提出する式部ですが、お許しいただけるなら改めて藤壺で中宮のために力を尽くしたいと言い出します。道長はよく気の変わる女だと呆れ返ります。式部はそっと膝を進め、道長にこっそり教えます。「中宮さまのお好きな色は、空の青らしゅうございます。お心の中には表に出てこないお言葉がたくさん潜んでおるのやもしれませぬ。中宮さまともっとお話ししたいと存じました」

帝が道長を伴って、式部に会いに藤壺にやって来ました。帝が式部(まひろ)と対面するのは二度目で、一度目は清少納言を介して中宮定子に紹介を受けた時でした。宋の国の科挙制度を例示し『高者未だ必ずしも賢ならず、下者未だ必ずしも愚ならず』と諳んじた式部に、新楽府を読んだのだなと帝が感づいたのでした。

帝の政に堂々と考えを述べた女子は、亡き女院詮子以外にはいなかったため、強烈に覚えていたのです。式部の書いた物語は、自分を非難しているように感じて腹が立ちましたが、次第に物語が心に染み入ってきたのです。帝は、自分だけが読むのには惜しく、皆に読ませたいと考え始めます。賛同する式部は「中宮さまにもお読みいただければ、この上なき誉れに存じます」とほほ笑みます。

道長から式部に褒美が渡されます。これからもよろしく頼む、と言って道長は局を出ていきます。式部が褒美を改めると、扇でした。川のほとりで少年と少女がいます。式部の脳裏に、小鳥が逃げて追ってきたまひろと、小鳥は逃げたかったのだろうと諭す三郎が駆け巡ります。よく見れば、離れたところに鳥の姿もあります。まひろは扇を胸に抱いて、涙を浮かべます。

 

大和から京の都を揺るがす一団が向かっていた。響き渡る錫杖(しゃくじょう)の音、その中心には高僧の姿が……。人々は手を合わせ、祈祷をしています。道長と対面した興福寺別当・定澄(じょうちょう)は、興福寺の僧3,000が木幡山(こはたやま)に集結し、訴えを直ちに陣定にかけるよう要求します。「それがならねば、この屋敷を取り囲み、焼き払い奉ります」

 

作:大石 静
音楽:冬野 ユミ
語り:伊東 敏恵 アナウンサー
題字:根本 知
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[出演]
吉高 由里子 (まひろ/藤式部)
柄本 佑 (藤原道長)
三浦 翔平 (藤原伊周)
高杉 真宙 (藤原惟規)
町田 啓太 (藤原公任)
渡辺 大知 (藤原行成)
竜星 涼 (藤原隆家)
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塩野 瑛久 (一条天皇)
見上 愛 (藤原彰子)
上地 雄輔 (藤原道綱)
秋山 竜次 (藤原実資)
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制作統括:内田 ゆき・松園 武大
プロデューサー:川口 俊介・高橋 優香子
演出:佐々木 義春

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『光る君へ』
第34回「目覚め」

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