« プレイバック春日局・(29)大坂攻め | トップページ | プレイバック春日局・(30)ああ大坂城 »

2024年9月11日 (水)

プレイバック炎 立つ・第二部 冥き稲妻 (16)清衡の反乱

【アヴァン・タイトル】

律令制国家の時代、奥州の武士が「陸奥守」や「鎮守府将軍」に任命されることはなかった。陸奥守は陸奥国の行政を、鎮守府将軍は奥六郡方面の軍事・行政を司る長官のことで、公家や武門の名家が朝廷より任命されるのを常としていた。これらの長官になることは、実質的に奥州の完全支配の実権を獲得することであり、奥州の武士にとっては最終目標であった。

清原武則が鎮守府将軍に任命されたのはその第一歩であり、それゆえ真衡はその野望を実現するためには、身内の骨肉の争いをも辞さなかったのである──。


永保3(1083)年、江刺の清原清衡には出羽の吉彦秀武から「清原真衡の一族を人質に」という策を記した書状が届きます。6,000の兵で挙兵すれば真衡が出陣する、その留守を襲えというのです。特に清原成衡・岐巳夫婦は人質にとるようにとのことで、清原家衡はわずか500の兵でできると息巻いています。

清衡は、それでもし勝った場合こそ面倒なことになり、秀武は出兵数を盾にのさばるだろうと危惧します。しかし家衡は、あくまで真衡を倒すことだけを目的としているため、勝つにはそれしかないと、その後のことはまるで考えにありません。結有は清衡に家衡への加勢を依頼しますが、清衡はわずか60ほどの手勢しか持たず、頼りにされるほどの軍勢ではありません。

母としては、おぼつかない家衡の手となり足となり、そしてかじ取りを清衡にお願いしたいわけです。清衡が家衡の部下になれ、と言っているような結有を清衡は見据えますが、結有は清衡がいつからそんな冷たい兄になったのかと涙声になります。「しかし母上、もし我らが真衡兄を攻め滅ぼした暁には、当然家衡が清原一族の棟梁となろう。手前は生涯、その支え役で終わると申されまするのか?」

 

胆沢の真衡館には、仲睦まじい成衡・岐巳夫婦の姿がありました。そんな2人を微笑ましく見つめる真衡のところに、奈良法師が陸奥守に源 義家が決定したらしいとの情報を持ってきました。義家が真衡側に援軍を出せば、それはつまり内裏が味方したことになるわけで、真衡は何度も頷きます。敵は岐巳を人質にとる策で、妹思いの義家がそれを聞けば……そう考えると真衡は内から笑いがわいてきます。

秀武軍が出羽を出陣との知らせを聞き、たった1日で8,000の兵を整えた真衡軍は翌日には出羽に向けて軍を進め、途中の衣川の家衡館に立ち寄ります。戦支度をしていない家衡に、駆けつけるとしか返事しない清衡、この無様な2人の弟に真衡は怒り心頭ですが、出羽攻めは自軍で間に合うと思い直した真衡は、この周辺の山道に詳しい家衡に監視に当たらせることにします。

家衡の重臣・千任(せんとう)は、清衡と2人で戦うよう勧めます。わずかな戦力しかないと下に見る家衡ですが、千任の意図は、清衡を胆沢攻めの先頭に立てることで、もし真衡に問い詰められた時に罪を清衡になすり付けることにあります。清衡をだますようなやり方に乗り気ではない家衡ですが、結有も江刺に滞在中であるし、助言してもらって清衡に出陣を迫るのです。

 

千任に促されて江刺の清衡館を訪れた家衡は、真衡とのやり取りを報告します。しびれを切らした結有は、弟が援軍を求めているのだと悟り、清衡に出陣を強く説得します。家衡に泣き顔をされては、さすがの清衡もいやとは言えません。清衡は、わしでよろしければ喜んで加勢いたそう、と返事します。そして胆沢の留守館襲撃も清衡が実行者と決まり、やはり血を分けた兄弟と結有は涙します。

「母上は何も分かっておられぬわ」と清衡はつぶやきます。意地っ張りな家衡が、わずか60の兵しか持たない清衡を当てにするわけがないのです。この話には裏があり、よほど都合のよい清衡の使い道が裏にあって、頼みに来たのだと清衡にはお見通しです。それを単純に喜んでいる結有に、目がくらんでしまっていると母に対して残念な思いです。

3日後、清衡が出陣します。安倍の支援者や清衡を慕う者らで、軍勢は120に膨らんでいました。胆沢の守備兵は150ですが、清衡は胆沢を取り囲んだタイミングで家衡に白鳥村(しろとりのむら)に火を放つよう協力を求めます。そうすれば胆沢の兵が逃げ出し、自軍120でも残りの兵たちと戦うことが出来るわけです。ちなみに秀武軍は家衡らを当てにしているようで、真衡軍とにらみ合っています。

 

真衡の留守館から100以上の兵が逃げ出したとの知らせを受け、清衡は留守館に突入します。館に残ったわずかな手勢を倒し、ついに成衡と岐巳を発見します。成衡は清衡が捕えに来たと考えて岐巳ののど元に刀を突きつけますが、清衡はあくまで避難を勧めます。両者が無事であれば平氏も源氏も手を出してこないと踏んで、丁重に扱うことだけは約束します。

清衡はその日のうちに成衡・岐巳を江刺館に連れ帰り、他の人質は衣川の家衡の元に届けます。しかし一番の目的であった成衡・岐巳の人質のみ江刺に連れ帰ったことに、約束が違うと家衡は腹を立てます。清衡が何を考えているのか分からないと頭を抱える家衡ですが、千任は、これで清衡が自ら首謀者となったも同じこととニヤリとします。

そのことは、出羽に陣を張る真衡の耳に届きます。家衡も清衡もそれぞれに人質を盾に館に閉じこもったわけで、両者とも衣川館に立てこもると予想していた真衡には予想外の展開です。奈良法師は義家たちにも相談したほうがいいと進言し、真衡は陣をたたんで引き上げを命じます。

乙那は、明日にも義家が多賀城に着任すると清衡に知らせます。家衡が攻めて岐巳を殺されては大変だと、救うことだけを念頭に江刺館に連れ帰った清衡ではありますが、夫婦の屋敷を襲った無礼は消えません。義家にどう思われるかと清衡は不安で仕方ありませんが、乙那はそのあたりは義家も分かってくれると大笑いします。

多賀城の義家を訪ねて弟2人の謀反を陳情する真衡ですが、義家は「国府が私闘に関与するのはご法度」を盾に、動こうとしません。妹が人質となっていても、陸奥守の公務とは別の話と取り合いません。家衡が焼き討ちした白鳥は国庫に納める米を作る村で、そこを焼き討ちした罪は問えても、陸奥守としてできるのはその程度というのです。「悪いようにはいたさぬ。しかし、この上の戦はならぬ」

義家の反応を見た真衡は、誘い出して無理にでも戦に関わらせてやると躍起です。戦はならぬとの忠告はありましたが、家衡や清衡を襲うのではなく秀武を襲えばいいわけで、義家配下の兵藤正経や伴 助兼が胆沢へ調査に赴いている時に、2人を引きずり込むのです。奈良法師には真衡の考えが伝わったようで、真衡と奈良法師は不気味な笑みを浮かべます。

 

胆沢の真衡館に赴く正経や助兼ですが、薙刀を手にした女たちが守るのみでした。真衡は秀武の怪しい動きに2人の到着を待たずに出陣してしまい、家衡がこの館を襲うかもという情報すらあります。女たちだけが守る館は初めてだと笑う2人ですが、そこに突然の敵の来襲です。その後、胆沢から偽の伝令が発せられます。清衡へは家衡が真衡館を襲った、家衡へは清衡が真衡館を襲ったとの伝令です。

あほじゃ! と清衡は動揺を隠せません。行き合わせた正経らと戦えば義家に対して弓を引いたも同じわけです。結有は家衡を助けてほしいと懇願しますが、家衡とともに自滅してよいのかと、家衡を取るか自分を取るかはっきり決めるよう迫ります。そしてこれは家衡のほうでも同じことで、真衡の策略によって清衡と家衡は、義家を敵に回すという窮地に陥ることになります。

報告を受けた義家は、何たる短慮だと怒りをあらわにします。真衡の留守館で国府に仕える者が戦の指揮を執るということは、国府が真衡の援護に回ったことになるのです。「はめられたな。正経や助兼は真衡の策にはめられたということじゃ。もはや取り返しがつかぬ、もはやどのような言い訳もかなわぬ。真衡め……何という途方もない策をようもやってくれたものよ、あの化け物めが!」


原作:高橋 克彦
脚本:中島 丈博
音楽:菅野 由弘
語り:寺田 農
題字:山田 惠諦
──────────
[出演]
村上 弘明 (清原(藤原)清衡)
古手川 祐子 (結有)
萩原 流行 (清原真衡)
豊川 悦司 (清原家衡)
鈴木 京香 (菜香)
──────────
坂本 冬美 (貴梨)
寺田 稔 (乙那)
大出 俊 (奈良法師)
織本 順吉 (千任)
洞口 依子 (柾)
高橋 かおり (岐巳)
──────────
河原崎 建三 (兵藤正経)
李 麗仙 (村雨)
佐藤 浩市 (源 義家)
──────────
制作:音成 正人
制作・著作:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ
制作統括:村山 昭紀
制作協力:NHKアート
    :NHKテクニカルサービス
演出:竹林 淳

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『炎 立つ』
第17回「清原分断の罠」

|

« プレイバック春日局・(29)大坂攻め | トップページ | プレイバック春日局・(30)ああ大坂城 »

NHK大河1993・炎 立つ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« プレイバック春日局・(29)大坂攻め | トップページ | プレイバック春日局・(30)ああ大坂城 »